渋谷とカフェとパイプのけむり・・・邂逅
おととい再々転職活動の帰り、一息つくために渋谷のエクシオール
カフェのテラスで小雨と行き交う人を見ながらアイスコーヒーを飲んで
いたのだが、「ここ、いいですか?」と声を掛けられてふと見上げると
メガネをかけ、小柄だが、いかにもおしゃれで小粋。クリエイティブ系
の香りがする。50歳過ぎくらいだろうか、雑誌に出てきそうな、男前
の「チョイワル」な男性が立っていた。
「どうぞ、どうぞ・・・。独りですから」
と私はにっこり微笑んだ。チョイワルな彼は、バッグからメガネ拭きに
使うような上質な布に丁寧に包まれた丸い缶をおもむろに取り出して
机に置いた。お!もしかしてこれは・・・。


そのチョイワルの彼は、別の袋から使い込まれたパイプを取り出し
その刻みタバコの缶からパイプに葉っぱを詰め始めた。
長年、パイプに親しんでいないと、これだけ一連の動作が澱み
なくできないだろう。茶人が一服のお茶を点(た)てるようだった。
イチロー 「かっこいいですね」 思わず声を掛けた。
オジサマ 「もうパイプは40年ですよ」
イチロー 「(゜゜;)エエッ 40年ですか。道理で様になって
いらっしゃいますね。興味はあるんですけどまだ
早いかなって思ってまして・・・」
オジサマ 「本当に自分に合うパイプに出会うまで、15年、20
年くらいかかりますよ。」
イチロー 「そ、そんなに。。。 まるで女性と一緒ですね(笑)」
オジサマ 「まさにその通り。気が短くて官能的なことに興味が
薄い人だと長続きしないんですけど・・・。官能的な
ことはお好きですか?」
イチロー 「ええ、すごく好きです(笑) コーヒーとか18歳から
家ではインスタント飲まないんです。 40年には
負けますが(笑)、30年近く豆を挽いてドリップで
飲むのが習慣になっています。官能的なことは
手間暇惜しまないタイプです(笑)」
オジサマ 「それなら大丈夫。ただパイプ選びは難しい。
しかも常時最低2〜3本は使いまわししないと
だめなんですよ。というのは同じパイプを使い
続けると湿気を帯びてタバコの味を損なって
しまうんです。だからローテーションをしながら
使わないといけない。あとはパイプに詳しい
人のアドバイスが必要ですね」
イチロー 「困ったな。周りにいないんですよ。そういう人が」
オジサマ 「だったら僕がよかったらアドバイスしますよ」
イチロー 「え? いいんですか? ぜひよろしくお願いします」
オジサマ 「ただし、うーん、そうだな、まず10万円は必要だね」
イチロー 「わかりました。じゃ、10万円用意できたら、付き合
ってください。先生(笑)」
オジサマ 「いいよ。じゃ、これ名刺ね」
イチロー 「ありがとうございます。おっ!まったく肩書きのない
名刺初めてみました。めちゃめちゃカッコいい名刺
ですね。名前だけって、素敵ですね。会社名が
スコブルコンプレックスって、これまたユニークです
ね」
オジサマ 「そう? まあ一言で言えない仕事だし。敢えて言うなら
世界観を具体化してあげる仕事、まあ、プロデューサー
みたいなものかな。これから近くで試写会あるから、
じゃ、また・・・。」
実はこの人、良い意味でトンでもない人だったのだ。家に帰って
このオジサマの名前を検索してからわかった。
秋山道男・・・ 実は、テレビコマーシャルで何度も見ていたのだ。
ネスカフェの香味焙煎のCMで、着物を着て、円窓の茶室で黙って
正座しながら静かに珈琲を啜っているだけのシーン。
思い出された方も多いだろう。まさに、その本人だった。
いったいどんな人かとういと・・・。
NHKの大河ドラマや映画にも出たりするような俳優さんで、
赤目四十八瀧心中未遂 、ナイン・ソウルズ(2003) DRUG
GARDEN(2000) ざわざわ下北沢(2000) 流 星(1999)
ファザーファッカー(1995) などに出演。
そして映画のプロデューサーも・・・。夢二(1991) 鉄拳(1990)
などだ。また前出のファザーファッカーと外科室(1992)では企画
に携わってる。
あのチョイワルなオジサマがこんなにすごい人だったとは・・・。
自分もあと10年くらいあとになったら、カフェでパイプをくゆらし
て絵になる男になっていたいものだ。
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