壊れているのだと、思う。 

2005年09月17日(土) 9時31分
どこにも辿り着ける自信がない。

僕の身体はまだバラバラで、
立ち上がることもできず、
歩き始めてもいないのだから。

もう一度、立ち上がるための名前 

2005年06月30日(木) 10時24分
夢見たより遠くへは、僕は歩いて行けなかった。
夢見た夢の数ほどは、僕は羽ばたくことが出来なかった。
崩落する。
失墜する。
常に僕を誘惑し、甘い闇を囁くものの名を、
万有引力というのなら。
僕がその優しげな腕を振り払いながら
進む先を、飛び立つ先を、
僕のわずかな勇気を奮い立たせるものの名を、
なんというのだろうか。

空、と。
人の呼ぶ。

鳥のヒト(#) 

2005年06月16日(木) 12時21分
君はとても臆病だから
飛び立つ先を、決めることが出来なかっただけだ
この腕の中に留まって空を夢見ることのほうが
どんなにか楽だっただろうから

今、断崖に立たされて君は選択を迫られる
僕が獣であることに、脅えてしまった君
気付かぬふりで眠る君に
真実をささやいたのは誰?
そしてその言葉に耳を傾けてしまったのは?

一度も羽ばたいたことの無い翼で
あの大空に飛び立つべきか
それとも、崖下の暗い奈落へ落ちていくべきか
君が僕から逃げるすべなら、その二つしかない

でももし君が闇を選ぶなら
僕も共に落ちていくことが出来る
翼のない僕には、大空へ君を追うことなど出来ないから

けれど臆病な君だから
きっと、大空へと羽ばたくのだろう
そして翼が疲れたならば、再び地上へ
僕のもとへ戻ればいいと思うのだろう
それが出来ると、思い込んでいるのだ


だけど、君。
君の翼はもう、ただの飾り物だと気付いていた?
その翼が空を駆けるための力は
君の背にはもう、宿っていないことを
長い、長い間、僕の腕の中で眠り続けていたのだから


僕は
君を追う準備をする
地を蹴り、牙を剥き、



奈落へ。

鳥のヒト 

2005年06月16日(木) 12時11分
 男の背は躍動感を漲らせた、しなやかで芸術的な配分の筋肉によって覆われていた。もちろんそれは、ただの観賞用の飾りものなどではなく、ヒトのそれよりもはるかに発達したその背筋は、男の背から力強く生え伸びた、双翼を羽ばたかせるために必要なものだった。

 そう、この夜が訪れるまでは。
 今や無用の、不恰好な肉の隆起に過ぎない。
 けれど、それは月日が経てば、やがて衰え滑らかな造形を得るのだろう。
 ヒトのそれと変わらぬほどに。
 わずかな醜さを残して。



 眩い月光に身を曝し、背骨を緩やかに湾曲させた姿勢で胡坐をかいた男は、一部始終を見守っていた僕に、痛みで震える腕を差し出した。
 手には、木の実の器に入れられた、血止めの軟膏。
 彼の種族に伝わる、秘薬だ。
 縄張り争いに敗れて傷つき森で息絶えようとしていた僕に、彼が使ってくれた薬だ。
 僕は不思議な興奮に鬣(たてがみ)をざわめかせながら、震える指でそれを受け取った。

 屈みこんだ僕の前には、生々しい肉と骨の断面があった。
 並んで二つ。
 翼を切り落とした、痕だ。


 もう、飛ぶ必要はないのだと、あなたは言った。
 求めたものは見付かったから。
 空に自由を探す必要はなくなったのだと。
 そして、「彼」を不安にさせないために、その翼を折るのだと。

 それは、どこにも飛び去りはしない、という誓い。


 ああ、僕は。
 餌を咀嚼すると同時にあなたの翼までをも貪ってしまったのだ。
 あなたの最愛のヒトは今、あの茂みの向こうで無残な肉を曝している。
 満ちる血の匂いは、あなたの翼の流した痛みばかりではない。
 そしてほら、「彼」とあなたをむさぼるために、
 僕らの種族が夜に溢れ始めている。


 僕らの牙は肉を求める。
 ヒトは僕らの餌でしかない。
 猛禽のあなたにも、それは解っていたはず。
 でも僕は、「彼」さえいなくなれば僕はまた、
 あなたが大空を駆ける姿を見れると思っただけなのだ。
 深い森の奥で見上げる枝々の檻の向こう、
 悠然と飛翔するあなたの姿を愛していたから。

 もう二度と、あなたを空に見ることはないのですね。
 ヒトとして、生きることを選んでしまったあなたなら。
 ヒトとして、僕の牙に、引き裂かれるしかないのだ。
 
 僕は。
 彼の赤い背中を、ゾロリと。
 舐めた。

願い 

2005年06月16日(木) 11時53分
目を閉じて
濃紺の闇の中、遠ざかる音を追う
微かなささやきを聞き逃さないように

どうか、一言
その吐息の形でかまわないから。
名を呼んでくれたなら

四肢を繋ぐ死の鎖からも抜け出して、
貴方の元へと駆けるのに

千切れた足で、土を蹴り
千切れた腕で、剣を握り

必要だと、そう、言ってくれたなら

今はただ、遠ざかる足音だけを
絶望という穏やかさの波に呑まれぬように
希望という苦痛にしがみつくように

貴方の足音だけを
追いかけている

隷属 

2005年06月13日(月) 23時53分
ぼくはただ
黙して待つだけの虚(うつろ)
君の目の届かない場所へ行こうと
ぼくは走って、走ってみたけれど
君の記憶から抜け出すすべを
ぼくは知らない
蹲り
きみの世界の片隅に蹲り
脅え
黙して赦しを待つだけの


逢う魔が時 

2005年06月03日(金) 12時46分
 長く急な坂の上から見下ろした、彼方に霞むように見える連山のそのまた向こうに、太陽はゆっくりと沈もうとしていた。けれどぼくらの頭上にある空はまだ青く明るくて、首が痛くなるくらいにそこだけを仰ぎ見ていれば、夕暮れはまだまだ遠いことのように思えた。視界いっぱいに広がった空の広さに眩んだぼくは、まるで無抵抗のまま地球の重力に導かれるかのように、今しがた上りきったばかりの坂道を、危うく転げ落ちてしまうところだった。そんなぼくを支えてくれたのは、千切れるくらいに強く繋いだままの、君の指。その強さを思いに潜ませて、「もう、やめようか」…と、君が言う。「戻れなく、なる」。ああ、そうだね。ぼくらが手を繋ぎ続けるのはもう限界なんだろう。些細なことで傷つけあって、それでも過ごした時間の穏やかさの記憶が、その体温の心地よさ、繋ぐ指の強さが、かろうじてぼくらを繋ぎとめているだけなのだ。
 再び見上げた空は、視界の裾からじわじわと橙色に染まっていく。穏やかな速度で、けれど確実に薄闇を纏って夜が、来る。「  、」の一言が言い出せなくて、繋いだままの指先がじんじんとしびれている。

原罪 

2005年05月27日(金) 15時26分
この感情に
つけるべき名前が見つからない
それはずっと、ずっと
身体のずっと奥深くで
軋む足で歩いている

何事にも無心でいられたなら
きっと
苦しみはないのかも
喉の奥で
ひりひりと啼いている
言葉などなければ
眠れるのかも

せめて君と出会わなかったなら
殻の痛みなど
気付かずにいられたのに

ずっと
軋む足




----------------


古いです。
恥ずかしいタイトルが付いてます。
言いたいことの半分も伝わらないとは思いますが、
「軋む足で歩く何か」を、
私はたぶん、まだ自分の中に飼っているんだと思います。
それが「原罪」であるかどうかは別にして。

冷たき入れもの 

2005年05月26日(木) 14時07分
君はいつでもうわのそら
窓ガラスの水滴越しに
灰色の空を眺め続ける

ねえ、ほら、覚えてる?
二人で行った霧の湖
迷子になって
繋いだ手も見失ってしまったことを、
君はまだ覚えている?

君は無音で笑うと
覚えているよ、とつぶやいた

覚えている?
ぼくが
おぼれる君を黙ってただ、
見つめ続けていたことも

君は無音で笑うと
覚えているよ、とつぶやいた

なんて簡単なプログラム
君はもう、二度とぼくを否定することは無い

ただ、残酷にぼくに罪を見せ付ける
冷たき入れもの

赤い道 

2005年05月26日(木) 12時01分

灼熱のアスファルトの上を、蹴る。
爪の割れた素足で描く、赤い軌跡。
君を侵食する太陽が沈むころには、
ぼくは別の場所で産声をあげているだろう。
それでも君は、燃え盛るアスファルトの上で、
走り続けているんだ。
恍惚の表情で。
いつでも君の理由は簡潔で、
けれど、ぼくには理解できなかった。

君は彼方で、ぼくに手招きをする。


凍結した硝子の上を、這う。
爪の割れた素手で描く、赤い軌跡。
きみを侵食する月が昇るころには、
ぼくは別の場所で産声をあげているだろう。
それでもきみは、凍てついた硝子の上で、
もがき続けているんだ。
恍惚の表情で。
いつでもきみの理由は難解で、
だから、ぼくには理解できなかった。

きみは硝子の道を閉ざし、ぼくを拒む。


そしてぼくたちは出会いの奇跡を記憶に隠して、
別々の場所で、産声をあげる。
P R
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