【    】 

November 30 [Wed], 2005, 20:26
名を。


呼んだような気がする。
誰かの名だ。
呼ばれたような気がする。
よく記憶に染み込んだ声で。


戻る日が延びていく。
「思ったように準備が進まなくてね」
申し訳無さそうな彼女の声に、かまわないと笑いながらも、早く戻りたいのだと心の奥に針が刺さったような心地になった。
「いつごろまでに終りそうなんだ?」
問うと、しばらく考え
「春には」
と返ってきた。

「お前、春までここに居ンのかよ……」
部屋の隅で彼が嫌そうな顔をして呟いた。
「あら、いったい誰のせいかしらね?」
冷たく言い放つ彼女に、彼が眉をしかめた。
「う゛」
「あんたのせいで『場』が不安定になっているのよ。だからヒュレイオンを戻すにも時間がかかるの」
「でもそれは……」
「言い訳なら聞かないわよ」
冷たく淡々と言葉を並べる彼女に、何も言い返せずにいる彼は、怒られた子供のようだ。
彼は俺よりずいぶんと年上のはずなのに、そう思ってしまう。彼女からすれば、俺も彼も子供なのだろうけど。

最後には彼女の名を呼び、平謝りになっている彼に笑みが浮かんだ。
彼女の名を呼ぶときの彼は、いつも嬉しそうに見えた。

名を呼び、呼ばれることの幸福はあまりにも身近すぎて忘れがちだ。
今、誰かの名を呼ぶのだとしたら、俺は誰の名を呼ぶだろう。
誰かに名を呼ばれるならば………。


「       」


声にならない声で呟いて、苦笑した。

夢の記憶が頭の隅にくすぶっている。

 

November 27 [Sun], 2005, 19:58


長いような短いような夢を見ていた気がする。
空高く羽を広げ、思うままに飛ぶ夢を。


目覚めて部屋を出ると、彼女が紅茶を飲んでいた。
「おはよう」
「あら、ヒュレイオン。おはよう。今朝は遅いのね」
いつもどこか眠たそうな彼女は、どちらかというと夜型で、普段であれば一番に目を冷ますのは自分なのだ。
「夢を見てたんだ」
「そう。それは良かったわね」
柔らかに彼女が微笑む。
「良いこと?」
「ええ。『夢を見ていた』ってことは、目を覚ますことが出来たかから分かるものだもの」
「目を覚ます?」
「この場所で見る夢は、目覚めることを拒むことがあるのよ」
言う彼女の表情はどこか皮肉げだ。




 

November 21 [Mon], 2005, 16:18
また戦の炎が上がる。

……って、ちょっと待て。
国からの伝言ずっと変わってねぇぞ!?

気付かないうちに変わって、気付かないうちに前と同じのが張られたんだろうか。

彼女のスケッチより 

November 18 [Fri], 2005, 17:08
彼女のスケッチより抜粋。
俺と彼。
彼女にはこんな風に見えているらしい。



あ。そうそう。
彼と並んで気付いたけど、背が伸びたらしい。
彼がすっげぇ嫌そうな顔をしていた。

場所 

November 12 [Sat], 2005, 8:14
時々、思い出したように空を飛ぶ。
どこまでも続く草原、ゆるやかな丘の上の小屋。そこにある大木までが散歩コースだ。
この場所はとても不思議な場所で、これ以上遠くへ行ってしまえばどこへたどり着くか分からないからと止められている。
丘の下には森が広がり、大きな湖がある。森の奥が現在の居住地だ(彼女が隠居のために用意したもので、オレと彼は居候だ。

「あまり遠く高く行くと戻れないわよ」

彼女の言葉が耳によみがえる。
この場所はとても不思議な場所で、オレにはうまく把握出来ない。

あれ? 

November 12 [Sat], 2005, 0:05
自宅テントを覗く。
投書の整理を…って、あれ?
戦時中から国からの伝言変わってねえぞ。
戦後処理で政務が忙しいんだろうか…。
次の指示はいつ出るんだろ。
会議室まで足を運ぶ時間はないんだよなあ…。
さて、どうしたもんか。

勝利の声 

November 08 [Tue], 2005, 2:31
彼の力を借りて、一時的にテントへ戻る。
なにか壊れたような歓声が城から聞こえた。

「……………あ」

埃っぽい風が吹く。
歓声が聞こえる。

??ナイトメア勝利!!

どこからともなく聞こえた声に、慌てて勤務に向かった。

「……………」

あまり顔を出さないうちに、戦況はかなり進んでいたのだと知る。
壊れた城壁に、喜びも露にした人々が集っていた。

「んー…」
どうすればいいのだろう。
困ったように頬を掻く。我ながらマヌケな声が漏れた。
自分が国民として戦に参加したことがなかった俺は、この後どうすればいいのか分からないのだ。
(傭兵として参加した時はそのまんま宴会だったしなあ…)
「あ」
視線の先には宴会に突入した人と、壊れた城壁を直している人。
「そっか」
ぽん、と手を叩いて城壁の修理に混じるため、城壁に近付いた。

彼の力の持続時間は短い。手早く勤務を済ませよう。

 

November 08 [Tue], 2005, 1:17
ああ、なぜだろう。

無性に空が恋しい。
この場所は広く大きく、そして閉鎖的だ。

空が恋しい。

いや、空の向こうが…?

星を見上げて近く遠い地を想う。
正体の掴めない衝動がこみあげて、強く瞼を閉じた。

「なにがそんなに気になるんだろ………」

自分に問うても、その答えはない。

望み 

November 05 [Sat], 2005, 16:10
彼が不機嫌そうなのはいつものことだ。

「欲しいモノを欲しいと言えないなんて馬鹿げてる」

今日の彼は特に機嫌が悪いらしい。
吐き捨てるように言って、俺を睨みつけた。

「ヒュー、お前の欲しいモノは?」
苛立ちを隠さずに問いかける。
「さあ?」
俺は曖昧に微笑うことしかできないでいた。

「ちっ。だからお前は嫌いなんだよ」
彼はそう言って、強く壁を叩いた。

「あえて言うなら、『欲しいモノ』が欲しいんだ………俺は」

「もっと嫌いになった」

言い捨てて、答えた俺を残し、彼は荒々しい足音を立てて部屋を出ていった。

彼の欲しいモノは彼女ただ一人。
俺の欲しいモノはまだ、見付からない。

「ふう」

溜め息をついて、天井を見上げる。
彼の存在する理由は単純で、求めるものは明確だ。
俺にはそれがひどく羨ましい。
なにかを失ってまで手にいれたいという衝動は、まだ遠く。

いつか彼女は「失うのが怖くなったら、なにも要らないと思うようになったわ」と遠くを見つめて呟いた。

「愛しくて可愛い弟分と、やんちゃであぶなっかしい大きな子供が居るようなものだからね。今はそれで充分よ。これ以上は望まないわ」
「弟分…って、レイ?」
「ふふ。違うわよ。アレはそんな可愛いげはないわ。あんなのは預かった近所の大きな子供」
「…………報われないなあ」
楽し気に笑う彼女に、いつもまとわりついている彼を思い出して溜め息をついた。

予感 

November 05 [Sat], 2005, 15:10
「朱色に染まったわね」

自ら織った布を見つめて、彼女が呟いた。

「朱色?」

彼女の手元には、一部が朱色に染まった布地が広げられていた。
それは先ほどまで真白かったように思う。その中心からじわじわとインクがにじむように、朱色が広がっている。

「ヒュレイオン、なにか変わったことはない?」
「変わったこと?」
「そう。変わったこと」
「んー…こっちに来てから変わったことばっかだからなあ………」
言うと、手元を見たままの彼女がくすりと笑った。

「それもそうね」


彼女は言う。彼女の手で織られた呪布は、一定の条件下でその色を変えるのだと。
ある一種の占いのようなものらしい。

朱色は変化の兆し。
その色を変えるのは…



彼女は言う。
それは身近な者の変化の兆し。
朱は暁、朱は体内を巡る命の色。

彼女の掌ほどの朱色のにじみは、みるみるうちに広がり、布を見事な朱色に染め変えた。

「ああ、色が止まったわね」

白から朱色へ、朱色から漆黒に変われば凶兆の証。

彼女の手元にあるのは朱色。

朱色で止まったその意味は…?

「誰への兆しなのかも分からないのだけどね」
ちらりとこちらを見た彼女の表情は固い。




夢の残り香が身にまとわりついているようで、胸がざわめく。
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