親指の恋人  石田衣良 ★★★

2008年06月05日(木) 22時13分
二十歳の男女が渋谷の雑居ビル屋上で心中をした。
スミオとジュリア。
ふたりはケータイメールでの出会い系で知り合いひと月前から交際していた。
ひと月前。。。たったひと月。。。
現場にはケイタイサイトで入手した睡眠導入剤の容器が散乱。
ふたりの手首は赤いリボンで結ばれており同意の上の心中とみられる。

なぜふたりは命を絶ったのか。なぜふたりでだったのか。

スミオとジュリア。
まるでロミオとジュリエット。
スミオとジュリアは「格差社会という壁」に阻まれ人生を見失っていく。
頂点のスミオと底辺のジュリア。
でもそれぞれ頂点であり底辺なのは本人ではなく親だ。
二十歳という年齢は成人でありながら親の加護から抜け出せない中途半端な大人。
もがいてももがいても親の作った環境からは逃げ出せないふたり。。。

出会い系で知り合いたったひと月のつきあいでも
心も身体も深く結びあえることの出来る相手に出会えたふたりは幸運だった。
虚しさを抱えてただ生きているだけの日々がお互いの存在で一変したのだから。
でもふたりではどうすることも出来ない格差の波に揉まれ死を選ぶ。
それは理解しあえるからこその不幸だった。

短絡的なのかもしれない。
でも「格差の壁」はどんなにスミオが手をさし伸ばしても、
どんなにジュリアが這い上がろうとも、
到底乗り越えることの出来ない大きすぎる壁だったのだ。

最初から心中がわかっている物語なんてイヤだなと思いながら読み始めたのだが
ラストは不思議と優しい気持ちで本を閉じた。
まるで異国の寓話を読んだような。。。

ふたりは天国で幸せに暮らしましたとさ。おしまい。
  • URL:http://yaplog.jp/hurohonnya/archive/152
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kanakanaさんへ
そうなんですよね・・・。
肯定は出来ないけれど、頑張れなんて言えない。
まさにその通りでした。
心中をきれいに書きすぎていて、いいのかという思いもありました。
ポップに書いているけれど悲しいお話でした。。。
2008年06月10日(火) 0時07分
何と言ったら、いいんでしょうねー。
この二人のとった行動を肯定してはいけないと思うけど、「もっとがんばれば…」なんてことは軽々しく言えなくって。
こういう道しか選べなかった二人が、とにかく可哀想。。。

2008年06月09日(月) 23時02分
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