限りなくキョウダイに近いフウフ 小林光恵 ★★ 

2008年06月09日(月) 23時15分
結婚12年、スキンシップもあって、とても仲は良いけど性的関係のない涼と真樹。
夫婦を超えてお互いを肉親のように大切に思う二人は、法的に「キョウダイになろう」と思い立つ。
けれど周囲からは反対されるだけでなく、強く抗議されてしまう。
それでも「キョウダイ化」を進めようとする二人だが、真樹の心はだんだん複雑になっていく・・・・・。

とても興味をそそられるタイトルだったし、あらすじにも惹かれたので借りてみた。
夫婦も時間がたてば男と女というより肉親に近い感情になるものだと私も思うし。

でも内容はなんだかその「キョウダイ化」に翻弄される周囲に話のようなバタバタ感が強くて、
もっと真樹や涼の内面が読みたかったのにな。
ここに書かれた内面は予想通りというか、
もっと「それはそうだけどだからそのもっと奥の思いや葛藤やぐるぐるやズキズキ」が
欲しかったんだけど、あっさりして物足りなし。
ちょっと表現も子どもっぽくてそれもしっくり来なかったのかも。

タイトルが子どものいない私には超ドンぴしゃりで期待しすぎてしまったの巻き。

親指の恋人  石田衣良 ★★★ 

2008年06月05日(木) 22時13分
二十歳の男女が渋谷の雑居ビル屋上で心中をした。
スミオとジュリア。
ふたりはケータイメールでの出会い系で知り合いひと月前から交際していた。
ひと月前。。。たったひと月。。。
現場にはケイタイサイトで入手した睡眠導入剤の容器が散乱。
ふたりの手首は赤いリボンで結ばれており同意の上の心中とみられる。

なぜふたりは命を絶ったのか。なぜふたりでだったのか。

スミオとジュリア。
まるでロミオとジュリエット。
スミオとジュリアは「格差社会という壁」に阻まれ人生を見失っていく。
頂点のスミオと底辺のジュリア。
でもそれぞれ頂点であり底辺なのは本人ではなく親だ。
二十歳という年齢は成人でありながら親の加護から抜け出せない中途半端な大人。
もがいてももがいても親の作った環境からは逃げ出せないふたり。。。

出会い系で知り合いたったひと月のつきあいでも
心も身体も深く結びあえることの出来る相手に出会えたふたりは幸運だった。
虚しさを抱えてただ生きているだけの日々がお互いの存在で一変したのだから。
でもふたりではどうすることも出来ない格差の波に揉まれ死を選ぶ。
それは理解しあえるからこその不幸だった。

短絡的なのかもしれない。
でも「格差の壁」はどんなにスミオが手をさし伸ばしても、
どんなにジュリアが這い上がろうとも、
到底乗り越えることの出来ない大きすぎる壁だったのだ。

最初から心中がわかっている物語なんてイヤだなと思いながら読み始めたのだが
ラストは不思議と優しい気持ちで本を閉じた。
まるで異国の寓話を読んだような。。。

ふたりは天国で幸せに暮らしましたとさ。おしまい。

温室デイズ 瀬尾まいこ ★★★ 

2008年05月20日(火) 15時45分
教師が気づかないたくさんの兆し・・・紙飛行機とか天井にささる押しピンとか校則違反とか・・・
今手を打たなければ崩れるのは早い。
もうゴングは鳴っている。
みちるは中学三年生。
重い空気のまま中学生活を終えたくない。
祈るような気持ちで崩壊していく学校を見ていた。
ある日、みちるの正義感がとうとう痺れを切らし、
クラスに「そろそろちゃんとしたらいいんじゃないかなって気がするんです」と呼びかける。
いまならまだ間に合うとみちるは信じて・・・。
ところが、そこから地獄が始まる。
徹底的ないじめの開始だ。
しかし、みちるは負けない。みちるは屈しない。みちるは戦う。
みちるが卒業式を迎える日までの物語。

たしかに私が中学生の頃の学校は温室だった。
ちらほらと聞こえてくる校内暴力や登校拒否という言葉は、
どこかドラマめいていて自分たちの周辺では無縁なことだった。
みんなに平等な温室・・・それが私の時代だった。
現代では学校に行けなくなった子のために様々な環境が整えられているようで、
温室は自分で選び確保するもののようである。
みちるは温室があることを知りながら、あえてそれを選択しない。
逃げ出す術はいくらでもあったのに、辛い教室に立ち向かっていく。
諦めないから余計にいじめられるのに。

みちるの小学校からの友達である優子は温室を選ぶ。
そして斉藤君はパシリを買って出てキャラで身を守る。
伊佐君は暴力や権力で武装する。
みんな温室でお気楽にしていられない。

作者の瀬尾まいこさんはズバリ『中学生の戦う姿を書きました』と仰っている。
みちるのように強い子供がいるとは考えにくい。
子供は基本的にか弱くて脆い存在だ。
みちるが父親の涙に勇気づけられたように、優子とみちるが友達で居続けていたように、
斉藤君がみちるに言葉をかけ続けてくれたように、
戦う毎日を支える何かが子供たちにありますようにと祈るばかりだ。


私の落涙ポイント。
ラスト、みちるが卒業制作の花壇を守ったシーンの後の斉藤君。

《「みちる戦ってたからさ、きっとおなかすくだろうと思って買っておいたんだ」
斉藤君はそう言って、頼んでもないのに、焼きそばパンを用意してくれていた。》

斉藤君、GOOD JOB!!

ビター・ブラッド 雫井脩介 ★ 

2008年05月20日(火) 15時43分
警視庁の新米刑事・佐原夏輝。
初の現場でコンビを組むことになったベテラン刑事は、 少年時代に別離した実の父親だった――。
各界から大きな注目を集める著者による、渾身のミステリー。(アマゾンより抜粋)

渾身のミステリー?
これがあの雫井脩介?
ちょっと肩透かし・・・。
コメディと言うほど面白くないし、ミステリーというほど緊迫してないし、
警察小説と言うほど内部が描かれていないし。
最初のタッチから雫井脩介の本じゃないみたいだなぁと感じていたけど、
最後までその印象は変わらずでした。

雫井センセ、何か模索中ですかな??

八日目の蝉 角田光代 ★★★★★ 

2008年05月10日(土) 1時32分
不倫の果て・・・不倫相手の奥さんが産んだ赤ちゃんを連れ出し逃亡。
逃げて逃げて逃げながらその赤ちゃんを自分の子供として育てようとする私。
何処まで行けば私とこの子に平和な安らぎが訪れるのか。。。

愛情ってなんだろう。どうすることが愛を注ぐことになるのだろう。
現代は血の繋がりに甘えすぎて、親子の関係が崩壊しているんだろうな。
むしろそういうゆるぎない繋がりがない方が、愛情を頼るしかなくなって、
本来の親子のような関係を築けるのかもしれないとふと思う。

「その子は朝ごはんをまだ食べていないの」
逮捕されたその瞬間、刑事たちに叫んだ台詞に圧倒される。
産んだ母親と産めなかった母親。
欠落しているからこそ、母性が湧き出でるのかもしれない。

青年のための読書クラブ  桜庭一樹  ★★★★★ 

2008年05月10日(土) 1時08分
あぁ!!楽しい!!なんて楽しいお話しなの!!
そうよ、これよ!これこそが読書の楽しさよ。
ツッコミどころ満載で、バカバカしいけど真剣で、可笑しいけど切なくて、ありえないけどあって欲しい・・・きっと私がたどり着きたい場所・・・そんな読書クラブの物語!!

そこは東京・山の手の伝統あるお嬢様学校「聖マリアナ学園」。『読書倶楽部』は校内の異端者が集まるクラブ活動だ。部員が残す秘密の日誌には、学園史上からは抹消された珍事件の数々が記されている・・・・・。

ああん。まどろっこしい!とにかく読んで!
かつて女子校経験がある方、とくに読んで!
直木賞受賞作『私の男』はまだ未読の私だけど、この『青年のための読書クラブ』でノックアウトくらっちゃったね。
『私の男』はこれ越えられるかね。
そのくらい好き。大好き。面白かった!!
私は面白かった本ほど、感想を言葉に出来ずとっちらかった文になってしまうのだが・・・
ご清聴ありがとう。若い人たち。では、よき人生を。

          2008年度 読書ブログ誌  文責 <黒髪の手帖>

あなたの呼吸が止まるまで 島本理生 ★★ 

2008年05月10日(土) 1時06分
朔は小学6年生の女の子。父はしがない舞踏家。
踊りでは生活していけないので大道具の仕事で生計を立てている。
母はそんな暮らしや夫が嫌になり出て行ってしまった。
朔の夢は物語を書く人になること。今もお気に入りのノートにお父さんを待ちながら好きなお話しを書いている。多感で健気な少女の成長物語・・・と思いきや。

物語の中盤、朔は信用していた大人に傷つけられる。心も身体も。それは唐突に。
そういう展開になるとは思っていなかったのでとても驚いた。それまでの雰囲気がのん気であればあるほど、この大人の裏切り行為は衝撃が増す。そういった意味では朔の目線語りである「ですます調」も効果的なのだろう。
終盤、朔は父親からの愛情を糧に立ち向かって行くのだが、私は読後釈然としなかった。

果たしてこれは復讐なのだろうか。
例えば朔が島本理生だとしたら・・・。
ちらっとでもそんなことを思った私は、まんまとこの物語の罠にかかったということだろう。
仕掛けとしては悪くないが、物語としては好まない。私はね・・・。

家日和  奥田英朗 ★★★ 

2008年05月01日(木) 1時02分
主婦、夫婦、家庭をテーマにした短編集。

『サニーデイ』
妹に勧められて何気なく始めたインターネットオークション。
評価されることに慣れていない専業主婦がネットオークションの評価「非常に良い」にときめいた!!評価されるたびに若返りキレイになっていくことに気づいた主婦は・・・。

***なんとなくわかるかな。私もブログを始めた頃はコメントひとつで一喜一憂していたし、パソコン開けるのが楽しくて楽しくてやっぱりときめいていたもの♪
専業主婦は本当に誰にも評価されない職業だからね。でも褒められるのは報酬を貰うのと同じ快感なんだってよ脳内は。もっと主婦を褒めて欲しいな。


『ここが青山』
夫が失業し、妻が働くことになった。失業中だから家事はやらなければと主夫を始める裕輔。格闘しているうちに家事が楽しくなる。「人間到る処青山在り」。という話し。

***こんないい旦那いないよぉぉ!!感想はそれだけ!!


『家においでよ』
別居をすることになり久しぶりの一人暮らしが再開された。別居前は家電のデザイナーの妻の趣味で何ひとつ自分の趣味のものは置かせてもらえなかったので、これを機に自分の城作りに励む。「男の隠れ家」の様相を呈してきた部屋に同僚が入り浸り、学生時代に戻ったように楽しい日々を送っていたが・・・。

***巣作りは女のアイデンティティと言うけれど、男だって巣作りは好きだと思うな。
でもこの夫婦みたいにインテリアにそれぞれ凝るタイプだと大変だ。趣味もお互いを思いやらないといけないんだね〜と思ったりしました。


『グレープフルーツ・モンスター』
内職の地域担当者が、サーファーっぽい若い男に代わった。無神経で図々しいけれど、その男がつけていたグレープフルーツ系のフレグランスが鼻に残り、どうやらそのせいで淫靡な夢を見ることになるのだが・・・。

***ううむ。ま、そういう話もね、あるかもね。ある?ないよ!!


『夫とカーテン』
転職を繰りかえす夫。イラストレーターの妻は夫の転職のたびにイラストレーターとしての才能が伸びていく。夫の転職と自分の好調ぶりは何か因果関係があるのだろうか?

***幸せの価値観ってやつですね。なんだかんだ言ってこの夫婦は仲が良くて読んでて微笑ましかったな。でも夫の転職癖は困るけど(笑)


『妻と玄米御飯』
妻がロハスにはまった。小説家の私は妻をとりまくロハスなあれこれを皮肉った小説としてネタにしたくてたまらない。書いてはみるが・・・。

***私もちょっとロハスには内心ぷぷぷと思うところがあったので、この小説家には自信を持って書いて貰いたかった!でもそれより妻が大事。それでいいんだよね。うん。

吉原手引草 松井今朝子 ★★★ 

2008年04月24日(木) 23時09分
花魁葛城が起こした「あの一件」をめぐり、
吉原で生きる色々な立場の人間が葛城と吉原を語る「吉原解説書」的物語。

待ちに待ったり、軽く半年越えです。直木賞の力というのは本当にスゴイですよね。
いつだって忘れた頃に回って来る・・・。
そんなわけで読みたい熱が蒸発しきった状態だったので、なかなか進みませんでした。
でもちょっと前に蜷川実花監督の『さくらん』を見ていたおかげで、
イメージがしやすく、吉原用語もすんなり頭に入り、なんとか完読いたしました。

事件の内容も吉原の成り立ちも、わかりやすく面白いのになぜ読みづらかったのか。
それぞれの立場の人間が、一つの章で一人語りをするんですが、
その話し言葉というか一人勝手に喋る感じというか、そういうのが一々ノッキングを起こしてしまって・・・。
芥川龍之介の『藪の中』や有吉佐和子の『悪女について』のように、
語る人間によって事件や人物が違った事(人)のように見える手法が好きなので、
そういうことを期待してしまったかもしれないです。
この作品ではどの登場人物も皆、葛城に対して同じような評価をしており、
逆にそれが葛城の花魁としての素晴らしさだったりするのですが、
それが私には単調に感じてしまったようです。

とはいえ基本的に花魁物が大好きな私。
これだけの知識がつまったこの1冊は必読本でありんした。

強運の持ち主 瀬尾まいこ ★★★ 

2008年04月04日(金) 0時12分
連作短編集。
『ニベア』『ファミリーセンター』『おしまいの予言』『強運の持ち主』

わずらわしい人間関係が嫌で会社も辞め、
時給が良くひとりで出来る仕事の占い師を選んだ吉田幸子。
要領の良さであっと言う間に研修を終え、
ルイーズ吉田となりショッピングセンターの2階で独り立ち。
そこに訪れる様々なお客さんとのやりとりと交流。
わずらわしいと思っていた人間関係を通して変化していくルイーズの成長物語。

ほっこり。
瀬尾作品ではいつもソフトな印象なのに、
なぜか心をかき乱され号泣してしまうのですが、
今回はソフトな印象でソフトなままソフトなほっこり優しい気持ちで読了しました。
これ、もっと続いて欲しいなぁ。
ルイーズ意外のキャラも楽しいし、同棲中の彼との行く末も気になるし。

見える、見えるわ!
多分こういう作品はそのうち漫画化とかドラマ化とかするわよ〜。
原作・瀬尾まいこでこのキャラだけ頂いて話どんどん作っちゃって、
フジ火曜9時とか日テレ水曜10時とかテレ朝金曜9時とかでやるわよ〜。
25,6の旬な女優と(誰?誰なの?それは見えないの?)
イケメンだけどほのぼのしたやっぱり旬な俳優で(だから誰!!)
ちょっとコミカルでハートウォーミングなドラマになるわよ〜。
キャロラインゆきみのプチ予言。当たるも八卦当たらぬも八卦。。。
プロフィール
  • ニックネーム:ゆきみ
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『本のプロ』所属。
本を読んだ後の熱を放射しあえる仲間を求めて・・・。
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