2・一番好きなものが 一番嫌いなものに早変わり 

2007年10月20日(土) 18時41分
「ごちそうさまでした、繋ママ。」

お箸をパチンとお茶碗の上に揃えて置く。
そしてすぐそこの流し台の中へ入れる。

これがあたしの住むアパート<ぶるーどくろ>のルールだ。


なんでこんな名前なのかって?
―――青楽一家の大好きなブランド、<青骸>から取ったんだってさ。

なんで平仮名なのかって?
―――親近感を沸かせて、お客さんを増やすためだそうな。

青楽一家が経営するここは、家賃も学校までの距離も文句無しの好物件だと思う。
ちょっと古いけどね。

「あらぁー!お祖末様!けどこまっちゃん、もういらないのかい?」

繋ママはあたしのことを<こまっちゃん>と呼ぶ。
初めて名前を伝えた時からそう呼ばれている、
かなり長い歴史を誇る<こまっちゃん>。
そのひょうきんで明るい性格から成せる技・・・かな。

「ん?小真知もう終わったの?」

一足早く朝ごはんを食べ終えていた、目ざまし時計がテレビから視線をうつして言った。
その表情からすると、今日は・・・

「一位だったんでしょ?」

「あったりぃ。本当に小真知は探偵向きだよなぁ!」

中2にもなって未だにテレビの星座占いを見続けている。
一位だった日には、少し頬があがってえくぼができてるからすぐにわかる。

「んじゃ、行くか。おふくろー!いってくんぞー!」

「いってきます、繋ママー。」

靴をはき、カバンを持ち、ドアを開けながら<ぶるーどくろ>の料理人に挨拶。
道路に出て、どっちからともなく今日の時間割について話し出す。


この年にもなって、幼馴染で登校なんて不思議だねってよく言われる。

けど、あたし達にはこれが日常なんだから仕方がない。


「・・・でさ、今日の俺はきっと最高についてるわけ!

めざめろテレビも、ずーむあうとも、朝ダネも、

ぜーんぶ俺一位だったんだぜ!すごくね!?」

きゃっきゃと子供みたいにはしゃぐ姿を独占して眺められるこの時間は、
朝で一番好きな時間だ。




だけど・・・・・・




「でさ・・・・・ん?あれ・・・なんだ?」

不意に止まった嬉しそうな声は、好奇心に満ちた声に早変わりしていた。

視線の先は、学校のすぐ前、校門の脇の1つの人影。


誰か・・・いちょうの木の下に立ってる・・・。


近づくにつれて、はっきりとしていく人影の正体。



秋風と共に舞い上がるいちょうの葉。


その中に立つのは、一人の女性。




繋の頬に、いちょうの黄色とは対照的な赤色が宿るのが見えた。


あたしの胸に、青い気持ちが宿るのがわかった。






今日からこの時間、嫌いになっちゃった。












1・お気に入りの目ざまし時計 

2007年10月20日(土) 18時00分




「起きろォ!ほら、起きろって!また寝癖とる時間無くなってツッチーに笑われるぞ!」

玄関から聞こえるガンガンとドアを容赦なく叩く音と、
それを行っている人物のけたたましい声。

これが、あたしの目ざまし時計。

なかなか性能のいいこの時計は、いつもきっかり7時に鳴り始める。
音量もかなりのもので、玄関から一番離れたあたしの部屋まで届くんだ。
何気にこの目ざまし時計で、両隣のお隣さんも起きてたりする。

けど、ひとつ欠点がある。

「おい小真知!俺まで遅刻するから!早く起きろ!起きてください!」

この時計が<心配症>だってこと。
<おせっかいやき>とも言うね。

あたしが起きた姿を確認するまで、この目ざまし時計は鳴り続ける。
かなり、うるさい。

「おい小真・・・「はいはい、今起きたよ、起きたからストップして、お願いだから。」」

ふらふらした足取りで玄関まで歩いていき、寝ボケ眼のままドアを開ける。
昨日は結構冷えたらしく、廊下の冷たさは足の裏をこわばらせた。

「はぁ〜、やっと起きたか・・・。お前なぁ、これ結構のどにくるんだから、さっさと起きてくれよ・・・。」

安堵の溜息を漏らし、続いて自分ののどを軽く押さえたあたしの幼馴染。


青楽 繋


<繋>なんて名前のおかげか、学校でもコイツはなかなかの人気者だと思う。
まぁ彼の母譲りであろう、そのひょうきんで明るい性格も持ってのことかもしれないけど。

「んじゃ、俺はとりあえず役目を果たしたからな。さっさと準備して下降りてこいよ。」


そう言って、あたしのお気に入りの目ざまし時計は、軽やかに階段を駆け下りていった。


・・・いつもどおり、下から四番目の階段で足を踏み外し、途中から転がり落ちていったけど。






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月光が落とす「星」(自作小説)を飾ってます。


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・・・素はこんなキャラじゃないので安心してください(笑
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