寒行☆BLACK・MAJIC!! 

January 06 [Thu], 2011, 15:31
恋人同士を運命の結ぶ赤い糸があるのなら、俺達はきっと黒い糸で結ばれている。



それは丑三つ時に来たメールから始まった。
「本日朝5時に白浜高校校庭に集合!!来ないと祟る」
行っても行かなくても面倒なことにありそうだ。
メールを受け取った二人は携帯を閉じた。

「よく来たな!妖しくも深遠な黒魔術に魅かれた迷える子羊たちよ!!」

メールを出した張本人、狐塚(コヅカ)は手に腰を当て大声で叫んだ。何故だが体全体を覆い隠す
黒いベールを着ている。寒さで吐く息がとても白い。

「おいバカ部長。こんな早朝に呼び出して一体なんなんよ」
狐塚への軽蔑なのか寒さなのか顔をゆがませ震える青年・稲火(イナビ)
「・・・俺、彼女をベットに置いてきてるんだけど」
と、ふわりと欠伸をする潮木(ウシオギ)
いつも整っている茶髪の長髪が寝癖で乱れている。
文句を言いながらも来る。幼き時から親しくしている悪友の縁がなせる技である。
「俺達、白浜高校・オカルト研究部も寒稽古をしようかと思って!!」
オカルト研究部に寒稽古とは。また相容れそうにないものを荒々しくつなげたものだ。
脳味噌がひよこぐらいしかない(と噂の)狐塚が考えそうなことである。
にひひと犬歯をみせいたずらっ子のように笑う狐塚
「今日は貴様らに魔術の神秘に触れてもらう!!」
「俺は女体の神秘について知りたいけど」
「それもええけど、あったかいものが飲みたいわ。しることか」
「あーもう!!ちゃんと聞けよ!!オカルト研究部部員として恥ずかしくないのか!!
今日は召喚の儀式を行うぞ!!」
「召喚?」
「一体何を召喚するんよ?」
「さあて野球部がグラウンド使う前にしねえとな」
巻き込んだ我々の質問は華麗に無視し、狐塚は木の枝で魔方陣らしきものを描き始めた。
科学が発展した文明社会・日本。それを生まれた時から享受した平成生まれの若者が召喚術。
「はよしてよ狐塚〜」
「俺ココア飲みたい」
「手伝えっての!!」
魔方陣を描いた狐塚は、木の枝と新聞紙を置きチャッカマンで火を灯した。暗かった校庭が少し明るくなる。
そして大きい鍋を置いた。アウトドアでよく使われるダッチオーブンである。
火は冷たい風をもろともせず、勢いよく燃え上がる。
「よし、準備完了だな」
「本格的やなあ」
「うん?狐ちゃんこれなあに?」
潮木は狐塚のそばに置かれている本を手に取った。
とても古めかしい本である。表紙はもうボロボロでタイトルすら読めない。
ページも茶色に変色して虫に食われた痕もある。問題は外見だけでなく中身もあった。
「読めないんだけど」
見たこともない記号が羅列してある。
「ルーン文字だよ。俺のねえちゃんな大学でヨーロッパの宗教について研究してんだ。
それな魔術の本なんだよ!!」
見てみろと若干興奮気味に狐塚は挿絵を見せる。頭が動物の形した人間に火を吹いている鶏。
進化論も吹っ飛んだ奇っ怪生物のオンパレード。
「昨日の休みにだいたい要約したんだ。本日はこれで願いをかなえる妖精を召喚します!

本日呼ばれた理由がやっとわかった。狐塚はパラパラとページをめくり、さらに挿絵を見せた。
羽の生えた小さい女の子である。ピーターパンのティンカーベルのようだ。
「化け物なら怖いけど、妖精ならなんとかなりそうだろ?悪さしそうなら羽もげばいいし」
「えげつな!!お前が怖いわ」
「女の子大好きな潮木の為に女神にしようかと思ったんだけど」
と、狐塚は本のページをまたパラリとめくり二人に見せる。
挿絵には大きな目にウェーブされた髪、そして豊満な胸と細い露わにした妙齢の女性が描かれていた。アクセサリーを身につけ、服はミニスカート一枚。健全な青年男子なら思わず目をひいてしまう絵なのだが。二人は目は別のところに行っていた。女性の額には目があり、腕は6本。それぞれの手には槍に剣と武器を持っている。牙が出た赤い唇からは舌はだらりと出し、彼女の足元には人が何人も倒れている。
「ミステリアスで何考えているかわからない大人の女性が好きだって言ってただろ?」
「ミステリアスだけど、これは違うだろ!」
「浮気したらミンチにされそうやな。紹介はせんとってな」
「若干話それたけど、この子をオカルト部のマスコットにして部員を増やす計画だ」
確かにオカルト部は慢性的な部員不足。
でもそれだったら妖精さんに「部員増やして☆」と頼めば・・・
と、稲火と潮木は感じたが言葉を飲み込んだ。どうせ狐塚の暴論で丸めこまれるのだ。
「さて、この妖精の召喚は朝方じゃないと効かないらしい。今から妖精を呼ぶ媒体を作る!!材料は俺が用意したからよ、盛大に手伝え!!まずは熱した鍋に」
狐塚は本に目を落とし
「エリュマントスの大イノシシの肉を入れる」
「エリュ・・・?なんやそれ」
「エリュマントスの大イノシシ!ギリシャ神話読んだことねエの?」
と狐塚に睨まれる。
「英雄ヘラクレスに倒された化け物猪」
少なからず現代日本にそんなものはない。
「アマゾンで問い合わせたんだけど、ねえんだよなぁ。
金さえあれば何でも手に入るとか嘘っぱちだな」
とため息をつく狐塚。アマゾンの方もさぞや困ったであろう。
「なので、白浜区民御用達の中川マートで買った豚肉を入れる。さぁ、入れろ。稲火!!」
はいはい、と稲火は鍋に豚肉を入れる。あたりに肉の焼ける香ばしいにおいが広がる。
「次はマンゴラドラなんだけど、形も似てて比較的安価なゴボウを入れる。
さらに毒キノコも無いからしめじで対応する。潮木、ゴボウをささがきしてくれ」
へいへい、と潮木は狐塚から包丁を受け取りゴボウをささがきする。

だいたいあっていれば大丈夫!現代風にリノベーション!!

と、狐塚監修の元「妖精を呼び出す儀式」が始まった。



「だいたい煮えてきたなぁ」
いれこまれた材料は聖水(のかわりに水道水)で煮込まれていた。
「ふふ、完成だ」
「でもさぁ、これって」
いいにくそうに潮木は言葉を紡ぐ。




「豚汁じゃねえ?」





エリュマントスにいる大イノシシの代わりに豚肉
マンゴラドラの代わりにゴボウ。
毒キノコの代わりにシメジ。
火を噴くドラゴンの牙の代わりににんじん。
ユニコーンの角の代わりに大根。
彗星のかけらの代わりにこんにゃく。
それを聖水ならぬ水道水でコトコト煮込む。
代わり代わりにと作られた結果
「豚汁やな」
「だろ。化け物大蟹のカニみそはだし入り味噌だし」
「違う!これは妖精を呼び出す媒体!!そんな目でみるな、この凡人!!
神秘が薄れる!!」
キャイキャイと制作者は暴れる。
「豚汁じゃないってこと証拠みせてやんよ!
いまからこの媒体に呪文を吹き込む。ほら、鍋の周りを取り囲んで手を繋げ」
え〜といいながらも潮木と稲火は手をつなぐ。男同士で手をつなぐなど気恥ずかしい
「その呪文は」
狐塚は一息おいて


「ぬこぬこにゃんにゃん。ときめきメロメロ。メロンソーダ」


「・・・なぁ、それ本当に効くん?」
「恥ずかしい」
「疑いと羞恥心は進歩への妨げだぞ貴様ら!!朝日が昇るまでこれを繰り返し詠唱するんだ。
朝日がこの媒体に入り込んだら妖精が現れる」
「まだ夜明けまでって・・・時間ありすぎるやん!
それまでそんな恥ずかしい呪文叫び続けるの俺ら!!」
「やだ!そんな羞恥プレイはいやだ!!俺帰る!!彼女の元へ帰る!!
慰めてもらうんだい!!」
うるさいし、ちょっと面白そうだったし今までこいつのいうことの聞いてたけど。
もう我慢の限界が来たらしい。手を振りほどいて逃げ出そうとするも
「逃がさねエ・・・」と手をがっちりしっかり繋がれている。
「はい、せえの!!」
狐塚のリードで呪文を唱えようとした時。

「何をしてるんだ、貴様らあああああ!!!!!」

校庭に鳴り響く怒号。
妖精でも出てきたのかと思ったが声の主は

般若顔で仁王立ちした野球部監督であった。







案の定、校庭での煮炊きはこっぴどく怒られた。
しかし作った妖精豚汁を監督・部員にふるまうことで怒りはだいぶ納めてくれた。
(狐塚はふくれていたけれども)とても美味しかったらしく、部員には好評。
女子マネージャーからレシピを教えてほしいと請われた程。
「隠し味はなんなのよ」と凄まれたが

それは
悪友の友情とほんのりの黒魔術である。

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ある社会人のかつぼう〜ASK〜のメンバー・HORI!!

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