mirror 

January 12 [Thu], 2006, 14:05
街を一望出来るビルに上る。

吹き付ける冷たい風を気にも留めないで、いつもの場所へ。

眼下に広がるネオンを見下ろす。

胸ポケットから取り出すのは、残り少なくなった外国製の煙草。

1本取り出し、使い捨てライターで火を点ける。

深く、深く吸い込んで、空に向かって吐き出した。

見上げた空は、星一つ見えない淀んだ都会の空。

キミが教えてくれたあの星座も見えない。



紫煙が嫌いだったキミ。

咥えるたびに非難めいた視線で睨みつけてきたキミを。

「いやなら出て行けばいい」と冷たく突き放した。

行く先などどこにもなかったキミは、部屋の隅で小さく丸まりながら

潤んだ瞳で俺を見つめるんだ。



女を連れ込んだ日の翌日は手に負えない。

好物の食事を作っても、仕事帰りお気に入りのケーキを買ってきても

一度損ねた機嫌はなかなか直らない。

一緒に風呂に入って、身体中丁寧に洗って、髪を乾かしてあげて。

背中を向けて寝転ぶキミを、腕の中に抱き締めて

やっとキミは可愛い声を聞かせてくれる。



ねぇ、相変わらず部屋は散らかったままで。

昨日買った雑誌もどこへいったのか分からない。

相変わらずくたびれたスーツと手入れもしていない革靴で仕事をしているよ。

キミが大事に育ててきたあの花は、なんていったかな。

キミを思い出す数だけ、水を与えているけど

何故か蕾のままで、花は咲かせそうにない。



ねぇ、キミはどうしているの?

この街の空気は呼吸をするたびに身体中に毒が回りそうで。

キミには似合わない。

出て行きな。綺麗な心を持ったままで。

二度と会う事がないように。

さぁ、合図は僕が出そう。

3,2,1、



短くなった煙草を、暗い空に向かって投げ捨てた。

楽しい夏休み 2 

December 06 [Tue], 2005, 13:56
「なんだよ、あいつ。女子にはデレデレしちゃってさ」

さっそくラスティもイザークたちの許へとやって来た。

「どうだった?」

「聞くなよ、バカ」

ディアッカとラスティは余り成績なんか気にしない。
いつも赤点ギリギリだが、進級できれば問題ないと思っているようだった。

「おーい、アスラン。さっそく計画立てるぞ」

ラスティが手を上げてアスランを呼んだ。

「計画?」

アスランは帰り支度を整えてからイザークたちの席に来た。

「ロック・フェスティバルの。ホテル取らずにチャリで現地まで行って
野宿しようって話したじゃん」

「あれ、本気だったのか?」

ラスティの言葉にアスランは驚いてみんなの顔を見回した。

「とーぜん。そんで朝から並んでさ、一番乗りしようぜ」

ディアッカもノリノリで机の上に地図を広げている。

「ふんっ、軟弱者はついてこなくてもいいんだぞ?
優雅に電車に揺られて後から来いよ」

イザークはわざとアスランを挑発するようにべぇっと舌を出す。

アスランはむっとした顔をして反撃をする。

「行かないなんて言ってないだろ。それよりイザークの方が心配だよ。
エザリアママには内緒で行くんだろ」

「出た、マザコンイザーク」

「黙れラスティ!俺はマザコンなんかじゃない!」

「はいはい、イザーク落ち着いて」

立ち上がったイザークをどうどう、と鎮めてディアッカは地図を叩く。





楽しい夏休み 1 

December 06 [Tue], 2005, 13:41
「おーい、お前ら席に着け!今から通知表配るぞー」

教壇の上からこのクラスの担任のフラガ先生が
口に手を当てて怒鳴っている。



「出席番号順に取りに来いよー。アスラン・ザラー」

「はーい」

アスランが真ん中辺りの席から教壇に向かう。

「う〜ん、お前は受験科目はばっちりなんだがなぁ。
どうして毎回音楽が2なのかねぇ?」

フラガ先生はアスランの通知表を見ながら首を傾げる。

それに苦笑いをして通知表を受け取り、席に戻る。

席に着き、こそっと通知表を開けて見たら、音楽のミゲル先生から
『もっと頑張りましょう』と汚い字で書かれていた。

「はい次。イザーク・ジュール」

「はい」

イザークは一番後ろの席から教壇に向かった。

途中アスランの横を通るとき後ろからアスランの通知表を覗き込み、
すれ違い様

「またか。お前は成長って言葉を知らないな?」

と言いはははっと笑いながら通り過ぎて行った。

「イザーク、人のことは笑えないぞ?お前も美術に成長が見られんな」

「げっ、あの仮面野郎・・・」

小さく舌打ちして通知表を受け取り、席に戻った。




掴んだ未来 4 

November 22 [Tue], 2005, 19:13
「だからって、なに2人してサボってるんだ?」

「「アスラン!」」

イザークと2人、暖かな陽気に身を委ねていたら、突然頭上から叱責が降ってきた。

「何やってんだよ、2人とも。ディアッカ、昼飯を買いに出て行ったんじゃなかったのか?イザーク、キミは確か帰ってこないディアッカを探しに行くと出て行ったと思ったが?」

アスランが呆れた顔をして、芝生で寛いでいた2人を見下ろした。

いかにも忘れてました、と顔に書いてある2人を交互に見て、ハァと盛大に溜め息を吐く。



「イザーク、こういうのをなんて言うか知ってる?」

「あ、や、アスラン、これにはちょっと色々と訳が・・・」

身を起こし、青筋を立てているアスランに向かって引き攣った笑みを返す。

「言い訳は結構。『ミイラ取りがミイラになる』っていうんだよ。大体月末までに会議の資料をまとめといてってあれだけ口を酸っぱくして言っておいたのに、今頃になって出来てないなんて泣きついてきたのはどこの誰だった、ディアッカ?それでこうして休日返上して会社に来ているんだったよな、上司のイザーク君?でも資料が見当たらないって急遽呼び出された俺は会社に1人取り残されて、一体俺はどこに怒りをぶつければいいんだ」

腰に手を当てて一気に捲し立てるアスランに、さすがのイザークも反論の余地すらないらしくしょぼんと頭を垂らして説教に耳を傾けていた。

さすがにそんなイザークに悪いと思ったのか、ディアッカはまぁまぁと言いながらアスランの腕を無理矢理引っ張って芝生に座らせた。

「ディアッカ!元はと言えばお前がなぁ!・・・あぁ、もう怒ってる俺が馬鹿馬鹿しくなってきた」

ごめんごめん、と謝るディアッカに、アスランは説教を諦めて思わず空を仰いだ。




掴んだ未来 3 

November 22 [Tue], 2005, 19:12
イザークはそんなディアッカの頭に右手を置き、きょとんと見上げるディアッカに1つにやりと笑いかけーそしてその髪の毛をがしがしと掻き回した。

「うわ、ちょ、ちょっとイザークぅ!?何すんの、いた、痛い、痛いって!」

「黙れ、馬鹿者。貴様というヤツは、本当にどうしようもない大馬鹿者だ」

慌ててイザークの手を払い除け様とするも、イザークはさらに両手を使ってディアッカの髪をぐちゃぐちゃに掻き回した。

「もー、ホントごめんってば!俺が馬鹿でした!ごめんなさい!」

涙目になりながら、乱れた自分の髪の毛の隙間から見えるイザークに許しを請う。

「ザマーミロ」と屈託なく笑うイザークの笑顔が太陽に反射して眩しかった。



「あー・・・もう、アンタってばホント時々訳分かんない事するよね」

切れ切れになる呼吸を整えながら、腹を抱えて芝生に転がるイザークを見る。

するとイザークは何を思ったのか、もぞもぞと寝転がったままディアッカに向かって擦り寄ってきた。

「何よ、まだ何かする気?」

ディアッカは下ろしていた腰を思わず引こうとしたが、がしっとイザークの手に足首を掴まれてそれ以上下がる事は出来なくなった。

イザークはディアッカの足の間に頭を入れ、仰向けに寝転がった。



「・・・もう10年も前の事を、ああだこうだ思いあぐねたってどうしようもない。あの時、お前は自分の思う正しい道を進んだ。俺も、アスランも、皆それぞれが自分の信念を信じて戦った。そして、今がある。この平穏な世の中で、何を思い悩む?後悔してる訳じゃあるまい。・・・お前はいつも、そうやって自分1人で抱え込む。隠しながら、それでいつも笑うんだ」

心の中を読まれたようで、ドキリとした。

ぐっと言いよどんだディアッカに、イザークは「お前の考えなど、いつだってお見通しだ」と不適に微笑んだ。

「・・・・・・申し訳、ありません」

降参とばかりに両手を軽く上げ、素直に全面降伏をした。

真っ直ぐに注がれるアイスブルーの瞳が、優しくディアッカを包み込む。



掴んだ未来 2 

November 22 [Tue], 2005, 19:11
「・・・帰ってこないと思ったら、こんなところで何をしている」

ふっと視界が暗くなったと思ったら、後ろからイザークがディアッカの顔を覗き込んでいた。

ディアッカは慌てて俯いていた頭を上げ、眉を顰めているイザークの顔を見てへらっと笑った。

「やめろ、気持ち悪い。それより何をしていると聞いたんだ。ジャンケンに負けて昼食を買いに行ったはずじゃなかったか?」

イザークの視線は腰を下ろしたディアッカの横に置いてあるコンビニの袋を指していた。

袋の中には、イザークとアスランから頼まれたパンや弁当が入ったままだった。



「ごめん、俺もう済ませちゃった」

「それは見れば分かる。俺が聞いているのはそんな事じゃない」

「・・・ほんと、ごめん。つい」

イザークは伏せたディアッカの視線を追いかけた。

「−昔を思い出してたか」

少年達を目に留め、静かに投げかけた。

「・・・ほんと、ごめん」

ディアッカはそう言い、また視線をイザークへと戻した。

イザークは彼らを見下ろしたまま、溜め息を一つ吐いた。



「俺達もさ、あの時戦争なんてなかったら・・・もしかして、ああして無邪気に遊んだり出来たのかな。野球とか、サッカーとか、泥だらけになりながらさ、ふざけ合って・・・毎日笑っていられたのかな」

少年達を見下ろし、ぽつりとディアッカが呟いた。

引き締められたその口元に、イザークはキリリと胸が痛む。

「・・・たら、ればを言い出せばキリがない。あんな事・・・俺達にどうにか出来た問題じゃないだろう」

「うん・・・ほんと、ごめん」

隣に立つイザークを見上げ、ディアッカはまたへらっと笑った。


掴んだ未来 1 

November 22 [Tue], 2005, 19:09
見上げれば、雲一つない真っ青な空だった。

河川敷のグラウンドでは少年野球の試合が行われており、時折聞こえる歓声に思わず頬が緩んだ。

ディアッカは足を止め、そのまま試合を見守るべく堤防の芝生に腰を下ろした。

先程コンビニで買った缶コーヒーとサンドウィッチを取り出す。

たまには青空の下で食事もいいものだ。

彼女の手作り弁当じゃない事だけが寂しいが。



そのまま暫く走り回る少年達を見ていた。

必死にボールを追いかけ、楽しそうに笑う。

ベンチに帰ってきた少年達を励ます監督、我が子の活躍を嬉しそうに見守る母親達。

あの頃の自分には、決して手に入らなかったそれら全てのものが、そこにある。

幸せな事じゃないか。

今彼らが笑っていられる現実は、自分達がこの手で戦い護り抜いてきたその結果だ。

望んでいたのは、争いのない世界。

皆が笑って暮らせる平和。

取り戻せないのは、あの頃の自分達の青春。

悔やんでなどいない。

あの頃はそうするしかなかった。

見て見ぬフリなど、決して出来なかった。

だから今がある。


さよなら、君の涙を見る事は二度とないだろう。 

September 28 [Wed], 2005, 11:24
もう、無理はしなくていいよって、告げた。
俺の、最後で、精一杯の、君を送り出す言葉。

だって辛いじゃない。
好きでもないヤツに抱かれるのって。

傷付いた君の心に付け込んで、ごめん。
捨てられた子猫の様な瞳をしていた君に、下心が沸いた。

「俺じゃ、ダメ?」、って。
計算ずくの声と顔。

ー君が断れないのは、分かってた。

独りが嫌いな君。
いつもアイツの後に付いてたね。
誰かに凭れていないと、立っていられなかった?

捨てないで、って。
全身で叫んでる様で、俺は見ないフリをした。
煩わしいのは、ごめんなんだ。

じゃあなんで声を掛けたの、って。
自分でも分からない。
いつもの俺なら関わらなかったはずなのに。

軽い下心のはずだったんだ。
なのに、抜け出せなくなったのは、俺の方。

こんなにも君のことを想っているのに、君が俺を見てくれないのなら。
もう、やめにしよう。
今度は、君が俺を振るんだよ。
 

「なんで・・・どうして、だって俺・・・・・・」
「君が本当に好きなのは、俺じゃないだろう?」
男は泣かないんだ。
俺の、数少ないポリシー。

「・・・そんな!何を言っている!?俺は、俺が好きなのはお前だけだ!」
「・・・・・・もう、いいから。自分に嘘を吐くのは、もうやめなよ」
でもそれって、結構辛いのな。
今、やっと分かったよ。


「嘘じゃない!・・・・・・嘘じゃない!!・・・・・・ディー!!」


じゃあ、さ。
泣いて縋り付いてくるその指に光るリングを、どう説明するの?

細く、その指にひどく似合いなプラチナのリングは、誰との誓いの証?

もうやめようよ。
俺たちに明るい未来なんて、見えっこないよ。


ねぇ。
君が、そうやって俺に縋り付いて涙を流すのなら、
俺も、今だけ泣いてもいいかな。

君が、この先もう二度と哀しい想いをしないように。
君の隣には、彼がいて。

笑顔が、絶えることがないように。


嫌いだよ。

君の涙なんか、嫌いだ。

だから、早く行ってしまえ。

そして、笑って。

俺の好きな、君の笑顔を、彼の為に。


あとがき。 

September 22 [Thu], 2005, 14:57
反省点。

ディアイザではなく。
デイアッカ視点の、アスイザでした。
・・・ちーん。


半年後。

ディアイザの元に帰ってきたアスラン。
を追いかけてきたキラ様。
のはずがディアッカに一目惚れ。

「こんなに黒い人、初めて見ました!よかったら僕と付き合って下さい。よろしくお願いします!」45℃に腰を曲げ右手を差し出すキラ様。
「よかったな、キラ。お幸せに」ハンカチで目頭を押さえ慈愛に満ちた笑みを浮かべるアスラン。
「・・・・・・」アスランを追いかけてきたキラ様にディアッカを奪われどっちに転んでもおもしろくないイザーク。
「ちょ、ちょっと待ってキミ誰!?あ、イザーク待って!俺を置いていかないで(泣)!!」キラ様にがっちり腰を抱え込まれ動けないディアッカ。

なんやっちゅーねん。

キミの為に出来る事 H 

September 22 [Thu], 2005, 14:12
俺たちはお互いに、何を見てきたのだろう。
幸せになりたい、と。
幸せになれ、と。
そしてただ一人の事を大事に想い、大切にしていきたかった。
ただ、それだけだった。


「・・・ミゲルたちが心配する・・・」
「・・・・・・あぁ」
俺たちは、静かにその手を離した。

不思議と食堂に着くまで誰にも会わなかった。
後ろを歩くアスランが悲しい瞳をしていなければいい、と思った。


食堂に差し掛かったとき、中からイザークの声がした。
俺とアスランのいざこざを聞いて抜け出してきたらしい。
奥の席でミゲルとラスティに挟まれ不安そうな顔をしていた。

イザークが顔を上げ、入ってきた俺とアスランに気が付き目が合った。
俺はなんとか笑って軽く手を振った。
イザークが、少しほっとしたのが分かった。


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