夏の終わりに 

January 11 [Wed], 2006, 0:40
初めて彼を家にあげた。
本当の所、家を知らせるのは躊躇われたが、こんな今さらホテルの予約も
できない時間に来られては、うちへ呼ぶしかなかった。
こんな台風の中をわざわざ車を飛ばしてきてくれた彼を、
無下に帰すことはさすがにできなかった。

うちへくると、とてもいいシャンパンをお土産に出してくれた。
うちにはワインクーラーなんてしゃれたものがなく、
大なべにロックアイスをざらざら入れて冷やした。
冷蔵庫には運良くチーズとクラッカーが買ってあった。
引き出物でもらったティファニーのワイングラスが、押入れの奥に仕舞ってあった。
そうして、ありあわせのものながらもなんとか乾杯の形をとることができると、
彼は「誕生日おめでとう。」と言ってくれた。
彼が持ってきてくれたシャンパンは、さわやかな甘みで飲みやすく、よく冷えて本当においしかった。あれよりおいしいシャンパンにはしばらく出会えそうにない。

その後このお祝いのために彼が犯したささやかな危険や、
実際に悪天候だったのでもしかしたら本当に危なかったかも知れないことや、
ここまでくる間の心境や状況を自慢げに語ってくれた。
私は、何もそこまでしなくても・・という気持ちが無かったわけではないが、
そこまでしてでも、という彼の気持ちが分からないではなかったし、
彼はすでにここへ来てしまった。
あたしは多少ぶっきらぼうにしたかもしれない。本当に照れてしまったから。
私にとっては、来てくれた彼の気持ちそのものが何にも代えがたいプレゼントだった。

大事に思われている。

その事実は、私の心を暖めた。
わざわざ来てくれた彼に深く感謝した。
私は素直に彼に甘えて眠った。

夏の終わりに 

January 11 [Wed], 2006, 0:01
9月は私の誕生日だ。
誕生日というと、軒並みお祝いをしたり、誰かと過ごしたりするもの、と
決まっているようだけど、私からすると誕生日は『稼ぎ時』でしかない。
誕生日を一緒に祝ってほしい、といえば客はいくらでも釣れた。
お金を稼ぐこと以外に興味などなかった。

折りしもその日は強い台風が来て、外へはとても出れそうにもなかった。
友達との約束も流れて、一人家でケーキも無くすごしたが、まったく苦ではなかった。
いつもよりも客の入りがよかったことに、私はとても満足していた。

ようやく誕生日が過ぎ、日付がかわって最後のお客さまが帰ったとき、
そういえば彼がチャットにこなかった、と気づいた。
メッセもあがってこなかったので、挨拶すらできなかった。
誕生日だからって特になんと言うことも無いけど、
彼からおめでとうを言ってもらえなかったことは、ちょっと残念だな、と思った。
そうして寝る準備をしているところに電話が鳴った。彼だった。

『もしもし〜?いま君んちの近くなんだけどこれから会おうよ』

たちのわるい冗談だと思った。
こんな台風の中、出かけられるわけが無い。
ましてや電車もすべて終わっている時間だ。
車を持っていないはずの彼がこれるわけがないんだ。

『は?何いってんの?』
『いや〜、広島まできてたもんで、福岡営業所に車返しに行くついでに。』
本当に彼はいた。
うちの近くに。

私は急いで部屋を片付け、化粧を簡単に直して、
雨の中を猛ダッシュで迎えにいった。雨は上がっていた。
うちはナビがあっても分かりにくい場所だったから、
近くに車を停めて待つように電話をした。車はすぐに見つかった。
いかにも社用車然とした車にのって、スーツで、
彼はちょっと疲れた顔をして車に乗っていた。

誕生日には花を贈ろうと思っていたらしい彼は、
こんな台風でどこも普段の時間でも閉まっているのに、
12時を過ぎてなお花屋を探そうとしていた。
余所見して運転するので縁石に乗り上げそうになり、
私は悲鳴を上げたが彼は気づいてないのか気にした様子も無い。
結局どこへ行くでもなく、そのままうちへ道案内するしかなかった。

夏・突然の 

January 10 [Tue], 2006, 17:49
その頃私は恋愛には非常に疲れ果てていた。

夢ばかり見ていたせいもあるが、恋に夢見ることをやめられない恋愛体質の私。
しかし夢とはちがって、元彼も、前彼も、私をささえてくれはしなかった。
それで私は、「もう誰にも頼るまい。自分で、一人で生きていくほうがいい。」と
ひねくれて思うようになった。実際、ろくでもない男につかまるくらいなら、
一人のほうがずいぶんと気も楽で経済的にもやっていけるだろう。

そんなわけで、私は誰にも深入りしようとせず、それでも懐いてくれる彼に
好意を持ちはするものの、その先をどうなりたいとか言うことは一切考えなかった。
ただ、時間の会う時に話したりすることが楽しいだけだった。

そんな時、彼が時間の自由になるうちに、会いたいと言い出した。
私としては得に断る理由もない。連休にまったく仕事をせずにすごすのはどうかと思ったが、まぁたまにはそういうときがあってもいいだろう。
基本的に出かけるのは大好きだ。

火山が見たいと彼が言うので、阿蘇に行くことにして、とりあえず2泊3日の予定を組んだ。正直そんなに長くいたら食傷するんではなかろうかと思ったが、案外に楽しい時間を過ごせた。ただ疲れもあり、私自身がそんなに望んで会いたかったわけでないせいもあり、若干心のどこかで「相手をしてやってる」という傲慢な気持ちがあったことは否めない。

最終日、帰りにもっと一緒に居たそうな彼を、私はなんとかして早く帰そうとした。
本当に疲れていたのだ。家に帰ってきて、一人になると
無理やりホテルに置いてきた彼のことが気になった。
「うちに泊めてあげればよかったかな・・」と少し胸が痛んだ。

だんだんと、わざわざ会いに来てくれた彼の気持ちや優しさが染みてきたが、
私はそのやさしさを拒んだ。夢を見て傷つくのはもうこりごりだったから。
もしかしたらもう会えないかもしれない人との楽しい思い出として、仕舞うことにした。

夏・ロンドンで 

January 10 [Tue], 2006, 17:24
2004年夏。

その日私はたまたま実家に帰っていてニュースを見ていた。
不吉な事件ばかりとはいえ、他人事でありほとんどのニュースを聞き流した。
そんな時、「ロンドンで同時多発テロが発生」というニュース。
私は急にロンドンの彼を思い出し、かろうじて残っていたメールアドレスを頼りに
安否を気遣うメールを出した。

まさかとは思ったが、これだけ大規模なテロだったら、もしかしたら巻き込まれているかもしれない。考えたくないが、連絡がなかったらどうしよう・・・と不安でそわそわした。
程なく、彼から「無事だ」とメールが来たときは本当に安心した。
ほっとした。


それから、なんとなくまたメールのやり取りをするようになった。
春に彼を切る原因になった男性とは、大喧嘩の末に別れてしまった。
虫のいい話だとは自分でも思ったが、
それから彼とのメールは私の楽しみの一つになった。
なんだか知り合ったばかりの頃に戻れたようで嬉しかった。
彼は相変わらずでかい態度で私をからかうし、私もそうやってからかわれることを楽しんだ。また、強がって彼にひどいことを言ったりしても、大して気にも留めないそぶりの彼と話すことは楽しかった。

私はずっと前の彼氏のことを忘れられないでいた。
結婚を約束していた人だったが、頼りなさが気になっていったんは別れたが、居心地のよさや私をわかってくれている、という安心感から、なかなか関係を絶ちがたかった。いつかしっかりしてくれたら、という甘い期待もあった。彼がなんとかしっかりしてくれるようにと私が支えになろうと頑張っていたが、変わらない現状にうんざりしつつもあった。

そんな時に、ついに彼がロンドンから帰ってくるという。
そのことは、時間が合うようになり、もっとたくさん彼と話せるように
なることでもあったが、同時に私にとっては関係の終わりが近いんだと思わせた。
なぜなら彼が私を好きなのは、日本人女性と余り会う機会がなく、限られた人選のなかでは、たまたま好みだったというだけだ。日本へ帰ってきて、いろいろな女性と知り合う機会が増えれば、自然な流れで私を忘れ、地元でもっと会ったりデートしたりするのに都合のよい女性をみつけるだろう。そして私は切られる。私が彼を切ったように。ずっとそう思っていた。

複雑な気持ちだった。

はじまりの終わり 

January 10 [Tue], 2006, 16:56
距離を感じはするものの、彼のかわいらしさや、横柄なふりをするところや
薀蓄たれで小難しいところを私は好きになっていった。
いつだってまっすぐに好意を示してくれることが心地よかった。

会ってからしばらくして彼はロンドンに帰った。
時差のせいでゆっくり話ができるのは週末くらいだったが、それでも時間の限りを尽くしてメッセでいろんな話をした。話題は尽きなかった。

私は彼の前ではあえて強がった。蓮っ葉なふりもしたし、事実過去には男性関係においてだらしがなかったことも告白した。それでも彼の好意は揺るがなかったようだ。
私の中では、彼はかわいい人だったが、人生を預ける相手ではなかった。そのために、彼とは一線をおき、あくまで遊びとして付き合っていた。実際に、ロンドンと日本での遠距離恋愛になることや、年齢、会える時間を考えても、彼と付き合うということは余りに非現実的すぎた。

そうして、私は淋しさを埋めてくれる男性を好きになった。
新しい恋が始まったばかりの時の純粋な残酷さでもって、
私は彼との関係をばっさり切った。

彼との楽しかった時間を思って少し泣いた。
一言の文句も言わずに、言葉を飲み込んで去っていった彼のことを忘れられなかった。それでも、私は自己中心的な恋愛基準によって、彼を過去のことにした。

そうして、何ヶ月もメール一通もやりとりをかわさない日が続いた。
彼と会うことはもうないとおもったし、連絡も来ないだろう。
たのしかった日を、ときどき思い出しては懐かしんだ。
それで十分だった。

はじまりの話 

January 10 [Tue], 2006, 16:43
朝になると、「仕事だから帰らなければ」と思ったが、同時に「まだ帰りたくない」と
強烈に思った。思いは果たせなかったものの、彼と寄り添って眠ることは非常にここちよかった。私は仕事をサボることを決めた。先輩に電話をして、やることを代わって貰い、夕方の便で帰る手配をした。こういうところだけは私も根回しよくできるらしい。

時間が出来たとあって、昨日廻りきれなかった名古屋城に行ってみたりした。
寒かったが、彼と並んで歩くのは楽しかった。帰りの時間が近づくと、手をつなぎ足りない気持ちになって、車の中で手を組んだ。名古屋城を出るとき、彼がキスをしてくれた。

なぜあんなにも切なかったのかわからないが、あの瞬間だけは「彼と一緒に居たい」と純粋に思った。隣にいてくれたらどんなにかいいだろう。帰る時間は間際にせまっていた。

帰り際、新幹線のホームまで見送ってくれた。
最後まで優しい人で、色気のある人だなぁとおもっていた。
年下らしい幼さもあったが、なぜか彼には敵う気がしない。

もしかしたらこれきりかもしれないとは思ったが、そうなったらそうなったとき。
会ったことは後悔しないし、実際すばらしい時間だった。

これ以降、ますます彼とはいろんな話をするようになったが、
私は淋しさや不安から、彼以外の人を頼るようになっていった。
彼の好意を感じはするものの、深入りは出来ない相手だと、線引きをした。
年下で学生。ましてやロンドン。現実的に考えて、付き合える相手ではなかった。
私が男性にそのとき求めていたのは『支え』で、『ときめき』ではなかったから。
彼のことは好きだったが、これ以上は仲良くなれないとお互いに思っていた。

はじまりの話 

January 10 [Tue], 2006, 16:33
夜はホテルから程近い居酒屋に行った。これはその後彼からも言われたことだが、
私はすごく「張り切った」格好をしていた。ミニスカで大きく肩のあいたセーター。
今考えると本当にはずかしいが、私はどうしても今日彼とキスをするつもりでいた。

緊張してご飯はあまり味がわからない。ごまかす為にお酒をかなり飲んだ。
酔いがまわると、少し気持ちもリラックスしてきて、楽に話せるようになったが、
彼の声はいまいち聞き取れないことが多い。
会話が止まるたびに「どうしよう、何話そう」と焦った。

食事も済んで、コンビニで買い物をしてホテルへ帰る。
彼が「どうする?部屋でもう少し飲む?」と言った時、これは誘いだと思った。
襲いたいくらいの気持ちなのに、誘いに乗らないはずはない。
お酒はもう飲めそうもなかったけど、「うん、飲む。」と答えた。

ビールと酎ハイを買い込んで部屋へ。まだそこまでの仲でない、と
お互い自覚しているので、部屋は別々に取った。
荷物を置いて、彼の部屋へ行く。
二人でタバコをすいながらTVを見て、あれこれたわいもないことを話していたが、
頭の中はどうやって彼の隣に座ろう、どうやってキスしよう、とそればかり考えた。

はじまりの話 

January 10 [Tue], 2006, 16:22
彼はまたすぐにロンドンに帰らねばならない。
そうゆっくりしている時間もなかった。
私は少ない貯金を一切合財おろして、無理やり交通費を作り出し、名古屋までの
新幹線の切符を買った。それも、会いに行く翌日はまた仕事で、朝一番で帰らなければならないという無理なスケジュールだったが、会うとしたらそこしかなかった。
私は無理やりスケジュールを組み、彼もまたロンドン行きを少し延期して、
1月9日の昼に、名古屋で会った。

駅まで迎えに来てくれるというので、それに甘えることにした。
彼はすこし送れてついた。私は待ち合わせの場所がよくわからず、
彼をこまらせたようだった。
迎えに来た彼は、カメラで見た以上に、想像していた以上に、
おしゃれでハンサムだった。私は正直、手に負えない相手だと感じて腰が引けた。

彼の本名を聞いた。お互い自己紹介をして、彼の勧める料理屋にご飯をたべに行った。
彼のハンサムぶりがもう気になって気になって、私はご飯どころではない。
その後名古屋城だとか、東山公園だとかに連れて行ってもらったが、夜のことを考えたらまったく気もそぞろで、彼の唇ばかり見ていた。

はじまりの話 

January 10 [Tue], 2006, 16:13
私が彼とすることはほとんどがたわいのない会話だった。
そのうち、普通のメールアドレスも交換して、メッセで話すようになると
その会話の内容や頻度や共有する時間はあっというまに倍以上になった。
態度がでかいことも口がわるいこともなぜか気にならなかった。
いつもにやにやして余裕をもって構えている彼には王者の風格を感じた。
彼と仲良くすることは私にとって癒しになっていたと思う。

ある日、彼がチャットにやってきた。
私は彼と話せることを喜んだ。そしてこの何日かで急速に膨らんでしまった
「会いたい」という気持ちを彼に伝えた。

彼は急にむずかしい顔になって、いかにこの会話がバーチャルなものであり、
現実味のないことで、うわべの付き合いであるかを延々としゃべった。
私はそれはつまり『ノー』の返事だと思って落胆した。会いたいなんていわなければよかったと思った。胸がいたんで今すぐチャットを終わってしまいたかった。

だけど彼は最後にこういった。
「まぁでも会ってみてかわることもあるし、これも出会いといえば出会いだ。」と。

さんざどきどきさせられた挙句のOKだった。

はじまりの話 

January 10 [Tue], 2006, 1:51
こう書くと、まるで私が彼だけをみていたような感じにも取れるが、ずるい私は
彼だけでなくほかにも仲のよい男性もいた。
リアルで昔から付き合いのあるひと、チャットで彼以上に面白くお金もある人。
現実感のない擬似恋愛を、私はたのしんでいた。
だから正直、彼に会いたいというのも純粋に彼を一筋に好きだったからではない。
軽い気持ちで、あってみたら面白そうだとおもっただけに過ぎなかった。
最初はそういう簡単な気持ちだった。

ただひとつ、気がかりだったのは知り合った場所が場所だったこと。
会えばおそらくエッチはするし、そうなるともうチャットには来てくれないかもしれない。
いいお客様でもあったから、失うのは痛手だった。
また、この考えが私一人のもので、彼は単にあくまでバーチャルでの恋愛を
楽しんでいるのであり、私だけが会いたいとおもっているかもしれないことも
不安でもあった。

初めてチャットで彼の顔を見たとき、本当に驚いた。
まだ幼さの残る顔立ちではあったが、ハンサムな男の子だった。
こんなに普通の子なのに、なんで?という気持ちもなくはなかったが、
そういう一見普通の子に、好意を抱かれているという事実が誇らしかった。
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