著者・大島真寿美さん 

April 10 [Mon], 2006, 14:20
「水の繭」

「私たちはもう家族じゃない。
だから、なに?」
ひどくわたしを揺さぶった、表紙の言葉です。

母と兄がいなくなり、父もとうこをおいていなくなってしまった。
動くことができなくなるほどの喪失を抱えたとうこのもとに、ある日転がり込んでくる従妹の瑠璃。
誰もがさまざまな空洞を抱えて、それでもまた歩き出す、そんな夏の物語です。

「失う」ということは決して珍しいことでも貴重なことでもありません。
解説者である角田光代さんもおっしゃっていますが、大事なものもそうでないものも、わたしたちは生きながら失ってゆきます。
大したことはない、と自分に言い聞かせながら。
この本は、淡々と飄々としていながら、確かにそこにある喪失、空洞を思わせる小説でした。
そしてそれを隠そうとはしていないのです。
慰めの言葉も、嘘もない。
そのことがより鮮明に、そこにある穴を思わせました。
そして、失ったものを取り戻すこともないのです。
失ってしまったものは二度と戻らない。
その穴を抱えて、なおも歩き出すその一歩。
踏み出して、また失いながらも生きてゆくこと。
そのことを深く思いました。

著者・島本理生さん。 

March 06 [Mon], 2006, 15:01
「ナラタージュ」

ずっと読みたくて、なかなか読めなかった本です。
「壊れるまでに張りつめた気持ち。ごまかすことも、そらすこともできない−二十歳の恋。」
それはあまりに激しく、わたしを揺さぶりました。

「ナラタージュ」とは、映画などで、主人公が回想の形で、過去の出来事を語ることをいうのだそうです。
話の主軸は、主人公である大学生の泉と、彼女の母校の高校教師である葉山先生との恋愛です。
かつて感じたことのある痛みが、ここにはありました。
繊細に描かれている、人の強さと弱さ。
流れ込んでくる情景。
そのすべてが、わたしを捉えて放しませんでした。
読み終えるまで、ずっと。

物語の最後に、「途方もない幸福感にも似た熱い衝動」が泉を揺さぶりました。
わたしはこの感覚を、とてもよく知っている。
そう思い、本を閉じました。

著者・市川拓司さん 

February 06 [Mon], 2006, 22:59
恋愛寫眞 もうひとつの物語

映画「恋愛寫眞」のオマージュとして書き下ろされた物語です。
恋をすることの、もっとも美しくてもっとも切ない、そんなお話。

カメラマン志望の大学生、誠人は、とても個性的で謎めいた女の子、静流と出会います。
いつしか打ち解け、互いの胸にそれぞれの想いを抱え、たくさんの時間を共有するようになるふたり。
けれど、静流は姿を消してしまいました。
時は経ち、1通の手紙が誠人のもとに届きます。
それが、「終わりのための始まり」でした。

恋をすると死んでしまう−。
それがわかっていたとして、それでも恋をするでしょうか。
切なくて、苦しくて、それでもたったひとりの人に出会えた、その事実が何よりも倖せに感じる。
真っ直ぐな想いは不器用かもしれないけれど、苦しいかもしれないけれど。

何度この本を読んでも、同じところで泣いてしまいます。
「It was the only kiss, the love I have ever known...」
生涯ただ一度のkiss、ただ一度の恋−。

著者・松久淳さん+田中渉さん 

December 13 [Tue], 2005, 14:30
ウォーターマン

「響きあう生」を、海を舞台に描いた物語です。
大好きなおふたりの著書の、8冊目。

八島千波は27歳。
ずっと抱え込んできた傷と向き合うことになった夏、母は逝った。
そして、出会うはずのない人々と、浜辺で出会います。
嫌いだった海で−。

サーフィンをメインに、海の美しさや厳しさを描き、「生」を見つめた物語に思えました。
ずっと読みたかった、読む前から心惹かれた本です。
サーフィンのことを知らなくても、心があたたかくなる作品です。

「ウォーターマン」は水のような存在だ、とあります。
形を持たないがゆえに、どんな形をも受け入れ、自らも形を変えてゆく。
決まった方向などない、静かに漂うときもあれば、猛々しく振る舞いもする。
幾億もの生命を生み出し、育て、あらゆるものに力を与える。
だが決して、それを誇示したりしない。
海とともに生き、海を愛し、海にもっとも近い存在である、と。

「待つ、そして逆らわず」−想いの深さが響きました。
静かで美しい、水のようにやわらかい物語でした。

著者・北川悦吏子さん 

November 19 [Sat], 2005, 14:48
「恋」

初めて読んだ、北川さんの詩集です。

恋をして、持て余す感情。
倖せだと感じたり、苦しくなったり、切なさを抱いたり、傷ついたり、泣くしかできなかったり。
そういったものが、とても丁寧に、短い文章の中に込められています。
きっと誰もが持ったことのある思いが、この本の中には溢れています。

わたしの好きな詩を、ひとつ書かせていただきます。

「会いたくて 淋しい
 あなたに 会いたくて淋しい
 会えなくて淋しいではなく。」

著者・石田ゆり子さん 

October 25 [Tue], 2005, 11:00
旅と小鳥と金木犀

ウェブで連載されていたものが書籍化されたもの。
日記エッセイ第2弾です。

日々の小さな輝きを見逃すことなく過ごそうと思う、その姿勢。
流れるように紡がれる言葉が、ひとつひとつ心に響きます。
「書く」という行為は、本当に、自分と正面から向き合うことなのだな、と感じます。
空を見上げて、深呼吸をしたくなりました。
それはきっと、ゆり子さんの凛とした雰囲気に刺激されるから。
真っ直ぐなその姿勢に、物事を見つめる目に、いろいろなことを真剣に考える思考に、真摯な姿に。

先のことにとらわれすぎることなく、「今」を大切に生きることを感じました。
やはりゆり子さんは、大好きな女性で、尊敬している方でした。

著者・綾瀬秀海さん 

September 03 [Sat], 2005, 15:42
キミがいた頃

「なぜ、人は忘れてしまうのだろう?」

5年前に恋人を亡くしたイズミは、時間が経てば経つほど、恋人のことを忘れたくないのに忘れてしまう。
イズミは恋人がいた頃には感じなかった心の矛盾の答えを探している−そんな話の本です。

話の中で、わたしが感じていたことが書かれていることに驚きました。
それは、『恐いのは大切な人を失うことではなくて、それを忘れてしまうこと』。
いつの間にかそれを忘れて笑っている自分がいる。
そのことに気付いた時、自分をとても罪深い人間のように感じたことを今でも憶えています。

この本は、わたしがこれから先も持ち続けるであろう問いをテーマにした本でした。

「なぜ、人は忘れてしまうのだろう?」

著者・市川拓司さん 

August 12 [Fri], 2005, 16:29
そのときは彼によろしく

小さなアクアショップを営む遠山智史のもとに、ひとりの美しい女性が現れます。
そして彼女が現れたことを引き金としたように、智史の人生が少しずつ動き始めます。
「この世界には、物理学の教科書にも載っていない強い力がひとつある。」
それを実感させられる、小さな人生の大きな幸福の物語です。

「ぼくらはばらばらではなく、みんな繋がっている。誰もが誰かと誰かの触媒であり、世の中は様々な化学反応に満ちている。それがきっと生きているってことなんだと思う。」
少年時代からの切れない友情、親から子への愛、そして人が人を愛すること。
それらがとてもきれいに描かれています。
出会いに別れが寄り添っていたとしても、きっと出会うことをやめたりはできません。
人が人を思う力は鉄より強い。
そのことにどこかで気付いているからです。
小さな人生の中に舞い降りた、大きな幸福のかたちを見せてもらいました。

「温もりは言葉に乗せて運ばれた。」
やはりこれ以上に印象的な文章はありませんでした。
32ページという、読み始めて間もないにも関わらず、ずっとわたしの心に残り続けました。

著者・恩田陸さん 

August 10 [Wed], 2005, 14:57
六番目の小夜子

とある地方の高校に、美しくも謎めいた転校生がやってきます。彼女の名は津村沙世子。
その高校には十数年間に渡って受け継がれる奇妙なゲームがありました。
三年に一度、「サヨコ」と呼ばれる生徒が見えざる手によって選ばれるのです。
そして津村沙世子が転校してきた今年は「六番目の小夜子」が誕生する年でした。
日常といえる高校生活、友情や恋愛、そこにしか存在し得ない感情。そして訪れる恐怖。
恩田陸さんのデビュー作品です。

転校生の津村沙世子、沙世子のクラスメイト、「サヨコ」の存在。
そのすべてが絡み合い、事件は起こります。
「学校」という閉ざされた空間の中で、さまざまな出来事が起こり、その中で友情や恋愛という類のものが生まれ、同時に恐怖も連れてくるのです。

きっかけは小さなことなのかもしれません。
けれどその小さなことが起こった時、すべては動き出すのでしょう−恐かったけれど、好奇心が勝って読んでみてよかったと、面白かったと言える作品でした。

著者・ジャック・マイヨールさん 

August 04 [Thu], 2005, 15:04
イルカと、海へ還る日

これほどにイルカに愛され、イルカを愛した人間がいただろうか−。

映画「クラン・ブルー」のモデルとしても有名なフリーダイビングの覇者、ジャック・マイヨール氏の著書です。
わたしは、映画を観たわけではありません。
ダイビングの経験者でもありません。
ただ「海へ還る」という言葉に惹かれて、この本を読みました。
イルカへの想い、フリーダイビング、潜水への情熱などが書かれています。
日本に住んだ幼少の頃、水族館でイルカと交流した若き日のこと、人類の限界を打ち破ったダイバーとしての日々。

マイヨール氏が海の青に包まれて感じたのは、「優しさ」。
初めてイルカに触れたときのことを思い出します。
P R
わたしについて
▼蒔咲 香
▼22歳 A型
▼本と映画と音楽が好きな人
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