この手を汚すこと、あなたを守ること。(1) 

2005年06月04日(土) 23時50分
みんながしあわせになれる方法を探していた。
でも、そんなもの見つからなかった。
なら、

あなただけしあわせでいてくれれば良い。



引き金を引くのに抵抗を感じなくなったのはいつからだったっけ?なんて思いながら、握った銃に手早く新たな弾丸を詰める。
シリンダー式は古風な感じが好きで使っているが、正直不便さを感じる時も多々。
「やっぱマガジン式のヤツも手に入れて、両方持ち歩こうかなぁ」
ちいさくひとりごち、しっくりと弾が収まったのを確認。
「お待たせ。しんどいの長引かせちゃってごめんね? すぐ、キメてあげる」
足元でうずくまる息も絶え絶えな感じの人影に銃口を向ける。
途中で弾切れ起こすなんて、何て不親切。
出来れば、『彼』みたく一発でキメたいんだけど。
「オレまだ下手くそでごめんねー」
続けざまに数発打ち込んで、やっと終わりにできる。
「あー、お腹空いた」
使い終わった銃をジーンズの後ろポケットに突っ込み、その場を立ち去る。
一度も振り返らないまま。
「早く帰ろ。捺朗さんのごはんが食べたーい!」
その足取りは、つい今しがたの行動が嘘ででもあるかのように軽く見えるだろう。
でもオレは、ポケットの銃から布地越しに伝わる熱さを、確かに感じていた。

魔女 

2005年04月08日(金) 21時16分
たましいの千切れる音
耳に響きすぎて痛いくらい


神様を退ける呪文に
赤い舌ひらめかせて命を与える


先に道に迷ったのはどっち?
からめたゆびをふりほどいたのは?
きみからしていた花の匂いは いつのまに消えてしまったの?


お菓子の家の誘惑に負けたあの日
きみには僕よりもたいせつなものが在った
きらきらひかるベッコウ飴の窓 チョコレィトの扉
それらの甘ったるいものなんかに 僕は負けたんだ


悔しくて悔しくて涙も出ない
ココナツミルクのジェラートよりも 僕にはきみの方がいとおしいのに


その甜さでこの咽喉を灼いて
きみの痛さをもう二度と忘れられなくして

陽のあたらないちいさな部屋(2) 

2005年03月22日(火) 2時17分
ゆめを、みた。

やさしい笑顔。
色素のうすい茶色い髪。
オレの頭をぐしゃぐしゃになでるおおきな手。

あまりにも普段通り過ぎて、ゆめなのかほんとなのかわかんなくなった。


がちゃ、ん。
いくら気をつけて閉めてもおおきな音を立てる扉のおかげで眼が覚めた。
いつのまにか寝てたらしい。
まだ眠い眼を、こすって。
「……!?」
遅いとか待ってたのにとか寂しかったとか。
くちに出すことばは決めてたハズなのに、出てこなかった。

うわー、見つかったかぁってニガワライの捺朗さん。
こめかみ辺りにぐるぐる乱雑に巻かれた真白い包帯。
分厚く巻いたその上に、なおにじむ血の色。
軽く引きずりながら部屋の中に踏み込んで来る左足。
眠気なんか一瞬でフッ飛んだ。
「捺朗さん!?」
声が裏返ってるのが、我ながら滑稽。
あぁ、やっぱオレこのヒトむちゃくちゃ好きだ。
頼まれたらいっしょに死んであげる。
くらいに。
死んでからもいっしょとか、素敵過ぎる。

なんて甘ったるい現実逃避は置いといて。
「どしたんスかそのケガは!!?」
意識的に怒ったかお。
じゃなきゃ、泣きそうだから。
困ったみたいな笑顔に、いつも通りだまされてなんかやらない。

陽のあたらないちいさな部屋(1) 

2005年03月15日(火) 23時35分
捺朗さんが帰って来なかった。
帰らない彼を待って待って、
彼のにおいのする枕を抱き締めてうとうとしているうちに明るくなった。
「こんなの初めてだ」
ぼそりとこぼしてみたものの、ことばは、独りの部屋に響いて虚しいだけ。
「はやく帰るって、言ったじゃん」
枕を抱いたまま、無意味にごろごろと部屋の端まで。
壁に後頭部と背中をひどくぶつけて、扉が開いたらスグわかる位置に戻る。
「……イタイ」
テーブルの上にはすっかり冷めて乾燥し始めたオムライス。
ふたりで食べたくて、珍しくオレがつくった。
捺朗さんは料理上手だから、普段はオレは料理しないんだけど。

願いごとを、ひとつだけ。 

2005年03月02日(水) 2時33分
あなたの吐く嘘になら、騙されたってよかった。



「おかえりなさい! 捺朗さん!!」
そう言ってぎゅう、と抱きついて甘えたときの彼、捺郎さんの、
細い目をなくなりそうなくらいに細めた笑顔がうれしくて、
オレはいつも実際の年より幼い振る舞いを心がけるようにしてる。
抱きついた勢いの、まま。砂埃でよごれたシャツに鼻を押しあてる。
いつも通りの埃と・・・石鹸の匂いでごまかそうとした跡のある、
血と火薬と硝煙のにおい。
(カミサマ、今日もこのヒトを無事にオレのとこに帰してくれてありがとう)
心の中でだけつぶやいて、ぐりぐりと頭をすりつける。
もっとも、そんなモン信じてねぇけど。


一度だけ、何の仕事をしているのか尋ねた事がある。
オレがまだ捺朗さんの気持ちを汲めない、莫迦なガキだったころに。
捺郎さんはしばらく困ったような顔で思案してから、
肉屋みたいなものかな、とだけ言った。
其れ以上は、いくらそのときのオレでも聞けなかった。
彼は、イガイガした痛いものを飲みこんだあとみたいな、
とてもしんどそうな顔をしていたから。


「毎日毎日、そんなに寂しいのか? わかったからちょっと離れて」
着替えもできない、とニガワライで、でもうれしそうに言う捺朗さんから、渋々手を離す。
其れは、毎日捺朗さんが帰る度にくり返される、オレたちなりのささやかな儀式。
捺郎さんが此処に帰ってきてくれるっていう奇跡に、感謝を捧げるための。

毎日でも寂しいよ。
あなたの留守に全然慣れないよ。
・・・あなたもその方がうれしいでしょ?

嘘、を、融かす。 

2005年02月27日(日) 2時16分
あなたの嘘は全部浴槽に沈めて融かしてしまおう。
そしたらきっと、きれいなものだけが残る。
そう、思っていた。




あした会える?

「んー、ゴメン。バイトやから無理」

・・・嘘吐き。

「ほんまは女のコと遊びに行くから無理」

・・・・・・ほんとのこと言えば良いってもんじゃない。

「おまえを傷つけない為の嘘なんやで?」

嘘なんか要らないから会いに来てよ。

「良いコで待っとり? また来るから」

いつ来る? 何しに来る? どれだけ待てば良い?

「そうーゆー嫉妬に狂ったオンナみたいな物言いしなや。俺嫌い」

偶然だね。僕もそういうの大嫌い。

「じゃあな」

遠ざかりゆく背中。
大好きで大嫌いなあなたにさよならを。



唯の思い込みだった。
嘘を融かした其処には、何一つ残らなかった。
嘘だけで出来ていたあなた。
僕はあなたの優秀な遊び相手になれましたか?

浴室。 

2005年02月20日(日) 18時51分
賢しらな物言いをする子供は嫌い。
ゼリィのたまったバスタブに頭突っ込んでやりたくなる。

「ごめんね? お姉さんばかだからあなたの言うことなんてわからないの」

バブルバスじゃ物足りない。
何か、感触がきれい過ぎて。


浴槽には子供を沈めるよりも、ほんとうは自分が沈みたい。
だけど、うちの浴槽は狭くて。
平均身長に足りないあたしですら足も伸ばせないくらい狭くて。

ほんもののねがいはむねのなか。
かなうひをねがうようなおそれるような。

アマイクスリ。 

2005年02月15日(火) 2時38分
手を伸ばしても届かないのを知っていたから、
欲しくないフリをした。


溺れるほどの快楽と、

咽喉が痛むくらいの甜い毒。

からだに悪いのはわかっているのに求めてしまうもの。
それは何処か孤独と愛情にも似ていて。


時間を止めるのはもう少し待って。
いつまでもいつまでも唯待っていて。
やり残したことなんて永遠になくならない。
いつだって未練を残したまま、停まる自分の心臓を呪うんだ。

その指先が願うもの。 

2005年02月14日(月) 23時43分
それはうつくしくもロマンティックでもなくて、
でも同時に酷くいとしい感情だった。


愛情恋情欲情過剰。
間違ったものなんて何もないよ。
否、寧ろ、総て間違っているのかもしれない。


そ れ で も 良 い よ 。
歪 な も の ほ ど こ の 心 を 惹 く 。


認めたくないものを見ないために眼を瞑る。
この眼に映るのがうつくしいものばかりなら良いのに。
そうすれば真っ先にきみは見えなくなるね。
醜くて怠惰なかわいいひと。


あなたの存在がしあわせでくるしくて仕方ない。
このゆびを咬んで。
喰いちぎって咀嚼して呑み込んできちんと消化して。


廃人は自己満足の夢をみる。

唯一。 

2005年02月03日(木) 2時18分
キツく硬く抱きしめてよ
その腕の温度のひくさが堪らない

ゆるゆらと終わりにむかう日々
いとしいのは「     」
きこえない?
だって教えてやらない
寧ろその耳なんて塞いでやりたい

ねぇそろそろもう嫌だって顔で詰って弄って玩んで
それでもしあわせだよ
だってほら
あなたがいればそれだけでてんごく
たとえそれがこんな場所でも。
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