第四夜 

2009年02月09日(月) 2時43分
オーブの森の奥の奥。
そこに、僕ら魔道族が住む村がある。
茅葺き屋根に高床式の木造住居。
その中でも一際大きくて高い建物がある。
それが、僕の“家”だ。





第四夜





家に帰ると、双子の姉が仁王立ちで待っていた。

「どこ行ってたんだ」

真っ直ぐこちらを見据えてくる。(というか、睨んでくると言った方が正しいかもしれない。)
完全に怒りモードMAXだ。

(……や、ヤバい)

姉――カガリには絶対にバレてはいけないと思っていたから、みんなが寝静まった真夜中にこっそり抜け出していたのに。
何故か、全く予想外なことに、彼女は目を覚ましてしまったらしい。
キラは慌てて弁解しようとした。

「…あっ、あのね、カガリっ…、」
「……お前、血の匂いがする」
「えっ……!」

姉にズバリと指摘されて、思わずギクリとする。
――本気でヤバい。

(なんでよりによって今日なんだよ……!)

首筋にじわりと熱が集まってくる。――アスランに血を吸われた場所だ。

(だからダメだって言ったのに……アスランのばか!)

彼ら吸血鬼は、血を栄養源とする。特に、魔女の血は好物なのだ。
「キラの血は格別だ」と言って欲しがるアスランに、仕方なくあげることがあった。
大抵いつもはなんとか諦めてもらうのだが、今日は押しに押されて負けてしまったのだった。

(どうしよう)

カガリがゆっくりとこちらに近づいてくる。

(どうしようどうしようどうしよう!)

キラは逃げるように後ずさりする。
しかし、痕を隠そうとして無意識に首筋を押さえていたのを、彼女が見逃すはずがなかった。

「キラ!」
「わっ……!」

グイッと腕を掴まれて、手を退かされてしまった。
瞬間、カガリの動きが止まる。

(み、見られた……!)

なんとかしなければと必死に弁解の言葉を探すけれど、哀しいかな、全く思い浮かばない。
血を吸われた痕なんて、決定的すぎる。
どうしようもなくてキラも固まっていたら、腕を掴むカガリの身体がわなわなと震え出した。

「か、カガ…」
「〜〜〜っな、なんだコレはーーーーー!!!??」

盛大な叫び声が家中に(否、おそらく村中に)響き渡った。

(最悪 だ)

もう僕の魔法使い人生は終わったかもしれない。
父さん母さんラクスみんなごめんなさい。
僕は悪い魔法使いです。
みんなを裏切るようなことして最低だと思います。
ホントに本っ当にごめんなさい〜〜〜!!!!!

――などと、様々な言葉がキラの頭の中をぐるぐると駆け巡っている最中(さなか)、カガリは何を思ったか、急にキラの服を脱がせ始めた。

「脱げ」
「え……?」
「脱げって言ってるだろ!」
「か、カガリ!ちょっ、」
「いいからお姉様に見せろっ!!」
「ままま待って待って待ってっ!!」

(あれ……?)
なんでいきなりと思いながら必死に抵抗するも、カガリの力が強すぎて、あっけなく胸を肌蹴させられてしまった。

「おっ前こんな……誰にヤられたんだッ!?」
「へっ……?」
「とぼけるな!鏡見てみろっ!」
「わ!」

ポン、という音とともに、目の前に鏡が現れる。
そこに映し出された自分の姿を見て、あ、と気づく。
――アスランのキスマークだ。
途端、急激に身体が熱くなってくる。正直、恥ずかしくてたまらない。
よく見ると、首筋にあるはずの血を吸われた痕は、綺麗に消えていた。
きっとアスランが消してくれたのだろうけれど、こっちの痕は、全部綺麗に残してくれたようだ。

(絶っ対わざとだ……!)

アスランのばかばかばかばか!!!!!
そう心の中で叫んでみるものの、この状況が変わるわけではなく。

「キィ〜ラァ〜……」

怒りMAXをとうに越えた姉が、目の前に迫ってくる。

(〜〜〜っごめん、カガリ……!)

もうこうする他に方法がない。
キラがパンッ、と手を叩いた瞬間、カガリの身体がキラキラの光に包まれて。

「あ、こらっ!キ、…ら……」

ゆっくりと眠りに落ちていく彼女を受け止めて、ほぅ、と一つ息を吐く。
朝目が覚めたら、今あったことは忘れているはずだ。
本当は魔法なんて使いたくなかったけれど。

「ごめんね……」

それでも、このことは絶対にバレてはいけない。
宿敵同士が愛し合うなど、許されない。

そう――これは、禁忌の恋。

人物紹介その2 

2009年02月09日(月) 2時25分

ラクス・クライン
偉大なる前魔女王。
キラに絶大な魔力を与える。
今は隠居(?)していて、表世界に出てくることは少ない。
が、実は裏で色々動いているらしい…?
キラとカガリとは、家族同然の付き合いで、とても仲が良い。


カガリ・ユラ・アスハ
キラの双子の姉。
至って普通の魔女っこ。
明るく男勝りだが、意外に涙もろく、情に厚い。
キラを溺愛している。
ラクスとは親友。

第三夜 

2009年01月18日(日) 19時27分
「っ――!」
「……?どうかしましたか?ラクス様」
「……いえ、何でもありませんわ」

(……キラ)

とうとうあれを使ってしまったのですね。
――あの、禁忌の魔法を。

(……ふふ。面白くなりそうですわね)





第三夜





「……好きだよ、キラ」
「ッあ……――!」

耳に囁かれる甘い声に促されるようにして、極限まで高まった熱を解放する。

「っは…ぁ……、」

自分の中で彼の熱を感じながら、キラは深く息を吐いた。

(……また流された……)

アスランとこういうことをするのは嫌いじゃない。
けれど、会うたびこうやって流されるように抱かれて、自分だって男なのに何とも情けない。
――それでも。

「……キラ」

後ろからそっと抱きしめられて、振り返ると極上の微笑みがあった。

(っ……)

ああダメだ、とキラは思う。
どうやったって、この顔には勝てない。

吸い込まれてしまいそうな、深く澄んだ翡翠の瞳。
頭の芯まで痺れるような、甘い声。

(……本当に)

――どうしてこんなに好きになってしまったんだろう。

そんなことを思いながら、いつものように見惚れていたら、ゆっくりと彼の顔が近づいてきてキラはハッとする。

(ダメだ)

「っ……ごめん」

唇が触れる直前で、キラは咄嗟に顔を背ける。

「……やっぱり駄目か」

苦笑混じりに彼が呟く。
代わりに唇を撫でる指は、それでもとてもやさしい。

(……アスラン)

ごめんね、ともう一度、キラは心の中で小さく呟く。

――キス。
それは、禁忌の魔法だった。
キラ自身でさえ何が起こるかわからない、最大にして最強の魔法。
――まさか、敵であり最も憎むべき相手と恋に落ちるなんて、夢にも思わなかった。

アスランが、すき。

キスでかけた魔法は、キスで解ける。
もし、もう一度唇を合わせたら、この魔法は解けてしまう――。
だから、できなかった。
愛しい人を失うのが怖かった。

こんな気持ちは、生まれて初めてだった。
こんなにも誰かを愛しく想うのは、きっと一生に一度きりだ。
それほどまでに、アスランを好きになってしまった。

「……なら、」
「っ……」

頬にふわりと落ちてくるやさしい感触に、キラは思わずびくりと震える。
額、眦、首筋へと、次々降ってくるキスの雨。

「ん…っ…」

項をきつく吸われ、そこには淡い紅の華が咲いた。
次いで、肩、鎖骨、背中へと、アスランの唇が紅い色を付けていく。

「っ…ア、…アスっ……!」
「……キスの代わり」
「っ……、」

だからって、こんないっぱい付けなくても……。
そう思いながらも、身体中に散りばめられたアスランの痕を見て、密かに嬉しくなるキラだった。

第二夜 

2006年10月10日(火) 1時23分
――これは、魔法のせい?





第二夜





目が覚めると、目の前に宿敵のボスがいた。



(……あ、れ……?)

ここはどこだろう。
ボンヤリした頭で思考を巡らす。
――身体が、熱い。

(……?)

ふと身体が妙に軽いことに気づく。
軽い、というか――…

(え)

何も身に着けていない。
つまり、裸だ。

(ッな――……)

なんだこれは――!?


『あッ……、っ…』


ふいに蘇る声。

『っ……や、ッぁ…』

甘く掠れた、自分の。

『ンッ……ぁ、…ア――』

(――そうだ)

思い、出した。

(僕は――)


『ッアスラン――……!』


その瞬間。
"あの時"の感覚が、一気に体中を駆け巡る。

快楽。
そして――

(……どうしよう)

ゆっくりと目の前の『彼』に目を向ける。
瞳を閉じて静かに眠る、その顔をじっと見つめた。

白い肌に、長い睫毛。
宵闇を思わせる深い紺青の髪。
閉じた瞼の奥には、きっと世界で一番美しい碧が存在する。
そのどれもが、美しさの象徴のようで。
――寝顔まで綺麗なんて反則だ、と思う。

(……どうしてこんな――)

ワケがわからない。
溢れ出すこの感情を、一体どうすればいいのか。
全く持って、理解不能だ。
けれど。

「……ん……」

手を伸ばしてそっと頬に触れると、彼の睫毛がぴくん、と震える。
そうしてゆっくりとその瞳が開かれて。

(あ)

――覗いた碧の美しさに、思わずどきりとした。

「……キラ」

静かに名前を呼ばれて、またもや心臓が跳ねる。
どきん、どきん、と。
真剣な眼差しで見つめられて、鼓動が早くなっていくのが分かる。
最早この鼓動が治まる気配はないようだった。

(……アスラン)

胸の内だけでそっと彼の名前を囁く。
すると、それに応えるかのように、触れていた手に彼が自分のを重ねて。
その手をそのままおもむろに唇へと運ぶと、そっと指先に口づけながら。


「俺の花嫁になってくれませんか?」


その綺麗な微笑に、言葉も想いも何もかも奪われてしまった。


「……はい」

それ以外の答えなんて、何も思い浮かばなかった。



(――これが)

これが、禁忌の魔法。

(……ごめん、ラクス)

――世界で一番憎い敵が、世界で一番愛しい人になっていた。

第一夜 

2006年10月01日(日) 19時40分
『いいですか、キラ。この魔法だけは絶対に使ってはいけません』

(――ごめん、ラクス)

僕は今宵、禁忌を犯す。





第一夜





何百年もの長きに渡って、魔道族と吸血鬼族は激しい種族争いを続けていた。
そんな中、二つの種族に歴代稀に見る力を持つトップが誕生した。

――天才魔法使いキラ・ヤマトと、最高位吸血鬼アスラン・ザラ。

そうして今宵、長きに渡る争いに終止符を打とうと、それぞれのトップ同士が相見えることになる。



*****



これが、危険なことだとはわかっている。
それでも。

(こんな争いは、早く終わらせなければならないんだ)

これ以上、仲間が血を流すのを見るのは嫌だ。
――これは、"天才"と呼ばれた自分の使命であり、宿命なのだから。

(……絶対に、終わらせる)

唇をきゅっと引き締めて、キラは覚悟を決めた。





見上げると、闇夜に蒼い三日月が淡く映えている。
その前をふいに小さな黒い影が過った。

(――来たか)

自然と口元に笑みが浮かぶ。
こんな高揚感は、実に久しぶりだ。

(……さて、どこまで楽しませてくれるか)

――キラ・ヤマト。

それは予感だった。
――今夜はきっと、何かが起こる。





「アスラン・ザラ!今宵こそ覚悟ッ――!!」

予想を裏切らず空から攻め込んできた宿敵を捉えて、アスランはスッと瞳を細める。

「それはこちらのセリフだ、キラ・ヤマト」

すぅ、と息を吸い込んで、喉の奥に力を込める。

(――さぁ、来い)

引き寄せるように腕を伸ばす。
すると、その手を取るように向こうも腕を伸ばしてきた。

(――っな……!?)

予想外の展開に驚いている間に、伸ばした腕を掴まれて、近付いてきたアメジストに思わず息を呑んだ。


(――綺麗、だ)


その瞳に吸い込まれるように、アスランは掴まれていた腕を逆に引き寄せていた。


「「―――――ッ!!」」


そうして二人の唇が重なった時。

世界を揺るがす禁忌の魔法が発動された。

人物紹介その1 

2006年10月01日(日) 4時30分

キラ・ヤマト
魔道族の若きリーダー。
偉大なる前魔女王の洗礼を受け、絶大な魔力を持つ。
相棒は黒猫ヤマト(笑)
ほうきに乗って空を飛ぶのが好き。
ツンデレ属性。





アスラン・ザラ
吸血鬼族の若き長。
稀少な翠の瞳と天性の吸血能力を持つ。
吸血鬼は血を栄養源とするが、特に魔女の血は好物。
アスランのように上級レベルになると、生気も吸うことができる。
無口で無感情。

プロローグ 

2006年10月01日(日) 4時14分


――Kiss――

それは、禁忌の魔法。



KissKiss PANIC!



「アスラン・ザラ!今宵こそ覚悟ッ――!!」
「それはこちらのセリフだ、キラ・ヤマト」

蒼い三日月が二人を照らす。
今宵も闇夜に二つの美しい宝石が交差する。

アメジストとエメラルド――。


「「―――――ッ!!」」


それは長いようで、一瞬の出来事だった。
キラが魔法をかけたのとアスランが生気を吸ったのは同時。

その瞬間から、二人は互いの虜となった―――



 

2006年10月01日(日) 3時33分
記事送りです

 

2006年10月01日(日) 3時32分
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2006年10月01日(日) 3時29分
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