ソファーに置かれた宝石を手にして不破が言う。
「どうやらまた、新しい請求書が舞い込んできそうだな。
この半年だけで、お前の為にざっと2億は使った」
類子は笑顔で言う。「あら、まだそれっぽっち?」
「それっぽっち?」鳩が豆鉄砲を食らったような顔の不破。
類子「少し余分に税金を払ったと思えば、
別に大した額じゃありませんわ。
それに、お金を稼ぐのは貴方の生き甲斐じゃありませんか。
私は貴方の生き甲斐を無くさない様、妻として努力してるのよ」
レイが笑う。
不破は椅子に座って言う。
「随分、ご立派な妻だ。お前は結婚前、
金に対する欲などこれっぽっちもないと言う顔をしとったが、
今はお前に会う度、その顔が請求書に見えてくる!」
類子「請求書?私の顔が請求書なら、そうね、
貴方の顔は・・・領収書ってとこかしら?」
不破は顔をしかめる。「領収書?」
レイ「そう思って見れば、貴方の顔もなかなか魅力的よ、恒大さん」
笑うレイに、不破は舌打ちをして悔しそうな顔をする。
草太が飲み物を持ってくる。「どうも、お待たせしました」
不破は立ち上がる。「いらん!」
類子「もうお帰り?」
不破「止めても無駄だ!」
類子「下までお送りして、草太」
不破は振り返る。「え?」
類子「どうぞお気をつけてね、あなた」
不破「・・・それはそうと、この週末、毎年恒例の山荘開きをやる。
お前はここ4年ばかり全く顔を出さなかったが、
今年は顔を出すように。いいな。これは命令だ!
さもなくば、今後どんな請求書が来ようと、
俺は1円だって払わん!分かったな」
類子のマンションを後にする不破。
レイ「相変わらず、くたばりそうにないわね恒大さん」
類子「ええ。70を過ぎると流石に子供が欲しいとは言わなくなったけど、
その分、ますます金儲けにのめりこんでるわ」
レイ「それにしても貴女、あれ以来山荘に行ってないなんて、
やはり槐の事がわだかまってるの?」
類子は宝石を手に取って言った。
「関係ないわ、そんな事。ただ忙しくて
のんびり避暑をしてる暇なんてないだけ。それだけよ」
レイ「確か、懲役7年だったわね。あれからまだ4年。長いね」
類子「いいえ。7年なんて短すぎるくらいだわ。
それよりどう?少し地味かしら」
類子は煌びやかな色の宝石が付いたネックレスを試着してレイに言った。