最終回を見て「20点」と評しましたが、それはもちろん冗談です。
荒っぽい部分も少なくはなかったドラマでしたが、
それ以上に素晴らしい部分も多く、
間違いなく心に残るドラマになりました。
理由は、役者さん(特に安宅兄弟)の名演技。
そして、その二人に呼応するかのような、
他の役者さんたちの迫真の演技。
きっと現場の雰囲気もとてもよく、役者さんやスタッフ皆さんが
「いいドラマを作ろう」と一生懸命になっていて
その想いがTVの画面から伝わってきたのだとそう思ってます。
仕事の関係で最初からにあらすじを書くのを断念していたのですが、
書かなかったことを激しく後悔しました。
でも、書いたとしても表現がとても難しいドラマだったろうな、と。
理由は、もちろん安宅宗一を演じた内田滋さん。
彼の演技はとてもではないけれど文章にするのが難しく、
まさにドラマでしか語りえない安宅宗一の人物像を
とても繊細に、そして感動的に表現しきってくれました。
知的障害という難しい役どころを演じる中で、
どのように宗一を表現するか、どのように演技を変えていくか
スタッフとの話合いや役作りの過程も想像を超える濃さだったと
思うのです。
(視聴者にもいろいろな立場や意見の方がいらっしゃいますから、
リアルに演技すればいいというものでもないし・・・)
内田さんの才能は放映初期から色濃く私の目に映りました。
大きく分けて物語りは二つに分かれますが、
初期は宗右衛門夫婦の心配を一手に受ける無垢な子供のままの宗一、
そして結婚以降は愛に迷い、人として成長を遂げる宗一、
その両方を実に魅力的に、表情豊かに演じたのは本当に見事。
初期では、例えば久仁子の婚約指輪を拾う場面。
這いつくばって顔を汚しながらも指輪を見つけたときの
あの瞳の煌き、美しい横顔。夕陽を背にし、
下からのアングルで撮ったカット割りも素晴らしかったのですが
宗一さんの魅力と内田さんの演技力が全開で
とても印象的な名場面でした。
結婚以降は宗一が悩む場面が多く、
表情も随分と変わってきたなと思ったのですが、
それは宗一の「成長」だったのですね。
久仁子を思いやったり、考えて行動したり
本意でない行動を取るようになったりする辺りは、
その成長がもどかしく思えたりもしたものです。
雅子と久仁子への愛で揺れるあたり、愛の違いやその性格を
台詞以上に演技で魅せてくれた内田滋さん。
私の中で、超お気に入りの男優さんになりました。
いやー、まさか昼ドラでこれほどの演技を見られるとは。
内田さん、次回は是非イケメン役で見たいです(笑)
そして、もう一人のこのドラマの英雄、小林高鹿さん。
彼は一昨年の昼ドラ『偽りの花園』で男爵家出のイナゴ夫を演じていて
その怪演がとても印象的だったのですが、
今回は前作とは全く違った印象で繊細な役処をこなしてくれました。
知的障害の兄を支える為に愛し合っていない両親から生を受け、
家族への愛と憎悪の狭間で葛藤を続ける譲二。
淋しがり屋なのに強がりで、素直になりたいのになれなくて。
そんな人間的な譲二像は実にセクシーで、
宗一との対比や関係においてとても魅力的でした。
もっともっと小林さんの演技を見てみたいです。
また昼ドラに出演されるのがとても楽しみな役者さんです(^-^)
その二人に呼応するように、演技に凄みを増していったのは
その他の役者さんたちでした。
無償の愛に苦悩する主人公の安宅久仁子を演じた遠藤久美子さん、
そして、女性としての魅力を放つ雅子を演じた小田茜さん。
実を言うと、私はこのお二人の演技と役処には
少々納得しかねる部分も少なくなかったのです。
久仁子の愛の本質が今どのような状況にあるか、
遠藤さんの声の調子や表情では今ひとつ分かりづらい部分があったり
小田茜さんの雅子像が今ひとつ魅力的に感じられなかったり・・・
しかしそれも、終盤に来てようやく落ち着いてからは
人物像がはっきりしてきて、お二人が演じてくれてよかったなと
思えるようにはなったのですが。
久仁子の場合、無償の愛を誓いながらも
その愛の形を見誤って、一時は悪魔になりかけたものの
真の愛に目覚めて聖母のごとく慈愛に満ちた女性になりました。
この女性像は私にとっては、とても応援したくなるものでした。
子供の頃から宗一に寄り添い、
子供を産むことを諦めてまで結婚した久仁子。
しかし、心の底では女性として愛してほしいと望んでいて
宗一の心の揺れに苦しみ、嫉妬ゆえに悪魔と化す・・・
もし無償の愛が「宗一を雅子に託す」ことだったら、
私ならそんな愛なんていらない!
苦労してきた分、久仁子にはもっと貪欲になってほしい・・・。
そう思って随分もどかしかったですけれど、
最後には久仁子の愛を宗一がしっかりと受け止めてくれたので
本当に良かったです。
雅子の場合、脚本上の雅子像があまり好きになれませんでした。
強くて真っ直ぐな女性なのですが、頑固すぎてイラつくことも何度か。
これはきっと好みの問題で、私の好みに合わないというだけで
こういう女性が好きという方も多いのではないかなと思います。
女性としての魅力で宗一を翻弄する辺り、久仁子に共感していた私が
嫉妬しまくりだったからかも知れません(笑)
あとはベテラン勢が良かったですね。
安宅宗右衛門役の目黒祐樹はダントツ。
あの重厚な存在感はもう説明不要ですよね。
宇田川父を演じた深水三章さんは『紅の紋章』とは打って変わって
家族とホテルを思う良き父親を演じられました。
父親世代の登場人物は亡くなることも多いものの、
最後まで健康で元気だったので安心。
宇田川さんの淹れたコーヒー、飲んでみたいです。
そして役者さんと共に拍手を送りたいのが、
ドラマを作り上げたスタッフの方々。
正直、エピソード的にはかなり荒っぽい部分もあったのですが
登場人物達の丁寧な心理描写には、頷きながら見たり
その純粋さゆえにもどかしくも感じさせられました。
終盤の波乱の連発や、話の大部分が家の中や山小屋で進む辺りは
ドラマという媒体の性格上、仕方ないかなと思うのですが
(特に、過去のドラマのセットの使いまわしが
あからさまだったのは予算不足かとも思ったのですが)
それをカバーするほどの、愛に満ちた素晴らしいドラマになったのは
やはりスタッフや役者さん達の熱意の賜物でしょう。
裏方の雰囲気は必ず映像に表れます。
それが功を奏したのが『安宅家の人々』であり、
逆だったのが『金色の翼』であり『愛の迷宮』であり・・・。
いいドラマを作ろう、というのは皆様同じだと思うのですが
それだけでは済まないのが現実なのですよね。
いろいろ書きましたが、言いたかったのは
『安宅家の人々』は私の大切な思い出のドラマになった、
これに尽きます。
宗一が亡くなるという最後は本当に悲しく、正直、
宗一が死ななくてもテーマは描ききれたのではないかとも思いますが
今はただ、良いドラマを作っていただいた皆様に感謝しています。
こんなに登場人物が愛おしいドラマは『美しい罠』以来。
『美しい罠』は全員腹に一物の「悪の華」の美しいドラマでしたが、
『安宅家の人々』は皆善人なのに幸せを上手くつかめず葛藤する、
人間とはかくも淋しくも愛しいものであるか、
そんなことを思わせてくれた深いドラマでした。
宗一が亡くなった今は続編はないでしょうけれど、
本当に幸せな安宅家を・・・高原ホテルに譲二達が来た頃の
ほのぼのとして暖かなころのお話をドラマで見てみたいものです。
純粋無垢な宗一と、その言動に文句を言いながらも
家族を愛してやまない譲二の兄弟愛の物語。
今となってはそれが本編でもいいくらい?(笑)
最後に。
役者さん、スタッフの皆様。
心に残るドラマをありがとうございました。
私にとって大切なドラマになったこと、本当に感謝しています。
そして・・・
内田滋さん、愛してます!(あー、言っちゃった(笑))
2008.3.29 rei@昼ドラHoric
※次回昼ドラは津雲むつみ原作の『花衣夢衣』。
予告の印象は昭和っぽくて、雰囲気的には『紅の紋章』ぽい?
双子を巡る愛憎劇らしいのですが・・・
脚本は田部俊行さん(『新・愛の嵐』『永遠の君へ』
『母親失格』など)と楠本ひろみさん。
うーん・・・。