闇のHANA★★★

August 09 [Tue], 2011, 13:10
サラサラした素材の紺のローブに 黒のフード付きマントをまとっている黒髪の男の子は、ヤンキャスで有名な街「カタツバタ」の噴水に腰かけていた。

「相も変わらぬ美しい街ですね…。前にここへ来た時は…私が十の頃でしたね」

彼は綺麗な黒髪をかきわけ辺りを見回している。

「あれはクロスお姉様と…母上に内緒で来たのでしたっけね。お姉様は剣術も達者でお強い方でしたから、いつも私をかばって下さった…」

彼は地味でよく見ないと気が付きにくいが、クロカだった。

城にいた時は小さくも派手な王冠をつけていたので パッと目についていたが、性格はおとなしいゆえ市民的な服を着ると、途端に風景と溶け合ってしまうのだった。

「さて…どうしましょうか」

クロカは途方に暮れていた。
シャイニンから信号は来ないし 城は出て来ても 争いを止める事など容易では無い事は明白である。

具体的にどう動いて良いかクロカは悩んでいた。

「争いを止める…つまりは互いに 自分達がしている事の悲しさに気が付かせる…という事ですね」

クロカは自身へ 言い聞かせる様に、確認をする。

「争いを続けるという事は、再び悲しみと憎しみを増やす事であり 破壊の連鎖を生むだけ。それを皆さんにお伝えしなければいけない」

ハッキリとした想いはある。伝えなければいけない事もわかっている。

「…でも…どうやって?」

クロカは頭を抱えた。すると真剣に悩んでいるクロカの前に2人の男がやって来た。

「…?」

「兄ちゃん、ここは俺らの縄張りだぜ?ここに座りてぇなら料金が必要だぞ」

明らかにガラが悪い男が口を曲げて話し出した。

「縄張り…ですか?」

…ここは町長の所有物じゃなかったけ?

クロカが6歳の頃、カキツバタの町長が 城へ来て 噴水を自慢していたのを、幼いながらも 鮮烈に記憶していたので クロカは疑問に思った。

「てめぇ よそ者だな。この街は ラキュルスの物なんだ。使用料金として 有り金 全部出せや。さもねぇと酷い目に合うぜ?」

「ひぇ!!あ、有り金全部ですかぁ?!」

この先何が起こるか分からないクロカにとって有り金全部はキツイ…クロカは悩んだ。



「随分と いい加減な事ぬかしてるじゃねぇの。ラキュルスさんよぉ」

クロカが困っていると、体格の良い男が1人 現れた。

「この街は この街の皆のものだ。お前らの狩場じゃねぇんだよ」

「またてめぇか カナタ。まだラキュルスに歯向かう気か?」

「当然だろ。ここは俺らの街だ。よそから入って来た 新座者が何を偉そうに」

「カナタ…てめぇのムカツクその姿勢…ラクア様に きっちり報告させて貰うからな」

「へっ!どうぞご自由に。親分に力を貸して貰えなきゃ お前らは俺には勝てないからなぁ」

「…てめぇのスカしたそのツラ…ラクア様に ブッ潰して貰うといいぜ…」

2人のガラの悪い男は 体格の良い男に一目置いている様で、言葉を吐き捨てると さっさとその場を去っていった。

「大丈夫か?」

体格の良い男はクロカに微笑んだ。

「えぇ。助けて頂き有難うございました」

「いや。当然の事をしたまでだ。怪我がなくて何よりだった」

体格の良い男は先程と変わって優しく接してくれたので クロカはホッとした。

「あの…ラキュルスとはいったい…」

「ん?ああ…あれねぇ、3年くらい前 この街にやって来た盗賊の一味だ。乱暴ばっかして困ってるんだ」

以前姉と来た時はあんなガラの悪い奴らはいなかった。
…何年か来ない内にそんな奴らが来てたと知り、クロカは驚く。

体格の良い男と話しをしてると、遠くの方からおじいさんがかけて来る。

「おーいカナタ!!
大丈夫か?!」

おじいさんは、どうやら この体格の良い男の連れらしい。

「んあ?大丈夫ですよ。無事ですから安心を」

「そうか…良かった!あんたも大丈夫かい?」

「え?!」

おじいさんはクロカを見つめた。

「あ!!えぇ!!こちらの方のお陰で 無事にすみました。お心使い有難うございます」

クロカは おじいさんを しっかりと見ながら微笑んだ。
すると突然おじいさんは 大きな声を上げた。

「あ!あなたは!いやまさか?!」

おじいさんが タジロイでいるので、体格の良い男は不思議に思った様だ。

「何だ?このお子さんが どうかしましたか?」

「これ!カナタ!」

おじいさんは 急いでクロカにひざまずいた。

「あなたは…クロカ・ヤンカリス様ですね…」

「え?!何故私を?!」

「10年前、私は お城でクロカ様と お会いしております。覚えておられませんか?私はここの町長です。お久しゅうございます」

何とおじいさんは町長だった。6歳の頃の記憶より 歳を召してたので、クロカは慌てる。

「町長さんでしたか!気が付かずに何と失礼な事を!申し訳ありませんでした」

クロカも町長と同じ様に膝を地に付けた。

「クロカ…ヤンカリス?誰だ?」

今だカナタはクロカの正体がわからず ただ立っているだけだった。

「カナタ!!お前は自分の住んでる国の王達を知らぬのか!!」

「王達?え?!じゃ…この人は…」

「王子様じゃ!!名前くらい覚えて置け!!バカもの!!」

町長は大きな声でいうものだからクロカは唇に指をあて、シィーと合図した。

「町長さん。私は今城の者として来ている訳ではございません」

「え?!どういう事ですかな?!」

「今、私は母上…王や城の意思として動いている訳ではなく 私1人の意思で活動しています。ですから周囲に王子だと知られてしまうのは都合が悪いのです。すみませんが騒がずに お願い出来ますか?」

クロカが真剣に頼むと町長は何かを察して声のトーンを落とした。

「…何かご事情がありそうですね。よろしければ私の家にいらっしゃいませんか?」

「いえ…それでは町長さんにご迷惑を…」

「ここで立ち話も何ですから、どうかお気になさらずに」

「…そうですか?有難うございます。ではお言葉に甘えさせて頂きますね」

町長に連れられ、クロカは噴水を後にした。




「…なるほど…クロカ様は この争いは無意味とお考えになったのですな…」

「えぇ…。悲しみの連鎖を生むだけだと気が付きましたから。直接王にご相談も致しましたが 取り入っては頂けませんでした」

「そして…あげくに反逆者として捕えるとまで王はおっしゃられたと」

「そうです。捕えられたら最後…。行動もなにも出来なくなってしまいます。ですから私は城を後に致しました」

「おいたわしや…クロカ様。さぞ お辛かっただろうに…」

「いえ…仕方の…ない事ですから…」

クロカはカナタに差し出された紅茶を口に含んだ。

「へぇ…やっとそう考えてくれる奴が出て来たんだな」

「か、カナタ!!」

「俺はずっと思ってたぞ。いつまで こんな馬鹿げた争いを 王族の奴らは続けんのかなぁってな」

「カナタ!!王子様の御前であるぞ!!」

「へいへい」

町長に止められカナタは肩をすくめ舌をペロっと出した。

しかし…クロカはカナタの話が気になる。

「カナタさん…どうか遠慮なくお話して下さい。私は貴方の意見がききたい…」

「へ?!俺の意見か?」

カナタは一瞬戸惑ったが 意を固めて話し出した。

「…高い高い城の下の平民が 殺された1人の姫の為に、毎日 何人も死んでいっているのに 何とも思わねぇのかなぁっとか…」

「……!」

「昔は光の世界ハッキャスと仲良かったから、向こうにも友達がいるのになぁっとか思っているぜ?」

「……そう…ですか…」

自分達の憎しみのせいで多くの犠牲を生んでいる…。シャイニンに出会わなければ気が付かずにいた自分が情けない…

クロカは手を握り締めた。

「まぁ…ヤンキャスの為に戦ってくれてんのは分かるがな。俺だって姫を殺されたのは悔しいしな」
「カナタさん…」

「でも…この争いのせいで俺は友達を亡くしたんだ。ちょっと争いを肯定出来なくなっちまったよな」

「…お友達を亡くされたのですか……。申し訳ありません…。私達の…つまらない意地のせいです…」

「いやいや、仕方ねぇとも思ってるんだ。だって あんたらは家族を殺されたんだ。俺だって家族を敵国に殺されりゃ王達と同じ行動すると思うぞ。だから…そんなあんたが、国に反しても行動を起こしてくれている事が…すげぇ嬉しい」

カナタはまっすぐクロカを見て話している…クロカはカナタの話に嘘はないと確信した。

「有難うございます。そう言って頂けると気持が楽になります。カナタさんは優し方ですね」

「ははは!!あんたこそ優しいじゃないか!!反逆者になるかもしれないリスクを背負っても命ある者の為に立ち向かってくれるじゃねぇか」

「気が付いたのです。今私達がしている事は姉を殺された悲しさと同じ悲しさを増やしているのだと。私に…そう説いて下さった方が…残される者を増やしてはいけないと…おしゃっていました」

「へぇ。良い事いう奴だな。誰だ?そいつ」

「…目がとても綺麗な方です…。私にとってとても大切な方です」

「ふぅ…ん…」

クロカはシャイニンの事をハッキリとは言わず濁したのでカナタはそれ以上追求はしなかった。

「しかしクロカ様…実際どうされるおつもりですか?」

「実は私…途方にくれています。どうしたら良いものかと…」

「…争いを どうにかして止めねぇと話しにならないんじゃねぇか?」

「そうなのですが…どうやって止めたら良いのでしょう……?」

「ん〜…力が無いと難しいんじゃねぇかな…止めるだけの力がさ」

…ちから…
つまりは武力…止めるにも必要なのかと思うと少しクロカは悲しかった。

「互いに剣を取らず…言葉で…通じ合えれば良いのに…」

「…だな。気持の違いで通じ合わなくなっちゃうって辛いよな」

カナタはクロカにフッと笑いながら話した。

「でも、ま…相手が力で向かって来るんじゃ仕方がない。身を守る為にも力を必要とするのは仕方のない事だ。母君達を止めたいのなら お前は剣を持たねばならないだろうよ」

「……そうですね」

今、自分は決断を迫られてる時なんだ……嫌でも取らねばならない剣もあるのだ…とクロカは思った。

「…私は…何の為に城を出たのだ…何の為に母の元から去ったのだ…ジッとしている暇などない!!ゆかねば!!」

「お!その粋だ!」

クロカの目に力が入る…その眼差しはこれまでの弱々しかった頼りなさはミジンも感じさせられなかった。

「んで、宛ては…あるのか?」

「ええ」

「どうされるのですか?クロカ様…」

「精霊様にお力をお借りします」

「は…?精霊?」

クロカの思わぬ発言に町長とカナタは目を見合わせた。

「闇の世界と光の世界にそれぞれ3人の精霊様がいらっしゃいます。精霊様の所へお訪ねし、力をお貸し頂ける様お願いします」

「精霊って本当にいるのか?!単なる伝説じゃなかったのか?!」

「はい。ちゃんとご健在されてますよ。精霊様の詳しいお話しは 王族の名を持つ者のみに伝わる事しか許されていませんから、カナタさんが驚かれるのは無理のない事です」

クロカが そう言うとカナタは目を見開きながら話し出した。

「へぇー!へぇー!すげぇ!!そう聞くと やっぱり あんた本当に王子なんだって思うぞ!!」

「んもう!私は ほとんどの皆さんにそう言われている気がします…。何故 私が王子と分かると皆さん驚かれるのでしょう?」

「だって話しやすいから つい友達感覚になっちまうんだよ。親しみやすいって事だ。きっと皆悪気はないと思うぞ」

「…なら良いんですケド」

クロカはプクッとホッペを膨らませた。

すると…外からドカーンと大きな爆発音が聞こえて来た。
クロカ達は急いで外へ出た。

「おい!!カナタァァア!!約束通り焼きを入れに来たぜぇ!!こっちに来いや!!こるぁあ!!」

爆発音の元はラキュルスの奴らだった。

「やかましい奴らだ」

カナタは静かにラキュルスへ向かって行った。

「カナタさん!!」

この出来事がクロカにとって悲劇の幕開けだった。

つづく

【音桜】
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