DKAとHHS。救急外来の看護師さんより受けた質問

2017年09月10日(日) 14時45分
yukoです


9月の府立医大ラスト日当直が終了しました。なんて言ってる間に綾部の準備です。


寮の予約は済んだので段ボールと送り伝票の用意です。


執筆活動は一切進んでいませんが、周囲の皆も、救急専門医試験や別の執筆活動を控えていて誰も進んでいないので大丈夫。笑


秋〜冬の綾部で静かに執筆を進めようと思います。朝靄のかかる中、冷たい空気の中、イイジャナイ


さて、先々週、救急外来の看護師さんに「DKAとHHSの違いが、やっぱり未だによく分からない何ですか」聞かれたので書いておこうと思います。


看護師さんからこんな質問が出るなんて嬉しい限りですよね。


まずは、違いを書く前に、救急搬送の流れに従ってDKAについて書きますね。


例えば、実際に診察したDKAの方はこういった搬送のされ方をしていました。劇症I型糖尿病が指摘された例です。


3日前までは元気だった19歳。前日の朝、腹痛、悪心、嘔吐。当日清涼飲料水を2L自分で飲んだ。なんだかソワソワして落ち着かず家族が心配し救急要請。ストレッチャーの上でソワソワして、「ああ、しんどい、しんどい」「わああ!」とハアハア荒い息で時々混乱したように叫んでいる


意識レベルを評価し、バイタル測定しつつ、AIUEOTIPSで原因検索しながら各種検査を進めていくと・・・


血糖900mg/dL


消化器症状、高血糖、意識障害。


血液ガスでは、アシデミアがあり、さらに代謝性のアシドーシスであることが考えられました。


さて、血液ガスで代謝性アシドーシスがある時は、AG(アニオンギャップ)=Na-(Cl+HCO3)を計算します。AGが増えるのは、なんか余計な酸がある時です。条件反射的に計算して下さい、答えに繋がる事があります。


正常値は12±2mEq/Lですが、AGが増加している場合は、乳酸アシドーシスケトアシドーシス腎不全中毒を原因として考えます。


ケトアシドーシスの原因としては、糖尿病、アルコール性、飢餓によるものが有名ですが、今回はこの中からDKA=Diabetic ketoacidosisについて書きます。


DKAは、高血糖、代謝性アシドーシス(AG増加)、ケトン血症を特徴とします。


(質問を受けた、HHS=Hyperosmolar hyperglycemic state高浸透圧高血糖症候群との違いは後で書きます!)


血糖を下げる本来の目的は、血液中に入った糖を肝臓や筋肉に貯める事。これを担うのはインスリン。バランスが崩れると高血糖になります。逆に血糖を上げるのは、カテコラミン、コルチゾール、成長ホルモン。ホルモンが出ないと低血糖になりますね。


さて、上記バランスが崩れてインスリンが減ったり血糖を上げるホルモンが増えたりすると高血糖になります。血液中はグルコースだらけになってしまいます。


ワッホーい、ではなく・・・インスリンがないと、細胞内にグルコースを取り込めないので、ご馳走に囲まれながらにして、細胞は結局栄養が足りていないという皮肉な状況に陥ります。


困った細胞は代わりのエネルギーとして脂肪を使います。脂肪酸の不完全代謝産物がケトン体なのですが、「エネルギー不足だから」と使用された脂肪酸からケトン体がたくさん出来ると、過剰なケトン体が増えます。


ちなみに、飢餓の時もケトン体が産生されますが、これは本当にエネルギー不足だから脂肪酸を使うことで出てくるケトン体。DKAの時は、エネルギー源は周りにあるのに、インスリンの同化が出来ないせいで脂肪酸を使い出てくるケトン体です。


どういう時に、脂肪酸を、使わざるを得ない状況になるかというと、インスリン不足(インスリンが出ないと糖を細胞内に取り込めない)、感染症、心筋梗塞や脳梗塞(生体への侵襲のため血糖を上げるホルモンが増えてしまう)、薬剤性ではステロイドなどです。


症状は、高血糖により多飲、多尿、脱水。
(細胞外に糖が多いので細胞は脱水に陥るのですね)、ケトアシドーシスにより、悪心、嘔吐、腹痛、呼吸回数増加、DKAに典型的な速くて深いクスマウル呼吸が見られます。


検査データでは、高血糖の他、電解質異常も認めます。




初期の補液段階が終了した後にインスリン治療を始めた際にはグルコースが細胞内に取り込まれないせいで取り込まれず、細胞外にいたカリウム、リン、も細胞外から細胞内一気に細胞内になだれ込むので、一気に低カリウムになります。DKAの治療の際にはカリウム補充必須です。


治療は何を指標にしたら良いでしょうか。DKAの治療では、AGが正常化(ケトン体消失)より先に、血糖値が正常化するのですが、血糖値が良いからと言ってインスリンを中断してはいけません。脂肪酸からケトン体が作られている流れを止めなければいけないので、「血液ガスでのケトアシドーシス是正」を目標とします。


輸液、電解質補正、ケトアシドーシス補正を目標に、まずは補液(最初は生食、ナトリウムが上昇したら自由水追加。高血糖の場合は血糖のせいで血清ナトリウム濃度が低くでるので補正ナトリウム式で補正したものを参考に)、インスリンは、K補正をきちんとしながら。


インスリンの使用量は0.1単位/kgボーラス後に0.1単位/kg/hで持続静注。施設によりお作法はあるでしょう。


ちなみに、AGを治療指標にするのではなくケトン体を指標にしたらダメなの?という話ですが、ケトン体にはアセト酢酸とアセトン、βヒドロキシ酪酸があります、実際血液検査のケトン体として測定されているものは、アセト酢酸とアセトンで、βヒドロキシ酪酸が含まれないので、ケトン体は治療のための参考値としては適しません。


では、質問を受けたHyperosmolar hyperglycemic state=HHS 高浸透圧高血糖症候群。


緊急入院患者さんで「高浸透圧高血糖症候群です」とNSからNSに病棟に引き継ぐ時、舌噛んで病名が正しく言えてないこと多々あります。正しく覚えましょう。


両者とも高血糖緊急症であり、初期治療は変わらなかったりするので、そして、重複も多いので厳密に鑑別することにこだわる必要はないと思いますが、違いを挙げておこうと思います。




違いをひとつ挙げるならば「DKAはケトアシドーシス・代謝性アシドーシスがあるが、HHSはない」




これはらHHSの場合は、主に患者さんは2型糖尿病の事が多く、インスリン分泌がイキナリなくなったりするわけではなく、ケトン体産生を抑えるくらいは残っているからと言われます。




その代わり、やっぱり高血糖、高浸透圧はあるので、意識障害を同様に起こします。





インスリン分泌が残っているなら、DKAに比べるとかるーいんだね?なんて事は全然なくて、DKAの場合、水分が6L足りなくなると言われますが、HHSは10Lくらい足りないと言われています。




実際研修先でHHS、高度の脱水から非閉塞性腸管壊死を起こし、その日の夜間にお腹の緊急手術になったケースもありました。Lacが入院後一旦改善したものの、夕方から急に上昇しお腹が硬くなりだした瞬間は恐ろしかったと当直の先生が仰っていました。


また、ケトン体がたまり、ケトアシドーシスによって出る症状、悪心や嘔吐腹痛が出にくく、クスマウル呼吸も出ませんので、発見が遅れたりもします。


さらに、そもそも2型糖尿病の人が多かったりするので、心筋梗塞や脳梗塞など、血管イベントの発症リスクも高く、心臓血管センターで研修する研修医さんこそ、きちんと把握しておきたい病態です。


治療は殆ど同じなので省略しますね


では、また火曜に!

  • URL:http://yaplog.jp/hirakatakousai/archive/2457
コメント
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー 絵文字 プレビューON/OFF
利用規約に同意
 X 
禁止事項とご注意
※本名・メールアドレス・住所・電話番号など、個人が特定できる情報の入力は行わないでください。
「ヤプログ!利用規約 第9条 禁止事項」に該当するコメントは禁止します。
「ヤプログ!利用規約」に同意の上、コメントを送信してください。
yaplog!広告
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:stay hungry
  • アイコン画像 性別:男性
  • アイコン画像 誕生日:1975年6月12日
  • アイコン画像 血液型:A型
  • アイコン画像 現住所:大阪府
読者になる
地域への心肺蘇生法(BLS)普及を仲間とともに頑張っています。
yabuimamura@yahoo.co.jp
2017年09月
« 前の月  |  次の月 »
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新コメント
アイコン画像stay hungry
» レインボープロジェクト (2017年09月15日)
アイコン画像S品N品ロレックス
» OS-1 (2017年08月03日)
アイコン画像ブランドコピー激安販売通販
» 循環器 スカイビューカンファレンス 11/15 (2017年08月02日)
アイコン画像ルイヴィトン時計
» OS-1 (2017年08月02日)
アイコン画像yuko
» 大臨技、教育セミナー (2017年07月17日)
アイコン画像waitteidede
» 循環器 スカイビューカンファレンス 11/15 (2017年07月10日)
アイコン画像waitteidede
» 循環器 スカイビューカンファレンス 11/15 (2017年06月30日)
アイコン画像yuko
» 徳島大学研修プログラム説明会 (2017年06月24日)
アイコン画像stay hungry
» BLSおそらく、275回目! (2017年06月16日)
アイコン画像yuko
» 災害訓練 (2017年06月07日)
Yapme!一覧
読者になる