第1話:from六甲山 

September 07 [Fri], 2007, 13:25
あれから1年半の歳月が過ぎた。軽一はせわしなく働くサラリーマンになっていた。地元の市役所に勤めることは決して不本意な選択ではなかったことに加え、この期間に出会った人々や起きた出来事にも恵まれ、人生と言う名の『航海』の出発としては幸先の良いスタートを切っていた。そしてそんな軽一を間近で見てきた友人の武も燻っていた大学卒業時の鬱憤を晴らすかのように仕事に精を出していた。それぞれの人生に、それぞれの道…『六甲山』後に何かが劇的に変わったわけではないが、二人には穏やかな空気が流れていた。

Road to 六甲山‐COMPLETE EDITION‐ 

September 07 [Fri], 2007, 13:23
『今だから話せる真実がある―』

堂々全10話!
『Road to 六甲山‐COMPLETE EDITION‐』配信決定!

Lost loveA 

July 07 [Sat], 2007, 11:48
今夜はデートの約束をしていた。京子の不倫相手は同じ百貨店の総務課に籍を置く本郷というまだ大卒2年目の若手社員だった。本郷は年始に大学時代からの恋人で2歳年上の華子と結婚し、本来なら新婚生活を満喫しているはずなのだが、根っからの遊び癖はなかなか治らず、結婚半年も経たないうちに京子に手を出したのだ。京子は京子で入社直後に行われた新人研修で進行役を勤めていた本郷に一目惚れ。既婚者であることを知りさすがに自らアプローチをかけることは諦めたが、本郷自身から口説かれては断る理由も無かった。

デートは毎週水曜日と決めている。仕事柄土日は全く休めず、火曜には担当者会議が深夜まであり、金曜と月曜には週末の催しものに向けての準備、そして片づけ等事務作業が山のようにあった。木曜日こそ休日だったがさすがそこは新妻に捧げないといけない。そうなると必然的に水曜日の夜が二人の密会タイムとなっていた。

二人きりで会うのは今夜で3回目。1度目で見つめ合い、2度目で口付けを交わし、3度目で…何かのラブソングのように洒落たラブホテルの1室で二人だけの世界に落ちていった。


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Road to 六甲山第1話
大岩4兄弟第1話
Lost love 第1話

大岩4兄弟-第1章西野家の軌跡D- 

July 06 [Fri], 2007, 13:41
朝を迎えてしまった。今日ほど憂欝な朝は今までに無かった。仕方ない。今日は神戸を去る日なのだ。意気消沈している4人を余所に、淡路行きを決めた独裁者は揚揚としていた。家には、色々と種類別に詰め込まれた段ボール箱が所狭しと置かれていた。昼前に引っ越し業者のトラックが3台到着し、作業員たちは事務的にコンテナへと西野家の荷物を積んでいった。小1時間ほど過ぎ、すべての荷物の積め込みが終わった。部屋の中がガラーンとしていた。剛一の心も穴が開いたようになっていた。すべてが終わり、この空き家となった旧宅に最後の鍵を掛けた。 独裁者は、家族4人が車に乗り込み終わったのを確認するや否や、エンジンを掛け始めた。愈、住み慣れた神戸ともお別れである。家族が乗った車は一路、淡路島との玄関口・明石港へと向けて、走り始めた。この、西野家の新しい旅路に心躍らさせていたのは、ただ一人だけだった。

大岩4兄弟-第1章西野家の軌跡C- 

July 06 [Fri], 2007, 13:39
1997年元日。西野家も当然のことながら新年を迎えた。家族、特に多感なこの時期の剛一は不安と絶望を抱きながら、毎日を送っていた。あの暴君だけは意気揚揚としていたが。しかし塞ぎ込む毎日に、潤いを与えてくれたものもあった。友人たちからの年賀状である。近年稀に見る多さに剛一も驚いた。クラスメイトやサッカー部員を始めとする、仲が良かったほとんどから来た。嬉しさと感激のあまり、頭の中が真っ白になりそうだった。幼馴染みとは神戸を発つぎりぎりまで語らい、戯れることができたので、これまた幸いだった。しかし、顔は笑顔でも心は笑っていなかった。幼稚園時代から約10年間住んで来たこの地を離れなければならないと思うと、心底笑える訳は無かった。しかし、嘆き悲しむ少年を余所に無惨にも時間だけは過ぎていった。 2、3日後、引っ越しの準備もようやく終わった。途中、想い出に駆られることも多かったので、思う程に作業が進まなかった。共に過ごしたあの時間。すべてが昨日のことように感じられた。剛一は良い想い出だけを心という宝箱にしまい込んでいった。今日は、神戸で過ごす最後の夜。冬の夜空に何を思ったのか、少年の眼には涙が浮かんでいた。

大岩4兄弟-西野家の軌跡B- 

July 06 [Fri], 2007, 13:37
吹き荒ぶ風が冷たい師走。西野家は住み慣れた神戸市を離れる準備に追われていた。長男の剛一(たけかず)はまだ同級生に淡路へ行くことを伝えられないでいた。そうすることは多感な時期の剛一にとってはとても辛いものであった。一方で、長女の恵理子、次男の聡二(そうじ)はまだ幼い故に事の重さをあまり理解できていなかった。ある意味では羨ましかった。 2学期末の三者面談の際に遂に担任に打ち明けた。と同時に、同級生にも知れ渡った。悲しみの少年に投げ掛けられる激励の言葉。神戸を去るぎりぎりの日まで、友と語らい、汗を流した。今までの出来事が走馬灯のように蘇る。普段は感じられない何気ない友情がこの日々の間だけは、狂おしいほどに貴重なものになった。剛一の胸には熱いもの込み上げてきた。これほどまでの感情を抱いたことは今まで無かった。宝物を胸にしまいこんだ少年は、引っ越し前の最後の整理に勤しんだ。

大岩4兄弟-第1章西野家の軌跡A- 

July 06 [Fri], 2007, 13:36
1996年12月。暮れも押し迫った師走に、家族たちは衝撃の事実を知る。それは前触れも無く、急に降り懸かってきたのだ。専制君主を議長とした臨時の家族会議が開かれた。何事かと思いつつ、集まった他の人民たち。開口一番、「来年から淡路へ行く」。4人は絶句した。この平和な暮らしは見知らぬ間に崩され始めていたのだった。今、ここに平成のヒットラーによる独裁政治が始まった。

大岩4兄弟-西野家の軌跡@- 

July 06 [Fri], 2007, 13:33
時は、西暦1996年。神戸市に『中流』としての生活を営む一つの家庭があった。その名は「西野家」。両親と中学2年生の長男、小学3年生の長女、小学1年生の次男の5人暮らしである。家族たちは、何気ない日々の生活を送っている。水面下で、独裁者が動いていることは知る由も無く‥。 普段はこの平和な生活に関しては何一つ良くも悪くも感じられなかったのだが(強いて言うなら周囲の家庭が『中流』以上であることに一種の妬みを感じてはいたが)、数ヵ月後には、その平凡な生活がとても豊かに且つ不自由なく思えるようになるのだ。そんなこととは露知らず、4人は専制君主が敷いたレールを走らされていく。この人間の仮面を被った悪魔がヴェールを脱いだ時、取返しのつかないことになろうとは、その悪魔でさえも知らない。

Lost love@ 

June 24 [Sun], 2007, 20:45
彼女の名前は白倉京子。

地元の高校を卒業後、都会に出てきて早3ヶ月。
配属されたばかりの大型百貨店の婦人服売り場は毎日のように大盛況である。

客は高級ブランドに身を包んだ貴婦人ばかり。接客訓練もかなり積んだが、『訛り』まではなかなか直せなかった。失敗を繰り返し、動揺した時につい口を吐く方言が客からの失笑を招く。そんな日々が今も続いている。

プライベートでは一人暮らしを始めた。故郷に唯一の家族である母親を残しての旅立ちであったが、止むを得なかった。地元では仕事が無い。そして何より京子は煌びやかな世界に憧れていたのだ。眠ることを知らない夜のネオンを眺めながら一日を終えるのは気分が良かった。

初めて尽くしの日々。しかし恋愛だけは違っていた。高校卒業と同時に見切りを付けたかつてのボーイフレンドのことは記憶の片隅にも残っていなかった。既に人生2度目の恋を始めていたのだ。しかしその恋は学生時代の放課後に肩寄せあって勉学に励んだような純愛ではなかった。

禁じられた恋、不倫だった。



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ROADto六甲山<25>: 最終回 

June 24 [Sun], 2007, 20:01
家路へと急ぐ、悲しみの旅人、宮迫軽一。人生という名のレール。彼はどこで分岐点を間違えたのだろうか。長くもがき苦しんだこの幾日。結局、得たものは何もなかった。他人を欺き、自分を欺き、そして遂には運命と神から欺かれた。「俺は何て甲斐性無しなんだ!」。愚かな人間の愚かな行為は天上の神はお見通しだった。神はこの甲斐性無しな若者に罰にも等しい試煉を与え賜うたのだ。この降り懸かった災難から苦しみながら這い上がっ宮迫を次に待ち受けているものは何だろうか。心の闇に差す月や星々の光。本来ならすべてを癒してくれるのだが、宮迫にとっては悲しみ色の光であった。あの日あの時あの場所に居なければ、今こうして原付で走っている光景は見る必要は無かった。しかし、いくら嘆いても覆水は盆に返らない。この後に訪れる未来に思いを寄せながら、希望を胸に歩いていきたい。「さらば、六甲山よ。もうあんな出会いは無いだろう。次は笑って再会したい」。宮迫は街灯と家々の灯が消え薄暗い中を、自宅へと向けて姿を消した。その後の宮迫が心から笑える日々が来たのかどうかは誰も知らない。
(終)〈第3章『ROAD to 六甲山』完〉

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