vol1 詩羽のいる街

September 27 [Sun], 2009, 14:46
本文より

「何もしないで世界に負けると思ってる。世界を変える力なんか自分にはないんだって思いこんでる。そんなことはない。まず『世界を変えてみせる』って思わないと、世界は変わらないよ」

「この人は一人で回ってるだけだけど、こっちの人と引き合わせたらもっとうまく回転するんじゃないか――そういう図式がひらめいちゃうのね。そうやってたくさんの歯車を正しく組み合わせていったら、ものすごく大きな機械ができて、大きな仕事ができる・・・・・・」

「一生に何度もないような刺激的でラッキーな日を経験するか。それとも、こんな変な女のことなんか忘れて、波乱なんかない、いつも通りの日常にするか――どっちにする?」



 この現代において親切をして人を動かしていく女の子の話です。

子供が本を読むときその世界がきっとどこかにあるのだと信じてしまうように、ぼくはこの物語のヒロイン、詩羽の存在を信じたくなりました。

 美人でも不美人でもなくお金も家ももたない。そのかわり行く先々で親切をすることで、街の人々を結び付けてゆく。親切することを仕事としていて、見返りとして食事をもらったり泊めてもらったりしている。彼女は必要とされる人同士を引き合わせ、親切を繋ぎ合わせて生きている。何故? みんなが幸せになって楽しくなれば、これ以上のことはないから。読み始めたときは欺瞞的だと疑ってかかっていたのですが、徐々に詩羽と周囲の人々の掛け合いが説得力をもった信頼関係を築いて生きていることが明かされていきます。

売れない漫画化志望の青年、同人誌を請け負う友人、自殺を試みた中学生の女の子、図書館のお姉さん、お寺の住職さん・・・街の人々の視点を通じて詩羽と彼女をとりまく街の人々のようすが描かれていく。互いの綻びがつながるとみるや、詩羽は人と人の媒介となってひょいと結んでしまう。自分ができないことをできるからこそ、他人を尊敬できるという価値観が伝わってきます。

一話完結で、ある話で語り部だった人が次の話では街の人々のひとりとして溶け込んでゆく様子も、なんとも温かい気持ちになります。そんな、一風変わったご近所ファンタジー。

しかしこの本はただのファンタジーと割り切れない要素もいくつかもっています。ひとつはこの現代を舞台としていること。宇宙ステーションがあって恐竜の博物館があって雨に唄う人がいるこの世界を、日常を生きているような視点で描写していること。

そしてもうひとつは、詩羽というヒロインは多くの人を幸せにするためにはルールや偽善性や常識を覆してしまうというスタンスを貫いているということです。

言い換えれば言葉とその論理によって圧倒してしまう力。しかしここには人と人の掛け合いがあります。現代の人がとうてい越えられないような、人と人の隔てをたやすく取り払ってしまう。それが詩羽というヒロインの魅力なのでしょう。

格別の引力をもつヒロインに魅せられてみたい人、人と人の間柄や幸福のあり方に思いをはせる人にオススメの一冊です。

詩羽のいる街 著者 山本弘
角川書店




Produced by 雛田弐珠(読書サークル)

はじまた。

September 27 [Sun], 2009, 14:45
道楽ではじめてみたまし。
誤字ったwww。
でも、みたまし。案外語感がいい。


毒にも薬にもならないから大丈夫なはず。


ブログのほうは、隠れて生きようと思う。
P R
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