第176回映画評「127時間」 

2011年07月02日(土) 21時22分


こんなに映画を観なくなるとは思わなかったっていうくらい、
最近、映画観てなかったー。

というわけで、久々に良い映画観たよ。




姫評:


ダニーボイル監督作。

古くは「トレスポ」、
最近だと「スラムドッグミリオネア」の監督です。


あぁ、もうダニーボイル来た!って感じ。
出だしから、英国人らしい音楽センスでテンションMAX。


実話だし、もう広げようも広がりようもない状況下で、
主人公が全然動けない物語。

なんとなく結末も読めてしまう。


これだけ変化に乏しい素材を、
ダイナミックな娯楽作品にしようと自ら監督に手を挙げるなんて、
ダニーボイル、変人やわ。


で、実際、

映像の撮り方や編集が絶妙で
全く飽きさせない展開なんですよね。

その圧倒的な技量には、感心させられた。
素直に傑作やと思います。


ほぼ全編に渡って一人芝居って聞くと、
トム・ハンクス主演のキャスト・アウェイを思い出すんですが、

どの要素をとっても、こちらの方が上手い。


何より、

生きることの尊さ、
当たり前の大切さ、
他人の有り難さ、

そして困難に直面した時の、
人がそれに立ち向かう力強さ。

まじまじと実感できる作品です。

今こそ是非観て欲しいね。


Don't give up


スパイダーマンの友人ハリー役の印象が強いジェームズ・フランコも、
ここ最近の出演作で確実に演技派の地位を確立してる。

今の日本の役者で、こんな演技ができそうな若手を思いつかないよ。


第175回映画評「トイ・ストーリー3」 

2010年07月11日(日) 22時31分


姫評:

大好きなシリーズだからこそ、
期待するのと同じくらい不安な気持ちもあった。

でも、

観たいと思っていて、まだ観てない人、

何も読まず、何も考えず観に行ってください。

これ以上を望めないくらい最高の完結編です。


<以下ややネタバレ>


yahooの映画レビューで気持ち悪いくらい絶賛評が続いていて、
逆に胡散臭い気がしてたんだけど、

観終わった後は、納得させられた。

前2作と何も変わってない。

子供は笑ってワクワクして、
大いに楽しんで、

大人も童心に帰って楽しみつつ、
ちょっと切なくなる。


何度も言ってきたが、改めてもう一度言おう。

ピクサーアニメが多くの人を魅了するのは、
映像のクオリティだけではなく、物語が素晴らしいから。

物語を丁寧に紡ぐという作業を一度も忘れたことがない
今や唯一の映画スタジオだと思う。

冒頭だけを見てもそれがよく分かる。

前作はSFでバズのゲームの世界、
今回は西部劇、しかも、あぁそういう設定で来たかと。涙

その後も、実によく練られたストーリーで感心。

ポテトヘッドの変身やバズの思わぬ機能で大笑い、
ごみ処理場での大アクションでハラハラ、

それらが取って付けたものではなく、
全て一つのストーリーラインとしてまとまり活かされている。


そして何より、

おもちゃにとっての幸せとは?というテーマが、
3作通して、ただの一度もブレずに描かれたことが素晴らしい。


おもちゃ側の視点に立って幕を開けたこの物語は
始まった時点で結末が決まっていた。

さらなる続編を狙って、その結末を避けたりすることなく、
キッパリとラストを描いたピクサーに拍手を送りたいね。

しかもそのラストに、
子供が巣立っていくときの親の心情までも浮かび上がらせるなんて、
本当に上手すぎる。

少し大人になりきれていないアンディに
あえて選択の機会を与え、成長を促すウッディの姿。


アンディの取る行動が、
今どきの子供にしては綺麗過ぎると思う人もいるかもしれないが、
こうあってほしいと大人は願うだろう。

それにアンディの行動をよく見てほしい。

17歳になった彼は全編を通して、
決してオモチャ達と会話をしない。

そういった筋の通った描き方が流石ピクサーなのだ。


仲間との絆、おもちゃの使命、
そして別れと出会い、


満席の観客席からすすり泣く声が聞こえたのは、
僕の目から思わず涙がこぼれおちたのは、

単に悲しかったからではない。


昔映画館でトイ・ストーリーを観た時は
まだそれほど日本では人気がなくて
六甲アイランドという場所もあり、
海外の子供の方が多かったけど、

当時劇場で観ていた子供たちが
11年経ってコレを観たら感慨深いだろうね。

そして、今、劇場で観ている子供たちも、
数年後これを観た時、違う感想が持てるステキさ。

子供は楽しみ、大人は心を揺さぶられる、
老若男女関係なく満足できる一作です。

是非観て下さいっ!!


個人的にはケン、最高でした。笑


ちなみに3Dでなくても楽しめると思います。


第174回映画評『アイアンマン2』 

2010年06月27日(日) 0時12分


姫評:


前作がかなり楽しい作品だったので
観に行って来たんだけど、

ちょっと期待外れでした 。


前作が面白いと感じたのは
ヒーローの葛藤とかシリアスな内容をとことん避けて
痛快娯楽映画に徹していたからなんですね。

パワードスーツが完成形になるまでの試行錯誤とか
グウィネス・パルトロー演じる秘書との
ひっつきそうでひっつかない絶妙な関係も心地よくて、

アクションを加えた各要素のバランスの取り方が
非常に良かったのもかなり好印象だった。

中年俳優のロバート・ダウニー・Jrが
役柄に上手くハマッて活き活きしてるのも最高だった。


今回の続編、政府にパワードスーツの引き渡しを求められたり、
話がそっち方向に行くのかと思えば、
やはりお気楽路線を突っ走ってくれて良かったんだけど、
いかんせん、新キャラが多すぎる。

どのキャラも中途半端な扱いだし、
おかげで話が散漫になってしまって、
痛快さが奪われてるのがいただけない。

前作のエンドロール後、
他のアメコミ作とリンクさせるためにオマケで入れた設定を
今回は本編内で堂々と展開させたのが間違い。

どう考えても必要ないし、
本筋の進行を邪魔していてテンポがもたつく。

おかげで見所となるラストのアクションまでに
最大の敵であるミッキー・ロークの存在が薄れてしまうという大失態。

スカーレット・ヨハンソンは魅惑的だけど、
続編は欲張りすぎると駄目になる。

トニー・スターク社長の魅力は相変わらずだし、
アクションシーンは迫力あるのに、
非常に残念な続編でした。


あと、個人的にはテレンス・ハワードから
ドン・チードルへの俳優交代も残念。
演技派俳優ドン・チードルは好きだけど
この世界観に合わなくて最後まで違和感があった。

そうだね、日本人俳優で例えるなら
江口洋介の役を香川照之が引き継ぐ感じ。

なぜ変えたんだろうか。


第173回映画評「告白」 

2010年06月06日(日) 17時54分

姫評:

小説はなかなか面白かったんですけど、
映画化と聞いて難しいだろうなと思ってた。

『下妻物語』『嫌われ松子の一生』と
個人的に大絶賛な作品の後、

『パコと魔法の絵本』はイマイチ、

期待半分と不安半分だった中島哲也監督最新作。


予想を遥かに超える怒涛の2時間。
圧倒された。

あの小説の映画化としては、
これ以上ないくらいの出来映え。

心底そう思う。

後半は原作を喰ってしまった印象すらある。

監督なりの解釈もメッセージも工夫もない
ペラッペラな映画化作品も多い中、

これは邦画界が久々に生んだ傑作かと。

気になってる人、観て損はないから劇場へ。

まぁ強烈ですけど



―娘を亡くしたシングルマザーの中学校教師が
3月の終業式、クラス全員の前である告白をする。

娘は事故で死んだのではありません。
このクラスの生徒に殺されたんです。

そして私はその生徒に命の重さを知ってもらうため、
あることを実行しました・・・。

復讐を兼ねた女性教師の命の授業が幕を開ける―



粗筋を読んだだけで分かりますね。
決して気持ちのいい内容ではない。

今の病んだ13歳達の姿がやや誇張され映し出される。

内容が内容なだけに嫌悪感を抱く人だっているかも。
まるで悪夢のような2時間だ。


ただ、命の重さを知らない子供たちが
血生臭い事件を引き起こしている現実を私たちは知っている。

この監督は彼らが抱え込む凄まじい負のエネルギー、
その狂気を確かにスクリーンに叩き込んだ。

しかも言葉で説明するのではなく、
CM界出身の監督らしく、観る者を惹き付ける
スタイリッシュな映像と音楽を使って。

珍しく抑えた色調で通すのかと思えば、
時折りコミカルな映像を挟む中島節も健在。

内容の割には観易い映像に仕上げてしまう。

しかし観易い=軽いわけではなく、
スローモーションを多用したその映像からは、
残忍で刃のような乾いた空気が溢れだす。

そして、放たれた負のエネルギーが反転し、
倍になって自分を襲う恐怖。

ラストの一幕は、恐ろしいと感じながら
観客に言い知れぬ満足感を与えるのも事実。

中島哲也監督の匠の技を堪能してほしい。


キャスティングも見事。
俳優の持つ個性を引き出すのが上手い監督だとは思っていたけど、
本作の松たか子には驚かされた。

あまり好きではない女優さんだったけど、
一皮むけた印象。

これは『嫌われ松子』の中谷美紀と同じく
絶賛されて然るべき演技だと思う。

生徒役も正真正銘13歳の子供達から
オーディションで選んだというだけあって、
全員が演技とは思えないリアルを醸し出している。

個人的にはいろんな意味でヤバイ熱血教師を演じた
岡田将生に一票入れたい。


悪意の塊のように感じる人もいるだろうし、
実際この映画に救いはない。

でも北野武や井筒監督の低能な暴力描写に比べれば
現代社会の心の闇を抽出した本作に
観る価値を見出すことは容易い。

それにこれは、エンターテインメントという形で包装された
凄惨で残酷な命の授業。

命の重さを考える機会になるはずだ。


人気の映画ブログはこちら

第172回映画評「ハート・ロッカー」 

2010年05月30日(日) 2時53分


姫評:


久々のガイ・ピアース登場だけで
テンションが上がりました。笑

主要人物はあまり知られてない人ばっかりなのに、
脇役がチョコチョコ豪華な一作。


―2004年夏、ウィリアム・ジェームズが
爆発物処理班のリーダーとして赴任して来る。

まるで死に対する恐れがないかのように振る舞い、
いつ爆発するかわからない爆弾のコードを切り信管を抜く手順を、
むしろ楽しんでいるようにも見えるウィリアム。

時にチームプレーを無視する彼の姿に
同僚達は不安を募らせていく。

ブラボー中隊、任務明けまで、あと38日
果たして彼らは無事生きて帰ることができるのだろうか―



賞を取った映画=多くの人に愛される映画
であるわけではないのは知られてること。

特に最近のアカデミー賞は、時に凄く政治的で、
その年の代表作という一面を失いかけている気がする。


本作はアカデミー賞作品賞はじめ
6部門を受賞した話題作。

僕はこれがアカデミー賞作品賞に
相応しいとは思わなかった。


いや、作品の出来は文句なしに素晴らしい。

これまであまりスポットライトを浴びていなかった、
イラクにおける米軍の爆発物処理班に焦点をあて、

その死と隣り合わせの任務を、
徹底したリアリズムの中で描き、

イラクの異常な状況と合わせて
観客に凄まじいまでの緊迫感を味わわせる。

とても女性監督が撮ったものとは思えない
ダイナミックな演出で、絶賛されるだけのことはある。

とにかく2時間緊張しっぱなしで、
観終わった後、とてつもない疲労感を感じたくらいだ。



作品の切り口も斬新。

所謂、戦争ものに有りがちな
血生臭い描写で戦争の悲惨さを訴えたり、
政治的側面に立ったシニカルさを用意する
なんてことはほとんどなく、

冒頭で語られる
「戦争での高揚感は、ときに激しい中毒になる」
この状況を主人公の兵士を通してひたすら描くのだ。

本作の白眉は何と言ってもラストの
ショッピングセンターだろう。

それまでの全ての流れが、
そこに集約されるように出来ていて、

たった1ショットで作品のテーマを完璧に語ってしまう
かなりの名シーンになっている。


作品の出来に文句はなかった。


ただ僕が気になったのは、
戦争をテーマにした映画に器用さが必要なのかという部分。

「どうせ死ぬのなら気持ちよく死にたい」、
そう言って防護服を脱ぎ捨てて
大量の起爆装置を解除する行為は狂気を描いたんだろうが、
見ようによってはカッコ良く見えるんじゃないかということ。

所謂戦争ものではないがために、
反戦のメッセージは薄まってしまった印象なのだ。

結果、手に汗握るが胸にはあまり響かない。
理解は出来るが、他人事で終わる。

多くの観客にとっては
「イラクって怖いね、爆弾処理って大変だね」
で終わってしまう作品になっている気がして残念だ。


作品の出来だけで判断するなら
批評家協会賞で十分。

多くの観客の心を捉えて離さない、
そんな作品にこそオスカーをあげてほしいな。

第171回映画評「シャッター・アイランド」 

2010年05月19日(水) 23時49分


姫評:


これは観なかった人、正解かもしれません。笑

褒めれる所は褒めようと思いますが
最終的には辛口です

だって・・・

ねぇ・・・


内容はこんな感じ。

ある事件の捜査のために、
精神病を患った犯罪者ばかりを集めた島に向かう
連邦保安官のテディと相棒のチャック。

その事件とは完全な密室から女性患者が
失踪を遂げるという難解な事件だった。

謎を追うテディだが、
関係者の怪しい態度にも翻弄され
捜査は進展しない。

焦るテディは、
島に隠されたある秘密に気付き・・・


まず、さすがスコセッシ監督で
醸し出す雰囲気はバッチリでした。

序盤から異様なムードが漂い、
画の作りが相変わらず力強い。

特に灰や書類、色んな物が舞い落ちるシーンは印象的。
中にはショッキングなものも有り、
インパクトの強い描写で観客を掴みます。


一方ディカプリオ君は
徐々に混乱していく様子や
彼が抱えるトラウマとの対峙などを上手く演じており、
観客の視点を彼の視点と同化させることに成功してます。


では何が悪かったのか。

実にシンプルである。


オチが余りに拍子抜けであること。


ほとんどの人が途中で気付いてしまうのではないだろうか。

鈍感な僕でさえ、かなり早い段階で気付いて
中盤には確信に変わってしまいました。

その確信を裏切ってほしいと願ったわけだが、
まぁ見事に的中するという・・・

これがB級作品を期待するものなら有りかもしれないが、
どう考えてもA級を期待する本作でアレはない。

その分、ネタをばらした後の展開は少し頑張った。

ある意味で、最大のオチはネタばらしの後
一番最後にやって来るのだが、

ただその最後のオチも、あまりにやるせなく
ゆえに、鬱蒼とした暗い後味になってしまい、
予想通りの展開でガッカリしてしまった気分を、
さらに追い打ちをかけて落とし込む結果に。

うーん・・・

描写にいくら長けていても、
プロット・脚本が駄目なら全部駄目という
悪い見本のような作品でした。

もう上映は終わってしまったけど、
これからDVDが出たら観ようと思う人は、

オチには期待せず、
雰囲気を楽しむ気持ちで観ましょう。

伏線は細かい所にまでシッカリ張っていたので、
二度見して楽しんだりはできるね。


因みにですね、
個人的にはスコセッシ×ディカプリオの組み合わせは
良い化学反応を生んでいない気がする。

元々ディカプリオ君はギルバート・グレイプに代表されるような
繊細な表現力を必要とされる演技で
実力を発揮するタイプでして、

スコセッシの画の中に入ると、
彼の良さがやや奪われる気がする。

「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」みたいな作品にもまた出てほしいなと。

第170回映画評「第9地区」 

2010年05月16日(日) 15時03分



姫評:

これ、「B級映画でしょ」ってスルーした人、
後悔してください。

B級映画的な面白さのみを期待していたら、
とんでもないクオリティの高さにビビリました!!


では今日は思いっきり褒めてみようと思います


まずストーリー展開が全く予想できない。

あまりに自由な物語なため、
次に何が起こるかサッパリ分からず、
スクリーンに釘付けにされるんです。

出足だけを見て、最終的な着地点を予想出来た人なんて
恐らくいないんじゃないかと思う。

また、ジェットコースターに乗ったかのような
激しい展開の中で心に触れるシーンもあり、

比較的低予算でここまで見事な作品が出来るとは、恐るべしだ。

パラノーマル・アクティビティは低予算を逆手に取った良作だけど、
本作は低予算を感じさせない傑作。

大スターがいなくても
予算がなくても
3Dに出来なくても

アイデアとプロットがしっかりしていれば
傑作は生み出せるという良い例になった気がします。


アカデミー賞の作品賞にノミネートと聞いて、
何の冗談?と思ってたんですが、

こういう作品も見逃さないあたりは流石。



おおまかな舞台設定はこんな感じ。


巨大宇宙船が南アフリカのヨハネスブルグ上空に飛来したのは28年前。

何の動きもなく上空で停止したままの
巨大宇宙船内を探索し、発見したのは・・・


まるで大きいエビのような姿をした
大量の宇宙人


しかも彼らは


弱りきっていた


対処に困った地球人は、
ヨハネスブルグに第9地区という区域を設け、彼らを隔離する。

かくして28年が経過し、
第9地区はスラム化、

税金で暮らし、しかも素行不良なエビ達に
エハネスブルグの住民達からは不満が噴出。

そこで、彼らをさらに遠く離れた場所
第10地区に隔離するため計画が練られ

主人公ヴィカスは移動に応じるサインを求めに
第9地区へと足を踏み入れるのだが・・・



宇宙人ものっていうのは、だいたいパターン決まっていて

襲撃してくる or 仲良くなる

この2通りくらいしかなかったのに、

地上の難民にしてしまうという発想。
まさにアイデアの勝利ですね。

しかも、巧いなと思うのは場所がヨハネスブルグですよ。
世界で最も治安の悪い都市として悪名高い場所。

そして南アフリカ。


第9地区という設定自体に、
アパルトヘイトの歴史を投影しているのは明らかで、
だから妙なリアリティがあるんです。

南アフリカ出身の監督が
そこに強いメッセージを込めているのは確かなんですが、
そういう社会問題の提起として
説教臭い作品にあえてしなかったのが良い。

映画を楽しむ中で自然に感じてくれればいいんだと。

そしてそれは見事に成功しています。

堅苦しさとは終始無縁で、
ミステリーあり、アクションあり、
そして最後はハートウォーミングで終わるという・・・

それをなんの違和感も感じさせずに展開させる超絶技巧。
この監督の才能、恐ろしい。


B級テイストに溢れてるし
結構、やりたい放題にやってるのに、

肝心な所で核心を突いてくる。

主人公だって被害者なんだけど
自分勝手な奴で、ヒーローにはならない。

人間の本質的な汚い部分を
さらけ出していて、これまたリアル。

そしてそんな主人公のおかげで
おそらく観客の多くはラストに向かうにつれ

エビちゃんの方に愛着がわくという・・・


これ!!

アバター以上に難易度は高いハズ。


だってメチャクチャ気持ち悪いんですから。


その気持ち悪さ、

青いナヴィ族やE.T.なんて比較にならないほどです。


本作ではある事件をきっかけに
差別される側の立場を思い知らせる仕掛けがあるんですが、
その仕掛けこそが真骨頂。

アバターを見た時、見事な演出だったと書きましたが
本作は完全にアバターを超えちゃってるんじゃないかと。

お見事です。


映画というものが誕生して100年くらいですか。

文学に比べればまだまだ歴史の浅い文化ですが、
すでに新しい物語を生むのは困難になってきている。

そんな中で、
これだけ斬新なストーリー展開を生み出せる才能を
決して見逃さないハリウッドはやはり素晴らしいよ。


アバターは、映像表現の新しい可能性を見せてくれましたが、

第9地区は、物語だってまだまだ工夫ができるんだということを
思い知らせてくれました。

ありがとう。

そして続編があるなら見たいよ。

第169回映画評「アリス・イン・ワンダーランド」 

2010年05月15日(土) 0時34分


姫評:

そこそこ面白かった
という意見と、

イマイチだった
という意見と、

僕の周りで観た人の感想は
見事に真っ二つに分かれてて、

前者だった人も「面白い!」ではなく
「そこそこ」「まぁまぁ」が頭につくので
あまり期待せずに観たんですが・・・


どこに面白さを見出せばいいのかサッパリ分からないほど、
僕には退屈極まりない映画でした


はい、今日はちょっと辛口です


全世界的に期待された作品だったと思います。

ティム・バートン監督+ジョニー・デップのコンビ、

「不思議の国のアリス」の続編という設定、

ジョニー・デップの役がイカレ帽子屋と聞いて
ピッタリだと思った人が何人いるやら。


作品を観てまずビックリしたのは、


ただひたすら、


真面目


なんです。


なんとジョニー・デップが演じるイカレ帽子屋ですら


真面目


なんです。



ティム・バートン監督作品ですよ。


彼の作品と聞いて

『真面目』を期待する映画ファンなんていますかね


彼らしい遊び心は所々あるんですが、
なにしろ物語に面白みがゼロ。


いくらアリスの成長物語をベースにするにしても、
彼女がどうやって成長していくのか
もう少しファンタジーを活かした展開はできなかったものか。

全てが簡単に片づけられていて説得力も欠けているし。


しかも、伝説か何か知りませんが
序盤に結末を観客に伝えるという恐ろしいサービス精神。

クライマックスは最後の戦い?

そりゃハラハラドキドキしますよね。


映像もディズニー名作アニメの実写化という枠を超えず、
既視感に襲われるものばかり。

ワンダーランドと言いながら
ワンダーな感じはほとんどしません。

「不思議の国のアリス」という原作ものの縛りを振り解いて
ティム・バートンが描くワンダーランドが見たかった。


なんというか、不思議の国のアリスというより
同じくディズニーが実写化した「ナルニア国物語」の
スピンオフでも観てるような気分でした。


3D映像に至っては、
ワンダーランドに行くまでのシーンで
3Dになっていない所もありましたし、

2Dで撮ったものを3D用に変換したというだけあって、
あ、奥行き感じるなっていう程度です。

特筆すべき点はありませんでした。


設定をよくよく考えてみると、
ティム・バートンの当初の設定は
逆だったのではないかと勘ぐってしまう。

普通の者たちが支配する世界に普通じゃないアリスが行って
普通ではないがために虐げられた者たちと共に戦う。

イカレ帽子屋も普通ではないほうだと思うし、
ティム・バートンが描いてきたこれまでの世界観にも
逆設定の方がシックリ馴染む。


キャラクター描写を思い出してほしい、

赤の女王に対するあれほど深い描き込みに対して、

白の女王への白々しい描き方!!
あの嘘くさい動作!!笑

ティム・バートンがどちらのキャラクターに
愛情を注いでいるかは一目瞭然でしょ。


ディズニーコードが外れて自由に描けていたら

もっと違ったワンダーランドが見れたのかもしれない。

第168回映画評「パラノーマル・アクティビティ」 

2010年02月04日(木) 15時25分


姫評:

侮ってた。


怖いよ〜っコレ



ただし、おそらくDVDで観ても全く怖くないと思います。

小さな動きや音に敏感になれるスクリーンでしか
感じ得ない恐怖かと。

観たいと思ってる方はお急ぎ映画館へ。

CMもトレーラーも以下の文章も何も見ずに映画館へ。



(以下そんなにネタバレはしてないハズ)



フェイク・ドキュメンタリーと聞いて、
またかーっと思ったけど、
こういう進化系なら全然有り。

偽ドキュメンタリーのホラーで
真っ先に思い浮かべるのが、
やっぱりブレアウィッチでしょ。

あれは、発想と宣伝の仕方は確かに面白かったけど、
実際撮られてる映像も内容も
もひとつ怖くなかったんですよね。

登場人物達と一緒に観客にも怪奇現象を体験させるという意味で、
ブレア・ウィッチと目指す所は同じですが、
こちらの方が完成度は遥かに高いと感じました。


それでは。

今日はわたしー、絶賛したいと思いまーす



観てる間は怖い、

観終わった後は巧い。

そんな感想が出る作品でした。


一緒に観たホラー好きな友達と、
上手いし巧いなと小一時間語れるくらい。笑

いや、ホントに。


「これくらいならオレでも撮れる」
とかいう小童がいるようですが、
バカ言ってんじゃねーよ。

もの凄く緻密な演出技法を
積み重ねた上に成立した映画だぞ。

この監督は相当研究したんじゃないですか。


例えばこの作品、
監督自身の家で撮影したそうですが、

舞台となる寝室をあの部屋にしなければ、
あの緊迫感は絶対に生まれなかったし、

カメラを固定する位置も
正確にあの位置でなければならなかった。

さらに、あの位置にカメラを固定するなら、
カメラの時刻表示は右下でなければならない。

計算し尽くされてます。


僕が特に唸ったのは、時刻表示。

こいつがあるから生まれる恐怖もあれば、
こいつのせいでチラ見の視点移動が発生して
一瞬のスキを許すことになる。


もちろん映像にも一工夫。

固定状態からちょっと手ブレなハンディへと
抜群のタイミングで切り替わり、
延々同じような映像を見せることを回避。

加えて、
低予算でも古典的な技法を使い
シッカリとホラー映像にしてきた。

元々映像がハンディカムで粗いだから、
全然安っぽく映らない。
むしろCGなんか使ってあれ以上やると
余計に偽物感が出たと思う。

寝ている間に起こるという身近な状況設定の中、
日常→非日常へと徐々に崩れていく過程も
遅過ぎず早過ぎずで。


一つでもやり過ぎたら、
笑いが生じたり、あるいは飽きたり、リアリティを失うという
際どいバランス感覚が求められる中、

寸分の狂いなくラストへ持って行った
抜群のセンスは、なるほどセンセーショナルだ。

ジョーズで「見えない見せない」の映像に拘って
恐怖演出をやってのけたスピルバーグが
この作品を絶賛しているのも頷けるってもんです。

これは見て損はないですね。


因みに、カップルの男の方にはイライラします。

自分では解決できない出来事も
男のプライドという名のもとに
自分で処理しようとする。

そんな男子に男気を感じ、
惹かれる乙女は気を付けよ。


大変な目に遭いますよ・・・



余談ですが、

YouTubeなんかをちょっと探せば、
カメラに幽霊が映る動画なんて沢山あるのに
(まぁほとんどがなんちゃって心霊動画ですが)

こういう作品の発想が今まで出なかったことが不思議。

やっぱり発想と工夫ですね。

第167回映画評「ジュリー&ジュリア」 

2010年01月15日(金) 0時09分


姫評:

こういう映画を観に行って、
純粋に楽しめてしまうあたりが、

乙女疑惑の出る所以なのだろうか


素敵な可愛い映画だったよ。


料理本を書いて、料理番組に出演、
アメリカで有名になったジュリア・チャイルドと、

彼女の残した料理本のレシピを一年で全部作り
ブログで報告しようとするニュヨーカーのジュリー。

決して出会うことのない二人の人生の一部を描いた
コミカルムービーです。


時代も違うし、送っている生活も違う、
性格だって全然違うのに、

何だか物足りない現状を変えたい、
何かを始めたいと思い、

料理にハマっていく姿が
現代と過去で見事にシンクロするのは爽快でした。

挫折や苦悩もそれとなく盛り込んであるんだけど、
その描写にはあまり注力せず、

「そんなの当たり前、でも料理って楽しいでしょ。
 さぁマイペースに続けよう、やり遂げよう」

っていう明るく前向きな姿勢が素敵。

無謀な挑戦に挑む現代のOLジュリーを演じた
人気急上昇中のエイミー・アダムスも、
リアルで可愛くて良かったんですが、

何と言っても、やっぱり
メリル・ストリープなんです、見所は。

彼女が演じるジュリア、愛し過ぎるだろ。
こんな可愛いオバチャンは反則って思いました。

最も好きなのは「食べること」、
型破りで物怖じしない性格、

男だらけの料理学校でも負けん気を発揮したり、
彼女の行動を見てると思わず微笑んでしまう。

今回、ややオーバーアクト気味なんですけど、
それがジュリア・チャイルドの魅力を爆発させてるんです。

また、不意打ちで一瞬だけ見せる涙。
それだけで、彼女が背負っていたたった一つの悩みを
観客に理解させるんだから、恐れ入る。

こんなにどの役も自然にハマる女優はいないよ。
圧巻、メリル・ストリープ。


あぁそうそう、
あんな高カロリーそうな料理を毎日食べてても
全然太らないのはファンタジーだなって思いました。笑

ジュリーの彼氏の食べっぷり、最高です!!

何が起きるわけでもないけど、
見終わった後に笑顔になれて、
美味しくご飯が食べれる映画。

そんできっと、料理を作らずとも
こう言いたくなります。

ボーナペティ!


2011年07月
« 前の月  |  次の月 »
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
最新コメント
アイコン画像
» 第111回映画評「ゲド戦記」 (2006年08月20日)
アイコン画像本マユ
» 第111回映画評「ゲド戦記」 (2006年08月16日)
アイコン画像でんちゅう
» 復活! (2006年08月13日)
アイコン画像ぽち
» 復活! (2006年08月12日)
アイコン画像きゅう
» 復活! (2006年08月10日)
アイコン画像ぽち
» ニュースである (2006年07月07日)
アイコン画像
» 第105回映画評「CARS カーズ」 (2006年06月28日)
アイコン画像本マユ
» 第105回映画評「CARS カーズ」 (2006年06月27日)
アイコン画像れもん
» 第74回映画評「あらしのよるに」 (2006年03月23日)
アイコン画像きゅう
» 第78回映画評「フライト・プラン」 (2006年03月20日)
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:himeten
読者になる
Yapme!一覧
読者になる