迷える子羊 

May 24 [Thu], 2007, 23:24
わたしは、ただひたすらに、「自由」を求めていた。







あーめーのーきーさーきー
てーんーのーもーんー…

聖歌隊の歌声が響いている。

朝一番にお御堂に入り、お祈りをすませた後、私はそそくさと神様の家をあとにした。


「かみさま、わたしはしあわせです。」


…雲ひとつなく晴れ渡った空を見上げながら、言う。

私は恵まれている。
幼稚舎からこの学園に通い、高等部にあがった今まで、私は生きていくことに何の不自由も感じなかった。
食べることに困ったこともなく、
住むところに困ったこともなく、
着ることに困ったこともなく。

お父様もお母様も本当に私のことをおもってくれて、
シスターもクラスメイトも本当に優しい方ばかりで。

私は本当に恵まれている。


なのに。



わたしのこのこころの空白はなんだろう。





私は我が侭なのだ。
ないものばかりねだっている。

恵まれた環境に浸かりきっていながら、
新しい世界に連れて行ってくれる誰かを求めてやまない。




「かみさま、わたしはわがままなのです。」


でも、どうか。


「いっそわたしを、かみさまのもとへつれていってください。」





そよそよと、みどりが揺れた。

そっと目をとじる。


こうして芝生に横になって目を閉じると、
わたしという存在は、世界にとけてなくなってしまうように、思う。

それでいい。

わたしはこのまま風になってしまいたいと思った。





そのとき。




「おっかしいなぁ〜?」





みたことのない人だ。




「えぇと…、こっちからはいってきたから…あれ?寮はどっちだ??」





転校生…かしら。

めずらしい。
この時期、この閉鎖された学園に新しい人がはいってくるなんて。


「えぇと・・・?」


キョロキョロと辺りをみまわしている。
…なんだか、新鮮だな。
あの人は、まだこの学園に染まっていない。

いいな。


「あの…」

彼女が私にきづく。



「お困りですか…?」





振り返った彼女からは、どこか自由の香りがした。




出逢ったひと。 

May 23 [Wed], 2007, 23:01
きっと。
そのひとはかみさまというせかいをしっている。






「あ…っつーいっ…。」




夏。
ジリジリと迫りくる日差しの中、私は今必死に自転車をこいでいる。
それというのも、転校初日の今日にかぎって、母が私を起こすのを放棄したせいだ。

今日から私は「女子校生」になる。
それも、きっちり寮に箱詰めになった、「お嬢さま」になる。
今まで自由奔放に育てられてきた私が、だ。
将来がどうとか、学歴がどうとか、
そういうことは私にはわからないが、なるといったらなる。
理由はとくにない。
親の都合だ。

「お嬢様校ってだけあって…なんてデカさだよっ…。正面玄関って、どっちだ?」

自転車とばしてきただけあって、息があがる。
心臓が落ち着かない。
いや、それは自転車のせいだけではないか…。

「えぇと…、こっちからはいってきたから…あれ?寮はどっちだ??」



「あの…。」






みると、かわいらしい女の子がこちらをみつめていた。





「お困りですか…?」






暑い日差しのなか、
彼女のまわりだけは、切り取ったように涼やかだった。
P R
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