マグダレンの祈り  197

February 11 [Sat], 2012, 21:12


ブログ197 マグダレンの祈り

アイルランドの映画は、
独立戦争と
宗教と
IRAがらみ、それに貧困がそのテーマの4本柱だが、
2002年のアイルランド・イギリス合作映画「マグダレンの祈り」は、アイルランドで生きる人々の規範であるカトリックの、とある修道院を描く。
1996年までアイルランドに実在したマグダレン修道院の60年代後半が舞台だ。
そこで4年以上を過ごした3人の女性が主人公で、制作の01年時点での彼女らの消息まであるので、ほぼ実話なのだろう。

その女子修道院は更生施設も兼ねていた。
同期の3人は、
親戚の結婚式でいとこの男の子にレイプされてしまった A。責任は「そういう事をさせてしまったオンナ」にあり、父親と神父によって Aはマグダレンへ追われる。
孤児院で育った B。美貌ゆえに門の外へ来た男の子にからかわれる。塀越しに受け答えをするふしだらさに「問題を起こすかもしれない罰」で、マグダレンへ。
未婚のまま子を産んでしまった C。その両親は赤ちゃんを一瞥だにせず孤児院へおくり、汚らわしい娘を嫌ってマグダレンへ追いやる。やさしい女の子だが、泣く泣く赤ちゃんを手放した。
性的堕落を殺人罪と同じ重罪として、悔悛したマグダラのマリアのように性を捨てることを要求された。
当時のアイルランドは、教会の価値観が生活基準のすべてだった。

家族に見捨てられた彼女らを待っていた修道院の日常とは、
院内の洗濯工場での厳しい労働と虐待だった。賃金はない。
外界と隔絶された世界で、とに角「もう出られないのよ」と言われた。
世間体を失って社会に居場所がないお前たちは、と。
年に52週、早朝から深夜まで。
当時の洗濯は手洗いだ。

神への愛以外に喜びを見出してはいけない
すべての欲を捨てなければならない
仲間内でしゃべったり、少しでも抵抗すると鞭ではげしく打たれた。
ハサミで首を刺され、髪を切られ剃られた。
子どもが同じ修道院の乳児院にいても、一目見ることもならなかった

すっ裸で一列に並ばされ、シスターたちに裸の品定めをされて笑われた。
泣きながら耐えた。
シスターたちの豪華な食事を眺めながら、収容者はジャガイモばかりを食べさせられた。

ミサや懺悔(告解)のためにしばしば神父が来院した。
Dは、告解室で懺悔中に神父に自慰の手伝いをさせられた。
性の知識がない彼女らがそれをシスターに訴えると、指導という名の一層の虐待が待っていた。

諦めてここを出ることは不可能だと思われた。
脱出して父親に引きずり戻された子もいる。
一生をその施設で過ごす女性も多い。
それでも4年を過ぎてから、成長したA の弟が姉を連れ戻しに来てくれた。その後教師になって独身を通した。
その後 BとCは脱出に成功した。Bは美容師となり、Cは平凡な結婚をして2人の子どもに恵まれたという。
Dは、いじめへの抵抗に手を焼いたシスターによって精神病院へ送られた。

DVDの特典映像「マグダレン修道院の真実」には、当時不当にも監禁され、早い時代に子どもを取られ、その施設を出て結婚し、50年後にその時の子どものことを家族に打ち明けた女性などの証言もある。
叩き込まれた「性の罪悪視」、(性的を含む)虐待のトラウマで長く苦しみ、結婚がうまくいかなかった例も多いようだ。

そのような修道院は当時アイルランドに10か所あり、3万人以上の女性たちが収容・監禁されていたようだ。
実在したリムリックの大きな修道院と乳児院の写真も特典映像にあった。
「性」の正視をひたすら避け、堕胎の許されないあの国では、子どもはあふれている。
そしてそれが貧困をまたもたらす。
何ゆえにそれほどまでに教会の力が強かったのか? の理由の一つは、・・・
絶対的な貧困の前に、慈善組織を持つ教会が生存だけは保障してくれるということだったのか?

60年代後半と言えばしかし、アメリカではウーマンリブ運動がおこり、女性の権利、断る権利がやっと自覚されたころだった。


監督は先ごろの映画「戦火の馬」にも俳優で出演したピーター・マラン。
主にアイルランドの俳優を使い、それほどビッグな俳優は出ていない。


P.S 
教義はともかくとして、カトリックのフェミニストは勿論いる。
この過去があるからこそ、とても先鋭的に頑張っているとのことだ。
私の友人・知人もそうだが。

アップの次の日に、最後の「P.S」を加筆修正しました。

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