ゼロス=メタリオム。
彼は恐怖に揺らぐ眼が好きだった。
それが同族であれ、人間であれ。
彼に敵う存在など数える程しか存在しなかったのだから。
そしてその恐怖は彼に、何よりの至福を与える食事なのだから。
はじめて深く人間と関わったのは、敬愛の念を抱いている、自らの母とも言うべき存在からの命令からだった。
人の持つ異界黙示録の写本を探し処分する。
彼の力をもってすれば、大した仕事でもなかった。
そして彼は出会った。
まずゼルガディス。
その合成獣にされた人間は、ギラギラとした瞳で写本を求めていた。
彼の得体の知れなさはどこかで感じていたようだが、恐怖に揺らぐような意志ではないようだった。
どんなことでも跳ね除ける、諦めないという意志が精神体からも伝わってきた。
それはそれで彼の興味を惹くものではあったが、その次だ。
リナ=インバース。
彼から魔血玉を詐欺のような手口で買い取り、魔法を封じられてなお諦めるということも知らない人間。
光の剣を持つ男と、正義を叫ぶ(これは彼にとっては勘弁して欲しい所であったが)娘を共に連れ、ゼルガディスとも知り合いという不思議な娘だった。
魔族だとわかっていてすら、物怖じしない人間。
その瞳はいつも魔族とは相容れない色をしていた。
いや、光の剣を持つ男ガウリイ=ガブリエフも、正義かぶれのアメリアも、彼が知る人間達とは何かが違っていた。
おそらく全てはリナ=インバースが中心なのだ。
彼女は人を巻き込み、そして人を引きずり上げる。
全ての理、しがらみの破壊者、そして再生者。
その力を持っている。
それが信頼などという甘い感情の無い魔族である彼にもわかった。
面白い。
退屈である世界、上下関係の揺らがぬ世界にいたゼロスはそう思った。
どこまで足掻けるのだろうか、あの矮小な身体と仲間で。
彼らの眼が、彼女の眼が、恐怖に揺らぐ日が来るのだろうか。
それを見てみたいと思うと同時に、見たくも無いと思う。
彼は面白い玩具を手に入れた子供のように笑顔で微笑んだ。
一見無邪気とも言える程自然な笑顔は、やはり人とは相容れない色をしていたけれど。
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お題配布元
OL
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暗闇と言えばやはり魔族は外せないかな、と。
よく考えればゼロスを真面目に書いたのは初めてかもしれません。