27年前の4月。
みぞおちが大きくくぼんだ赤ん坊が、長野の山奥で生まれた。両親は散々悩んだあげく、わたしという名に決めた。
5歳の秋。中国で李さんがコショウを撒き散らし、くしゃみをしたので、東京で寝ていた女の鼻がとれた。
10歳と23歳のある金曜日、春一番が強く吹き、10歳のときには右目が、23のときには左目が飛び出し、沖縄の砂浜の上を転がった。
アルルの庭で真っ白な猫が笑ったときなどは、苦手な制服を来ていた女の左腕がポロリと落ちた。
その他にも口が割けたり、皮膚がごっそり剥がれたりと、本当にたくさんのことが起き、かくして女は継ぎはぎだらけのからだになった。
縫い目を見るたびに悲しくなったが、雨の日と雪の日になると、傷口がこそばゆくなるので、女はからだをくねらせながら始終笑っている。