杉原祐之句集『先つぽへ』を読む

May 23 [Sun], 2010, 11:37
杉原祐之(すぎはら・ゆうし)さんは、
「夏潮」「山茶花」に所属されている
若手作家です。1979年生まれということは、私より3歳若い。
このたび句集『先つぽへ』を上梓され、
私にも一部ご恵贈いただいたので、さっそく拝読、
まずは感銘句から紹介させていただきます。

 水鉄砲撃つて喜び撃たれて喜び

 新緑の谷へ落ちゆくダムの壁

 ガードレールに囲まれてゐる稲田かな

 滑り台の天辺混める秋日和

 菜の花の畑の真中の治水の碑

 風鈴の短冊回りつつ鳴らぬ

 除雪車は雪に乗り上げ道譲る

 高層のビルより夕立見下しぬ

 溶岩に草むらありてきりぎりす

 両の掌で包み込みつつ袋掛

 雲の峰近づいて来てねずみ色

 余り苗魔除の如く置かれたる

 剥出しの肩甲骨の日焼かな

 マンションの住人にして鯊仲間

 除雪車の隊伍を組める滑走路

 両の手で二つの凧を操れる

 西瓜提げ渡し舟より揚り来る

 転任を校歌で送り島うらら

 石段と石段交差桜葉に

 仮名書きに記す海女の名洗面器

 登山靴の中敷並べ干してあり

 蜻蛉の目覚めの翅の重さかな

身近な素材を着実に詠み込まれています。
そして一冊を通して拝読して特徴的なのはその文体。
句の途中の切れで意味を断絶もしくは飛躍させる構成の句は
ほとんどなく、一息に言い下す形の句が多い。
『新撰21』収録の中本真人さん(同じく「山茶花」所属)の
 文体についても同様の印象を持った記憶があります。)
内容も、地に足のついた、のびのびとした詠みぶり。
身近な事象を詠みながら不思議と句柄が大きいのは、
この文体に因るものなのだろうか…。

そうして読み進めていった句集の最後の一句、

 狼や山の神々強し頃

句集全体を通して、切字の使用で見ると、
句末の「けり」「かな」はあるが、
句中の「や」による切れは非常に少ない。
それは一息で言い下す文体によるところが大きいように思うのですが、
その最後に「や」の句が配置されているのは非常に印象的。
新たな文体へ踏み出す決意が込められている、と読むのは
深読みに過ぎるかもしれませんが、個人的にはそう感じました。
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