誰でも少額で新興国起業家に融資できる! マイクロファイナンス「kiva」の大進化

February 07 [Tue], 2012, 2:43
誰でも少額で新興国起業家に融資できる!
マイクロファイナンス「kiva」の大進化


 インターネット経由で途上国のビジネスに投資するマイクロファイナンス・サイト、Kiva.orgのアイデアが生まれたのは2004年、アフリカでのことだった。マットとジェシカ・フラニーという若いアメリカ人夫婦が仕事でここを訪れていた。

 夫のマットは、シリコンバレーに本社を置くセットトップボックス開発会社、Tivoのソフトウェア・エンジニア。そして妻のジェシカは、マイクロファイナンス業のコンサルタントで、この時の旅行は、妻のウガンダ出張に夫が同行したものだった。

「マイクロファイナンスをインターネット上でできればおもしろいんじゃないか」

 この時、二人の間にそんなアイデアがひらめいた。そもそも夫はシリコンバレーに戻りたかったが、妻はウガンダに住みたいと願っていた。「二人の結婚を保つためには、インターネットを利用して遠くからでもウガンダで金融の仕事をし続けるられるようにすることが必要だった」と、夫のマットは後に語っている。

 こうして、2005年にKiva.orgのサイトがオープンする。ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行とムハマド・ユヌス氏によって「マイクロファイナンス」が世に知られる1年以上前のことである。そしてkiva.orgは今や、マイクロファイナンスのP2Pサイトとして押しも押されもせぬ存在となっている。

融資は25ドルから可能
返済率は米国より高い


 マイクロファイナンスとは、低所得者や発展途上国向けの少額金融のことである。先進国ではさしたる価値のない金額でも、途上国では店を構えるほどの資金に化けることもある。Kiva.orgもそんな所得と物価の落差を利用した社会貢献ビジネスである。

仕組みはこうだ。Kiva.orgのサイトに行くと、資金を必要としているさまざまな起業家や商売人の写真が並んでいる。併記されているのは、ビジネスの内容や必要資金の内訳など。

 たとえば、ガーナで縫製業を営むハシュメド・バーバ氏(37歳)は、ろうけつ染めの染料と布を買うための400ドルを募っている。この商売を始めて6年だが、資金がたくさんあれば原材料を安価に仕入れてコストを下げ、儲けをさらに次へ投資して、自転車操業状態から脱することができる。同氏はこの資金を7ヵ月で返済するとサイト上で約束している。彼には今、Kiva.orgで必要額の19%に当たる資金が集まったところだ。

 このバーバ氏に金を貸すことを決心したとしよう。Kiva.orgでは25ドル単位での融資ができる。つまり子供の小遣い程度の金で途上国の起業家を援助できるということだ。クレジットカードやペイパルなどの方法でKiva.orgに金を振り込めば融資は完了だ。その後は、サイト上でバーバ氏の商売の報告を読み、7ヵ月後に融資が返済されるのを待つだけだ。

 ただ、途上国と先進国のまったく知らない二人がP2Pで繋がってしまうという、この「生な」融資の仕組みは、これまでなかったものだ。Kiva.orgが、既存のフィランソロピーの概念をすっかり覆してしまったと言われるのもまさにこの点である。

 さて、バーバ氏へ融資した資金はバーバ氏地元のマイクロファイナンス金融機関(MFI)へ送られる。MFIは世界各地でKiva.orgが精査の結果選んだNPO機関で、ここの職員が実際に起業家の元に出向いて融資を行い、返済を受け取る。起業家にとっては「自転車に乗ってやってくる銀行員」である。彼らがやってくるおかげで、農村部に住む起業家や商売人が何時間もかけて都市部へ出かけずにすむ。

 そもそも、発展途上国の通常の銀行では、こうした融資の金利が100%近くなることもあり、小さな商売人が借金できる状況ではない。そうしたギャップの中で、マイクロファイナンスが機能しているわけである。

 Kiva.orgは創設以来3年あまりで、42ヵ国の76000件以上の案件に総額5340万ドル(約49億円)の融資を行ってきた。資金を出したのは、先進国に住む40万人近い普通の人々だ。

 発展途上国の名も知らない商売人に融資を行って、返済されるわけがないと思うかもしれないが、Kiva.orgの返済率はこれまで97.15%と高い。これはアメリカの借金返済率よりもずっといい数字である。専門家によると、途上国の商売人は地元に密着していて流動性が低く、その上かなり保守的に商売を経営して着実に返済することを念頭に置いているという。

 融資した金が返済されると、それをまた別の商売人に貸すこともできる。Kiva.orgでの貸し主1人当たりの案件数は3.71。「融資のいい循環を作り出したい」というのが、Kiva.orgの目標だ。

 Kiva.orgを真似る動きも出てきた。代表的なのがオークションサイトのイーベイ傘下にあるMicroPlaceだ。Kiva.orgとの違いは貸し手に利息が入ること。MicroPlaceはいわばブローカーのような役割で貸し手に証券を売り、1〜4年の間に資金を回収して数パーセントの利息を上乗せして返済する仕組みだ。

 現在のところKiva.orgの貸し手は利息を得られないが、近い将来そのモデルに移行することも照準に入れているようだ。何と言っても、マイクロファイナンス業界の利息は3%にもなるケースがあり、今や大手金融業界が目を付ける新たな開拓領域でもあるのだ。

 Kiva.orgは、フラニー夫妻宅のリビングルームから始まって拡大し、現在は数10人のスタッフを抱えている。手数料は取らず、運営費は個人の寄付金とさまざまな財団からの補助金に頼っている状態だ。

 だが、「マイクロファイナンス」という新たな社会貢献ビジネスモデルを、人々に進んで実践させるKiva.orgには底知れぬ潜在力がある。MFIに対する精査能力、返済履歴などのデータベース化を通して、同サイトがいずれマイクロファイナンスという大産業の信用調査会社に化ける可能性も否めないのである。


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