『こころ』七【後編】 

2006年03月03日(金) 18時23分
  
Kと歩いている時は右手に包帯は巻かれていなかったはずです。
私は四六時中Kを見ているわけでは無かったので自信はありません。
少なくとも今現在は私とKは恋敵なのですから。
しかし、私はまかれていなかったと確信していました。
とするとあの怪我はどうなるという話におのずと発展してゆくことになります。
K自身が事故で自ら怪我をしたと推理をしても先ほどのKの言動で矛盾点が生まれます。
結局は私が何かをしてしまったという結論に至ってしまうのです。
何度考えてもあのKの言動は明らかに私がKに何か危害を加えたと考えるのが普通です。
しかし、私は認めたくなかったのです。
いくら恋敵といってもKは同郷の幼馴染です。その彼に危害を加えた覚えもその気持ちも無いのです。
私は悶々と布団の中でうずくまり暗闇の中つぶやきました。

「僕はKに対して何をしてしまったのだろうか・・・・。」

私のこの言葉は誰にも聞かれることも無く闇の中で消え去ってゆきました。


       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第一章【完】

『こころ』七【前編】 

2006年03月03日(金) 17時34分
私は布団に包まっていました。
何もすることが無くなり私は聞えた『声』のことを考えていました。
確かに聞えた声。
私がKにいった言葉を言った時のことを思い出そうとしました。
あの時私は誰かの言葉の通りに自然と口にしていたのです。
そして変な感覚が私を襲ったのです。
そこまで思い出すと突然頭部全体がキンとなにかに頭に突き刺される痛みと耳鳴りがしました。
私は思わず布団の中で頭を抱え込みうずくまるような形になり痛みが引くのを待っていました。
しかし、いっこうに痛みが治まらないのです。
私の脈拍も次第に早くなってゆきます。私は隣の部屋でおそらく本を読んでいるであろうKに助けを求めようと布団からでて畳の上を這うようにして進みました。
一歩ずつ一歩ずつ・・・・
その移動に比例するように私の痛みも増してゆきました。
冷や汗で衣類が湿っていくのがわかりました。
何時もはそこまで遠く感じなかったKの部屋への道のりは途轍の無い距離を感じさせました。
Kの部屋へとつながる襖に手をかけて物音を立ててKに気づいてもらおうとしました。
案の定Kは私に気づき襖を開けてくれました。
Kは私を抱きかかえて大丈夫かとあせったように聞いてきました。
おそらく私の額や顔に髪の毛がへばりつくほど冷や汗が出ているのに気づいたのでしょう。
そして、私の顔色も悪かったのでしょう。
私は途切れ途切れにKに助けてくれといいました。
そのとき抱きかかえてくれたKの右手の甲に包帯が痛々しく巻かれているのに気づきました。
私は痛みと冷や汗に不快感を感じながらも何故かその包帯はどうしたのかと聞きました。
するとあせったように私を心配を心配していたKの表情行動全てが瞬間的にとまりました。
私は言葉を発するのも辛い状態だったので、視線だけ何かあったのかと送りましたがKは態と気づかない振りをしてしましたが私の目つきが余りにも真剣だったのか「・・・覚えていないのか・・・?」とだけ言いました。
思わず私は「え・・・」と口に出してしまいました。
その言動にKは私が覚えていないと分かり「なんでもない、もうすぐ飯だ」とだけ言い私を布団に寝かせた後再び自室に戻ってゆきました。
私はもう痛みが引いていると感じるよりもKの言葉に驚愕の真実を聞かされた気分でした。
そして、同時に私に『不安』という二文字が頭を押さえつけ始めました。

『こころ』六【後編】 

2006年03月03日(金) 15時38分
*******************************************

眼を覚ませば見慣れた天井が視界に入りました。
部屋の外で誰かが話している声が耳に入りました。
どうやらその声の主は奥さんとKでした。
耳をそばだてて聞いているとどうやら話題は私のことでした。
まだ覚醒していない頭でそのことだけを理解しました。
次第に覚醒してゆき思考が正常に働くようになり私はKの『俺は馬鹿だ』と遠のく意識の中聞えた言葉を思い出しハッと眼を見開き布団から飛び起き部屋の外へ飛び出ました。
我ながらその行動は今でも恥ずかしいものだと感じています。
私はKが奥さんにお嬢さんに対しての恋を打ち明け嫁にくださいといっているのだと勘違いしたのです。
襖を勢いよくあけた私に奥さんとKは驚きました。
奥さんは大丈夫かと聞いてきました。
そして、あの場所で倒れて家までKに運ばれてきたと言うことを教えてもらいました。
Kは私をみて大丈夫かといわずにそのまま部屋に入っていきました。
Kが部屋に入る刹那、Kは私に気の毒そうな目に見えました。
そのKの目が少し引っかかりながらも奥さんと話を二、三交わしました。
最後に、奥さんは私にもう少しでご飯ですからまだ寝ていてもかまいませんよといって居間へ姿を消してゆきました。
廊下に残された私は言われたままに少し寝ることにしました。
自室に戻った私はふと窓際においてある机の上に目が留まりました。
今日大学で借りてきた論文の資料にする心理学の本でした。
今日私が倒れたばかりにKがわざわざ私を運んでくれ持っていた本を机の上に綺麗に整えて置いてくれていました。
私はその本を手に取り頁をパラパラとめくりました。
私の進んだ大学の学部はまだ数少ない心理学専攻の学部でした。
私は論文で精神病の一種である多重人格についてを書こうと以前からさまざまな本を借りては返すといた状態でいました。
おかげで、私はその単元のみ詳しくなった程です。
此処最近その論文のことばかり頭が一杯だったため倒れたのだろうと先ほどの交わした会話の中で奥さんが言っていたので私はそうなのかもしれないと持っていた本を机に戻して布団へ入りました

『こころ』六【前編】 

2006年03月03日(金) 14時55分
スッと私とKの間に冷たい風が吹きました。
しばし私たちは無言でいました。
Kは私をハッと見た後再び地面に目線を向けました。
その表情をみて私は罪悪感の念に駆られました。
そして、私は今自分が何を言ったのかを思い出そうとしました。
聞えた声のとおりに言った言葉をうまく思い出せなかったのです。
思い出そうと考えていても中々思い出せずに心臓の鼓動だけが聞えてきました。
次第にその鼓動は私の五臓や体、精神など私というもの全てを襲いました。
私は恐怖を覚え両耳をふさぎ叫び地面にしゃがみこみました。
それからは徐々に意識が遠のいていくのを感じました。
かすかに残っている記憶は再び私が『精神的向上心の無いものは、馬鹿』だという言葉とKの『俺は馬鹿だ』と開き直った声でした。

私を襲ったものは『嫉妬』という醜い感情だったということを知ったのはもっとあとのことです。
そして、その『嫉妬』によって私たちは粉々に砕けてしまったのです。


『こころ』伍【後編】 

2006年03月03日(金) 14時51分
Kは真言宗の寺の息子として生まれました。
彼は『精進』という言葉が好きでした。
よく私は彼に精進の禁欲について聞かされていました。
たとえ、欲から離れている恋だとしてもKには許されない行為だったのです。
そのころから私はお嬢さんに恋心を抱いていた私はどうしてもそのKの主張を反対しざる得なかったのです。
その反対した時のKの表情は気の毒そう、いや侮蔑の表情でした。
そのKは今はその恋について悩んでいたのです。
今まで自分が積み上げてきたものを蹴散らしてお嬢さんへの想いを告げるか否かを悩んでいたのです。
そのとき私は忘れかけていた声を聞いたのです。
そうです。Kに連れ出される前に聞いた声です。聞いたことのある声でした。
さっきまでかすかに聞えていたものが今は徐々にはっきり聞えてきました。
その声が告げたとおりに口に出しました。

『精神的向上心の無いものは、馬鹿だ』

私はそういった後思い出しました。
それは少し前の話でした。
昔、休みがあれば二人で寺めぐりをしていました。その寺へ訪問した際にその寺についてKは話していたのです。
私は特に宗教に興味は無かったので聞き流していました。
するとKは私に『精神的向上心の無いものは、馬鹿だ』といってきました。
そのときの事で私はKに復讐の意をこめて言ったのではありません。
私はその言葉でKを虚につけ込んだのです。

『こころ』伍【前編】 

2006年03月03日(金) 13時37分
外に出た私とKは無言で歩き続けました。
私はKの様子の異変さにきづいていました。
しかし、その様子からはお嬢さんに対して絶対的な行動に出ていないと感じていました。
何時もは隣で並んで歩いている私とKですが今日は私の後ろにKがついてきているという状態でした。
すると普段余り自分から話を切り出さないKが後ろから私に「どう思う?」
と聞いてきました。
私はお嬢さんのことだろうと最初からかんづいているためどういう意味だか分かっていました。
しかし、そのときの私はKに「何かが?」と前を向いたまま聞いてみました。
それに対してのKの反応を知りたかったのです。
しかし、Kはただ『どう思う?』とだけしか口に出しませんでした。
そういったKの視線は初め私をみて言っていたのがついに地面へ向きました。
地面を見続けているKに私は此れでは話が一向に見えないのだがと後ろにいるKに視線を向け呆れ口調で言ってみました。
するとKは彼の平生と違った態度で、私にお嬢さんのことだと告げました。
実際Kが言った言葉は「その・・・彼女・・・・・」といった感じで口ごもっていました。
案の定お嬢さんのことだと知った私は「あぁ・・」とそっけない感じに言い返しました。
Kは続けてお嬢さんのことで進むべきか退くべきか苦しんでいると話し続けました。
私は立ち止まり振り返りその悩んでいるKに君は退ける覚悟があるのかと問いました。
Kも立ち止まり煩悶の表情でただ苦しいといっただけでした。
本当にKは苦しい表情で右手で顔の右半分を覆い隠すようにあてていました。
「自分の弱さに嫌気がさす・・・俺は一体どうすればいい・・・?俺は自分の・・・」と低くかすれた声で言いました。
どうやら私を呼び出した理由は自分は一体どうすればいいのか、一言でも私が彼の都合のよい返事を言えば彼はあきらめることができると思い私に批判を求めてきたのです。

『こころ』四【後編】 

2006年02月12日(日) 10時47分
はっきりではなくかすかでしたが、確かに聞えた気がしましました。
私はどこから聞えたのかと思い発信源を探す為あたりを見回しました。
辺りは私と同じように論文を書いている者や、読書を楽しむものなどさまざまでした。
私は次第に気のせいかとおもうようになりました。
奇妙な感覚をしながら私は再び資料に眼を向けました。
すると次は違う声で私を呼んでいました。
その声も先ほどと同じようにかすかな声でした。
私は再び顔をあげました、すると目の前に遠慮がちに私を呼んでいるKが眼に入りました。
私は先ほどの声はKの声かと一瞬おもいましたが、
Kの声と先ほどの『こえ』は全く違っているものだったということを思い出し再び不思議な思いをしました。
Kは私のほうへ近づいてきました、徐々に体格のがっしりとしたKの体が視界に大きく入ってきました。
私は読んでいた資料を閉じて私の前に立っているKを見上げました。
ただでさえ、私とKの身長差はあるのに私は今図書館のイスに座っていまるので、何時もより見上げなくてはなりませんでした。
しばらくKは無言で私のほうを見つめていました。
Kは首を痛そうにいる私を見かねて机に両肘をつけて前かがみになり私と目線を合わせてくれました。
Kは元々優しい人間だったのでそういった気遣いは意識的にできる人間でした。
何事だと私は眼でKに聞きました、するとKは私の顔にずっ、と近づけてきました。
私は反射的に後ろに後ずさりました、その後ずさりでイスと床が摩擦でガッとなりました。
私は突然のことで眼があちらこちらと不自然に動いていたのでしょう、Kは近づきすぎたと思い少し後ろに下がりました。
Kは何か言いたげな表情でした。
私とKは長い付き合いのためその表情も読み取ることができました。
しかし、そのときの私は自分から聞くのではなく、K本人からの言葉を待っていました。
Kは私の名前をよんだ後に少し散歩へ行かないかと誘いを出しました。
私は大方Kはお嬢さんのことについてのことだろうと思い承諾しました。

『こころ』四【前編】 

2006年02月12日(日) 9時47分
大学に着いた私とKはそれぞれの場所へと別れていきました。
私は論文の記事を探すべく図書館にいました。
冬の日の光が窓から差し込んで、ほのかに暖かい部屋でした。
私は関連する記事の資料を机に積み上げて一つ一つ読む作業をしていました。
私の専攻は文学の方で教職の職に就きたいとおもっていました。
しかし、その教職の職に就くには心理学についてもとらねばなりませんでした。
元々、心理学というものに興味を抱いていた私には苦にはなりませんでした。
積み上げていた資料も半分に減り私の眼も疲れてきた頃でした。
眼を疲れた私はかけていた眼鏡を外し目頭をつまみ顔を上に向けました。
余り近くのものをみているといけないと思った私は窓の外を見ました。
眼が疲れたときには緑を見ればいいと聞きましたが、あいにく景色は白で彩られていたので、
全く意味が無いとおもいました。
そのときです、誰かが私を呼ぶ『こえ』がしました。

『こころ』参【後編】 

2006年02月07日(火) 21時41分
=3=【後編】

翌朝、Kと私は昨夜のことなど気にもしない様子で朝食をとりました。
今日から私とKは学校でした。
Kの様子は此れといって変化はありませんでした。
Kは何時ものように朝食に出てきたご飯を少し食べて味噌汁を飲むといった状態で食事をとっていました。
私は何時かしらKにそのような食べ方は体によくないと注意をした覚えがありました。
それ以来彼はその行為をしなくなっていましたが、今朝の食べ方をみて彼には余裕が無くなっている事が私の中で確信が生まれました。
しかし、その確信が生まれたからといって私はどうすることもなくただ目の前に出された食事を食べていました。
時間が経ち、そろそろ出る時間だと奥さんがが知らせてくれました。
お嬢さんも学校へと出かける支度をして出てゆきました。
お嬢さんが出て行って数分後に私とKも学校へと足をすすめました。
昨日の雪の所為で道もすべて真っ白な道へと変化していました。
以前までは一緒に並んで歩いていましたが、最近は心境の変化で互いに横に並ぶことを無意識に拒むようになっていきました。
大抵、Kが私の前を歩いていました。
私とKはマフラーを首にまいていたので呼吸をするたびに口の周りに当たっているマフラーの布が温かくなり熱気が篭っていったので、苦しくなりマフラーをずらして口を出しました。
後ろからみえる規則的に白息が見えるKの後姿をみて何故か私は彼は生きているのだ、そして自分もいきているのだと真っ白な世界の中で漠然と感じました。
はたして生きているというのはなんなんだろうか・・・・
今日生きていても明日も生きているという確証も保証も無いのに、『生きる』という言葉を使う。
生きている実感も無ければ死を望んでいるわけでもない。
私は何がしたいのだろうかと次第に昨日感じた自分に対しての恐怖という感情が再びよみがえってきました。
真っ白な世界のなか自分は飲み込まれてゆくのかもしれない。
もし、今此処で自分が車に引かれ死んだらどうなるだろう、私は柄にでもない事を考え始めました。
ハァと吐く息とサクッサクッと一歩ずつ雪を踏みしめる音だけが二人の周りの唯一の音でした。
しかし、私はまだ気づいていなかったのです。
Kのほかにもう一人出てくることを・・・・

『こころ』参【中編】 

2006年02月07日(火) 21時10分
=3=【中編】

少し経ってからでしょうか、隣のKが私の名前を呼びました。
そのときにKは私とKの部屋の隔たりになっている襖を少しばかり開けました。
私はまだ浅い眠りに就こうとしていた自分でしたので意識はしっかりしていたので
Kがあけた襖の音まで聞こえていました。
私は何だとたずねたところKは何も応えませんでした。
暗闇だったのでKの姿はまったく見えませんがKと長い付き合いをしている私には
彼が口をもごもごさせている様を安易に想像、予想できました。
そしてやっとくちをもごもごさせるのをやめたKはただなんでもないとだけ残して
再び襖を閉めて自室に戻っていきました。
そのときの私にはまだこの行動を理解していませんでした。
そのKの訳の分からない行動を理解するのはまだ先のことでした。

2006年03月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カテゴリアーカイブ
最新コメント
http://yaplog.jp/harpoon/index1_0.rdf
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:harpoon
読者になる
Yapme!一覧
読者になる