月に別れ 

June 07 [Tue], 2016, 22:15

上弦の月を見ている 遠吠えは寂しい時の最後の手段

「遠吠えは最後の手段」いつもその最後を見極められず潰れる

開かれた窓の外には何もない。嘘。月光と闇だけがある。

正しさに触れれば切れる指先もいつまでもやわらかくいられない

免罪符 ナイフ 月光 正しさも慣らせば痛くなくなりますか

分かってたことを何度か繰り返し呟く ぬるい夜風が染みる


いつ見ても工事していたあの街のあの交差点 桜が散って

コンクリに空いてた穴のぼこぼこも知らないうちにならされてゆく

信号の色が変わった音がした 街は私がいなくても街

まだセピアにはならなくてぐずぐずと生ぬるい蝋燭を持ってる

錆びた螺子回し あなたが切り裂いた布の欠片が地面に滲む

生きている証とやらか細波のように寄せては返す痛みも

あなたにももしかしたら私のように眠れない夜があっただろうか


眠れない夜のたび折り続けてた紙ヒコーキのかなしきしらべ

いつまでもあなたのための讃美歌をあなたの膝で歌いたかった

思ってた あなたのための讃美歌を 今もまだ 少しだけ 思ってる

傷つけば傷つく前よりかたくなる指先 そういう風に出来てる

手の届く範囲ばかりをぶっていた積み木の塔の鮮やかに赤

生きている ぶつかり合って欠け合った傷も変化と呼んでいいかな

生きている生きているから少しずつ変わるしかない 星が流れて


答案も嘘も時計も消しゴムも傷も傷跡も 許しあえたら

立ち向かうため握ってた掌をほどいたら花みたいと 笑って

ただ一つ信じてほしい月光をあびて輝く銀色のカギ

讃美歌が「あなた」ではなく「私たち」のための歌になりますように



鳥籠につるくさを巻き付けながらあなたが正義の味方だった

夏だった 正義の味方の言うことが正しいのだと 蟻を潰した

朝顔が咲いて萎んでカラカラの茶色になって枯れた朝顔

(振り向けば坂道のあなたの影がぐんにゃりしてて別人みたい)

いつからか箪笥の上の人形に背伸びもせずに触れる手のひら

幻聴はいつも夜明けに訪れる 見えない鳥が飛び立ってゆく

エウレカも天変地異もないままにあなたと同じ目線になった

向かい合うあなたとわたしいつの間に出来損ないの悪役同士


鉄格子 壺 子供部屋 この場所を捨てたくてもがいた日があった

手袋で隠そうとする傷跡も それでも跡になったのだから

此処だって悪くないって微笑んであなたの指にいつか触れたい

朝顔もいつかは枯れるお互いに血が通ってる 忘れないでね

時々は傷つくこともあるでしょう 時計の螺子がきらきら光る


ふと触れた蜘蛛の巣に傷つく指もいつか小さく笑えるように

もう少し続くのだろう真夜中にいつかどこかの別れと出会い

上弦の月を見ている まだ強くなれないけれど 月を見ている

P R
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  • アイコン画像 ニックネーム:原 沙良葉
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    ・読書-ミステリとかファンタジーとか児童文学とか。最近、温度の低い小説が好きだということに気付いた。
    ・短歌-31文字を愛してます。
    ・音楽-RADWINPS、アジカン、YUKI、椎名林檎、スピッツ、倉橋ヨエコ、谷川浩子、ボカロ。どれも好きなだけで詳しくはない。
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水の気配がする。しゃらしゃらと音をたてて、遠くから雨雲が近づいてくる。ひとりっきりの部屋に薄い影がかかる。

滴るのはなに。潤うのは、なに?
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