雨の日に二人 

2006年06月22日(木) 22時19分
いつものニュースキャスターは
少し疲れた笑顔で、視聴者に梅雨入りした事を告げた。

『雨の日が続くのか…』
誰に向ける訳でもないシノの言葉は、独りでいる部屋の宙に舞った。

シノが、雨が嫌いなのは理由がある。

大事な日はいつも雨。

例えば
高校受験の朝も
遠足の日も修学旅行の日も
好きなバンドのライブの日も
新車が納車された日も
その車でドライブする日も
好きな子とデートする日も

想いを伝えようとして
結局、二度と会えなくなってしまったあの日も

雨の日だった。

それからと言うもの
シノは雨の日には外に出ない事に決めていた。

外に出なければ、
雨に濡れる事もないし
想い出す事もないからだ。

ただただ、家でヘッドフォンから流れる音を聴いて
雨の音からも逃れ様としていた。

ふと、窓に目をやると
ずぶ濡れの猫がシノを見ていた。

ヘッドフォンから流れる音が一瞬止んで
猫が呟く声が聴こえてきた。
『哀しい事は雨に流されて、いつか消えるから
君の哀しい気持ちもいつか消えるから
だから、自分を閉ざさないでいて
いつか、幸せになれるから』

シノはヘッドフォンを外して猫に伝えた。

『そう。いつかね。消えるかな。』

傘も持たずシノは
あの日、伝えられなかった言葉を鞄に詰め込んで
あの日のあの場所に歩いた。

雨の日が嫌いだった少女は
雨の日に、また歩き出した。

晴れ間が広がった後の気持ちは     

2006年05月20日(土) 15時40分
昨夜、携帯サイトの天気予報を見ていたら、台風が来るとか来ないとか。
台風の名前はチャンチーと言うらしい。真珠と意味だそうだ。

『まだまだ雨が降るのかな』
と少し憂鬱な気持ちで眠った。
朝から既に降り出していた雨の音で起きて
また憂鬱になって布団を頭からかぶる。

気分が悪くなる様な電話をするならば、いっそ電話なんて要らないのに
それでもボタンを二回ぐらい押せば、君の声が聴ける便利な物に少し依存している気
がする。

誰かが言っていた。
全ては気圧のせいだと。
そうかもしれないね。
台風が来るのも
それにせいで雨が降るのも
雨が降るせいで僕の気持ちが憂鬱な事も
携帯電話が少しうざったい今日の気持ちも。

晴れ間が広がったら
少しは僕の気持ちも晴れるかな。

言えない男 

2006年03月23日(木) 23時24分
通り過ぎて行く人に
『ねぇねぇ何処行くの?
暇なら何処か遊びに行かない?』
などと言う大袈裟な言葉なんかじゃなく、
彼は極々身近な人に
『今日はパンが食べたい気分なんだ』
って言葉すら言えない。

彼はそう、言えない男 だ。

いつから彼は言えない男になってしまったかは解らないが、
このまま彼が言えない男のままだと
困る人が沢山居る。

気の良いライオット
雑貨屋の娘、ジップ
蒼い瞳をした猫や
オレンジ色したネズミ。
しかし結局は、周りがどれだけ心配したって
彼は言えない男のまま、
きっと変わる事はない。

自分が可愛いのだろう。
可愛いって思ってしまうのは罪だ。

犬に毛糸の服を着せて散歩してしまうぐらい罪だ。

可愛いくて可愛いくて仕方ないのだろうが
結局、待っているのは
死だ。
待っているのが
結局は、死ならば
愛情を注いでやればいいだけの話だ。

言えない男も
自分に愛情を注げばいい。

自分に注げるのならば
心配してくれた皆にも注げる筈だから。



まだ自分に服着せて歩くかい?

シリウスみたいに vol.3 二つの光 

2006年02月13日(月) 20時05分
プラネタリウムが放つ偽りの光の中に
他の星達よりも光り輝く星が居た。

冬の大三角の一つ、シリウス。

リエは他のどんな星よりも
その星に心を奪われていた。

自分たちが生まれてくる、ずっと前から
シリウスは光り輝いていた。

そして、とても強く光り輝くシリウスにも
隣には、もう一つ輝く星が居る、と知った時、

『独りで輝いていた訳じゃなかったんだね?
二人でずっと輝いていたんだね?
寂しくないんだね?』

リエは光り輝くシリウスに、そう心で呟いた。



外に出たら暖かさをくれた空は
暗闇と、星達と、冬の冷たさを運んで、
リエの心の隙間に入り込んできた。




リエは今夜だけは彼と離れたくはなかった。

シリウスみたいに vol.2 優しい闇の中で 

2006年02月07日(火) 22時27分
冬を忘れさせる様な蒼い空の下、リエと彼は
市内にある、とても古い科学館へと車を走らせた。

その科学館には、戦後もまだ間もない頃から
プラネタリウムがあるのだ。

プラネタリウムが映し出す星や造り出す闇は
確かに偽りの光や陰だったりする筈なのに
リエは一度(ひとたび)プラネタリウムに入ると肌で感じていた季節も流れていく時間
も、嘘もホントも何もかも忘れて
ただ優しい闇に包まれながら、偽りの星に心を奪われていた。

続く

シリウスみたいに vol.1 

2006年02月07日(火) 18時34分
まだ二月だってのに、太陽は晴れ間を広げなから春に近付こうとしているのか、それ
とも既に冬に飽きてしまったからなのか、今日は冬とは言い難い春の香りがする様な
天気だった。
リエは、こんな天気の良い日だから、折角晴れたのだから、外へ出掛けようと思い、
付き合っている彼を電話で起こして『今日は晴れてるからプラネタリウムに行こう』
と告げ電話を切った。

リエは電話を切った後に
『晴れてるからプラネタリウムに行こうって…』
と呟いた後、小さく微笑った。

リエと彼との関係は上手くいってなかった。

二月の、寒い筈の昼下がり
こんなにも晴れた春の様な蒼い空に
何故だか希望を託して
彼の到着を待つ事にした。

続く

年始年末グラフィティー 

2006年01月04日(水) 20時13分
ふと、目が覚めたら
今日はもう2005年の最後の日、
大晦日だった。

普段から曜日の感覚が無い僕にとっては
その大晦日が何曜日かなんて知る由も無かった。

夜まで何にも予定が無い僕は
久しぶりに華やかな街でも歩いてみようかと想った。

街はクリスマスが終わったのにも関わらず
落ち着く事を知らないかの様に、ひどくソワソワした感じだ。

僕は人込みの嫌いな僕は
人の多さに驚いたけれど
何だかワクワクした。

あと、7時間45分ぐらいしたら
今年も終わってしまう。

今年はどんな年だったろう?

僕はやりたい事の半分も出来てなかったな。
車は壊れるし、携帯も壊れた。
そういえば山に旅しに行ったっけ?
沢山飲みにも行ったし、
良く行くお店では店員のおばちゃんとも友達になれた気がする。
アイツは結婚したってさ。
これからどうするんだろう。

来年は今よりハッピーでいたいよね。

出来るかな。そうであればいいね。

『ねぇ?今夜ウチ来る?』
『あぁ、行くよ』
『そう。じゃあ、待ってるね』

さて、
ひどく黄色い声で
カウントダウンでもしに行きますかね。


年始年末グラフィティー。

このままいつか僕らは 

2005年12月02日(金) 21時12分
長い間、僕は歩いていた気がする。
あてなんかなくて
正直、
早く消えてしまいたかった。

花は
いつか散るし、

星の光は
いつか消えてしまうだろう。

僕はそんな花や星が好きだ。

永遠じゃないから。

長い間、独りで
沢山の別れに
手も振ってあげられずに
もう何年経ったんだろう。

でも僕ら出逢ったんだ。
一年目の今夜。
誰かの誕生日だったよね。
覚えてる?
僕にとって1日は
365分の1で
でも
その1は
とても大切な1になったよ。
君がそばにいるから。

アイツが言ってたよ。
二人の距離と年月が 変えてしまうなんて 嘘だよ
だってさ。

そうかもね。

このままいつか僕ら
365の1を
大事な日に出来るかな?
出来るよね。きっと。

ハッピーなライフを二人で。

少しだけ深い 夜の隙間に 

2005年11月27日(日) 0時23分
ひどく低血圧の神谷は
朝から頭の中がすっきりする訳がなかった。
でもすっきりしない理由は朝と、もう一つ。

冷たく凍る車のフロントガラス。
暖機をしている間にタバコに火を点けた。
冷え切った車のスピーカーからは新曲が流れてきた。
その曲が終わる頃、車内はすこしづつ暖まり
神谷は車を走らせた。

神谷はいつも不安だった。
誰よりも出来る事が多い筈なのに。
それでも彼の心は不安に満ちていた。

フェンダージャズべース。
白煙をたてて去ったマーク2。
進められて買ったベルボトム。

そして、大好きだった彼女。

未来はいつも不安だった。
だからこそ
彼は前を向いて歩き出そうとしている。

朝はまだ見えぬ
少しだけ深い
夜の隙間に
愛を探しに行った。

朝焼けが 眩しくて 涙を流した。

寂しさが頬を伝った。

憂鬱monday 

2005年11月16日(水) 20時26分
月曜日は憂鬱だ。
僕は煙草に火を点けた。
そういえば今日は月曜日。
会社を辞めてから、もう一週間も経つ。

会社には友達も居ないし上司は馬鹿だし御局の刈谷さんは嫌味しか言わないしボーナスもそんなにないし残業ばっかだし・・・。

しかしそんな事はどーでも良かったんだ。

営業からの帰り道、会社の玄関に猫が生き絶えていた。
僕は、このままじゃあまりにも可哀想なので、土に埋めてやろうと
きっと土に還るのが一番良いだろうと
猫を抱きかかえて近くの公園へ向かおうとしていた。

それを一部始終見ていた上司が
『そんな事してないでさっさと営業報告しにデスクに向かえ』
と言ったので
何も言わずブン殴ってやった。
かなりキツく殴ってやった。
どうやらクビらしいから、もう一度殴ってやった。
もう一度くらい殴ってやったら猫も生き返るかな?
そんな事想いながら、もう一度。

あぁ、明日からどうしよう?とは思わなかった。
憂鬱な月曜日。
会社を辞めるのには最高の理由だった。

クビだから、辞表なんて出しても出さなくても
どっちでも良かったんだろうけど、
一週間後の月曜日に辞表を出しに行った。

殴ってやった上司は、まだ顔が腫れていて、それが何となく笑えた。

帰り道

『僕の為にありがとね?』

かすかに聞こえた。

違うよ ただ憂鬱でさ
なんだか自分じゃなくなりそうだったからさ。

僕は煙草に火を点けた憂鬱monday。
2006年06月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
最新コメント
アイコン画像Rat・神谷寿幸
» 少しだけ深い 夜の隙間に (2005年11月29日)
アイコン画像あとがき
» 18個のビー玉 『春風』 (2005年11月27日)
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:happylifefull
読者になる
Yapme!一覧
読者になる