心がどこにあるかというのは、それは結構意外とまあまあ難しい問題

February 19 [Thu], 2015, 22:45
電気が走りました。

たった今しがた
あの子のことを考えて
ふっとほんのわずか
考えただけなのに

びりびりと、がたがたと
ずんずんと走ったのです。

ぼくはてっきりそれを
恋だと思っていましたよ。

微弱ではありました。
物事を考えるときに
ぴりっと走らせなきゃいけないのです。

あの子は顔がかわいくて
特にえがおが素敵で
肌が白いからりんごなどの
赤い色をしたサムシングが似合うのです。

ぼくはそのことをよく知っていました。
どうして知っているのかは
よくわからないのですが
ともかくあの子はとても
非常に、よどみなく、まごうことなく
透明なのでした。

ああどうやらあの子は
山の上の旅館の子
あの子はぼくのことを
どう思っているのでしょうか。

と、いうかところで
そうそう今更なのだけど
あの子の名前は
なんだったかしら。

トミ、シズ、ヤエ?

もくもくと考えていたら
だんだんかなしくなってきました。

ぼくはてっきりそれを
恋だと、いわゆる恋だと
思い込んでいたのでした。

そんなはずはないのに。

思い出した、ぼくは
この辺り一帯に
雨を降らせるだけの
雷を落とすだけの
雲だっていうのに。

あの子の名前を思い出す頃には
たくさんの水蒸気を取り込んで
もうお腹いっぱいに飲み込んで
記憶と一緒に全部
落としてしまうっていうのに。

それでもぼくは
どうかそれが恋だって、
恋であってほしいって
思ってしまったんだよ。

普通の日記

December 02 [Tue], 2014, 21:21
どうだろう私はもう
私の空想の中で暮らしていて
一体この日常だって
現実なのだか空想なのだか
すっかりわからない

痛みがあれば現実と思っていたけれど
頭の中で何度考えたかわからない
誰かの一生の物語のことだって
いちいち痛みを感じているのだから

それはつまり
もう私には現実も空想もないのです

これだと思って作ったものも
「あ、きみ◯◯みたいなのすきでしょ」
とか言われちゃうからね

◯◯なんて知らないよ
でもそうか、私は◯◯よりあとに生まれて
◯◯と同じことをして
自分が最初って思ってしまって
なんだかとてもはずかしい気持ちになる

最初じゃなきゃいけないなんて
誰が決めた訳でもないのに

自分が信じて進んだことと
同じようなことを考えていた人がいて
その人の作るものに対して
素直にうれしいと、すてきだと
思えるこころをもちたい

私は誰なんだ?
私は私が作った私で
私の夢の中の私で
それだってもうすっかり
本物になってしまった

かわいがらなければいけない
大切にしなければいけない
噓偽りのない人生にしなければいけない

自分で決めた自分への約束を
やぶったところで誰も私を責めたりしないのに
一番近いところにいる自分が許してくれない

これが夢だったら
夢なんだと思っているけど
誰かその夢を見ている私のこと
起こしてくれないかな

そんな風にもう
四半世紀思い続けているんだよ

あれもこれも、全て仕組まれたことなんですからね

November 14 [Fri], 2014, 22:08
精神疾患だと思っていた。
このごろ仕事が忙しく、
ストレスがかなりたまっていたのだ。
医者に行き、落ち着かせる薬をもらう
それだけのはずだった。

「異世界とか宇宙とか、とにかく妄想が止まらなくて...」
「うむ...これは...」
「何か大きな病でしょうか。」
「いや、ここ数年世界的に流行っている病気なんですけどね、
30代でかかる方は少し珍しいもので。」
「それって...」
「ええ、検査の結果、これは『中二病』と思われます。」

言葉を失った。
まさかこの私が中二病になるなんて。

3年ほど前だろうか。
フランスの学者が「ゲヘナウィルス」と命名したそのウィルスは
それまで日本では「中二病」として
青少年のほとんどが通過儀礼のような形でかかる
病気とはいうものの病気ではない
むしろ将来的には話のネタとして盛り上がるような
「一時期のイタさ、大人になる一過程」
と捉えていたものを引き起こす原因であるということが判った。

当時世界中が震撼した。
毎日ニュースに取り上げられ、
次々と「患者」が病院に運び込まれた。

しかしもちろんだが
効果的な治療法もなく、
入院した患者は逆に症状を「悪化」させた。

病院のいたるところで
痛々しい中二病劇が繰り広げられた。

とつまりそんな病気に
私はかかってしまったのだ。
即入院が必要だと言われた。

「しかし先生、私には仕事があるんです。
何週間も入院なんてできません。
それに、日常生活には支障がないんです。」

いくら説明してもだめだった。
もはや私は「患者」なのだ。
会社には骨折したと嘘をついて
3週間の休みをもらった。

入院の間
私はさまざまな中二病患者に出会った。
主な世代はやはり10代であったが
2割は20代、0.5割は
私と同じ30代だった。

魔法少女や平行世界を専門とする患者から
ロボットやメカ専門、萌系、日常系専門の患者までいた。

おかしなものだ
もとから治療法などないものだったはずなのに
原因がウィルスだと決まった途端に
「どうにかして治さなければならないのだ」
とあっちもこっちも
躍起になって探そうとする。

それまでならば
「放っておけばいずれなくなるだろう、自分だって通った道なのだ。」
と寛容だったはずの親が
いまや狂ったように治療法を求めている。

人間というのは
あるものに名前がついたり
認識したその瞬間から
一種のアレルギー反応のような形で
異常なまでにその対象を意識してしまうものだ。

中二病など
かからない人のほうが少ないはずなのに
患者の両親だって
検査をすればおなじ病気のはずなのに

そんなことを思う私の手には
「ブラックホールと魔法界」
というファンタジー小説があり
その作者であり患者でもある人は
私の隣の隣のベッドで厨二ゲームをしている。

ところでこの病気は
一体いつ治るんだろうか。

夢でも現実でもないお話の中に彼女を閉じ込めた私は、きっと彼女に謝ることもできない

October 25 [Sat], 2014, 22:15
彼女はときどき
とてもかなしい夢を見る

誰も自分のことを知らなくて
だけど確かに自分は存在していて
誰も振り向いてくれなくて
誰もわらいかけてくれなくて
息をしていても涙を流していても
ただ苦しいとしか感じない

そういう夢を見る

そういう夢から覚めた朝は
決まってトーストを食べる
彼女は、ひとりだ

たまに思うことがある
そんなかなしい夢から
もう二度と覚めることができなかったとしても
自分はなんてことないのでは
何も感じないのではないのかと

今日も同じ夢を見るのではないか
けれどそちらが夢だったのか
こちらが夢なのか
最近よくわからなくなってしまう

彼女はいつも、ひとりだ

その日も学校へ向かう
なぜ向かうのかはわからない
そうなっている
そういう仕組なのだ

彼女は「すごいもの」に憧れていた
自分もそうなれると思っていた
なれないということがわかって
とてもかなしい気持ちになった

そしてかなしい夢をみた

テレビの中では
政治家と政治家が口喧嘩をしている
同じ人間のしていることなのに
そんなに遠くない場所で起きていることなのに
全部が夢みたいだった

夢みたい
夢だったらいいのに
夢じゃなかったら、かなしいな

昔むかしの話
彼女は誰かの感情として生まれて
置き去りにされて
そのまま

彼女は誰かの感情だから
彼女のことは誰も知らない

誰も、の誰は
私と同じ世界に生きる人

彼女のかなしみは
それをかなしいと教えたのは
誰か、の誰

彼女はときどき
とてもかなしい夢を見る
その夢は誰かによって
見せられているものだった

そうだったとしても
彼女はときどき
そういう夢を見るのだ

うその中にうそを作って
夢の中に夢を作って
それはテレビの中の彼らと同じ
別の時間に暮らしていて

でもその足で歩く時間は
彼女だけのもの

あの子も別の世界線に行ってしまったのでしょうと簡単に言える彼の真意

September 27 [Sat], 2014, 1:35
僕は給料泥棒だ。

大学を卒業して
まあそれなりの企業に入社。
派手とは言えないがそれなりに遊んだし
友人にもそれなりに恵まれた。
結婚を考えた女性も、いた。はずだ。

けれど僕は現在ひとりで
給料泥棒として生きている。

僕が僕自身を「ソレ」であると分かったのは
ほんの数週間前のことだった。

いつもどおり会社帰りに自宅近くのコンビニで
肉豆腐とビールを買って
お気に入りのキャラクターの
キーホルダーがついた鍵のうち
緑がかった灰色の鍵を取り出し、

2年履いて味が出てきた革靴を脱ぎ
毎週楽しみにしている深夜番組をつけて
電子レンジの中で温まっていく食べ物を
じーっと見ていたときだった。

「そうか。僕は給料泥棒なのだ。」

と、ふと思ったのであって、
同時にその核心に至った。

その日なにがあった訳ではなかった。
ただ素直に、単純に
僕は僕を、様々な枠組みの中で敢えて
給料泥棒を選んだのだった。

それ以来、「生活は一変」
なんていうこともなく、
翌日もその翌日も
僕は同じように朝起きて会社へ行き
下げたくもない頭を下げまくった。

僕はまじめに働いていた。

ああ、左足の小指にけがをしている。
昼から痛いなとは思っていたが。

つまりなんというか
別に何があった訳ではないのだ。
自分自身を責めようということでもない。

給料泥棒になってから
ひとつだけ小さな変化があった
かもしれない。

味覚の変化だった。

僕がそもそも女の子ではなかったために
魔法少女としての人生を
歩むことができなかった話については
また次回にするとして
いや、既にした
かもしれない。

ともかく
味覚がすっかり変わってしまったのだ。

まるはさんかくになり
さんかくはしかくになり
しかくはまるになった

ある小説において
人物をまると表現していた。
僕はその表現がすきだった。
それも別の話だ。

僕は女の子に生まれるべきだったと
何度思ったことだろう。
脈絡や論理のない話が
僕は大好きなのだ。

カレーとうどんの両方を食べたい場合
カレーうどんを選ぶのは
または思い切って
両方とも食べてしまうのは
必ずしも正解ではない。

給料泥棒としての人生と
味覚の変化及びおまけとして
魔法少女とはどう関係があるのか。
それがわかっていたら
僕だってこんな話を
赤の他人であるきみにしたりはしない。

僕は給料泥棒だ。

あるいは僕は
給料泥棒に憧れていた。

枠組みに憧れていた。

僕の言うとおり
ひたすらくるくると回る電子レンジは
おりこうにも肉豆腐を温める。

やはり今日は
カレーとうどんを食べたい場合に
カレーうどんを食べるべき日であった。
今日はそれが正解だった。

まだ知り合いには言っていない話なのだ。

僕が給料泥棒であるなんてことが知れたら
きっと、遂に壊れたと心配されて
よいお医者さんを紹介されてしまうだろうから。

非常に迷惑な話だ。
僕は間違いなく「ソレ」であるし
この事実を否定できるとすれば
それこそ日によって正解の違う問題を
解くことができたあとだと思っている。

しばらくはこのままでいよう。

こだわり遺伝子は未だ解明されず、9話前に戻る

August 26 [Tue], 2014, 0:02
彼は毎晩自分が特別ではないことを
確認してから眠りにつく。

特別を求める母とは対象的に
正確に言うならば
特別を求める母を反面教師に
彼は毎晩、ひとつひとつ
自分が特別ではないことを
確認してから眠りにつくのだ。

彼の母は特別だ。
正確に言うならば
特別に気がついていない特別だ。
しかし彼は彼の母が
ものすごく特別であることに気づいていた。

何がというわけではないが
全てが普通ではない。

彼は決して習慣を変えない。
必ず同じ時間に起きるし
同じ道を通るし同じ仕事をする。

だから特別にはなり得ない。
彼の生活に
イレギュラーは存在しないのだ。

長々と説明したところで
このお話には
この先一体どんな特別な展開が
待ち受けているのだろうだなんて
勘繰ったり期待してはいけない。

なぜならとても複雑な思考の糸のからまりが
お話とはまた別の次元で起きていて
劇的な展開や感動的なエンディングについては
「気分じゃない」ことがあるからだ。

彼は自分の顔を触る。
つぶらと言うにも小さすぎる目がふたつ
高いとはいえないので低め
と言うべき鼻がひとつに
薄い唇をたずさえた口がひとつ

いや、口はふたつだ。

右と左にひとつずつ
彼には口がふたつある。

そしてその後
彼は左の口から
ほっと一息吐き出して
およそ自分は特別ではないことを
日課として今日も確認した。

眠りにつくと
夢の中にはいつも通り
女の子がひとり
こちらへ歩いてくる。
夢の中でも夢とわかる。
そういつも通り。

女の子は彼に
話しかけもしないし
ましてわらいかけもしない。

ただこちらへ歩いてきて
そのまま横を通り過ぎる。

彼は母を反面教師にしているから
決してその女の子に
自分から話しかけたりはしない。

けれども彼には
右と左にひとつずつ
口がふたつあるのだ。

その女の子の口は
いくつあるかなんてこと
彼は気にしたことがなかったし
誰も教えてあげなかった。

それにその女の子が
彼の母に似ているかもなんてことだって
彼は気にしたことがなかったし
誰も教えてあげなかった。

あと数時間したら
彼は目覚めることになる。
それまで沈んでいた意識が
一気に「こちら側」へと戻ってくる。

そして顔を洗って、歯を磨く。
歯磨きは右の口からと決めている。
左の口は右の口より
2本歯が多い。

彼は何の疑問も抱かない。
疑問を抱いた瞬間に
彼の全部が
崩れてしまうこと
実のところ本能かなにかで
わかっているからかもしれないけど。

どうだろう彼は
特別ではないのだ。

私の係活動報告

August 24 [Sun], 2014, 22:15
何かを覚えることは
何かを忘れることです。

私はみんなの記憶を消す係

だから私は
誰にも覚えてもらえないし
誰にも忘れてもらえない。

ただひたすらに
みんなの記憶を消す係

色んな人の記憶を消してきた。
大切なこともそうじゃないことも
私がひとつ唱えれば
途端に忘れてしまうのです。

私は何も忘れない。
誰も私の記憶を消してくれない。

だから私は消したみんなの記憶を
一つ残らず覚えていて
一つとして忘れることができない。

人が何かを忘れるのはどうしてかって
考えたことはありますか。

いつか全部大切なことまで
忘れてしまうんじゃないかって
あなたもきっと思っているのでしょうが
忘れることはかなしいことじゃないし
悪いことでもないです。

大切なことを忘れる理由は
もっと大切なことを覚えるため
人はしぬまでどんどんと
大切なものが増えていく

だけどそれでも
忘れたくないことや
忘れまじと決意したことを忘れさせるのは
少しだけ申し訳ない気もします。

私がみんなの代わりに
みんなの大切なことを
忘れずにいるから
一生覚えているから
だからそんなに悲しまないでください。

そう言ったところで
私は誰にも覚えてもらえないから
誰の心にも届かない。

私は誰かに忘れてもらえるしあわせを
この先もずっと知ることはないのです。

私はみんなの記憶を消す係
ただひたすらに

両手のひらを合わせても何も見えない

August 05 [Tue], 2014, 23:10
ドーナツに世界で初めて穴をあけたのは誰か
ということについては諸説ある。

その諸説については
ドーナツをこよなく愛し、研究し、
公表している人のページ
またはWikipediaを参照のこと。

どれもこれも間違っている。
本当は私が世界で初めて
いや宇宙で初めて
ドーナツに穴をあけたのに。

けれど私が穴をあけたのは
まだ人間が人間ではなかったころだから
誰も知らなくても仕方がないとは思う。

私は地球が始まるずっと前に
小さな星でドーナツの神として生まれた。
その星は直後小さな爆発で滅んだ。

宇宙にはすでにあらゆる神がいたから
神の神の神は、ちょっとしたいたずらで
私を作ったんだとあとから聞いた。

私は地球その他いくつかの星で
我が物顔で星を支配する
野蛮な「人間」という生き物が食べるもののうち
割と簡単に作ることが出来て
かつ割と大勢に愛されるその食べ物を
一手に任されたのだった。

神として生まれると
その司るモノについての一切を決定できる。
正確に言うと一切ではなく
神の神から名称とヒントを告げられ、
そこから創造していく手順だ。
星の神や人間の神、インターネットの神までいる。

例えば人間の神はとっても怠惰で
管理するのが面倒くさいからと
勤勉な星の神が一生懸命作った数々の星のうち
地球のほかいくつかの星に
「こんな感じ」ということで人間を生んだ。
そのせいでそれらの星は
もう間もなく人間のせいで滅ぶことになった。

まあそれだって
滅びの神が滅ぶことにしただけなのだけど。

そういう壮大なスペクタクルを司る神は
結構な確率で変わった神が多い。

ドーナツの神である私は
彼らと関わらないようにしている。

とはいえ人間がいなければ
ドーナツの存在意義というか
つまりドーナツは
人間に食べられるものだから
しかも嗜好品だから
他の神と関わらざるをえない。

さてドーナツに穴をあけた理由を話すことにする。
私が生まれたとき
ドーナツについてもらったヒントは次のふたつ。

1 前述したとおり「人間がたべる」ということ
2 からっぽという単語

まず私はからっぽの神に
からっぽとはどういうことなのかを聞きに行った。

彼は「からっぽというのは私自身であるけれど、
目に見える形にするならば、こういうことだ」
といって滅びの神がまたひとつ
星を滅ぼす様子を見つめていた。

私は瞬時にその意味を理解し
(正解は確認してはいないが)
ドーナツの概要がおよそできた。

からっぽというのは
とてもさみしいものだけれど
そこには想像力があって
常に存在するものなのだと。

そして次に
人間が食べる予定であるものを研究した。
どのような材料を使うかなどは
全くの白紙スタートだったので、
私はおよそ地球その他の星において
収穫しやすく安価で作ることが出来るものにしようと考えた。

なぜなら人間は
めんどうくさがりで自己中心的で
利益重視で、なにより数が多いからだ。

人間のことは嫌いではなかったが
少しくらいなら身体に悪いものも入れてしまおうと考えた。
きちんと自己管理ができるようにとの願いを込めて。

こうして9割、ドーナツは出来たが
この時点で穴はあいていない。

私はここから
からっぽの表現方法を3万年ほど悩むことになった。

状況打破のきっかけは心の神が
心の改良に取り組んでいるのを見たときだった。

心の真ん中には大きな穴があいており
その穴のせいで争いが起きたり
不要な思想が生まれたりするのだと言っていた。

私はピンと来た。
そして私は

ほうほう、ならば私がその穴をいただきましょう

と言って、心の神から「真ん中の穴」を譲り受けたのだ。
そしてドーナツにその穴を加えたところ
「しっくり」来たのだった。

余談だが心から穴を取ったところ
争いはなくなり、平和状態が生まれたらしい。

こうしてドーナツは誕生し
私は手頃な人間の頭の中に
ドーナツの作成手順や頒布方法などを仕込んだ。

現在では星中に店を構えているらしい。

これは地球にいる人間向けの文章だから
インターネットの神に教えてもらいながら
人間がわかるように書いている。

私がドーナツの神であることは
きっと、絶対に諸説に含まれていかないとは思う。
人間は疑り深く、理解のその先を見ると
なかったことにしてしまいがちなのだ。

私はほんの気まぐれで
このブログというものを通じて
また、お話というものを通じて
ドーナツに穴があいた理由をこっそり
もうすぐ滅びゆく人間に
教えてあげることにしたのだ。

これもほんの気まぐれで教えるけれど、
今からでもまだ
滅びの神が滅ぼすことをやめるために
人間ができることがある。

せっかく私が作ったドーナツを食べる
たったひとつの生き物が滅びてしまうのは、
私だってまあ、それなりに辛いものなのだ。

唐揚げ星人の女子高生が窓際からこちらへ

July 27 [Sun], 2014, 22:30
話は3コマ前に戻ります。

準備はできましたか?
では始めましょう。

私はいつものように
考えごとなどしながら
てくてくと、ぽつぽつと
歩いておりました。

お昼のお弁当の唐揚げ(大好物です)
その日ももれなく幼なじみに取られましたから
彼に対抗する手段について
新たな方法、新たな戦法を考えながら。

考えごとというのは
なにも難しいことではなくて良いのです。

見た目が大事なのです。
つまりビジュアルが、
とてつもなく大きなことを考えている風な

例えば宇宙の真理に迫っちゃう系のことを
考えている「風」でよいのです。

本題に戻しますか?
いいでしょう、せっかちな人ですね。

さてさて私のてくてくは
学校からおよそ1,279歩目で
ぱたりと止まることになります。

コマで言うと2コマ前のできごとですよ。

以前自転車で走っていたときに
お魚くわえたドラ猫を裸足で追いかける
おっちょこちょいな奥さまとあわや接触!
というヒヤリハットを経験した場所です。

白いもやもやとしたものが
じわじわと、ふわふわと、のそのそと
私に向かって来るのがみえます。

いつもの私ならば「ぴかーん」とひらめいて
ひょひょいのひょいでかわして終わりなのですが、
ふっと頭をよぎったのは
「まだここで終わる訳にはいかない」
という使命感なのでした。

考えろ考えろ、
そうして何とか捻出した結果が
1コマ前のできごとです。

まさかここにって思いましたけど
ちゃんとあったんですよね、バナナの皮が。

無駄遣いしちゃだめだって
前々から、先祖代々とうとうと
教えられてることがあったのですけど、
今回ばかりはいたしかたなし
せんかたなしって感じで

まあ私は、バナナの皮に
つるるんたったーんしたわけです。

そして現在に至ります。

宙を舞った私は
かつてないほど美しい円を描いて
後ろ向きに飛びました。

走馬灯発動です。

着地に自信はありませんでしたから、
色々と、続々とイメージが浮かんで
「こりゃまずいぞ」
って思ったんです。

でもそこはちゃんと
2コマ目に戻っていただければきっと
わかっていただけると思います。

かっこわるくしりもちをついた私は
いわゆるパンツ丸見え状態でしたが、
白いもやもやがしっかりと
ガード、守り、守備、してくれたわけです。

なのであえて柄には触れません。
いちごじゃないってことは
教えてあげましょう。

そういうことで
今日もきちんと役割を果たした私です。

お気づきかとは思いますが、
これがあなたたちが夢見てやまない
2次元の世界というものです。

私の日常とは
「常」に4コマで完結する「日」
なのです。

私は4コマ間を生き
4コマに全てをかける。
オチって大事です。

3次元から見える景色はどうですか?

私、本当はもう少し
かわいいんですよ、2割増で見てください。

おっといけない。
次の1コマ目が始まってしまいます。

それではまた、来週お会いしましょうね。

昼と夜の夢の中で

July 21 [Mon], 2014, 23:00
これは私が聞いた
かなしくて優しくて
さみしくて暖かいお話です。

そのおばけの名前はフノイといいます。
とてもちいさく、とても弱い。

おばけの仕事は多岐にわたっていて
海外のモンスターズインク社に勤めて
人間の子どもを驚かせるようなものもあれば
学校祭のお化け屋敷で
おばけ役の人間を雰囲気面で補助するような仕事まで

フノイは夜の巡回の仕事をしていました。
夜の巡回というのは
夜の街を見回って人間が悪魔にさらわれないようにする仕事のことです。

悪魔といっても、日本にはそんなに大きな悪魔はいないから、
フノイよりずっと小さくて弱いのです。

ダンゴムシみたいな悪魔を捕獲してあるべき場所、暗い闇に返すだけ

悪魔とおばけは同業と思われがちだけれど違いますよ。
おばけは人を驚かせたり怖がらせたりするところに重点を置くから、
人間の魂を奪おうとはしません。
でも悪魔は人間の心に住み着いて、内側から人間をほろぼしてしまいます。

人間がほろんでしまったらおばけの存在意義がなくなってしまうから、
悪魔から人間を守るフノイのような仕事があるのです。

もっとも、フノイは人間を驚かせたり怖がらせたりするのは
あまりすきではなかったからこの仕事を選んだのだけど。

フノイはひっそりこっそりと
今日も小さな悪魔を次々と捕まえていました。

信号待ちをしていると
ふと視線を感じました。
同じ仕事をしているおばけかと思って視線の在り処を探ると
そこにいたのは人間の女の子

目が合うと女の子は
フノイに向かって手を振ります。
そして寄って来てこう言いました。

優しい優しい怪獣さん、
いつも私たちを守ってくれてありがとう。

フノイはとても驚きました。
人間には見えるはずのない自分が見えていて、
かつ話しかけられたから。

ハル、何をしているの。早く来なさい。

女の子はお母さんに手を引かれ
すぐに遠くへ消えてしまいました。

フノイはそのハルという女の子に
また会いたいなと思いました。

だから次の日も、その次の日も
仕事がひと段落すると
同じ信号で待ちました。

でもハルは一週間経っても
二週間経っても現れません。

三週間目のある日
信号で前にハルを連れていた母親の姿を見かけました。
母親は急ぎ足で信号を渡っていきます。

フノイは
あの母親に着いて行けばきっとハルに会えると思い、
着いていくことにしました。

その先は、おおきな病院。
母親は、「しのざき はるちゃん」
という札がある部屋に入って行きます。

そうか、ハルは病気なんだ。
どんな病気だろう、すぐ治るのかな。
フノイは心配しました。

母親がハルの部屋から出て行ったのを見計らって
フノイは駆けていきました。

ベッドによじ登って
ハル、こんにちは。
ぼくはいつだか街できみに話しかけられた怪獣さんだよ。
と言いました。

ハルは少しも驚く様子を見せずにこう返します。

優しい優しい怪獣さん、
ハルのところへ来てくれてありがとう。
お仕事は順調?

ああ順調だよ、
今日だってきちんとみんなを守ったんだ。

フノイは彼女に尋ねます。

ハルはどうして、ぼくのことが見えて、
話ができて、何より、ぼくのしていることを知っているんだい。

ハルは少し困った様子で笑いながら答えました。

毎日ね、夢の中にあなたが出てくるの。
あなたは街中の小さな悪いモノをやっつけて、
みんなを守ってくれている。
だからハルの中にある悪いモノも、
いつかあなたにやっつけてもらいたいなって思っていたの。
そうしたらこの前、本当にあなたに会えた。

ハルの中にある悪いモノ?

フノイはハルをよーく見てみましたが、
悪魔の姿は見つかりません。
ハルはこう続けます。

ハルはね、夜を超える度に命が小さくなってしまう病気なんだ。
怪獣さん、ハルの病気は治るかな。

フノイはハルを助けたいと思いました。

わかったよ、ぼくはきみの中の悪いモノを
きっとやっつけてみせるから。待っていて。

そう言って、フノイはひとまず帰ることにしました。

きっと、きっとやっつけてみせるから。

フノイは考えます。
ハルの病気を治す方法。
そして思いつきました。

ハルが二度と夜を超えなくてもいいように、
夜を飲み込んでしまおう!

フノイはとても小さく、とても弱いから、
とても大きく、とても強い夜を飲み込むなんて無謀に思えてしまいますが
フノイはとても優しく、とても勇敢だから、きっとできるって
...私だって思っていますよ。

山に登り、その頂上でぴったり夜中の2時。
フノイは夜を飲み込み始めます。
夜が、どんどんとフノイに飲み込まれていいきます。

とても小さかった身体は瞬く間に大きくなり、
夜を全部飲み込んだ頃には、
どこに目があってどこに手足があるのかわからないくらい大きくなって、
動けなくなってしまいました。

もう、ハルのところへはいけない。

けれどフノイは思います。

これでハルはもう、夜を超えなくて済む。
ハルはもう、泣かなくて済む。

ハルがいた病院の方向を見ると、
ちょうど彼女の病室に太陽の光が差し込んでいました。

ああ、よかったな。
でもぼくは怪獣さんじゃなくておばけなんだって
伝えられなかったな。
でもいいんだ、ハルを助けることができたから。

しばらくすると、フノイの身体に異変が起きました。
夜が暴れ出したのです。
フノイは必死に夜を吐き出さないように堪えます。

けれどフノイはとても弱いから、
夜が彼から出て行こうとする力を
抑えることができません。

フノイは夜を吐き出しました。

街には夜が戻ります。

ああどうしよう!
これではハルがまたつらい思いをすることになる。
助けなきゃ。ハルを助けなきゃ。

フノイはもう一度夜を飲み込もうとしますが、
夜はとても強いから、二度と飲み込むことはできません。

ごめんよハル、本当にごめん。
フノイは謝らなければと思いました。

病院に行こう。

フノイがハルの病室に着くと、
たくさんの大人がハルのまわりをぐるりと囲んでいました。

フノイは大人たちの隙間を縫って、
急いでハルのベッドによじ登ります。

ハルは苦しそうにしています。
母親は泣いていました。

ハルはフノイに気がつくと
絞り出すような声でこう言いました。

優しい優しい怪獣さん、
ハルを助けてくれてありがとう。

フノイはハルに抱きつきました。

ハル、ごめんよ。
ぼくは夜を飲み込むことができなかったんだ。
ハルの病気を、夜を
飲み込むことができなかったんだ。

知ってるよ、怪獣さんがハルのために、
夜を超えなくてもいいようにってがんばってくれたこと。
だからありがとう、
ハルはもう、かなしくない。

フノイが言葉を続けようとしたとき、
ハルは静かに目を閉じました。

周りにいた大人たちが、
ハルの命が尽きたことを宣言します。

フノイはとても悲しくなりました。

初めて話した人間を助けたかった。
ハルを助けたかったのに。

夜は終わり、また朝が来ました。
ハルのいない朝です。

そしてハルのいない夜が来ます。

何度も朝が来て、何度も夜が来ました。

フノイは夜の巡回を続けていました。
ひょっとしたら全て夢で
またなんでもなかったように
ハルが話しかけて来てくれるかもしれないと思っていたのです。

そんなことないとわかっていたけど

街には今日も
フノイより小さな悪魔がいて
人間を狙っています。

それを捕獲して、あるべき場所に返す。
フノイに話しかけてくる人間はいません。

けれどフノイはさみしくありません。
昼間に見る夢でいつかきっと、
ハルに会えると信じているから。

私もそう信じていますよ。

だってこれは
かなしいけれど優しくて
さみしいけれど暖かいお話なんだって
一番最初に伝えてしまいましたからね。