正月 

2006年01月05日(木) 6時20分
「あけましておめでとう!」

まだ「あけおめことよろ」なんて洒落た言葉がなかった時代。僕らはピュウピュウ吹きすさぶ北風ももろともせず半ズボンで駆け回っていた。

正月1日目すなわち元旦は僕らにとっての財産貯蓄の時でもあり、いつもは顔を合わさない親戚との交流の時でもあった。
殆ど顔も知らない親戚にも猫撫で声で新年の挨拶をしに擦り寄っていく。
「はいおめでとう」
正直なところ顔なんかみちゃいない、両の眼に写るは白く四角い掌大の袋だ。これが今後3日間を輝いたものにするか惨めにするかを左右するのだ。

ひとおり袋を回収して外に出る(家の中だと兄弟に取られてしまうものもいるからだ)。そして袋の中をそろそろと厳かに開け、お宝を確かめる。自然に顔がほころぶのもつかの間、「今年は○○のオジサン少ないな」「○○伯母さんリッチだな!一万円!」
いつもは算数の時間は当てられるのを避けるために大人しくしているやつらもこの時ばかりは頭のコンピューターは冴え渡っている。

ホクホク顔で友人達と町へ繰り出し、道すがらあれやこれやと買うものを話し合う。
しかし!いいことばかりでは無いのも現実だ。
町にはそんな小学生を狙った悪者がいることをスッカリ忘れていた。
「ちょっとこっち来いよ」
僕らより遥かにデカイ中学生集団が道を塞いでいる。まるで修学旅行で登ったあの山みたいだ。
こうなったらもう観念するしかない。僕らは体のいい生贄なのだ。半ズボンのポケットにたんまりと紙幣を詰め込んだウサギなのだ。

こうして電車賃を残して僕らの夢は冬空の彼方にはかなく消える。
頭を垂れた僕らは靴下に隠した紙幣を取り出してニンマリする。
まだ夢は消えたわけじゃない。

そして町に向かって、運動靴を鳴らしてまた駆け出すのだった。

コスモス 

2005年12月29日(木) 15時02分
小学校からそう離れていない場所にそれはあった。

通称"バンバン"
立ち上がった大人くらいの高さの真っ赤な販売機。
側面に"コスモス"と書かれたそれを叩くために、帰りの会もそこそこに僕らは学校を飛び出した。
「今日何出っかな!?」
「ヌンチャク欲しいよーオレ」
「オレ、3回連続でスライミーだったかんなー!」

小学生特有の大声でわめき散らしながら、真っ赤な夕日に照らされた真っ赤な筐体を順番で叩いていく。
「バンバン!」
何回か側面を叩くと暫くして筐体下部の取り出し口に玩具が落ちてくる。
いつの頃からか、それをみんなは「バンバン」と呼んだ。

お察しの通り、僕らはお金を入れずに玩具だけを取っていた。

きっかけはある友人だった。
「この玩具ほんとに入ってるのかよ!」
このコスモスという玩具販売機の正面には「本当に何百円かでこんな豪華なものが!?」というような玩具の集合写真がガラス版越しに貼られていた。
だが、ガシャポンのように外から様子をみて、次に何が出るかを判別することはできない。

自分の欲しい、「キラキラビッグボール」がなかなか出なかった友人は悔し紛れに側面を手の平で叩いてみた。

ゴットン!

友人は、当たり前のように景品口から玩具を取り、何事も無かったように僕らへとそれを伝えた。
こうして、僕らは一切のお金をかけず景品を取り出すすべを何の代償もなしに得たのだった。
罪悪感などこれっぽっちもなかった。

「バン!バン!」
鉄製の筐体を叩く音が毎日のように続いて近所の人が怪しまないわけがない。

数日後、待ち伏せをしていた補導員に僕らは全員つかまった。
補導員の男性は、僕らがやっていたように赤い筐体をゆっくり「バン、バン」と叩いて無言で僕らを見つめていた。
改めて事の重大さを知った僕らは、泣きに泣いて「ごべんなざい!ごべんなざい!」と頭を下げ続けたのだった。
初めて、「窃盗」を意識した3年生の冬であった。

今でも地方のあぜ道などでコスモスの壊れかけた、商品の入っていない筐体を見かけると微妙な気持ちになりながら、側面をゆっくり叩いてみる。
「バン、バン」
あの時、補導員の男性がやったように。





あげパン 

2005年12月28日(水) 15時34分
【あげパン】

・軽く揚げたコッペパンにザラザラした砂糖がまぶされたもの


・給食の人気メニュー
・その日、欠席者がいると奪い合いになりクラスは阿鼻叫喚地獄の様相を呈する。
・力の限りギュウギュウ丸めると面白いが、丸まった揚げパンをみてすぐ後悔することになる。
・手がアブラと砂糖でべたべたになるが、小学生なので気にしないでその辺のモノを触る。
・こっそり持ち帰って下校途中に食べていたら中学生に脅し取られたことがある。泣いた。



クリスマスの思い出 

2005年12月28日(水) 15時19分
僕「サンタなんていねえよー!あいつすげえ遠いトコに住んでんだぜ!?日本に来るわけねぇじゃん!」

エペエ「いるってホントに!見たもんオレ!」

僕「ウソッ!どこで!?」

エペエ「昨日、母ちゃんのバレークラブに見学に来てた!赤い服は着てなかったけどヒゲとかすごかった!」

僕「ウソッ!帰ったら母ちゃんに訊いてみる!」


帰宅後

僕「母ちゃん、昨日、体育館にサンタ来てた?」

母ちゃん「は?スティーヴさんのこと?」

僕「違ぇよ!スティーヴさんとかじゃなくてサンタだって!」

母ちゃん「・・・何いってんの。あれ佐々木さんとこの旦那さんじゃないの」

僕「え!ただの外人なのかよ!」

母ちゃん「サンタも外人だけどね」

僕「サンタって外人とかじゃねえよ!もっと超越した存在だ!」

母ちゃん「とにかくスティーヴさんにはちゃんと言っとくから。さっさと着替えて宿題やんなさいよ」
(母ちゃん台所へ去る)

(何を言っておくつもりなんだよ・・・は!もしや!)

僕「スティーヴサンタにガン●ムのプラモがいいですって言っといて!」

母ちゃん「言うか!」

我等の掟(後編) 

2005年12月28日(水) 15時00分
魔王が興味本位からかちょっとばかり顔を覗かせたのだ。
「下界はどんな様子かな?」ってやかましいわ
とグーちょんが言ったかどうかは定かではないが
「このままではウン●マンからウンコマンデラックスくらいにまであだ名がレベルアップする状況に陥ってしまう!」
事は火を(そして便を)見るより明らかであった。

急ぐグーちょん。駆け足で昇降口を抜け、校庭脇にあるプレハブ建ての便所へと内股で急いだ。
その便所は体育などの時以外は使用するものがいない。この行為の秘密性を考えるならば最も最適な判断であった。
ドアを開け、いつもの百倍のスピードでズボンを下ろす(と同時にしゃがむ)。
完璧なムーヴ。
そして用を足す。魔王が雄たけびを上げて落下していく。
何事も問題なし。総員撤退。
かと思われた。
しかし、グーちょんの完璧かと思われるプランに落とし穴があった。股の間から見える穴。これこそがまさしく落とし穴であった。

用を足し、ホッと一安心したグーちょんは、ついさっきまでの自分の愚かさにたいす自責の念を便とともにスッカリとボットン便所の暗い穴へと落としてしまっていた。
鼻歌まじりに半ズボンを上げようとしたその時であった。
グーちょんはバランスを崩した。

ズッポリ。

彼の右足は見事、穴へナイスインをした。
もしここが普通の汲み取り式便所であったなら被害は最小に抑えられたかもしれない。
しかしながらこの便所は穴が異様に浅かった。それが安全性を考えたものなのかどうかはわからない。
だが、設計者が右足をウン●だらけにしたグーちょんを見たらそれも「安全ではない」と悟ったことだろう。

こうしてグーちょんはあまりのショックで思考回路に異常をきたしたのか、家に戻ることをせず、そのまま泣きながら朝のHRに登場し「ウンゴリアン」という名誉あるあだ名を頂戴するわけであった。

我等の掟 

2005年12月28日(水) 14時03分
その日、グーちょんこと●田くんは朝からお腹の調子が悪かった。
今更後悔しても遅いのはわかっていたけれど、朝一番からガリガリ君(ソーダ味)を食った自分の愚かさと
大事めかして冷凍庫に保管していた弟を学校に続くダラダラ長い坂道を上りながら呪った。
「魔王が子供をさらいに来るよ〜」
グーちょんはドンドン激しくなる痛みに意識を朦朧とさせながら、今、お腹を物凄い勢いで暴れまわっている何かをそう形容した。

暑い暑い夏の盛りに額に冷や汗を滲ませた少年は、坂道を上りきり、彼の今後の小学生生活を十分に左右するであろう(勿論、悪いほうに)決心をした。

「着いたらすぐウンコだ」

ご存知の通り、小学生時代の「排便in学校」は特A戦犯クラスの扱いを受ける過酷な行為である。
だから小学生は常に腹具合を気にし、注意を怠ることなくあわよくばその”身代わり"探しをしていたものだ。
グーちょんもそんな一人だったし、まさか自分がその窮地に立たされるとは今の今まで思ってもいなかった。
背に腹は代えられない。いや、背に尻は代えられない、と言うべきだろう。
今にも魔王が、彼の新緑香る林のような"場所"から「よう!爽やかな朝だな!」とでもいうように解き放たれようとしているのだ。
幸い、グーちょんは日直でいつもよりも1時間は早く家を出てきていたからまだまだ間に合う。
この日ばかりは自分を日直に選んでくれた担任に感謝の辞を述べなければなるまい。
だが、グーちょんにはそんな事を考える余裕は無いほど事態は切迫していた。







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