◆はじめに◆ 

May 04 [Thu], 2006, 13:38
この雑記は大まかに、
・冒険創作
・兜創作
・自己創作
・独り言
にカテゴリー分けしています(06.5.8現在)
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又、繰り返しにはなりますが、特に閲覧に際して注意が必要なものには、タイトルに【!注意!】と記載されています。
閲覧されて気分を害されたり、イメージを崩されたとしても、責任を負いかねますので、恐れ入りますが御了承下さい。

尚、[続きを読む]は後書きとなります。

歪んだ水 《影→矢》 

May 05 [Fri], 2006, 19:19
ZECTのシャワールーム。
自分の他に誰も利用者が居ないのは都合が良かった。
今のうちにさっさと済ませてしまおう―――そう思い、影山は手早く髪を濡らした。

胸に浮かぶ紋様は、まだ公にしてはいけない。



元シャドーの情報を、ワームに漏らしている者がいる。
そう聞いた時、脳裏を過ぎる存在は、自分ならずとも誰しもがまず考えるであろう人物だ。
考えれば一応合点がいく。
無知な他の隊員たちはすっかり納得し、この作戦に同意した。
だがその推測はあまりに単純過ぎる。
それに、

「あの人は、そんな事しないさ」

口元が僅かに歪んだ。

失ったザビーの資格。
失意に飲まれた表情。
姿を消す他に何も出来ない。



「俺がザビーの資格者になったと知ったら、あの人、どんな表情するかな」

蛇口を締め、静寂と僅かな水滴の音だけが支配するシャワールーム。
喉の奥から酷く乾いた哂いが漏れる。
どんよりと重く、うねる様な興奮が身体を支配する。

「早く、見たいな」

歪んだ感情を抱えたまま、その瞬間を心待ちにして、
彼に失意を与えるのが自分であるという事実を想像するだけで、自然に笑みが浮かぶ。





入り口の方で人の声がした。

判らなかった代償  《赤×青》 

May 05 [Fri], 2006, 21:14
「チーフ―――!!!」

さくらさんの声は虚しく響くだけだった。
連れ去られたダイボウケン。チーフは僕たちの前から姿を消した。


――チーフを信じて。

声に出さない合言葉を元に、僕たちは、あの二体のダイジャリュウを追う手立てを考え始めた。
それでも何処か、僕には…


「イッタ…!」

小さな声に顔を上げると、菜月ちゃんが指を舐めている。
例の人形の着物を直すと願い出たものの、針と糸の扱いに苦労しているようだ。

「どしたの、菜月ちゃん。ちょっと見せて」
「蒼太さん…」

指には既に数箇所、痛々しい傷跡が出来ていた。丁度持っていた絆創膏を、その指に張ってやる。

「…蒼太さん」

一連の動きを黙って見ていた菜月ちゃんが、心無し言い辛そうに声をかけてきた。
だからなるべく何でもないように、「ん?」と問い返してみる。


「蒼太さん、怒ってるの?」


正直、ぎょっとした。
そんな態度を見せているつもりなんて無かったから。
「別に?怒ってないよ。これで治療完了、針使う時には気をつけてね」努めて明るく言うとまた椅子に戻ったが、少しの間、菜月ちゃんの視線を感じずにはいられなかった。



「参ったなぁ…」

あの人の事は、誰よりも知ってるつもりだったのに。
何にも判ってなかった自分に、ずっと苛立ってるなんて…言えるわけないよね。

――その時、手元の液晶が一つの島を割り当てた。

「待ってて…くれるよね。他ならぬ“獲物”なんだから」

それは、自惚れかも知れないけど。
小さく苦笑して、僕は椅子を立った。




[END]

蜘蛛の糸、末端  《影×矢》 

May 06 [Sat], 2006, 3:23
「すると君は、矢車がワームに内通していると?」

一面の窓がある部屋で、二人の人影が向き合っている。
新たなシャドー隊長である影山瞬。
そしてこの部屋の主、三島。

「少なくとも僕はそう考えます。あの人はザビーに執着してた…それが今じゃ、あのザマですから」
「…逆恨み、だと言うのか」

三島は眼鏡を中指で押し上げる。そのレンズ越しに、目の前にいる相手の深層まで見透かそうとする様に。
対して、影山も臆さなかった。むしろ不適な笑みまで浮かべ、まだ年若いザビーの資格者は、悠然と立っていた。

「その意見は」

三島の声が僅か、低くなる。

「君の個人的な見解か」
「……はい」

少し間を置いて加える。

「でも、考えられない可能性じゃないでしょう?むしろ最も有り得るパターンだ」

それでもそらされないレンズ越しの視線に、少しだけ肩をすくめた。

「──ともかく、捕まえてみれば分かることです」

そう言って、影山は一枚の紙を掲げて見せた。
【辞令】と書かれた紙。
【影山 瞬 右を本日付けで、ZECT調査班・田所チーム配属とする】
それを手にしてくるりと向きを変え、そのまま出口へと向かう。
と、不意に足を止めた。



「一つ確認したいんですけど…用が全部済んだら、好きにしていいんですよね?…“矢車さん”」


三島は答えない。
が、それを返答と取るかのように、影山自身は満足して再び歩き出した。


「影山」


呼び止められても振り返らず。



「目的が同じとは言え、君の『我が儘』にZECTが協力するのは、今回のみだ」

「…いいですよ」



───手に入りさえすれば



口元に酷く冷えた笑みを浮かべ、影山はその重い扉を閉じた。







[END]

おときばなし  《影×矢》!注意! 

May 08 [Mon], 2006, 1:17
朧の月も、結構明るいものだ。
他に何も灯りを取る物が無い部屋では、窓から落ちる月光だけが、其処にある物の輪郭を浮かび上がらせる。


枯れた花。


自分が動けば、布擦れの音が嫌に大きく響く。
無音だ。自分達の存在以外は、全くの。

花瓶には若干の澄んだ水。
葉も、茎も、花弁も、色を失い固く渇いてしまったけど、きちんと毎朝水を替えてやって。



「貴方がくれたんですよ」


そう言って、指先で花弁に触れる。返事は聞こえなかった。
病室で初めてこれを受け取った時、予想出来ただろうか。
今のこの瞬間を。

花は咲いて、散ったら、もう誰も見向きはしない。“花であったもの”に。
でも俺は違う。

「俺は捨てません。…貴方がくれた花も。貴方も」


振り返ると栗色の双貌にぶつかった。
そっと触れると、枯れた花より柔らかい肌が僅かに震える。栗色が少し細められる。



散り際の花を摘みとって、この“温室”で、誰の目にも触れさせず、散って枯れて風化し消えてしまうまで俺の手の中で何一つ取り溢さず貴方の全てを俺のものにしたい。



息がかかるほど顔を近付けて囁いた。

「…何か、言って下さいよ」

縛った両手が痛むのか、微かに眉をしかめたまま、喉がひくついた。
かすれた声で、


「───…かげ…やま……」


両手で包むように、白い頬に優しく触れる。

「また、少し休んで下さい」

そう言うと、かさかさの唇に軽く自分のを重ねる。
そのまま潤すように舌で撫でた。
眠りに就く貴方が安心出来るように。
悪夢にうなされないように。
祈りながら、何度も。何度も───





[END]

◆東圭様から◆ 欲望  《影×矢》 

May 09 [Tue], 2006, 1:07
―ふと、目を開く。

だが視界は真っ暗だ。


少し考えて、あぁそうかと思う。


人の気配は無い。
ここにいるのは自分だけ。










『貴方が欲しいんです』








それはあまりにも突然で。

意味を考える間もなく、今、ここにいる自分。




身をもって意味を理解した。

文字通り、自分が『欲しい』んだ、と。







今ここで灯がついたなら、自分はどんな姿をしているだろうか。



資格を奪われ………いや、ゼクターに見放され、シャドウのリーダーでもない。
目指していた完全調和すらも見失って。



さぞかし格好悪いだろうな。











構わないさ。

思うようにすればいい。

この暗闇はまさに今の自分だから。










END

きみにスマイル@  《冒険ほのぼの》 

May 09 [Tue], 2006, 1:16
その日は、いつもより若干サロンが騒がしかった。

騒ぎの中心は、まあ予想がついたというか、いつも通りと言うか、予想に難くない人物で。
唯、いつもと違ったのは…

「な、菜月ちゃん、落ち着いて。ね?さくらさんもちょっと言い方が…」

蒼太の若干本気な諌め様と、

「私は間違った事を言ったとは思っていません」

必要以上に頑なな表情のさくら姐さんと、

「…っ……ふぇぇ〜…」

目にいっぱい涙を溜めた菜月。
床には、見るも無残なパンやら、肉やら、ジャガイモ片が散らばっている。
そして菜月の腕には、某有名ハンバーガーチェーン店の紙袋が、大事そうに抱えられていた。


と、俺の姿を見るが早いか、菜月は素早く俺の後ろへと身を隠す。

「お、おい菜月…」

それを追うようにしてさくら姐さんの……


ギロリ。


うぅっ、怖っ。
大体一体何が起きてるかも判らないって言うのに、何だって俺はこの二人の矢面に立たされなきゃいけないんだ。こういう時こそチーフの役目じゃないのか、明石。

「いー所に来た。ちょっと手伝ってよ」

『地獄に仏とはまさにこのこと!』蒼太の表情がそう物語っている。
同時に、このトゲトゲ痛い部屋の空気から逃がさないように、がっしりとジャケットの袖をつかまれた。
…仕方ない。

「待て、一体何なんだこれは」
「実はそれが―――」

説明しようとする蒼太の言葉を遮る…と言うより、それ以上に強い声音が響く。

「大体、元はと言えば悪いのは菜月じゃないですか」

対する菜月はびくっと身を竦ませ、俺のジャケットをより強く握り締めた。

「…でも…ダメにしちゃったのはさくらさんでしょ」
「ひ、人のせいにしないで下さい!」
「だって菜月、あれはイチバン大切にしてきたのに!」

…始まった。
我ながら情けないと思うが、仕方ない。この二人の女性陣が本気になってる間に割り込もうなんて、無謀な話だ。
俺は蒼太の袖を掴んで(こんな表現をするのは非常に不満だが)こそこそと部屋の隅まで引っ張って行くと、耳打ちした。

「一体何があったんだ。菜月のぐずりはいつものことだとして、さくら姐さんも結構本気だぞ」
「〜〜〜それがね」




[NEXT]

きみにスマイルA  《冒険ほのぼの》 

May 09 [Tue], 2006, 1:36
―――30分前。

菜月は一人上機嫌だった。
昼食に、皆で食べようと話し合った結果菜月が買い出しに行く事が決まった、某有名ハンバーガーチェーン店のハンバーガー。
その袋を抱えながら、今にもスキップしそうな程に機嫌良く、彼女はサロンの扉を開いた。


と。



ガッシャーーーン!!



運悪く、その場で盛大に転び、床一面にハンバーガー達をぶちまけてしまった。
そしてそれに追い討ちをかけるかのように、



ぐしゃ。



牧野工房から出て来たさくらが、足元の紙袋を綺麗に踏み潰してしまったのだ。
これが何より菜月のショックを煽ったのだ、と、蒼太は言った。







「…つまり?ハンバーガーを落としたの踏んだので、いがみ合ってるってわけか?」

体中から盛大に、力が抜けたのが判る。

「女性にとって食べ物って言うのは、大切な宝物だからね。僕今上手い事言った?」
「言ってない」

呆れて更に一つ溜息をついたところで、いよいよ掴み合いにならんばかりの二人に割って入る。

「待て待て待て。何してるんだハンバーガー如きで。また買ってくればいいだけの話だろ」

すると。
菜月の目により一層の涙が溜まった。
これには流石にぎょっとする。俺は何か悪い事言ったか?

「…菜月?」





「さくらさんが踏んだ袋にはね、お店のお兄さんがわざわざ入れてくれた“スマイル”が入ってたの…!」








その時。


サロンの扉が開く音がした。何も知らない呑気な明石。
そこに4人の視線は集まる。



「………ん?」




















聞いた話では。

大の大人でそれも体格のそこそこ良い男が、レジで

「“スマイル”下さい」

と言うのは、
穴を掘ってそのまま100回埋まってしまいたいくらいの羞恥心に駆られるものだと、
大分後になってから、当人は言っていた。




[END]

昆虫標本  《影×矢》 

May 11 [Thu], 2006, 2:29
例えば俺が、どれだけ貴方を大切に思っているか、
貴方は知らない。








「調子はどうだ?」

その瞬間に、白いだけの狭い世界はぱっと華やぐ。

「矢車さん、また来てくれたんですか?」
「当たり前だろう」

そう笑ってパイプ椅子に腰掛ける。
それまで室内に居た、世話係を命じられている同僚は、俺が「…行け」と目で伝えるより先に、そっと部屋を出た。

気付かないのは本人だけだ。


「あまり生モノを持ち込むなと、担当看護師に言われたからな…今日はこれを持って来た」

サイドテーブルに並べられたのは、文庫と新書サイズの本数札。
推理もの、評論、専門書…中身も見事にバラバラだが、どれもここ最近興味を持っていたものだった。

「ありがとうございます。丁度退屈で」
「ああ。…全部読み終わる前には退院して貰いたいんだが、何より無茶は禁物だ」



「すみません、矢車さん」



前ぶれの無い謝罪に少し戸惑った表情が浮かぶ。

「俺が怪我なんかしたから、シャドーも人が足りなくて…大変、ですよね」

タオルケットを握る手に、無意識に力が篭った。
それでも、決まって何でも無いような笑顔を浮かべるのが、この人だ。


「俺の方こそ済まないと思っている。お前の怪我は俺の責任だ」

「矢車さん…」

「お前たちは、俺が守る」

俺を安心させるために笑いかける。



貴方は知らない。
本当は誰より、貴方を戦いの場に立たせたく無い。




知るよしも無い貴方の為に、今は素直に頷こう。


しかしいつか、近い未来には、今と逆の立場にいよう。
貴方の背中の、その透明な羽をむしり取って貴方を安全な籠の中に入れて、誰の目にも触れないような場所で髪の毛一本まで俺が守る。
何者も貴方を傷付けられないように───






「また来る。次の差し入れのリクエストは?」

“矢車さんが来てくれるだけで”なんて。
口に出せば本気にしかならないから、今はまだ封じたままで。





「花が、欲しいです」



「花?」



「はい」

「分かった。とびきりの花束を持って来よう」





優しい笑顔、そのまま白い部屋を後にする。





貴方は知らない。









[END]

蒸留ビオトープ 《三×影》!注意! 

May 13 [Sat], 2006, 2:46
シャワールームから出る。
上半身は裸のまま、濡れて頬に張り付く髪を乱雑にタオルで拭った。



白い壁。

白い家具。

白いシーツ。

白いバスタオル。



此処では全てが純白。寝起きの目には痛くて、俺は思わず目を細めた。





ピピピピピ…………



電子音が響く。
それとほぼ同時、判で捺したように“彼”は、これも白い冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り出した。
あの冷蔵庫に食べ物らしい食べ物が入っていないのは知っている。

静まり返ったワンルームで、彼の“食事”する音だけが嫌に大きく響いた。




いつも思うが、此処に来ると時間の感覚を忘れてしまう。




いつだったか子供の頃。
熱帯魚の水槽を掃除した事があった。

匂い一つ残すのが嫌で、洗剤を使って何度も何度も洗った。美しく磨き上がるまで。

だが結果としては、清潔な巣は熱帯魚を死に追いやることになった。




あまりに生活感が無さすぎる潔癖は、生物の中の自然を狂わせるものらしい。
ああ、だから狂うのか。俺の体内時計も。




狂うのは体内時計だけか?





「執着するのは勝手だが、優先順位を誤るな」

すぐ背後に声がした。
部屋と同じように白い腕が、俺の肩に回される。彼には体温らしいものも、感じられない。

こうしているときは。


「―――お前は“生かされている”」

鉛に抱かれるような感覚の中で、想うのはただ一人の背中だけだ。

この人に抱かれる事には不思議と抵抗が無い。ただ成すが儘に。
機械の様な相手に抱かれている時は、自分まで無機物になったかのように感じてしまうのか…。
それでもこれは必要だから。

機械的な行為に感じる事なんて何一つ無いけれど、故に否を感じる事も無い。

それで今の位置が保たれるなら。



「俺にはあの人しか居ないんだ…」



唇と唇が触れ合う刹那に、呟いた。

そして、機械的な“習慣”は今日も始まる―――





[END]