芸術様式 近代〜現代

May 28 [Wed], 2008, 0:53
ジュエリーの様式について。後編です。

後半はジュエリーの動きがより活発になって、独自の文化というものができてきているような、そんなムードを感じます。


エンパイア様式/スティル・アンピール Empire style/style Empire

19世紀初頭から1820年頃。
ナポレオンが権力の座に登って1815年に処刑された少し後までフランスで展開された、
新古典主義の最終局面。

<特徴>
より厳格に古典を踏襲。
古代ローマの栄光を復活させるべく軍事的なモティーフを加える。

<ジュエリーの動き>
ティアラの復活、大型のパリュールの登場、カメオ、インタリオの復活。


ロマン主義/ロマンティズム Romanticism

19世紀初頭に厳格な新古典主義への反動として起こり、1820年代以降隆盛となったムーヴメント。

<特徴>
個人的感情の表出を賞賛。
主観的で想像的、情感を刺激するテーマや表現が主となる。

<ジュエリーの動き>
文字遊び、花言葉の寓意をデザイン化したもの、髪の毛を使ったメモリアル(記念)、モーニング・ジュエリーの登場。


歴史主義/ヒストリズム Historicism

ロマン主義の動きの中で過去への憧れやさお評価の機運が高まり、様々な様式に「ネオ」あるいは「リヴァイヴァル」の名をつけて表現の源泉とする立場。
復古主義(リヴァイヴァリズム)ともいう。


考古学様式/アーケオロジカル・スタイル Archaeological style

19世紀中頃、主にエトルリアの発掘品に触発されたジュエリーの様式。
フルトゥナート・ピオカステラーニ(1793−1865)のジュエリーがその典型。


ロココ・リヴァイバル Rococo revival

1820年代中頃からのロココ様式のリヴァイヴァル。


ゴシック・リヴァイヴァル gothic revival

1830年代から50年代頃のイギリス、フランスで復活された中世の様式。
フランソワ=デジレ・フロマン=ムーリス(1831−95)のジュエリーがその典型。


ルネサンス・リヴァイヴァル Renaissance revival

19世紀高貴のカルロ・ジュリアーノ(1831−95)のジュエリーがその典型。


エジプシャン・リヴァイヴァル Egyptian revival

特にエジプト美術を模倣した1860年代のジュエリーをいう。
エジプト趣味は1800年頃と1920年ころにもリヴァイヴァルしている。


ネオ・グリーク Neo-Greek

19世紀中頃の新古典主義のなかでもギリシャ美術に準拠した一派の様式をいう。

<ジュエリーの動き>
古代ギリシャの装飾モティーフを用いたり、動物のとうぞうを両端に付けたオープン・エンドのバングルが復活。


折衷主義/エクレクティシズム Eclecticism

過去の様々な様式に基づく装飾要素を複数組み合わせてデザインする製作態度をいう。


ジャポニズム Japonisme

1856年パリの版画家ブラックモンが発見した北斎漫画が端緒と言われるが、19世紀後半から1910年代にかけてヨーロッパの美術界に及ぼした日本美術のさまざまな影響を指す。

<ジュエリーの動き>
日本の七宝をそっくり再現したパリのアレクシス・ファリーズ(1811−98)のものがその典型。


アーツ・アンド・クラフツ・リヴァイヴァル Arts and Crafts Revival

イギリスの美術評論家ジョン・ラスキンの弟子を任じるデザイナー、ウィリアム・モリスが1861年頃から提唱した芸術運動。
機械化の量産を否定し、中世のギルドにおける一人の職人による完全な手作業の復活を理想とする。

<ジュエリーの動き>
イギリスのC.R.アシュビー(1863−1942)のものがその典型。


アール・ヌーヴォー様式 Art Noubeau Style

1895年頃から1910年頃までフランスとベルギーを中心に起こった美術様式および運動。
ユーゲントシュティール(ドイツ)、ゼツェッション(オーストリア)、スティーレ・リヴェルティ(イタリア)、モデルニスタ(づペイン)などの名称でヨーロッパ全土に展開。
ジュエリーではルネ・ラリック(1860−1945)のものがその典型。

<特徴>
自然、日本美術を源泉とする。
流れるような曲線と、非対称の構成が特徴。


ガーランド様式 garland Style

アール・ヌーヴォーに組しない主流の宝石店によって20世紀初頭に展開されたジュエリーの様式。
プラチナを導入したカルティエの繊細なジュエリーに対してH.ナーデルホッファーが著書のなかで使用した名称。パリの主要なジュエラーやファベルジェにも共通したスタイルで、基本は花綱飾りを中心とするルイ16世(マリー・アントワネット)リヴァイヴァル様式。
イギリスのエドワード7世(1901−1910)の治世とも重なることから、エドワーディアン・ジュエリーとも呼ばれる。

<特徴>
対称性と繊細な透かし細工、素材はプラチナとダイヤモンド、真珠のオール・ホワイト。


アール・デコ様式 Art Deco Style

1920年代にフランスで主流となり1930年代にかけて展開された美術様式。
1925年のパリ万博に因む名称だが、使われるようになったのは1960年代になってから。

<特徴>
アール・ヌーヴォーの行き過ぎへの反動として、抽象的で幾何学的なフォルム、簡潔な線、対称性に主眼が置かれた。

<ジュエリーの動き>
線と面を中心とした端正なデザインに透明やしろと黒の色彩に加え、東洋の影響によるカラフルな自然モティーフのデザインが平行して存在した。

参考 『ヨーロッパの宝飾芸術』



こうして様式や運動を時代の順に並べてみるとわかることですが、近代〜現代の間にはたくさんのリヴァイヴァルが存在しています。
さらには様々な国の文化にも興味が移っているのがよくわかります。
これは、この時代、存在している殆どの様式が「様式」として認知されて集められた、というようなことを意味しているように思います。
これによってあらゆるものが出揃ってしまったあと、これからはどうやって新しいものを創造していけばよいのか、少なからず戸惑いを感じているのが私たちの時代なのではないでしょうか。

芸術様式 古代〜近世

May 13 [Tue], 2008, 1:28
様式や運動は、建築、美術、音楽など、いろいろな分野の芸術同士が影響しあって発展していきます。
なのでどの芸術分野を覗いてみても大抵はかぶることが多いのですが、例えば美術にはあるのに音楽にはない様式があったりだとか、同じ名前の様式があっても微妙にずれていたりなど、ぴったりと一致しないこともあります。
個人的にはその違いに何となく面白みを感じるのですが、そこはまだ資料が整いきっていないので研究中です(笑)
今回宝飾芸術における様式の資料を発見したので、今後比較するときの参考にするために、少しまとめてみることにします。


古典様式/クラシカル・スタイル Classical style

狭義には古典期(B.C.500-479年のペルシア戦争の頃からB.C.335年のアレキサンダー大王による征服まで)のギリシャのものだが、古代ギリシャ・ローマ文明の全時代を通じた美術様式をいう。

<特徴>
建築に代表される抑制と均衡、秩序など形態の合理性を重視。
彫刻における人体比率の追求など、写実性に優れる。
陶器に描かれたグリーク・キー(卍模様)などの幾何学模様や様式化された主に東方起源の動植物、柱頭装飾などは装飾モティーフとしてその後も使われ続ける。

<ジュエリーの動き>
金を細工したものが主。
ペンダント式のイヤリングや、オープン・エンドの環の両端に先端飾りをつけたバングルなど。


ヘレニズム様式/ヘレニスティック・スタイル Hellenistic style

B.C.323年のアレキサンダー大王の死からB.C.27年のローマ帝国成立までのヘレニズム時代の美術様式。

<特徴>
大王の世界帝国創建により、様々な地域からの影響がギリシャ美術に及び様式や技術に変化が起きる。

<ジュエリーの動き>
ヘラクレス・ノットやクレッセンとなどのモティーフ、カラフルな宝石の使用、動物や人間の頭像を飾ったイヤリングなどが登場する。


古典主義/クラシシズム Classicism

古代ギリシャ・ローマの美学を規範とする芸術上の立場。
美術史の大きな流れとして繰り返し登場する。
ルネサンス、新古典主義など。


中世/ミドル・エイジ Middle Age

西ローマ帝国滅亡(476)からルネサンス(14世紀中ごろ)までの時代。
この名称そのものが生まれたのは18世紀頃になってから。


ビザンチン様式(スタイル) Byzantine style

330年のコンスタンティヌス大帝(306-337)によるコンスタンティノープル(ビザンティウム)遷都から、東西分立((395)を経て東ローマ帝国滅亡(1453)までの時代の東方教会を中心とした美術様式。
最盛期は6世紀。

<特徴>
偶像禁止により平面的な絵画表現が中心となる。
モザイク画に代表されるような豊かな色彩が特徴。


ロマネスク様式 Romanesque style

10世紀末から12世紀後半にゴシックにかわるまでの様式。
「古代ローマの様式」の意味。
教会建築とその装飾に優れたものが多い。
宗教関連の美術が主体。

<ジュエリーの動き>
12世紀末にリモージュを中心に七宝が発達。


ゴシック様式 Gothic style

12世紀に北フランスで始まり、13世紀にヨーロッパ各国に広がった様式。
古代ローマを滅ぼしたゴート族に重ねて、「野蛮な」という意味。
ルネサンス期のイタリアで名づけられた。

<特徴>
尖塔アーチや飛梁、ステンドグラスのバラ窓や円柱人像、ガーゴイルなどを特徴とする教会建築に代表される。

<ジュエリーの動き>
彩色写本やタピスリーの影響を受けた七宝の発達、象牙彫刻など。


ルネサンス様式 Renaissance style

14世紀イタリアで起こり、15,6世紀にヨーロッパ全土に広がった様式。

<特徴>
宗教性を離れ、人間中心の古代ギリシャ・ローマの美的規範の復興を目指す。

<ジュエリーの動き>
アンセーニュ(ハット・バッヂ)やペンダントに特徴がある。
立体的かつ彫刻的で宝石彫刻(カメオやインタリオ)と金細工を組み合わせた複雑な作り物が多い。
七宝もさまざまな技法が発展、色石の多用も含めてカラフルなジュエリーが展開。


マニエリスム manierism

後期ルネサンス(1530年頃から16世紀末の真ロックまで)のイタリアで展開された美術様式。
様式を意味する「マニエラ」に由来。

<特徴>
ルネサンス本来の自然描写を離れ、誇張や劇的効果のための非現実的な表現、不調和なとげとげしい色彩、過度に技巧的な点が特徴。


バロック様式 Baroque style

16世紀末イタリアで起こり、17世紀を通じてヨーロッパで展開された様式。
語源はポルトガル語のゆがんだ真珠を意味する「バローコ」といわれている。

<特徴>
古典を源泉とした活力と躍動感にあふれる曲線的フォルム、豪華な装飾性と堂々たる表現、対称性が特徴。
ルイ14世のヴェルサイユがその典型といわれている。

<ジュエリーの動き>
真珠や宝石の大きさと数に重点が移る。
ダイヤモンドが多用されるようになる。


ロココ様式 Rococo style

18世紀にフランスで発展した美術様式。
フランス語のロカイユ(庭園の人口の岩壁を飾る小石や貝殻の装飾)に由来。

<特徴>
繊細、華麗、手の込んだ装飾、非対称性。
アラベスクなどの植物モティーフの曲線や渦型、ロカイユ装飾が多用される。

<ジュエリーの動き>
ここでも非対称のデザインが多用される。
好まれたモティーフは、リボン、羽、花、葉飾り、渦型など。


新古典主義/ネオ・クラシシズム Neo-classicism

考古学的発見やグランド・ツアーを契機として18世紀中頃から19世紀初期にヨーロッパ、アメリカで趨勢となった様式。

<特徴>
ギリシャ・ローマの古典美術を規範とした明快で完成度の高い表現形式。
ロココの官能性や通俗性を論理的かつ厳粛な啓蒙的性格に置き換えようとの意図から、為政者たちの公式の美術様式といった側面もある。

<ジュエリーの動き>
月桂樹やグリーク・キーなどの古典のモティーフ、フェストーン(花綱飾り)やスワッグ(垂れ綱飾り)などが多用される。


ルイ16世様式 Style Louis ]Y

ルイ16世(1774-92)の治世にフランスで開花した新古典主義の美術様式。
マリー・アントワネットスタイルとも言う。


                          参考『ヨーロッパの宝飾芸術』

ジュエリーはなぜあるのか

May 12 [Mon], 2008, 13:40
「カニング・ジュエル」

ルネサンス期の名作。
男性の人魚がメドゥーサの首を切り取ったところを描いたペンダント。
16世紀後半、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館蔵


ジュエリーというとそれは女子供が身につけて遊ぶ他愛のないもの、または金持ちの見せびらかし、自己顕示欲の高まり、みたいな、魅力的ではあるが重要ではない、そこに強くこだわり続けることは愚かなことであるといったようなイメージがぱっと思い浮かぶように思います。けれど、原始から存在する装身具の類を見ていると、もっと何か違ったニュアンスを感じる気がします。
何故なら、物がたいして豊かでもない原始時代からわざわざ装身具の類が存在しているということに何かただならないものを感じるし、アクセサリーとは大抵は小さな物が多いけれども、そのような取るに足らない、お腹も膨らむわけでないものに、これでもかというほどの複雑な装飾をほどこすのは、並大抵の志ではできないことだと思うからです。
そんなことから、ここには何か、そうしなくてはならない、そうせずにはいられない必然があるのではないか、と思ってしまうのです。

ちなみに、装身具というものが存在するわけについては多くの専門家たちが考え、語っていますが、いくつかの説にわかれ、これだという説が完全に決定してはいない、つまりあまりよくはわかっていないというのが現状のようです。


ジュエリーとは何か

呼び名はいろいろあって、ジュエリー、宝石、装身具、アクセサリー、宝飾品などと呼ばれる。
人間が美しいと思うもので、それらが自然そのものの姿であっても、加工したものであっても、己の身体を飾るもののことをいう。


装身具の起源

主に4つの説がある。

1.護符説
原始社会に存在しているさまざまな危険にたいしてのお守りとして生まれたという説。古い装身具のなかには強い動物、例えば虎や熊、獅子などの爪や牙を使ったものが多いが、このように強い動物のものを身につけることによって自分にその強い力が移る、と考えてそれらが用いられたのではないか、と考えられている。

2.ホモ・ルーデンス説
人間というものは機会さえあれば本来「遊ぶ」動物なので、美しいものを見つけたときにはそれを身につけて遊ぶのだ、という説。

3.自己異化説
人間はとにかく人と異なりたいと思っていて、その道具として装身具を身につけることによって差別化を図るのだ、という説。

4.自己同化説
人間はとにかく何かに帰属していたいと願う生き物なので、周りの人と似たようなものを身につけて、あるグループの構成員であることを強調するのだ、という説。

                            参考『ヨーロッパの宝飾芸術』


みなさんはどう思われますか。
私は個人的には、発生は1の護符説、それに異化説が加わってそれらが強い流れとなりながらも、2,3あたりも常にわきにあるようなイメージを何となくもっています。
専門家じゃないので、あくまでイメージでしかないのですが・・・
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ドロッセルマイヤーズボードゲームマート副店長/株式会社ドロッセルマイヤー商會取締役

武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科卒。専攻はフルート。
西洋音楽について勉強するかたわらで、西洋音楽を内部から作りあげている西洋(特にフランス)の歴史や文化、美学などに強い興味を抱くようになりました。
以来、西洋文化を中心に「遊び」や「フェティッシュ」に関するものを蒐集、執筆活動をおこなっています。
主な著作は『宮廷マダムの作法』など。
ドロッセルマイヤーズボードゲームマートの副店長、店舗内装、世界観演出、展示会への参加、オリジナルボードゲームの制作など、ジャンルにとらわれず色々活動しています。

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現実の、よく知っているものとは全く別次元の、別の法則によって作られたものが大好きです。
しかもその世界観が強固であればあるほどしびれます。
理想郷というものにも似ているかもしれない。

●コレクション、陳列、カタログ的なもの

厳選されたものが沢山並んでいる状態を見ると震えます。

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