コラージュについて

August 28 [Fri], 2009, 15:46
コラージュとは「糊付け」を意味するフランス語で、現代絵画の技法のひとつ。
私にとってはこれはとても人工的で、自分にとってのフェティッシュ基準に合格するものとして、かなり気になる表現方法です。



コラージュはとても人工的です。
それは、もともとは違う意図で存在していたものを強引に切り取って素材とし、それらをさらに別の素材たちとくっつけることによって別のものとして存在するように、無理矢理捻じ曲げてしまうからです。
それはまるで、以前にも述べた和洋折衷の美のよう。
私にとってはこの力づくの表現はとても色っぽいものとしてもうつります。
素材そのものはそれぞれの世界観をしっかりと放っているにもかかわらず、それらは暴力的に、いともあっさりと別の世界観のものと組み合わされてしまうからです。
コラージュを作る者にとっては、彼らの自己主張をきちんと受け入れながらも、まるでただ悪戯をするかのような残忍な心で切り貼りしていきます。
素材そのものは強烈な世界観をもっているにもかかわらず、それらははさみによって簡単に切り取られてしまう危うさがある、という色っぽさがあることは勿論のことですが、さらにはこれらを細工する人間には、このような残酷な行為をただ無邪気に遊ぶという、別の色っぽさまで漂ってくるのです。

これらがどういうものなのかまだ私にはうまく説明ができませんが、とにかく強烈に私の心を動かすものであることに変わりはないので、とりあえずはメモ程度に、記しておきたいと思います。

クラヴサンについて

August 18 [Tue], 2009, 20:25
ちなみにクラヴサンとは何か。
ようは、イタリア語で言うチェンバロ、英語でいうハープシコードです。
ピアノの先祖にあたる楽器ですが、鍵盤は主にピアノと白黒が逆になっているところが面白いところ(そうでないものもありますが)。
ピアノよりは大分繊細で細い音がします。
この独特の音が、バロック音楽にとってはまさに重要なものなのです。
(そして私はこの人工的で玩具のような音が大好きなのです)

音の強弱は、ピアノのようにタッチによって変えるということがあまりできません。
なので音を強調したいときは同音を別の鍵盤を使って重ねるか、トリルなどを使って目立たせます。
音を出したとき、ピアノよりもさらに音が伸ばせないため、バロックの音楽で音を引き伸ばすときには、やはりトリルを連続的に用いることによって表現します。
そんなふうに、現代の楽器とは少し異なった演奏法が必要になるというところもまた、古い楽器ならではの魅力です。

スピネットを弾くマリー・アントワネット

16世紀〜18世紀頃に、スピネットという楽器が、貴族達の間で流行したことがありましたが、これはチェンバロの小型になったようなもの。
携帯もできるようなものもあり、そのデザインはとても凝っているものが多く、美術品としても充分に楽しめるものになっています。
そのコンパクトで、不必要に美しい装飾を施すといったような、いかにも玩具的な感じは、まさに私が大好きなものといえます。


Vivaldi/Bach: Concerto in A minor for Organ
(arr. for small harpsichord by Ryan Layne Whitney), played on replica 1677 Epinette à l'octave of Jean Denis



Frescobaldi Canzone Prima & Terza Loreggian spinet

バロックダンスについて

December 30 [Tue], 2008, 22:17
記事『男性の美とモード』のところで登場した「バロックダンス」とはいったいどういうものなのか、今日はそれについて少しだけ触れてみたいと思います。

バロックダンス(英:Baroque dance, 仏:Danse baroque)とは、その名の通り、バロック時代(1600年〜1750年頃)にヨーロッパで踊られていたダンスのこと。
これはバロック音楽や演劇、オペラととても密接な関係を持っているので、ただ単に「ダンス」である、と線引きしてしまって良いのか、実は私にはよくわかりません。
それから、バロックダンスはバレエと基礎を同じくしているようなところがあるようです。

この時代のダンスで現在残っているものには大まかに分けると、イングリッシュ・カントリーダンスというものと、フレンチ・ノーブル・スタイルというものに分けられるようなのですが、私が主に注目しているのはフレンチ・ノーブル・スタイルのほう。
こちらのスタイルは、ルイ14世の宮廷でめざましい発展をとげました。

フランスのダンス・タイプにはこのようなものがあります。

●ブレー(Bourrée)
●カナリオまたはカナリー(Canario or Canary)
●シャコンヌ(Chaconne)
●クーラント(Courante)
●アントレ・グラーヴ(Entrée grave)
●フォルラーヌまたはフォルラーナ(Forlane or Forlana)
●ガヴォット(Gavotte)
●ジグまたはジーグ、ジーガ(Gigue or Giga)
●ルール(Loure)
●メヌエット(Minuet or Menuet)
●ミュゼット(Musette)
●パッサカリア(Passacaglia or Passacaille)
●パスピエ(Passepied)
●リゴドン(Rigaudon)
●サラバンド(Sarabande)
●タンブーラン(Tambourin)

これらのダンスのタイプはクラシック音楽でよく知られています。


ところで、なぜルイ14世の宮廷で突然このダンスが発展したのでしょう。
実はこれについては、ちゃんと当時の政治情勢をからめた理由があります。
そして何より、との当時の王様であるところのルイ14世がとてもバレエが大好きだったということにも原因があるようです。
これについては、フランスのダンスの形式も含めて、いずれ触れていきたいなと思っています。

農民たちが踊るような、自分の感情に対して忠実な熱狂的なダンスというものももちろん素晴らしいなとは思うのですが、貴族たちが自分の快楽よりは見てくれを重視して踊っていたようなものに、私は非常に興味があります。
何故ならそれは本能で出てくるものではないので、文化的であり、とても人工的なものだと思うので、私のフェティッシュの感性にとてもマッチしていると感じるからです。
そういうわけで、これらについてはこれからもいろいろと調べていきたいな、と思っています。


↓こちらは男性のバロックダンス

衣装は17世紀をイメージしているようです。

シルエットの変化の歴史

December 02 [Tue], 2008, 19:00
西洋の服飾の歴史について調べていると、西洋の服飾に対する意識は、衣服というものを「身体を包むもの」とする考え方の中にはおさまらないということがわかってきます。
ではどのような考え方なのか。
それは、まず身体を建築物のようにしてしまうという感覚。
そしてそれにあたって、身体のどの部分を強調し、どの部分を引っ込めるかによってシルエットをどのように変形させるかに感心が寄せられているように感じられます。

いくつかを例にあげてみましょう。

●コルセット
これはウエストラインを引き締める効果や、乳房を下から持ち上げることによって強調する役目を果たしています。

●パニエ
スカートを膨らませる役割ですが、これによってウエストの細さを強調する効果もあります。

●バッスル・スタイル
日本でいうなら鹿鳴館時代によく見られた洋装。
ヒップを大きく強調します。

この他にも、ロココ時代のかなり大仰な髪型など、かなり奇抜な方向に進んだ誇張表現はいくつもあります。
何となくですが、それ以外だと、16世紀あたりに流行った服飾には、そのようなちょっと奇妙な誇張表現が多いように思います。

このような誇張表現は、その当時からすでに奇抜なものではあったので、それと同じ時代背景にない私たちからしてみるととても滑稽でつい笑ってしまうくらいのものが目立ちます。
けれどもそこに表現されたものは何か目に見えないもの、例えば人間の心理であったり欲望であったり・・・そういうものを極端に目に見える形で表現しているようにみえるので、非常に人工的に捻じ曲げられて、グロテスクに感じられます。
だから、ただ単に「おもしろいねー」などと笑ってすませてしまうことのできない、おどろおどろしいものだと私は思うのです。

けれども、何というか怖いもの見たさとでもいうのでしょうか。
私はそういうものを見るとやっぱりついうっかり凝視したくなってしまいます。
そして、この形が出てきたその心は・・・なんていうふうに、考えてしまうのです。
それってある意味悪趣味なのかもしれませんが・・・・

「見せる」「見られる」ということの極限

October 08 [Wed], 2008, 17:40
「見せる」「見られる」ということが極限まで追求されていったとき、そこにはどんなものが現れるのでしょうか。

まず最初に行き着くのは、世の中には個人の「秘密」というものがなくなっていく、ということです。

アンリ4世風の帽子をかぶった女性 デレ画

秘密がなくなるとはどういうことでしょうか。
常に他人の目を意識していて、できるだけ他人に自分を見ていて欲しいと願うということは、ある意味自意識が病的に肥大化した状態と同じだと思いますが、そのような精神状態になるとよく人がすることといえば、「自分の秘密の暴露」だと思います。
何故ならいつの世でも、「秘密」と言われているものほど人の気を惹くことのできるものはないからです。
だから人は、本当の意味での秘密を暴露するのではなく、本当なら知られても構わない、むしろ人に知られるための秘密をわざわざ作りだして吹聴する、いうわけです。

例えば人々は、自分の悲しみや喜びを大げさに誇張してばらまきました。
彼らはいつも、自分の罪を暴露したくて仕方がありませんでした。
そして人々は、自分の友人に「自分のなかで一番大きな秘密」を暴露しました。
だからすべての人々は、お互いに知り合った仲であり、ある程度まではお互いにつながりあった仲でもありました。

こんなできごともあったようです。
ある女が死んだときに、ある噂が飛び交いました。
その噂とは、その女が今まで世間がまるで知らなかった恋人と付き合っていたことが明るみになった、という筋書きだったはずなのに、なんと、

すべての人がそれをあらかじめ知っていた!


この時代のこのような風潮については、ゲーテもこう言っているようです。


「人々が話したり、ひとりひとりに手紙を書くのは、それが同時にたくさんの人に広がると見込んでのことである。
かれらは自分の心を探り出し、また他人の心をも探り出した」



このように「演出」するということが主流になると、これからうまれるのは「ポーズ」というものです。
つまり、表面的にかっこよければ何でも良い、という考え方です。
これを別の言葉で言い換えると、ようは「見栄」ということになります。
つまりこの時代の主流の精神とは「見栄」であり、この時代の人々はみんな見栄っ張りだった、と考えることもできるのです。

だから人々はいつも見栄のためだけに動き、次第にそれだけで満足するようになっていきました。
なぜなら手っ取り早く効果が現れたほうが、人々の評価があがったからです。
真実や真面目さというものは、追求しようと思うととにかく時間のかかるものです。
だからこれは、他の人々と競争するにあたっては非常に不利なものとなってしまう。
そういうわけで人々は、とにかく見栄えさえよければあとはどうでも良かった。
真実など糞食らえ、というわけです。

このように表面だけが尊ばれるようになると、最後に起こることは、「それはそもそも真実では全くない」ということです。

ここに至ると、真実はとうとう「むしろ不愉快なもの」に成り下がります。
純粋とか真実とかは、とても気難しいからです。
真実を言うことは、演技の効果を狭める、つまらないものとして考えられるようになってしまったのです。
つまりは野暮の極みだということ。
だから、すべての自然はもう「書き割り」で良い。
すべてのものは舞台の上の「役者」で良い。
王ですら、本当の意味での英雄行為は重要でなく、そのポーズさえしっかりしていれば良い。

そしてこのような思想は、この時代の色々な文化に表れてくるのです。


ところで、文化がこういう風潮になってきたときに個人的によく思うのは、これは最高に人工的な状態ではないだろうかということなのですが、どうでしょうか。
社会全体が舞台である、というのはその規模の大きさからしてもびっくりするほどです。
(もちろん上流階級だけの話ではあるのですが)
そしてこのような状況のもとで生まれてきた文化がもし美しいものであるならば、それはもう「人工の美」と言ってしまっても良いのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
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ましろ・ななこ
作家/ライター
ドロッセルマイヤーズボードゲームマート副店長/株式会社ドロッセルマイヤー商會取締役

武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科卒。専攻はフルート。
西洋音楽について勉強するかたわらで、西洋音楽を内部から作りあげている西洋(特にフランス)の歴史や文化、美学などに強い興味を抱くようになりました。
以来、西洋文化を中心に「遊び」や「フェティッシュ」に関するものを蒐集、執筆活動をおこなっています。
主な著作は『宮廷マダムの作法』など。
ドロッセルマイヤーズボードゲームマートの副店長、店舗内装、世界観演出、展示会への参加、オリジナルボードゲームの制作など、ジャンルにとらわれず色々活動しています。

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個の輝きの強いものに惹かれます。
現実の、よく知っているものとは全く別次元の、別の法則によって作られたものが大好きです。
しかもその世界観が強固であればあるほどしびれます。
理想郷というものにも似ているかもしれない。

●コレクション、陳列、カタログ的なもの

厳選されたものが沢山並んでいる状態を見ると震えます。

以上、とても個人的なものなので、偏りや思い込みが激しいことも沢山あるかと思いますが、もしよかったらおつきあいくださいね。
よろしくお願いします。
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