『空中庭園』 角田 光代 

2004年06月16日(水) 22時21分
『空中庭園』/角田 光代


3冊目の角田光代作品。
この作品、映画化されるらしい。

章ごとに語り手が変わる連作短編集。
京橋家に関わる出来事について書かれたものだが、
同じ出来事も違ったベクトルから見ると全く違った内容になっていて面白い。

高校生の娘、父、母、祖母、父親の愛人であり息子の家庭教師を務める女性、
中学生の息子という順で物語はすすんでいく。

この家族のモットーは「何事もつつみかくさず」。
このモットーを隠れ蓑にものすごい秘密を家族みんなが抱えている。

表題作の『空中庭園』は母である絵里子の章。
実はこの家族は絵里子の完全なる計画のもとに端を発しているのだという。
子供がお腹にいるときから子供に話す架空の過去を作り上げてきた。
「何事もつつみかくさず」のモットーをうち立てたのは彼女だったが、
その彼女には作り話までして隠している秘密があったのだった。


角田光代の作品の家族はどれもどこか寂しさが漂っている。
他人が寄り集まって家族ごっこをしているような…。
だからだろうか…角田作品を読んだあとは
いつもなんだか淋しい気持ちになってしまう。


『かまいたち』 宮部 みゆき 

2004年06月14日(月) 22時57分
『かまいたち』/宮部 みゆき/★★☆☆☆


宮部みゆきの現代物は面白かったので時代物を読んでみることに…。

表題作「かまいたち」のほか、「師走の客」「迷い鳩」「騒ぐ刀」の
4編からなる短編時代小説集。

「かまいたち」
「かまいたち」と呼ばれる辻斬りが江戸の市中を騒がせていた。
ある日、町医者玄庵の娘おようはこの辻斬りを目撃してしまう。
数日後におようの家のお向かいに越してきた新吉は
まさしくあの「かまいたち」だった。

「師走の客」
小さな旅籠「梅屋」で起こった事件。
「鏡屋」という小間物屋は
伊達様から、その年の干支の置物を毎年ひとつずつ、
12年かけてひと揃いになるよう注文を受けているという。
干支がそろったあかつきには百両の商いになると言って
伊達様に届けるのと同じ物を毎年「鏡屋」に届け、
この細工物で宿賃を払っていた。
子、丑、寅、卯、辰と揃い、今年で半分が揃うはずだった…。

「迷い鳩」「騒ぐ刀」
根岸肥前守鎮衛という歴史上の人物の残した『耳袋』を元に書かれたお話。
デビュー前に書いていたものを今回改稿したもの。

「姉妹屋」のお初は人には見えない物が見えたり、
不思議な声を聞いたりする時がある。
このお初の不思議な能力を使って
岡っ引きの兄六蔵や植木職の兄直次とともに
色々な事件を解決していく。


前半のふたつのお話は言ってみれば
「大岡越前」とか「遠山の金さん」「桃太郎侍」といったところだろうか。
あとのふたつは、超能力少女のお話。
どれも読みやすい内容ではあるが、
歴史小説好きとしては、どれも今ひとつ物足りない。
わざわざ時代物である必要がないように思うのだが…。

4作とも宮部みゆきの初期の作品ということだったので
もう1作くらいは時代物を読んでみてもいいかな…という感じ。


『グロテスク』 桐野 夏生 

2004年06月13日(日) 23時33分
『グロテスク』/桐野 夏生/★★★☆☆


タイトルだけ見たときはグロテスクな殺人か何かを題材にした
ホラーっぽい小説だと思っていたので、手を出さずにいた。
先日桐野夏生がトーク番組に出ていて、興味をそそられたので図書館で借りてきた。

最近文庫本を読むことが多かったので、ハードカバーの
上下2段組は読み慣れるのに少しかかった。

主人公の語りと、その他の人の手記という形式でストーリーはすすんでいる。
主人公の「わたし」はスイス人の父親と日本人の母親を持つハーフで
妹「ユリコ」との2人姉妹。
「わたし」とユリコは姉妹でも全く似ていない。
ユリコは怪物的な美貌の持ち主で、私の容姿は平凡。
小さい頃からユリコと比べられ、ユリコの美貌を妬み、
それはユリコ自信への恨みとなった。
ユリコから離れたい一心で「わたし」は猛勉強の末、
都内の一流校Q女子高に入学。
しかし、後に「ユリコ」は美貌を武器に中等部の帰国子女枠で
入学してくるのだった。

Q女子高は小中高大学一貫校で、内部生による外部生蔑視。
内部生のなかでも家柄、学力、容貌によって
自ずとランク付けがされる階級社会。
『太陽の季節』の世界だ。
たぶんモデルになっているのも同じ学校だろう。

そこで出会ったのが、「わたし」と同じ外部生の和恵と
中等部からの内部性のミツルだった。
和恵は上の階級を目指して努力をするが、
「わたし」からみるとその努力は無駄で滑稽なものだった。
一方ミツルは成績はずっとトップを保ち、運動能力も抜群。
だが、そんなミツルも中等部では外部生として虐められていたのだった。

誰の心の中にも少しはあるだろう「妬み」「恨み」「蔑み」「羨望」「悪意」などの感情が
突出したそれぞれの人物のグロテスクさ。

筆者が女性だからこそ、ここまでグロテスクに感じ、
慄然とする内容に仕上がったのだろう。


2004年06月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
最新コメント
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:hanako
読者になる
Yapme!一覧
読者になる