本の12ページ目 

December 31 [Sun], 2006, 10:49
           十一

「村裁きは、急きょ、取りやめになった。」

病院のベットから呼び出した檸檬達の前にいる長老は子供達を見渡してからそう告げた。

「...はぁ?」

6人あわせてそんな声が出た事に長老は目を丸くした。
こう言う反応がくるだろうと言う事は大体予想はついたのだが、まさか全員がハモッて声を出すなどと思っていなかったのだ。
ハモらせた本人達も驚いていたが、それ所ではない。

「え..長老、取りやめと言うのは...。」

少し遠慮がちに堵魔斗が長老に聞く。
それを目を細めてめた長老は、うんうん。と何度も首を動かして答えた。

「村裁きは、なしになった。実はのぉ、お前達のある保護者の話によると、あの割れた宝玉を見て、お前達に目配せをし、山へ登らせたそうだのぉ。ウラヌス様は、子供に何かを伝えてくれるかもしれない。と思ってな。」

長老はそう言いながら、一人一人の顔を見渡した。

「え...。いや、長老、そうじゃなくて...。」

本当は、私が計画をして皆を誘って山へ登ったんです。
そう言おうとしている檸檬をすばやく察すると、苺はその檸檬の両肘に伸びている手の甲を爪を立ててつねった。
ひっ!と言う息を詰まらせたような声が檸檬から聞こえてきたが、それをさえぎる様に口を開く。

「それが本当だと思ったから、村裁きは急きょ、取りやめになったのですか?」

長老は軽く目を見張ってから、そうじゃ。と頷いた。

「...にしても、愚かな行いじゃったのぉ。このままだったら、お前達全員は死刑だったかもしれないのじゃぞ?」

死刑。
その言葉に子供達は皆血の気が失せた顔をしたが、それを横目で軽く受け流すとさらに長老は続けた。

「それにな、一応保護者にも言ったのじゃが、お前達がやった事は罪は罪。だから、死刑以外の処罰を言い渡そうと思う。」

長老はそう言うと、持っていた紙を一人一人に手渡す。

「あの、これは?」

魔名都が口を開くと、長老はその手紙を家で見るように指示をした。
そして、そこに書いてある事を、半年継続するように、と。
半年というのは長いような気もするが、まあ、掟破りをした自分達が悪いのだから、しょうがないな。
と思いつつ、それをポケットにしまいこんだ。

「まあ、説教はこれくらいにして、君達の入院期間はまだ1週間以上あるのだからな。ゆっくりと安静にしてから見るといい。じゃあ、ゆっくり休みなさい。」

長老はそう言うと、そのまま上機嫌でぺたぺたと歩いていった。




それからまた数日後。

「では、お世話になりましたぁ。」

病院の前では荷物をまとめた6人の子供達とその担当だった看護婦、それから病院長に礼を言っている所だった。

「もう、あんな事はしてはいけないよ。まあ、長老に話を聞いたから、もうあんな事はしないだろうけどね。」

「はい。もうしません。」

「では。」

一人一人礼を言っていくと、皆はそれぞれ自分の家の方に向かって行った。



「ただいまぁ。」

と、檸檬は家に帰れるのが嬉しいような悲しいような。
と言う気分で帰宅してきた。
帰れるのは嬉しいが、きっと父も母も怒っているだろう。
自分の娘が村裁きを受けそうになっていたのだから。
これは2週間以上は口を聞いてはくれないだろう。
謝っても許してくれなさそうだ。

「...?お父さん?お母さん?」

変だ。
この時初めて、家の異変に気付いた。
お父さんは仕事かもしれないが、少なくともこの時間帯はお母さんはいるのだ。
スーパーのバーゲンだろうか。
そう言えば、ティッシュが切れそうだ。って言ってたなぁ。

「あ、そうだ。」

父と母がいないことはともかく。と、頭の中の話を切り替えた。
檸檬はそう呟くと、しょっていたカバンをテーブルに乗せ、そこから長老から預かった、処分の内容が書いてある手紙を出し、はさみで封を切った。

そこには・・・。



「え...?」

数時間後、檸檬は長老の手紙を持ち、自分の家を出て長老が住んでいる家に上がりこみ、話を聞いていた。

長老から渡されていた手紙には

「すぐ、私の家に来い。そこで少しばかり話をして処罰の内容をいう。」

と、書いてあった。
だが、

「処罰は今からする話を半年間、誰にも言わない事だ。」

と言って切り出した話は、とても信じられないような話だった。

「それは...本当なのですか?」

長老は1週間前の笑顔とは別に、何かとても悲しい話を読んだような顔で重々しく頷いた。

「...お前達がやった事は村裁きでは死刑に値する物だった。私は前にお前達に言ったな。でも、それをある保護者があの割れた宝玉を見て、お前達に目配せをし、山へ登らせた。と言った。」

「...その...保護者が...。」

「お前の父親と母親じゃ。みなの保護者はそれが本当だと信じ、2人に感謝の言葉を投げかけた。だが、それでは他の村の者の示しがつかないのじゃ。・・・だから、わしは・・・あの2人に、ここの村に足を踏み入れては行けない、一刻も早く立ち去れ、と言ったのじゃ。そうしたら、子供達の死刑は、逃れるであろう・・・。と。」

檸檬は目の前が真っ暗になった。視界がぼやけたりはっきりしたり、長老の言ってる言葉が時々聞こえたり聞こえなかったりと、自分でも良く分からない出来事が起きていた。

「では・・・。父と母には、もう会えないのですか・・・?」

    耳鳴りがする。そんな事は聞きたくない。


その檸檬の言葉に長老は静かに頷いた。

「父と母が・・・。私達をかばったから・・・。」

    何で父と母はかばったのだろう。

    何で自分の親ではないといけなかったのだろう。


「そうじゃ。」

「1人で・・・生きて行くしか出来ないのですか・・・。」

    1人は嫌だ。1人は恐い。1人は寂しい。1人は悲しい。


「左様。」

檸檬は一言一言を聞きながら、奥歯をギリリッ。と、噛みしめた。
泣いてはいけないと思った。
それでは自分をかばった父と母に面目が立たない。

でも・・・。

「・・・そうですか・・・。分かりました。」

檸檬はそう言うと、立ち上がり、玄関の方に向かって行った。
長老は檸檬の言葉に目をむいた。

「『そうですか。』って、檸檬はいいのか?それで。」

檸檬は振り返り長老を見た。
とてもショックを受けている感じだ。
檸檬は少し躊躇し、唇を噛んでから笑顔で、

「はい。さっき、父と母が家にいなくて少し心配だったんですけど・・・。でも、生きていたら・・・きっと会えますよ。」

檸檬はそう言うと、手馴れた手つきで自分の靴を履くと、そのままドアノブを回し、そのまま振り返りもせずに帰っていった。

『バタン。』

長老は唖然とした顔で檸檬を呆然と見送った。





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