Called Game-Cold Game

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停電炸裂黒麦酒 -4 / 2006年08月19日(土)
いや、停電ってのは普通突然なるもんだと思うけど、少なくとも私にとってそのタイミングに起こったことが、一瞬認められなかったくらいに「突然」だった。
スタンバイにしたときみたいに、モーターが減速する音が空しく真っ暗な部屋に響いた、
…とりあえず私たちは、空々しく笑った…。
永遠に続くような沈黙の後に、ありえねー、というテルの言葉が力無くホテルの壁に跳ね返された気がした。いや、本当に言ったかどうか定かじゃない。
私が言ったか思ったか、どれか…全部かもしれないけどとにかく、頭の中が真っ白とはこういうことかと地味に感動したのを覚えている。
だけどそのありえねー、が、ありえるのかよ…になるのに、あまり時間はかからなかったのは確かだ。
冷房が止まってじわじわとこみ上げる暑さが現実逃避を妨げる。
喉がからからだけど、微動だにできなかった。

 
   
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停電炸裂黒麦酒 -3 / 2006年08月19日(土)
だから何の予備知識も電子辞書も持たずに来た私たちは当然途方にくれることになったのだけど(どうやらテルも同じようなことを思って私をあてにしてたらしかった、バカヤロー、…人のこと言えないけどさ)、
まあ生活に最低必要限なことは身振り手振りと、あとドイツ語が通じる所もあるにはあるし。…何言われてるかはいまいち分かんねえけどな。
それでもあまりに美しい街並みや、美味い黒ビール、頻繁に行われる素晴らしくレベルの高い演奏会(しかもタダ同然だ、考えさせられてしまう)、生チェコフィル、スメタナ先生の博物館、ドヴォルザーク記念館、…私たちが満足しないわけがなかった。
テルがここへ来たがったのも、…私を引っ張ってきたのも、すべて納得がいった。
だからつまり、めちゃくちゃ謳歌してたのだ、一週間は。
海外に行くときに必ず持っていくノートパソコンは、デビューしたときぐらいに買って以来ずっと愛用しているVAIOだ。
少し動きが怪しくなってきてたんだけど、それ以外たいした問題もないので今回も例に洩れず連れてきてて、ちょうど五線譜を持ってくるのを忘れたから、それに少しずつ曲をつくって保存してた。
私は本当は五線譜にガリガリ書いたり消したりしながら作るほうが、なんとなくそれっぽくて好きなのだけど、持病の腱鞘炎が忙しくて再発しかけてたから、それもちょうどいいやと思って。
ツアー中盤くらいから構想を練っていたやつだから、大体が決まっていたんだけど、
チェコの、この上なく上質で陽気な音楽に触発されずにはいられなくて、いくらでも弄りたいところができてしまう。
一瞬コードをぶつけたり装飾音符を付けたり、気づきにくいシンコペーションにしたり、誰も気づかねえよと思うけどかえってそういうのが楽しくて、やめられない。
そして昨日…正しくは今から数時間前、ようやっとその曲が完成…ってか一段落ついて、バックアップに上書きしていた時だった。突然、停電したのだ。


 
   
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停電炸裂黒麦酒 -2 / 2006年08月19日(土)
この街、プラハに来たのは、今からちょうど1週間前だ。
仕事で来たわけではなくて、新曲のレコーディングと怒涛のプロモーションを済まし、無事全国ツアーをファイナルまでやりきって、いよいよ臨界点なメンバーとスタッフを見越して、久しぶりに長期オフだったからだ。
理にかなってない気もするが、長期オフが遊ばずしてどうすると言う思考に直結してるテルが言い出したのをきっかけに、なぜだか英語はもちろんドイツ語でもイタリア語でもなく
チェコ語とかいう本当にあんのかソレと疑ってしまう言語が公用語な国に来ることになったわけなんだけど。
私がテルに賛成して、疲れた身体に鞭打ってチェコなんていう国に来たのは、ドイツ語が少しぐらいは通じるんじゃねえのかとか思ってたからってのがあるけど、なんちゅーか甘かった。
字はなんとなく意味が分かることがあっても、言葉がほぼ分からない。
ドイツで暮らしたことがあると言っても、ベルリンとその周囲の首都圏を行き来した程度だったので、所詮かなり綺麗なドイツ語しか聞いたことのなかった私は、ドイツ語であっても訛ってたら全く分からなかったのだ。

 
   
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don't cry,my dear -2 / 2006年08月19日(土)
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「おはよー」
「……はよう」

ミーティングルームには絵里香以外に誰も来てなかった。絵里香が俺より先に来てなかったのを見たことがない気がするよ、俺は。
最近はまってるらしい携帯に入ってるテトリスから目を離すことなく挨拶をよこす絵里香に心の中でニヤニヤしながら、隣に腰掛けて、覗き込んだ。

「やばいじゃん」
「…」
「あーそれ、その右…」
「うっせ、気が散る!…あー!」

見たこともないようなハイスコアになって、ブロックがものすごい速度で落ちてきていたので、俺が話しかけた瞬間気が散ったらしくあっという間にブロックは一番上まで溜まっってしまい、カラフルな画面は石のような色になって、LOSEの文字が現れた。

「あ゛ー!!バカ!さいあくだっ、バカ!」
「あー、ごめんて。でもすでにやばかっ」
「やかましい!」

もう一回やる気はないらしく(そりゃそうか)、わざとらしくため息をつきながら携帯を閉じると、絵里香は俺の顔を一瞥して、ん?という顔を一瞬してから、すぐに戻った。

「なに?」
「…あ?」
「今変な顔したじゃん」
「や、別に」

…気になるんですけど。
でも絵里香が一回「別に」を口にしたらもう何も言いませんというサインなので、諦めることにする。

「そういや昨日さあ、パソコンいじってたらすげーの出てきてさあ」
「なに?」
「や、デジカメの写真だったんだけど、すっげー古いの。大学とかの」
「えー。デジカメってそんな前からあったっけか」
「なー、俺も思ったんだけど。
アイビーとかヴィクトリアとか超懐かしかった」
「えー、うわ、懐かしーなー」
「ねー」
「元気かねえ」

懐かしそうに笑う絵里香は、テトリスの怒りは冷めたらしい。敢えて言うのを避けた名前には、気づいていないようだ。

「…絵里香は、髪の毛長かったよなあ」
「あー、そだね、長かったっつーか切ってなかった」

 
   
Posted at 09:57 / text / この記事のURL
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don't cry,my dear -1 / 2006年08月19日(土)
可愛くて優しくて、いい子だと思ったんだけどなあ。そう言い訳したらいつも絵里香に訂正される。いい子じゃなくて、都合のいい子だろって。別に咎めるふうでもなく、間違いを正すように。
目の前でヒステリックに怒声をあげている彼女を見ながら、ぼんやりと思った。
優しくできなくてごめんね、まじでごめんと思ってないのもごめん。
でも一番じゃなくていいなんて無茶言い出したのはそっちじゃん、と冷静に突っ込みたくなる俺は、やっぱりこの子が言うとおり酷いひとなのかもしれない。
どこを好きになってくれたのと聞いた時は、優しいところって言ってた。
自分で自分のことはよく分からないし、絵里香にはいつも、テルは自分に甘すぎると怒られるくらいだけど、やっぱり俺は、優しいひとじゃないと思う。
少なくとも、求められた以上のものを進んであげるほど気前もよくない。自分があげたいただひとり以外には。
だけど俺が誰より尽くしてあげたいひとは、理由もなく貰いすぎたりあげすぎたりを嫌うひとなんだけど…というか、だからあげたくなるのかも。
俺は人に言われるほど無邪気でも、素直でもないらしいから。

「…で、どうしたいの?」
ようやく出した声は思ったよりいつも通りの声だった。目の前の彼女はとうとう目に大粒の涙を浮かべて、その場に座り込んでしまう。よかった、顔殴られたりしなくて、
…あーなんか、ほんと自分で言いたくないけどなんでこんな男がよかったのかねぇ…。
次からは見栄と見てくれより「優しい」男を好きになったほうがいいと思うよ、
自分が好きで、好きで堪らなくてどうにかなってしまいそうな相手が、一生振り向いてくれないかもしれないことに、耐えられないなら。


 
   
Posted at 09:52 / text / この記事のURL
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停電炸裂黒麦酒 -1 / 2006年08月14日(月)
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まじかよ、とかありえねえよ、とか最悪だ、とか。

そういう言葉は本当は、まじにありえて最悪じゃない時にしか言えない言葉だって、今日、知った…。

私の頭の中は、どこにぶつけていいか分からない憤りだけが真っ白に煙を上げて、爆発しそうになっていた。いや、分からなくない、自分が悪いからだ。ああそうだよ、分かってるよそんなことは、だからこんなにやりきれないんじゃないか。
数時間前まではこの街は、ゆるやかでぬるく軽い大気に覆われていたのに、日が落ちてからよりも昇るまでの時間の方が近い今の時間は、じっとりと重く陰惨で、髪の毛が首筋に張り付いてうざったい。不覚にもチッと嫌いな舌打ちをしてしまう。

私が悪いのか。そうだよな、悪いよな、でも全部じゃない。
だけど、関わったことの三割増しで責任を負うのがこの仕事だし、それを選らんだのは私だ。
分かってるよ、物分りのいい顔して納得し切ってない自分が捨てきれないのがイヤなんだよ。
なんだかもう堂々巡りの自己嫌悪に嫌気が差して、皆が悲壮な、気の毒そうな顔を並べるホテルの部屋を抜け出した。カンジわるいわな、すまん。でも今日ぐらい許してくれ。
今日ぐらい飲む以外になにが出来る。私も所詮、人間様なんだから。

 
   
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ごめんよ僕が馬鹿だった / 2006年05月26日(金)
堪らなくて、泣きたくなってしまうときがある。
全て投げ出して楽になってしまえたら。
それがいかに虚しいことで、不合理なことかわかっているから、
情けないことだと知ってるから、いわない。いえない。
 
だけど、言わなくても分かってる。
分かってて、困ったみたいに笑って、背中をぽんと叩いてくれる、

テルはそういう人。

テルのことは、なんか言葉にしようとしたら感情的なものがあふれ出してしまうから
あまり理性的に考えられてないけど、
たぶん、堪らなく好きなんだと思う。
大事だし、失うわけにいかない。
テルが本当に頼むなら人殺しもできるかもしれない、
テルは私にそんなことさせたがらないだろうけど。
…だから、しないし、…そういうテルが好きなんだと思うけど。

テルが好きだよ。
どういう種類の好きか、ならたぶん愛だと思う、けど…

No satisfaction?
 
   
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tyrant 5. / 2006年04月08日(土)
今自分の足が踏んづけて立てた音に、全身の身の毛がよだつのを感じた。さっき彼が演奏していたときに聴いた、一般的に煌びやかとかパーカッシブと言われることの多い音色。…ピアノにはたいして詳しいわけじゃないけど、少なくとも今自分が
尻に敷いている楽器が、ヤマハやカワイの代物でないことは明らかだ。何だか懐かしい気がしたのは、海の向こうの大学にあったピアノと共通するところのある音だったからだろう。学校に入るために付け焼刃で練習した程度だったけど
足蹴にするには私はこの音を、好きすぎた。

押さえつけられている手首をなんとか振り払って、足が鍵盤に触れないように気をつけながら上体を起こし、ピアノの正面のロゴを覗き込んでああやっぱり…とため息をついた。そこにはしっかり、STEINWAY&SONSとあったから。
 
   
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tyrant 4. / 2006年04月04日(火)
「プリティウーマン……?」
「…あたり」
「…ありえない…」

そう言うと絵里香は両手で顔を覆って深いため息をついた。
そうは言っても絵里香さん。アレは一度は憬れる男のロマンだと思うんですけど。
だいぶ前に見た古い映画の記憶を辿りながら、ベルトを解いたバスローブを脱がせて
両膝を半ば強引に開かせ、間に身体を滑り込ませる。
咄嗟に引こうとする腰をぐっと引き寄せると、ふいっと顔を逸らされた。

「これバキっといったらどうすんの」
「大丈夫だって、…松本立ってたし」
「…滅茶苦茶するなぁ…」
「ね…」

不満を零す唇にキスしようとして顔を近づけると、絵里香は露骨に顔を背けた。
え?と思うのもつかの間、一本取られたことに気がつく。
…ちゅーか、キスを拒まれるって
「やらせてください」っつって顔引っ叩かれるよか断然、真面目にショックかも…
恋は面倒くさいから御免だと言っていた彼が、初めて迫ったキスを拒まれるあのシーンは、実はこんなに切ないものだったんだと改めて思い知る。
もう一度、背けられた顔に目線を合わせて迫ってみても、避けられる。
絵里香は笑っていた。

せめてこっちを向かせたくて名前を呼んでも、返ってきたのは
何がEdward?だ、冗談めかしてやたら綺麗な発音が、あーなんか本気で悔しい。

俺は焦れて、苛立った動作で両手首を掴んで押し倒し、唇を奪う。
ピアノに身を乗り出し、左手で膝をなぞって、腿の内側を愛撫する。
ビクリと綺麗な脚が振動して、鍵盤を鳴らす。
その音に我に返ったように左手を止めようとする絵里香の手を無視して、
脇腹を撫でる。
またがくんと身体が震えて、鍵盤を足で鳴らしてしまう。
絵里香はばつが悪い顔をして、小さく稲葉さん、と呼ぶ。

形勢逆転。反撃開始だ。




 
   
Posted at 22:14/ この記事のURL
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tyrant 3. / 2006年04月04日(火)
「は?」


わけが分からないという顔をした絵里香に微笑を返しながら、ピアノ椅子から降りて
床に跪き、腰に回した腕に力を込めて、バスローブのベルトを解く。
絵里香は意味は分からずとも、だいたい俺が何を言わんとしているか気づいたようで、
呆れた様子で俺の肩に両の手のひらを乗せた。

「…ちょっと、稲葉さん」
「んー」
「んー、じゃなくて…」

言葉にならない不平を満面に浮かべている絵里香にはお構いなしに、
隙を見つけて腕を膝の裏に回し、抱えあげる。
軽々と持ち上がった細い身体をピアノの大屋根に座らせると、案の定絵里香は怒声を上げた。
恐らく絵里香にしてみれば、楽器に腰掛けるなんて言語道断、しようものなら回し蹴りが炸裂するレベルのご法度だろうけど、意外にピアノの屋根蓋ってのは丈夫らしい。
大の(それも俺のよく知る)男が上に立ってもびくともしなかったの見てるし、絵里香一人が腰掛けるくらい余裕で許容範囲の内、プラットホームの白線の内側だと思う。ていうかそうじゃなきゃさすがに俺もしないって…。

ここまでやってようやく、絵里香はぴんと来たという顔をした。


 
   
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