10月。2

November 15 [Sun], 2009, 20:12
10/11の早朝、私の不安は恐怖へ変わった。
早朝、5時にもなっていない時間のことだった。

私の部屋のドアが、突然開けられた。
眠りの浅い私は、即飛び起きて部屋から出ようとした。
何事が生じたのか。

扉の外には、夢から覚めたばかりのような表情の母が佇んでいた。
起こしたのは彼女なのに、起こされたばかりのような顔をしていた。

私が声をかける前に母は言った。
「あ、ごめん…起こすつもりはなかった」

心は青ざめるのだろうか。
その瞬間があるとしたら、この時がそうだった。

「起こすつもりはなかった」のなら、どんなつもりで、早朝に人の部屋を開ける?
眠っている私を起こす以外のどんな理由があった?

寝惚けているのだと思いたかった。
でも前日までに母の変化を見てきた以上、それは逃避でしかなく、またそれは逃げ込むにはあまりに脆弱だった。
要は、とうてい寝惚けているとは思えなかったのだ。

反応に困った私は、ようやく言った。
「じゃあもう少し寝かせてもらうよ。何かあったら呼んで」

そして部屋で今までを反芻していた。
そしてこれからを思い、密かに頭を抱えていた。


**********


その時点で頭を抱えるには充分な状況だと思った。

しかしその後、さらに状況は深刻になっていた。

朝7時過ぎだったと思う。
母は祖母に電話をしていた。
私はその時間もまだ部屋にいたけれど、それでも母の声が泣き声だったことはよく分かった。
「お母さん大丈夫?」
母は祖母にそう言っていた。
内心、「あんたでしょ、大丈夫じゃないのは」と思ったが、この時点で祖母に相談すると決めた。
どれだけ協力的かは分からないし、まして82歳、頼るのが正しいのかどうかは分からなかった。
しかし、おそらく私は、今すぐ自分より冷静な人間の声が聞きたかったのだ。
祖母の連絡先は知らない。
けれど、母の携帯にはその履歴がある。

9時を過ぎてから母に切り出した。
「携帯どっかに置き忘れたみたい。呼び出すからお母さんの携帯貸して」
快く貸してくれたので、申し訳なかったけれど、借りた。
私の携帯を形ばかり鳴らし、それからこっそりと祖母の携帯番号を見、暗記した。

そして何気なく携帯を返して、部屋に籠もって祖母に電話した。
10日と11日に自分が見た全てを話した。
祖母は翌日の訪問を約束してくれた。


**********


なんとなく安心した私だったが、恐怖というより混乱する事態が起きた。

昼頃だっただろうか。
母が突如、小さなバッグを片手に出かけようとしていた。
慌てた様子だった。
原付なのに上着もなく、ただのカットソー1枚でどこに?

私が呼び止めると、苛立った様子を見せた。
「行き先はわからんけど、せめて上着を着て行って」
そう言ったが、母からの返答は短かった。
「それどころじゃない」

母の様子がおかしい。
どこに行くのかわからないけど、止めないと。
そう思って焦っていた。

タイミング良く、母の携帯が鳴った。
叔父からだった。
母は叔父に「お母さん、泡吹いて倒れたんでしょ?」と言った。
それで私は理解した。
ああ、お母さんは、お祖母ちゃんが倒れたと思って慌ててたのか。

で、その情報はどこから母に届いた?
1時間ちょっと前まで、私は祖母と電話で話をしていた。
いつも通り、しっかりした元気な人という感じだった。

そう言えば照明もそうだ。
母は出所不明の情報で狼狽している。

とりあえず、祖母に何もないと分かってくれた母は、私と一緒にリビングで過ごした。

やがて父が帰宅し、彼は私の恐怖を理解した。
P R
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