西尾只吉と4連隧道C 

May 12 [Sat], 2012, 4:50


第二隧道


隧道データベースには全長16メートル。
『山名の郷』と言う文献には隧道の長さが約21メートルと記載されている。


これと言った特徴がある訳ではないが、この第二隧道、そして次の第三隧道は、同じ谷に伸びた小さな尾根をくり抜いている。
アイロンを裏返ししたような観音掘りの断面も、この2つの隧道では顕著に見受けられる。






短い隧道なのでさっさと通り抜け、一瞬だった日陰を振り返る。


説明するまでも無く、写真は第二隧道の掛川側坑口。
ブログ用に写真を選ぶ際、一見どこを撮影したのか浮かばなかった疑惑の一枚でもあった。

薄い記憶とカーブミラーが見当たらない点で、まぁ第二隧道のそれだろう(汗




この先、、、

第二、第三隧道の間は、どちらに向かうにせよ、隧道を2ヶ所通らなければならない中間地点である。

所謂、一番 濃 密 な区間のはずだ。






だって道路の左側、横穴ばかりだもん


一般道を通っていて、こんなに特異な景色に出会う事はまず無いだろう。

次の第三隧道までの50メートル程度の区間、ひい、ふう、みい・・・

緑色のネットで封鎖された怪しい穴が3つ。






そのうちの一箇所。
この穴だけは坑口の上部が崩落し、洞内に侵入し放題となっている。


もちろんそれらの穴は、前話で触れた戦闘機倉庫。

当然、この横穴は入洞済み。

ここも例外に非ず。
水没に堆肥用のビニール袋が大量に捨てられていて、内部は非常に居心地の悪い空間であった。



では先へ。






第三隧道


隧道データベースでは全長13メートル。
『山名の郷』では約17メートル。

2つの資料に長さの違いはあっても、第三隧道が4連隧道の中で最も短い隧道である事に違いはない。



第二隧道にも見えた特徴なのだけど、浅い土被りの上、掘割のような窪んだ地形が確認できるだろうか。

どうやら人工的な窪みっぽい。
後から登ってみる事にしよう。






一応、しゃれっ気を出して撮影。


掛川側坑口。



明治時代に隧道を穿ち、昭和に拡張、平成に私が写す。
それらの行動はまさしく時代を経た手紙の様でもある。



「郷土の発展に尽くした人々〜資料編」の中に、只吉氏の功績を文章でまとめた箇所があって、

「只吉の偉大さは、私財を投じて隧道工事を完成したということではなく、村内の興論をおこし村議をまとめ、隣接村の協力をとりつけ、工事を推進完成したことであろう。」

と結ばれている。


4連隧道の資料が無い現状、大日隧道の資料から4連隧道の工事を想像するしかないが、「字堤ヶ谷新道明細記」には只吉氏の寄付、出役等は、餅米一俵、持籠三丈、人夫五十八人五歩と書かれていた。
他の寄付と比べ、人夫での貢献が際立つ数字だ。


上記、「郷土の発展に尽くした人々〜資料編」には、以上の点から只吉氏が工事の推進者である事は間違いないと表記されていた。
一方、4連隧道の工事でも、実際に工事を行う人夫と言う立場で、白谷新道の開通に貢献した事は容易に想像できる。


実は明治10年代に宇刈村では大日隧道や4連隧道以外にも幾つか隧道が掘られており、それは明治20年頃には村内に隧道9本も存在したと言う病的な数字でもある。


「山さ行がねが」でもしばし登場する「明治工業史〜土木編」には、明治時代に開通した隧道が静岡県内で31本と挙げられている。
もちろんそこに記載されたものは当時の県道以上の重要路線と言う制限はあるものの、明治20年と言う明治時代の比較的早期に隧道を9本も備えた自治体は、少なくとも私は知らない。


まるで宇刈村民は、「他地域と繋がる新道」=「隧道」とでも思い込んでいたようでもあるのだ。
この話は実は次レポートに関連する。
只、宇刈村には隧道を掘る意識が、他地域と比較し一際高かった事実を覚えておいて欲しい。


もしかすれば目が悪かった只吉氏。
衰えた視力を忘れさせてくれる地中が心地よかったかも知れない。

村内の他地域よりも隧道を多く掘る事も含め、まるで隧道を掘る事を楽しんでいたように感じるのは、私の思い込みであろうか。






第三隧道の先、再びブラインドな左カーブを放ち、新たな景色が視界に開ける。
そこには第四隧道が。


手前には横穴も見える。



但し、ひとまず進路はそこじゃない。
第三隧道の上部に認められる窪みに歩を向けよう。



・・・まにゃは、またお留守番ね






いざ谷方向へ。
眼下へ落ち込む尾根を平行移動で先端まで進み、そこから尾根上を辿って窪みまで血路を開くつもりだ。


途中気になったのは、尾根を巻く平場が存在した事。
落ち葉に埋もれているが、画像中央を縦に刻むそれがそうである。

ただ山中至る箇所に踏み跡があっても不思議では無い。
そんな歴史が当地にはある。






思ってた以上に高い。


股 ぐ ら ス 〜 ス 〜 






到着。

写真が窪みであるが、撮影に適したアングルが見つからなかった。


隧道上に道路と並行する幅2メートルの明らかに掘割。
不自然な地形に何通りもの仮説が脳裏を過ったが、裏付けも無いのでそこまで。

窪みの中もしくは周辺に遺構的な物証は見つけられなかった。



無念、まにゃの許に駆け降りる候。






第四隧道


皆様も御存じの通り、鉄板と白い物体で坑口付近を補強された4連隧道最後の物件。
尚、白い物体は掛川側の坑口では見受けられない事を先に告げておく。


鉄板は正確には山(Uを逆さにした文字)型波状防護壁と呼び、洞内を最後まで囲んでいる。


これまでの完全素掘りに慣れた我が目は、簡易的なこの姿にすら重厚的と言う感想を持ったが、それと同時に大きく崩れた坑口付近の素掘り箇所を中心におどろおどろしさも感じていた。



只吉氏を中心に大日集落の住民が安息な行き来を望んだ和田岡原はこの尾根の直ぐ向こうであり、尾根は現在でも袋井市と掛川市の市境となっている。






まにゃの眺めるその先。

その白い物体が積み上げられ坑門が出来ている。



狙ったのかも知れないが、積み上げられたその物体には段があって、私は不意に考えてしまう。

・・・登れそうだな。

っと。






坑門を構成していた白い物体は、触れると予想外に弱々しく凹んで反発した。
その瞬間、否応無しに白い物体の正体が分かってしまった。



発泡スチロール!!



坑門の定義も正式に分からないので、これが正式に坑門と言えるのかは分からない。
が、もしかすれば第四隧道は全国唯一の発泡スチロール製の坑門と呼べるのかも知れない。
そんな衝撃に胸が高鳴った。


それでも発泡スチロールは普段魚屋等で目にする内部が空洞のものではないらしく、力強く私の体重を支えた。
(もしかすれば内部の空洞に土でも埋め込まれているかも知れない。)

全体がぬったりと湿っており手に触れた感触が気持ち悪かった事、そして何年も風雨に野晒しにされた故に汚れも酷かった事は特筆しておこう。



万が一車が来た場合の為に、まにゃには路肩に避難してもらって、私は登り詰めた。






坑門の上のもう一つの坑口へ。


もう一つとはただ格好付けて言ってみたまで。
鉄板と素掘り隧道と狭間を指し示す。


下から覗いて理解していたが、隙間にはこれでもかと発泡スチロールが詰められている。

出来得るならば、白い壁を何とか突破して内部へ行きたいッス。
心底願った。



それにしても坑口付近の土砂崩落は規模がデカい。
詰め込まれた発泡スチロールに寄った際、そこはまるで地中ドーム内部のようにも感じられた。
そこでも坑門の上なのだから、どれだけの土砂が崩落したか想像に難くない。

地元の方の話だと、発泡スチロールや鉄板で補強されたのは2000年前後だそうだ。
それまでは、崩れた坑口付近の土砂が道路上に流れ込む出来事が度々発生したらしい。



補強の鉄板を足下にした私。
土砂の崩落から直接守ってくれるものは何も無い。
不安定であろう頭上の土砂が、またいつ崩れてくるかに注意を払いながらの行動となった。










何度も私の身体が擦り落とした土砂が、発泡スチロールに当たって激しく鳴った。
その大音量こそが新たな大崩落を誘発してしまう最悪なシナリオが頭を駆け巡る。


そりゃあさ、不安におののいていただけじゃないさ。
実際に一つだけ発泡スチロールを退かしてみた。



でもね。

結論は無理!!



言い訳をさせて貰えば、当然人が入り込むスペースが無い。
発泡スチロール同士の隙間にも長年のうちに土砂が積もり、容易に箱が動かせなくなっていた事。
箱を動かしても、発泡スチロール上に積もった土砂が落ちて、激しく下の発泡スチロールを叩いた事。。。



最後の理由はへたれでしか無いな。
でも現実に撤退。

我々はもう一つの坑口に願いを託し、第四隧道の内部に足を踏み入れた。






第四隧道内部へ
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