無二 

November 04 [Thu], 2010, 19:19
少年は一人、ただ空を眺めている。瞳は酷く虚ろで、目の前を見つめているようにもどこか遠いところを見ているようにも見えた。

びゅう、と風が吹く。今や瓦礫同然となってしまったかつて建物だったものは、たったそれだけで今にも崩れ落ちてしまいそうで見るに耐えない状態だ。それらも元は人が住まう場所であったが、今ではもう、誰一人住んでいない。

少年が覚束ない足取りで動き出した。先程よりは焦点のあっているものの、光がない事に変わりはない。
地面に横たわるモノたちは何も言わず、動きもしなかった。

ザクザク、ザリザリ。
様々な破片の飛び散る地面を、出来る限り避けながら歩く。比較的綺麗な建物の中には時折人影が見えた。路上にも、ある程度ゴミを片付けた上に座る人々がちらほら見えた。みな一様に虚ろな目、もしくは腹を空かせた獣のような目をしていた。実際に、後者の表現は間違っていないだろう。モーメントの暴走により失ったものは沢山ある。自分の家や家族、食料だってその一つだ。いや、一つに過ぎない。

このような状況で子供が一人で生きて行く事は、酷く困難であった。

少年はこの数週間で随分痩せたように見える。元々色素の薄い髪と肌が、少年をより病弱に見せていた。

最初の頃は食べ物などを分け与えてくれる者もいた。みんなで協力しあって、シティからの救助を待とうと。しかしいくら待っても、何の連絡もこない。
そして人々は理解した。自分達は見捨てられたのだと。

解ってからの人々の反応は冷たかった。数少ない食料を必死に自分のものにしようと、争い、傷付け合った。どうにか災害から生き延びた者も、その争いの中で次々と命を落としていった。

少年は、一つの崩れた、しかし回りの中では比較的まともなビルの物陰に息を殺し隠れる。
中には下品な笑い声を上げる男が一人。男のそばにある机には、食料が置いてある。
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