森の命は、人類の命ともつながっている・・・ 卓上

2011年01月05日(水) 23時37分
 インドの詩人タゴール(1861〜1941年)は、木々や草花に心を寄せる詩をとても多く残している

 <静かに、わが心よ、これら大きな樹木たちは祈祷(きとう)者なのだ>(「迷える小鳥」より)。札幌在住の写真家阿部幹雄さんと随筆家高田宏さんの共著「祈りの木」(飛鳥新社)は、この一行詩を扉に置いて、北海道から西表島まで幾世紀も生き続ける木々を写真と文で記録した美しい本だ

 表層に若さ、内奥に老いとシを抱えながら屹立(きつりつ)する巨樹。<その前に立つとき、人はおのずと頭を垂れる>。高田さんの実感は、タゴールの詩と響き合う

 名木でなくてもいい。初詣の雑踏をそっと離れて、境内の奥にひっそりとたたずむ木と向き合ってみる。冬芽を空に突き刺す庭木を窓越しにながめてみる。37億年の生命の歴史の中で、私たちとは別の生き方を選んだ彼らと、いまこの時を共有する不思議を思う

 昨年、鈴木章さんと共にノーベル化学賞に輝いた根岸英一さんは、今後の研究テーマに人工光合成を挙げていた。光と炭酸ガスからでんぷんや糖を生み出す光合成は、はるか昔に植物が生きるために獲得した化学反応だ

 タゴールは別の詩で言う。<死んだ木の葉が大地に化して自らを喪(うしな)うとき、彼らは森の命に参加している>。森の命は、人類の命ともつながっている。今年は国際森林年でもある。草木から多くのことを学びたい。

 卓上四季(1月1日) 北海道新聞
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