かけがえのない「命」をめぐって、次々と重い問いが突きつけられている・・・ 卓上四季 八葉蓮華 

2010年08月14日(土) 23時29分
 臓器移植のニュースに接するとき、北海道に住む私たちは、どうしても42年前の夏の記憶に引き戻される

 1968年8月7日正午ごろ、小樽市蘭島の海水浴場で21歳の青年がおぼれた。青年は札幌医大で脳シ状態と判断され、心臓は別の18歳の青年に移植された

 日本初の心臓移植はその後、多くの問題点が指摘され、日本人の移植観に深いトラウマ(精神的外傷)を刻んだ。次に国内で心臓移植が行われるまで30年以上の時が経過したことからも、影響の大きさがうかがえる

 きのう、改正臓器移植法に基づいて、本人の書面による意思表示がない中、家族の承諾のみで初めて脳シ判定が実施された。私たちの社会は、また一つ生とシにかかわる新しい扉を開けたことになる。自分の家族に同じことが起きたら、どうするだろう。自問しないわけにはいかない。当事者家族の苦悩はいかばかりか。その思いが報われるよう手術の成功を祈りたい

 同じ日。募金で渡米して小腸と大腸の移植手術を受けた東京都の1歳女児が米国の病院で亡くなったとの知らせもあった。かけがえのない「命」をめぐっては、さまざまな意見があるだろう。愛する人、近しい人とじっくり語り合おう

 消息不明のまま放置されているお年寄りや親のギャク待で奪われる幼い命をどう守るか。この夏、次々と重い問いが突きつけられている。目を背けてはいられない。

 卓上四季(8月10日) 北海道新聞
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge

「高校女子バスケ日本一」人間同士の深く、熱い絆がまぶしい・・・ 卓上四季 八葉蓮華 

2010年08月10日(火) 23時44分
 南の島からの風に乗って、とびきりうれしい知らせが届いた。沖縄県で開かれている全国高校総体(インターハイ)の女子バスケットボールで札幌山の手高校が優勝した

 「みんな楽しんでバスケができていた。それが勝因です」。身長161センチの小柄な主将町田瑠唯(るい)さん(17)の笑顔のコメントがさわやかだ。北海道勢が「高校女子バスケ日本一」になったのは史上初。部員全員に「おめでとう」の言葉を贈りたい

 二人の指導者がチームをここまで育ててきた。ひときわ厳しい練習で知られるコーチの上島(かみしま)正光さん(66)と穏やかに選手をサポートする監督で物理教師の石田修務(おさむ)さん(69)

 コンビを組んで40年。ともに白くなった髪に、時が凝縮されている。孫娘とおじいちゃん世代が力を合わせて極めた頂点。年の差を超えた人間同士の深く、熱い絆(きずな)がまぶしい

 バスケ部には悲しい歴史がある。9年前の冬、部員の下宿にしていた上島さんの実家が火事になり、長身の有望選手だった釧路出身の1年生部員下山桐絵(きりえ)さんが亡くなった

 コーチを辞めようとした上島さんを引き留めたのは桐絵さんの父親泰史さん(54)だ。「娘の夢だった日本一を目指してほしい」。父は昨日、優勝を伝える本紙朝刊を娘の仏壇に供えた。「桐絵ー。ほら、約束はたしてもらったぞぉ」。16歳だったバスケ少女も後輩たちにきっと「ありがとう」を言っている。

 卓上四季(8月5日) 北海道新聞
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クラスター弾を全面禁止「非道な房」が反対の声を無視して炸裂する倒錯・・・ 卓上四季 八葉蓮華 

2010年08月08日(日) 23時48分
 本物のブドウの房からこぼれ落ちた一粒ならば、やがてツルを伸ばし、実を結ぶこともあろう。だが、この一粒は触れた子供の手や足を吹き飛ばし、命を奪ってきた

 クラスター弾を全面禁止する条約(オスロ条約)が発効した。果物の房を意味する「クラスター」の名を持つこの爆弾は、親爆弾の中に詰め込まれた子爆弾が空中で飛散し、地上の広い範囲で爆発する。殺傷力は極めて高い

 さらに子爆弾の一部は、不発弾として地表や地中にとどまる。赤や黄など目立つ色の子爆弾を好奇心いっぱいの少年や少女がおもちゃと間違って拾い、犠牲となっている。こんな非道は許せない

 ノルウェーなど有志国と非政府組織(NGO)が国際世論に働きかけ、禁止条約発効にこぎ着けた。市民の力を高く評価したい。すでに100カ国余が条約に署名。日本は昨年批准した

 しかし、肝心の米国、ロシア、中国など大量保有国は条約に加盟していない。しかも、米軍は条約発効を前に沖縄県久米島近くの鳥島射爆撃場でクラスター弾の投下訓練をした疑いが濃厚だ。沖縄の地元紙が報じた。周辺に漁場もある。住民の怒りは当然だろう

 ところが日本政府は「法的に米軍基地内での使用や保有を禁止できない」と傍観の構えだ。自国が放棄を決めた「非道な房」が反対の声を無視して炸裂(さくれつ)する倒錯。こんな事態が放置されていていいはずがない。

 卓上四季(8月3日) 北海道新聞
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寛容とユーモアの人「ピアソン記念館」きっと笑顔で許してくれる・・・ 卓上四季 八葉蓮華  

2010年08月07日(土) 23時31分
 その洋館は北見市の住宅街の丘にある。「ピアソン記念館」。北海道遺産を紹介する切手シートで、この建物の写真が左右逆の裏焼きだったため、切手の販売が中止となり、話題になった

 ひょんなことで注目されたが、記念館に名を残すピアソン夫妻の事績は、もっと広く知られていい。夫ジョージと妻アイダは米国人宣教師として明治後期から昭和初期にかけて40年にわたって函館、旭川、北見などで農村伝道に尽くした

 アイダは情熱の人だった。廃娼(はいしょう)運動にまい進し、旭川の遊郭設置計画を撤回しようとしない当時の北海道庁長官河島醇(じゅん)に「長官!あなたはのろわれる」と叱責(しっせき)してはばからなかったという逸話が残っている

 ジョージは穏やかな学究肌。「ピアソン聖書」と呼ばれる聖書の日本語注釈書を編さんした。もう取り壊されたが、洋館の敷地に野付牛(のつけうし)中(現北見北斗高)に通う生徒の学生寮を建て、無料で下宿させた

 無教会主義者で宣教師嫌いだった内村鑑三も「ピアソン夫妻は別だ」と語っていた。人間味あふれる二人の暮らしぶりに心打たれていたからだろう

 晩年、帰国に際し、ジョージは愛用の屈折望遠鏡を手に寮生たちに語りかけた。「これで眺めれば、米国にいる私たちに会える。逆さまにしてのぞけば、私たちがみんなに会える」。寛容とユーモアの人だ。自宅写真の裏焼きは、きっと笑顔で許してくれる。

 卓上四季(8月2日) 北海道新聞
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盛夏には全力投球がよく似合う「甲子園」がめじろ押し・・・ 卓上四季 八葉蓮華 

2010年08月05日(木) 23時31分
 全国高校総合体育大会(インターハイ)が沖縄県で始まった。「美(ちゅ)ら島沖縄総体」の愛称そのままに、焼ける太陽、青い空と海、亜熱帯の深い緑が若者たちを迎え入れていることだろう

 8月20日までの期間中、道内からも選手約900人がすべての競技に出場する。これから沖縄に出発する選手も多いはずだ。ぜひ、みずみずしい感性で沖縄の人や歴史、自然に触れてきてほしい

 インターハイは1963年に始まった。沖縄は米軍施政下にあった。県代表はパスポートを手に開催地の新潟県に向かった。沖縄紙・琉球新報によると現地入りしてからスパイクを購入したものの靴ずれを起こし、素足で試合に臨んだ生徒もいたという。まさに隔世の感がある

 変わらない現実もある。初めて聞く米軍機のごう音に耳をふさぐ道内選手もいるだろう。悲惨な地上戦の戦跡も訪ねたい。琉球の言葉を一つでも覚えて帰ろう。肌で感じた沖縄は、きっと人生に厚みをもたらしてくれる

 高校生たちの躍動は、インターハイに限らない。上川管内東川町では沖縄を含む全国18の代表校が参加して写真甲子園が開かれた。野球以外にこの夏も、書道パフォーマンス(愛媛県四国中央市)、俳句(松山市)、短歌(盛岡市)など「甲子園」がめじろ押しだ

 志望校を目指して受験勉強に集中するのもいい。暑さには熱さで。盛夏には全力投球がよく似合う。

 卓上四季(7月31日) 北海道新聞
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<現実>の壁はなお厚く高い。より高く<理想>の旗を掲げ続けなくて・・・ 卓上四季 八葉蓮華 

2010年08月03日(火) 23時30分
 「核兵器の廃絶には段階的削減など現実的な対応が必要だ」と繰り返す首相を前に、質問者は「現実的−と称して後退していく傾向にある。なかなか良い方向には行かない」とさとすように語る。穏やかな口調の2人の議論に周囲はじっと聞き入った

 舞台は24年前の参院予算委員会。登場人物は、首相が中曽根康弘さん、質問者は宇都宮徳馬さん。当時79歳の宇都宮さんが、与えられた12分間の質問時間のすべてを核兵器廃絶問題にあて、軍縮・平和への執念をみせた場面だ

 「核兵器は非戦闘員も無差別にコロす残ギャク兵器。禁止条約をつくるべきだ」と提案。そのために各国の首脳を広島、長崎に招いて「被爆の苦痛を理解させる必要がある」と日本の果たす役割を説いたが、中曽根さんからは前向きな答えはなかった

 質疑からほぼ四半世紀、宇都宮さんの他界から10年が過ぎた。核兵器の保有国は増え、核テロ防止にも頭を悩ます。残念なことに、事態はいっそう深刻で複雑になっている

 でも、核廃絶の希望の灯が消えたわけではない。核大国である米国のオバマ大統領が「核なき世界」を提唱している。8月6日の広島の平和記念式典に今年は、初めて米英仏の政府関係者も出席しそうだ。広島市などの粘り強い努力が実を結ぶ

 <現実>の壁はなお厚く高い。より高く<理想>の旗を掲げ続けなくては核廃絶が視界から消えていく。

 卓上四季(7月29日) 北海道新聞
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命を救おうとした命が失われる。その痛ましさに胸が詰まる・・・ 卓上四季 八葉蓮華  

2010年08月01日(日) 23時15分
 若い火山技師ブドリは、飢饉(ききん)を防ぐために火山を噴火させて気温を上げようと考える。でも、起爆装置を押す最後の1人は生きては帰れない

 たくさんの人を救いたいというブドリの決意は固かった。自分がやるという老技師を説得し、たった1人で火山島に残る。宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」。賢治は「銀河鉄道の夜」でも級友を救おうとして水シしてしまう少年を描いた

 わが身を捨てる尊さを説いているようにも読めるが、詩人天沢退二郎氏はもっと奥深い意味を見いだそうとする。<他人の真の幸福のためならば、自己を犠牲にしても惜しくはない>という他者との熱いかかわり方にこそ賢治の真意はあると説く(「宮沢賢治の彼方(かなた)へ」思潮社)

 奥秩父の山中で遭難者の救出に当たっていた埼玉県の防災ヘリコプターが墜落。機長や救助隊員ら5人が亡くなった。遭難した女性1人のシ亡も確認された。命を救おうとした命が失われる。その痛ましさに胸が詰まる

 「助けて」との叫びを聞けば、一刻でも早く現場に向かい、少しでも近づいて救いたい。その一心で活動する使命感が山の安全を支えている。ベテランもいた。若い隊員もいた。無事帰還していたら、これからも何人もの命を救ったことだろう

 真夏の沢にうずくまる白い機体は、羽をむしり取られたトンボが身をよじりながら慟哭(どうこく)をこらえているかのようだ。

 卓上四季(7月27日) 北海道新聞
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完全養殖「鰻の香」ウナギがもっと安く味わえる日がきっと来る・・・ 卓上四季 八葉蓮華 

2010年07月31日(土) 23時25分
 隣が鰻(うなぎ)屋で、かば焼きのにおいをおかずに毎度、飯を食っているケチな男に月末に勘定書が届いた−「かば焼きの嗅(か)ぎ代八百文(はっぴゃくもん)」。男は「よしっ、それじゃあ払ってやる」と鰻屋の耳元で銭をジャラジャラさせ「音だけ聞いて帰りな」

 この小咄(こばなし)「鰻の香(かざ)」の元になる話ができたのは、江戸時代の安永というから約240年前。田沼意次が老中になって幕政に勢威を振るっていたころになる。多才な発明家の平賀源内はもはや晩年を迎えていた。源内は、知り合いの鰻屋の頼みでウナギ消費のPRにひと役買ったとの説もあるが、真偽は定かではない

 素朴な丸焼きに始まった鰻料理は、安永の時代にはすでに、開いてつけ焼きする方式が広まっていた。調理法の進歩もあって、においだけでも食欲をそそる人気料理になっていたようだ

 材料は疑いの余地なく国産だった江戸時代に比べ、現代ウナギ事情は複雑。外国産を国内産と偽って売るウナギの産地偽装が今年もあった

 一方で21世紀ならではの夢広がる話題もある。人工授精で生まれたニホンウナギの卵と精子を使い2世代目も人工ふ化する「完全養殖」が実現した。国産ウナギがもっと安く味わえる日がきっと来る

 きょうは土用の丑(うし)の日。<土用鰻息子を呼んで食はせけり>(草間時彦)といきたい。だが、財布と相談で<遣(や)り過(すご)す土用鰻といふものも>(石塚友二)もあるか…。

 卓上四季(7月26日) 北海道新聞
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静かなオペラブーム、コミュニケーション、芸術表現にも大きな違い・・・ 卓上四季 八葉蓮華 

2010年07月30日(金) 23時30分
 自由を謳歌(おうか)する若い芸術家たちと病身の少女の物語。プッチーニ作曲のオペラ「ラ・ボエーム」は、世界中で人気の演目だ。札幌で開催中の教育音楽祭PMFでも採り上げられている

 PMFのオペラ公演は14年ぶり。静かなオペラブームにも乗った形だ。それでも、「音楽は好きだがオペラはどうも」という人はなお少なくない。あの声を張り上げる歌い方や、身ぶりの大きさが、なじみにくい理由らしい

 しばらく前の本紙夕刊文化面「魚眼図」を思い出す。札幌大教授の熊谷ユリヤさんが、「愛してる」という気持ちを伝えるのに、英語圏からの留学生と日本人学生とでは大きな違いがある、と書いていた

 留学生は普段から「I(アイ) l(ラ)ov(ブ)e yo(ユー)u」を口にすることが当然と考えるのに対し、日本人学生はそれを「安っぽい」「うそっぽい」と感じさりげない思いやりや間接的な表現の方を好む、と

 愛に限らずコミュニケーション全般にも、芸術表現にも言えるのではないか。英語圏よりももっと情熱的とされるイタリア人によるオペラなら、日本人が違和感を持つのも無理はないかもしれない

 もっとも、一度親しんだら病みつきになるのもまた、オペラだ。昨夜の公演でも多くのファンが酔いしれた。今日の公演も、多少だが当日券があるという。親しむきっかけにしては。で、「I love you」も? さて、どうする。

 卓上四季(7月25日) 北海道新聞
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応援する人が一体となって感動は深まり、名勝負は記憶に刻まれる・・・ 卓上四季 八葉蓮華 

2010年07月29日(木) 23時03分
 22年前の11月18日、大相撲九州場所6日目。横綱千代の富士が前頭の陣岳をうわてだしなげで破った瞬間、渡島管内福島町の夕空にドーンと一発の花火が上がった。大鵬が持っていた45連勝に並んだ偉業を祝して地元の後援会が上げた

 きのう、モンゴルの草原に花火は上がっただろうか。開催中の名古屋場所で横綱白鵬が45連勝を達成した。昭和以降歴代3位の大記録だ。しかし、大鵬関や千代の富士関が同じ記録をつかみ取ったときに比べると、趣が異なる

 歴史に残る取組は、どれも全国の相撲ファンがテレビ桟敷で大一番を見守っていた。賭博問題でNHKがラジオ、テレビの中継を取りやめたため、「白鵬の45連勝」の瞬間を共有したのは、愛知県体育館に足を運んだ人や日本相撲協会のインターネット中継を見た人に限られた

 相撲のラジオ中継が始まったばかりの昭和初期。物理学者寺田寅彦は食堂で偶然放送を耳にし、観客のどよめきこそが<土俵の上の活劇>を伝える主役と気づく(随筆「相撲」)。W杯サッカーにみるように、離れていても戦う人と応援する人が一体となって感動は深まり、名勝負は記憶に刻まれる

 ライバル不在で記録の価値に疑問符を付ける人もいるかもしれぬ。だが異例の場所を背負う一人横綱の荷の重さはいかばかりか

 勝ち名乗りを受けた白鵬関の胸に一抹の寂しさが去来したとすれば切ない。

 卓上四季(7月24日) 北海道新聞
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