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ただ、AVCHDをサクッと編集したいだけなんだ――「EDIUS Neo 2 Booster」を試す / 2010年03月13日(土)
 トムソン・カノープスの「EDIUS Neo 2 Booster」は、個人ユーザー向けながら本格派のビデオ編集ソフトだ。同社のプロ向けビデオ編集ソフト「EDIUS Pro 5」の操作性をほぼそのまま受け継いでおり、多機能ぶりと使い勝手のよさ、そしてレンダリングなしでも画質の再生確認(プレビュー)が可能な快適さを身上とする。

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 価格は3万1290円と、個人向けビデオ編集ソフトとしてはワンランク上の価格帯にはなるが、EDIUS Pro 5と比べれば半額以下で買える点は覚えておきたい。なお、前バージョンにあたる「EDIUS Neo 2」からは4179円でバージョンアップできるほか、他社製ソフトからの乗り換え版(2万4990円)などいくつかのパッケージが用意されている。

 ベースになったEDIUS Pro 5との機能面での違いは、利用可能な専用ハードウェアが限られていることと、プロ向けならではの細かな機能が削られていることくらいだ。EDIUS Pro 5とほぼ同一の操作性を提供しているため、普段はEDIUS Pro 5でのHDビデオ編集を仕事にしている筆者も、ほぼ違和感なく使うことができた。

 それに、対応ハードウェアが限られているとはいえ、編集中の画面をHDMI経由でテレビなどに出力可能なPCI Express x1対応カード「HDSPARK」は利用することが可能だ。これと組み合わせて使うことで、ハイビジョンテレビへ実際に映し出しながら作業を進めるという本格的なスタイルでのHD編集も比較的安価に実現できる。セットモデルの「EDIUS Neo 2 Booster with HDSPARK」も5万2290円で販売中だ。

 また、HD映像の非常に高速なエンコードや、SD映像からの高画質なアップコンバートを実現するPCI Express x1対応カード「FIRECODER Blu」も組み合わせることができる。こちらのセットモデル「EDIUS Neo 2 Booster with FIRECODER Blu」は6万8040円で、どちらも単体で買いそろえるよりずいぶんお買い得だ。

 一方、「プロ用編集ソフトの操作感を継承」という特徴は、ビデオ編集の初心者にとっては「難解でとっつきにくい」という弱点にもなる。当然ながら、ビデオ編集ソフトを使い慣れたユーザーの操作感を重視した画面構成のため、ウィザードベースの作業画面はおろか、操作ガイド的な仕掛けもほとんど用意されない。

 ボタンの名前1つを取っても専門用語ばかりが並ぶので、EDIUSシリーズの、というよりも、PCによるビデオ編集そのものの基礎をある程度知っていないと、取り付く島もないといった雰囲気だ。

 こうした仕様のため、EDIUS Neo 2 Boosterは、どちらかといえばビデオ編集を趣味として楽しむハイアマチュアや、プロをめざす人に向いた製品といえる。こうしたユーザーであれば、EDIUS Neo 2 Boosterがよくなじむだろう。

 とはいえ、初めてビデオ編集を行なう人でも、がんばってチャレンジする価値は十分にある。なぜなら、EDIUS Neo 2 Boosterは「超」をつけてよいほど、強力なAVCHD編集の機能を備えているからだ。

●そもそも従来のAVCHD編集環境と何が違うのか?

 ここで少しAVCHD形式のビデオ編集についておさらいしておこう。AVCHDは、高度な圧縮を行なうMPEG-4 AVC/H.264をコーデックに採用しているため、比較的低いビットレート(小さなファイルサイズ)でも高画質を確保できる半面、圧縮/解凍に高い負荷がかかるという弱点を併せ持つ。したがって、リアルタイムで解凍を行ない続けなければならないビデオ編集には向かないフォーマット、というのがこれまでの常識だった。

 そこで、ソニーのVAIOシリーズやコーレルのビデオ編集ソフトなどでは「プロキシ」と呼ばれる編集専用の軽いファイルで編集作業を行ない、最終的な出力のときだけ元のファイルに差し替えるという手法が利用できる。これは軽快な操作を比較的手軽に実現できる代わりに、編集中の画面がプロキシの粗い映像になってしまうため、厳密な画質での確認ができない。仕上がりの画質を厳密にチェックしながら編集を進めたい場合には致命的な弱点になる。

 他方、従来のEDIUSシリーズや、アップルの「Final Cut Pro」などで採用されている、元の素材自体をあらかじめ負荷の低い別コーデックへ変換する方法では、変換後のファイルサイズが元ファイルの数倍から十数倍にも膨れ上がるため、膨大かつ超高速なストレージが必須だ。プロキシ作成に比べて、変換にかかる時間が大幅に延びるのもネックで、快適な環境を目指すと相当大掛かりなシステムになってしまう。

 さらに、これらの方法では、編集の快適さを向上させようと思っても、プロキシ作成や別コーデックへの変換を専用チップで高速化するといった補足的な対策しかとれず、AVCHDの編集における本質的な弱点の解消は難しい。

 そこでEDIUS Neo 2 Boosterでは、AVCHD形式のファイルを変換せずにそのまま編集(ネイティブ編集)するという、いわば「正面突破」の方法が採られている。最近では、GPUの助けを借りてネイティブ編集を行なう製品も出てきたが、ソフトウェアだけで一定のレベルを実現したというのが、EDIUS Neo 2 Boosterのポイントになる。必要なPCのスペックに煩わされることがなく、将来的にCPU性能が上がれば、さらなるパフォーマンスの向上も簡単に実現できるからだ。

●AVCHDのネイティブ編集は実用レベルなのか?

 本当にソフトウェアだけで、AVCHDのネイティブ編集を快適に行なえるのか、2010年春モデルのAVCHDビデオカメラで撮影した素材を中心に検証を行なった。

 検証に使用したのは、筆者が自宅でビデオ編集機として使っている2台の自作デスクトップPCだ。CPUは1台がCore i7 860(2.8GHz)、もう1台がCore 2 Quad Q9550(2.83GHz)を搭載する。普段はEDIUS Pro 5で編集作業を行い、HD編集時の素材は主にHDVカメラの映像をMPEG-2のまま取り込んだものだ。

 この環境でAVCHDのファイルを扱う場合、直接読み出すこと自体はできるものの、1ファイルの単純なプレビューでもコマ落ちが激しいため、別コーデック(Canopus HQ)のAVIファイルに変換してから編集しなければならない。HDVのネイティブ編集は何とか行なえるが、AVCHDのネイティブ編集など想像もできないという状況だ。

 なお、よりスペックが低いPCでどこまで動作するのかを確認するため、自作デスクトップPCだけではなく、Core Duo T2400(1.83GHz)を搭載したノートPCの「ThinkPad T60」でも検証してみた。  

 これらのPCにEDIUS Neo 2 Boosterを導入してAVCHDのネイティブ編集を行った結果は、下表の通りだ。
 ※http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1003/12/news028_2.html

 一世代前のCPUとなるCore 2 Quad Q9550(2.83GHz)搭載機でも、1つのファイルに「エフェクト」と呼ばれる特殊効果を2つ適用しつつ、単純なタイトルを1つ追加するくらいであれば、レンダリングせずともフル画質/コマ落ちなしでの再生ができる。もちろん、タイムライン上でマウスをドラッグして大まかな素材の内容を把握する「スクラブ」の動作も、かなりの程度追従してくれる。

 AVCHDの編集を少しでもやったことがある人なら、これは衝撃的な体験だろう。別のファイルを子画面で表示させると、リアルタイム再生はできなくなるが、それでも半分近いフレームレートで見られるので、どんな映像なのかをざっと確認するくらいならできてしまう。

 EDIUS Neo 2 Boosterはマルチスレッド対応が徹底しているらしく、8スレッドの同時処理が可能なCore i7 860(2.8GHz)搭載機なら、3ファイル同時読み込み+タイトル1つ追加の状態でもコマ落ちせずに再生できる。また、同じファイルを、ちょっと時間をずらして画面内の別の場所に子画面で配置するといった内容なら、4本並べても軽々再生してしまう。

 ビデオカメラのメーカーや機種、画質モードによって処理の重さに多少の違いはあるものの、Core i7を搭載したPCを使えば、AVCHDビデオカメラの映像でもDVカメラとほぼ同じ感覚でネイティブ編集できるという印象だ。特に、HDビデオ編集のためにCore 2 Quadを使い続けているユーザーにとっては、Core i7への乗り換えを決断する決定的な動機になりうる。

 なお、ThinkPad T60で試してみたところ、1440×1080モードで撮影した映像なら、1ファイルのプレビューが何とか行なえた。AVCHDだけでなく、HDV編集についても高速化されているようで、ThinkPad T60で軽々とプレビューできてしまうのにも驚かされた。これなら、外出先でのノートPCによるHD編集も現実的なレベルで行なえそうだ。

 ちなみに、場面転換の効果であるトランジションについては、通常のプリセットに加えて、GPUで画像処理を行う3Dトランジション「GPUfx」も実装されている。これにより、対応するグラフィックスカードを搭載していれば、高度な3D効果でも極めてスムーズにプレビューすることが可能だ。

 GPUfxはDirect 3D 9.0c以降、ピクセルシェーダ モデル3.0以上に対応したGPUを備えたグラフィックスカード(HDプロジェクトで256Mバイト以上、SDプロジェクトで128Mバイト以上のグラフィックスメモリが必要)で利用でき、その処理能力はGPUの性能に左右される。

●AVCHD/HDV以外のHD映像はどこまで扱えるのか?

 AVCHD以外に、このところ認知度が急激に高まっているデジタル一眼レフカメラによる動画も、このクラスの編集ソフトに興味を持つほどのユーザーなら気になるところだろう。今回はキヤノンの「EOS 7D」で撮影したフルHDの映像で試してみた。

 キヤノンの一眼レフカメラでは、QuickTime形式(コーデックはH.264)で録画する仕組みが採られており、1080/30pモードのビットレートは実に約44Mbpsにもなる。だが、意外にもQuickTime Playerでの再生だけなら、Core 2 Quad Q9550搭載機でもコマ落ちなしで実行でき、EDIUS Neo 2 Boosterでも1ストリームのプレビューが可能だった。さらにCore i7 860搭載機では、タイトルを乗せても再生できた。

 ここから複雑な効果や字幕を駆使した編集を行なうつもりなら、独自のCanopus HQコーデックへ変換してしまうのが無難だが、カット編集くらいならネイティブでも問題ないという印象だ。

 ただ、同じH.264で圧縮した映像であっても、独自路線をいく三洋電機の「Xacti」シリーズの映像(MP4形式)はEDIUS Neo 2 Boosterではリアルタイム再生ができなかった。なお、読み込み可能なカメラはトムソン・カノープスのWebサイトに一覧表が掲載されているので確認してほしい。

●ビデオ編集ソフトとしての基本機能も充実

 EDIUS Neo 2 Boosterの機能面での特徴も簡単に見ておこう。映像編集の機能は、基本的にEDIUS Pro 5のものとほぼ同じだ。タイムラインを「シーケンス」としてファイルのように扱うことで、入れ子の構造を簡単に作り出せたり、タイムラインに読み込んだ各ファイルを、キーフレーム操作対応のレイアウト機能によって、高画質を保ったまま動的に配置できたりと、高度な機能を持つ。字幕やタイトルといったテキスト要素の入力や編集には、EDIUS Pro 5と同じ専用ソフト「Quick Titler」が利用できる。

 EDIUS Neo 2 Boosterで省略されたのは、複数のカメラで同時に撮影した映像を効率よく編集するための「マルチカム編集モード」や、別のプロジェクトファイルからシーケンスだけを取り込む機能などだ。これらは数多くのプロジェクトを短時間でこなすプロにとっては確かにありがたいが、決定的に必要なものでもないし、ユーザーの工夫次第でカバーできる範囲なので、大きな問題にはならないだろう。

 一方、読み込んだ音声ファイルを整えたり、効果を付けたりする機能では、外部のVSTプラグインを読み込めるのはうれしいが、音声レベルを一括して管理するためのオーディオミキサーウィンドウや、音声レベルを簡単に均一化することが可能なノーマライズ機能といった、プロよりもむしろコンシューマーにとって助かる機能が省略されているのは残念だ。

 編集作業が完了したら、ファイルやディスクに保存する作業を行なうわけだが、このとき「Blu-ray」や「HDV」といった形式でのファイル出力、もしくはBlu-ray Discへの書き込みを行なう場合に限られるものの、前述のFIRECODER Bluを装着していれば、タイムラインを直接、ハードウェアの支援を得て高速に書き出せる。

 AVCHD映像を用いたフルHDのタイムラインを書き出す場合、ソフトウェアだけだと、Core i7 860搭載機でも実時間の2倍以上を要するのに対し、FIRECODER Bluを使えば、実時間未満でエンコードを完了できるのはありがたい。

 ただ、必要な部分だけを再エンコードする、いわゆるスマートレンダリング的な機能は、HDVファイルにソフトウェアで出力する場合のみ利用可能だ。AVCHDについてはせっかくのネイティブ編集でも、出力時に必ず全体に再エンコードがかかってしまうのは惜しい。

 ちなみに、EDIUS Pro 5で作成したプロジェクトファイルの読み込みについては保証されていないが、EDIUS Pro 5専用のエフェクトなどを適用していなければ、そのまま読み込める可能性がある。試した限りでは、複数のシーケンスを入れ子構造にしたプロジェクトも正しく読み込むことができた。

●新しい時代をひらくAVCHD編集ソフトになるか

 家庭用ビデオカメラとしてはもちろん、業務用ビデオカメラの世界でもAVCHDは撮影フォーマットとしての地位を確立し、いよいよ本格的な編集環境へと目が向けられてきている。ところが、プロキシ編集や別コーデックへの変換といった従来の手法は、比較的世代の古いハードウェアでも動作する半面、時間と手間、それに結局は機材も膨れがちな方法であることから、広く普及するにはどうしても限界があった。というより、HDビデオカメラのビデオ編集をPCでやるのは面倒だと、最初から敬遠されているとしたら残念としかいいようがない。

 さらに、市販の個人向けビデオ編集ソフトは、ほとんどが1万円前後と値ごろではあるものの、Windows標準の「Windows Live ムービーメーカー」やフリーのビデオ編集ソフトの多機能化が進んだこともあり、「AVCHDの編集が面倒もしくは重い点では、フリーの環境も市販ソフトもたいして変わらない」といわれてしまえば、お金を出して購入するだけの魅力が見えにくくなってしまう。

 こうした現状にあって、ファイル変換などの余計な準備を必要とせず、しかもソフトウェアだけでDV編集と同様の軽快なAVCHD編集を実現したEDIUS Neo 2 Boosterは、新しい時代をひらくビデオ編集ソフトといえる。プロ版のEDIUS Proはもちろん、エントリーユーザー向けの「エディウスJ」のようなソフトにもこのエンジンが搭載されれば、ビデオ編集をめぐる市場の地図が大きく変わっていく可能性をも感じさせる存在だ。【都築航一】

【3月12日18時36分配信 +D PC USER
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100312-00000067-zdn_pc-sci

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