教室を一番狭く感じたクラス

July 20 [Fri], 2012, 20:48
そのクラスは、42人もいた。
それなのに、42人もいるクラスで、男子が28人。
私が持った一番少ないクラスが25人ほどだから、それ以上だ。
男女比は、入学してからあまり変わらないものだ。
男の子はやんちゃだ。
がちゃがちゃした雰囲気も育つ。
中学年までのそれより、勢いもあり抑えも難しくなる。
一歩間違えるとうるさくてきちんとした授業ができず、学校の基本の部分すら危い。
男子をどう抑えるかが問題だった。
始業式、やんちゃ代表のおちゃらけ男子I君は異常なまでのハイテンションだった。
その頃は、始業式には給食も無く、慌ただしく必要な連絡やお便りやプリント、教科書の配布、棚の割り振りや上着掛けの割り振り、机のサイズ合わせをしての割り振り等を終えると帰宅させる。
帰り際、靴箱を決める。
そこでI君が騒ぎ、他のクラスにも迷惑だった。
何度か注意したのだと思うが、完全に私をなめきっていた。
私は、足掛けして床に組み伏せ、起き上がれないよう押さえながら平然と靴箱を決めていった。
もちろん、割合静かに、怪我をしないよう、特に頭には細心の注意を払ってしたのだが。
侮れない、案外怖いと男子は思ったに違いない。
I君は1番目、RPGのモンスターよろしく次から次へと向かい合わなければならないやんちゃ男子が出て来た。
色々な手法で信頼関係を作っていった。
喧嘩をさばいて頼りがいがあると思わせたり、時には体育館が開いている時に体育に変更するなんて話せる教師を演じたりした時もある。
もちろん怒鳴りつけて怖いと思わせたり、間違っていたと思ったら素直にごめんと謝ったりして心を通わせる。
そんな人間的なやり取りで、男子には十分伝わる。
女子はもう少し複雑だけど。
Y君、彼も気持ちのいい子だったが、やっぱりやんちゃ坊主で、でも頼りがいがあり凛々しいのに甘えん坊なところもある子だった。
お父さんは大手企業に勤める方で、こぎれいな社宅に住んでいた。
札幌の二度泣きという言葉をその時初めて聞いた。
札幌に転勤になった時、嫌で泣く。
ところが、札幌に数年住んでみると案外良く、札幌から離れる時にまた泣くというのだ。
お母さんから、転勤が決まったが、あのやんちゃで泣く等想像しにくい男っぽいY君が、札幌に一人で残ると泣きわめくと。
それを聞いて、私も泣きそうになった。
放課後彼と二人で話をした。
転校はどうしても嫌だと言う。
仲のいい親友と離れたくない、この学校が好きだ、このクラスが好きだ、毎日がとても楽しくてたまらない、新しいところがこんなに楽しいとは思えないと。
良い友達だと心底思える友達ができて良かったねとか、札幌にもそういう友達がいて、全国色々なところにそういう友達できればいいねなどと言ったと思う。
転校したからってこれっきりになる訳ではなく、先生とだってみんなとだって、ずっとY君とつながっている、そういう人をもっと増やせるねみたいな、そんなことを言ったと思う。
Y君は、やんちゃだけど人気者で、どこに行っても全く心配のない子で、直ぐに周囲の人たちから好かれ、楽しく過ごせるようになり、ここのことは大人になってからの関係のようにつなげていけるものではなく、やがて、記憶もおぼろげなスタルジックな思い出になることを私は知っていたのに。
それなら、先生の結婚式に呼んでくれと言われた。
そうしたら、また札幌に遊びにくることが出来ると。
札幌に来ることのできる口実を一生懸命考えたのだろうか。
突飛な案で驚いたし、結婚なんてどうなるか分かったもんじゃないし、彼を呼ぶことはないなと思っていたくせに、わかった、約束すると私は答えた。
Y君は、机に突っ伏して泣いていたのだが、絶対だよと何度も念を押した。
帰り際振り向いて、じゃあ結婚式でと念を押すように私を見据えて笑顔で言った。
今でも、その笑顔が頭に浮かぶ。
それから3年後に私は結婚したが、もちろん彼を呼ばなかった。
それなのに、やっぱり心に浮かんだ。
半年程しか一緒にいることが出来なかったY君はもうそんなこと忘れているだろう。
でも、呼んでもらえることを約束した、呼んでもらえることが嬉しいと本心から思ってくれ、その時の彼のほんのちょっぴりの心の支えになったのだと私は今でも信じている。
たかだか先生でも、その程度のものにはなれたのだろうと。
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