葵 一

2006年08月21日(月) 1時47分

わたしはずっと待っていた。
あの階段で。

学生時代の終わり。
やっぱりそれでも、人見知りだけは激しくて、いつでも尖ってたような…そんな気がする。

休み時間。
誰も来ない、静かな階段。
閉ざされた屋上へ続く、閉ざされた場所。
廊下からの死角が心地よくて。

そこで、いつも、きみを待ってた。

そこで、いつか、きみに会えると思ってた。

何も無い空間をわたしは愛でて。
眠った振りしてきみが頭を撫でてくれると信じていた。

…孤独だった。
…一人ぼっちが淋しくて。
…だけど「淋しい」なんて言葉…口が裂けても、誰にも言えなくて。

だから わたしは
きみをいざなった
とおいくうそうの
はて
げんそうの
えいえんのしょうねん

きみのなは

「葵」

…その名前があるだけで、わたしは…こころが震える。

手紙。(追記)

2006年05月20日(土) 20時56分
「手紙。」は、わたしが見た夢です。

夢なので忘れている部分や前後の繋がらない部分が勿論あるのですが、その辺は「こんな感じかな」ということで話を纏めました。
あ、あまり話を変えるのは厭なので纏まっていない部分もありますが;;

ラストの10円玉を握り締めて夢を見た部分は創りました^^;
実際の夢は弟の部屋に引っ越してきたとこあたりまででしたので。
10円玉や排水溝は伏線があった筈なのですが、忘れてしまったのです…

夢の中で号泣していました。
こんなに夢で号泣したのは久しぶりです。

手紙。

2006年05月20日(土) 18時52分
弟が死んだ。
水死だったらしい。

僕は涙が止まらず、嗚咽さえも気に止める余裕もなく、弟の部屋へ向かった。

僕たちは三兄弟だ。
兄、僕、そして弟。両親は居ない。
兄と弟は一緒に暮らしていた。
僕と兄は進学先の都合上別に暮らしていたのだが、義務教育中の弟が僕らのうちどちらかとの生活を選ばなければならなかったとき、弟は兄を選んだ。
弟は、兄が好きだったんだ。


部屋に、兄は居なかった。

僕はバスルームへ直行した。
弟はバスルームの浴槽の排水溝が好きだったんだ。
流れる水を見るのが好きだった。

排水溝に指を入れ調べてみると、10円玉が出てきた。

そこへ、背後から声がした。

「どうせ下らないものしか出てこなかったろ」
兄の声は冷ややかで、どうしようもなく卑しい。
僕は兄に見つからないよう、ズボンの後ろポケットに10円玉をしまい、兄をやり過ごした。

二階に上がると、兄は弟が執拗に渡してき手紙を見せてくれた。
「見てみろよ」
相変わらず卑しい声で。

それは授業中に渡すような手紙だった。
しかしとても手が込んでいる。
クイズ形式になっていたり、占いやおまじないになっていたりする。
兄の星座や血液型の今日の運勢や、こうすると運気が上がるらしいなどといった他愛もない内容だが、そんなものが多量の手紙となって兄へ渡ったのだ。
文字も綺麗で、彩り鮮やか。
好きな人にしか送らないであろうと一目瞭然と言える丁寧な手紙が…こんなにも。

「ホントうっとおしかったよ、毎日会うし、一緒に暮らしてるんだぜ?なのにこんな手紙を大量に押し付けてさ…ヤツは俺が嫌いだったんだ」

2月14日の妄想。

2006年02月14日(火) 23時55分
今日はヴァレンタインディ。

一年に一度、女の子なら、誰でもドキドキする日だ。

勿論、あたし江北渚羽子(えきたしょうこ)も、そんな女の子の一人で。
勿論、あたしにもチョコを渡したい人はいるわけで。
結論、朝からドキドキしっぱなし、というわけだ。

…いや、違うな。

朝から、じゃなくて、このドキドキは、先輩を思い始めた半年前から続いてる。

先輩…――冬野潤眞(とうのじゅんま)さんは…あたしより一学年上で、所属は華道部。
男なのに華道部…って、クラスメイトであろう男子達にからかわれている所を何度か見たことがある。
その度に先輩は、いつもの明るい調子で、華道を冗談みたいに話し、その男子達を笑わせていた。

でも最後に決まってこう言うんだ。

「いいんだよ、俺は華道が好きだから」って。

笑いながらだけど、そう言うときの先輩の目はとても澄んでいて、真剣で。

そんな先輩を追いかけて、あたしはやりたいと思ったこともない華道部に入部した。

先輩の傍に居たいから。
それだけじゃない。
そんな澄んだ目をする、先輩の華道に対する姿勢を見てみたかったから。


部活を通じて、先輩への想いはどんどん増して行った。

何でも冗談にしてしまうような明るい普段の先輩は、華道部の部室に入った途端、まるで人が変わったかのように空気を張り詰め、凛とした姿勢を見せるのだ。


…「素敵」「好き」。

あたしの先輩に対する想いは、その二言だった。

先輩はとても素敵な人で。
あたしは先輩が好き。


もうすぐ、もうすぐだ。

誰もいない部室。
先輩は必ず一番にやってくる。

チョコレートは準備万端。
あたしの心も決まってる。

静かに、靴音が一つ、近付いて来る。

さあ、もう、もう、少しだ。


…――扉が、開いた。


†「丘へ行く夜」04◆イルとミスレィシリーズ:2

2005年07月17日(日) 18時44分
「丘へ行く夜」04◆イルとミスレィシリーズ:2

「着いたぁ…!」
ミスレィは感嘆の声を上げた。
「綺麗だなぁ…」
だけど僕は黙り込んでしまった。いつだって子供じみてるんだ、僕は。それは自分でよく解ってる。でも、気持ちをコントロール出来る程、僕は実際大人でもない。
「イル…」
「え…!」
突然ミスレィが手を繋いできた。僕は自分の心が読まれたかと思い、顔中を赤くした。
「凄い霧だ…。綺麗だけど、用心しなきゃね。離れないように」
夕鈴台は霧の名所で有名だ。夜露の名所と言うのはミスレィだけだけど。
ここはいつも霧がかっている。しかし何故か満月の夜だけは霧が退くんだ。暗い道を照らし、霧を晴らし、満月の夜にのみこの場所は解禁される。それ以外の時間に踏み入れてしまったらどうなるのだろう…。
「ミスレィ、迷子になるなよ」
僕はジメついた二種の気持ちを追い払い、ミスレィの手を強く握り返した。
「イル、そんな事言ってたら手を離すぜ?僕は生まれてこの方、迷子になったことがないんだから、別にいいけどね!」
「何だよ、それっ!」
僕の顔は緩み、ミスレィの笑い声が聞こえて来た。すぐ隣に居るのに、顔が見えない。何て濃い霧だろう。しかし、ミスレィの手の温かさが、見えない淋しさを拭ってくれた。
僕たちは手探りで歩き、月のベンチを捜し当てた。
月のベンチというのは、何もないこの夕鈴台に唯一ある無機物だ。ただの木のベンチで、またミスレィが名前を付けた。「ここから見える月が絶品なんだ」って。実際その通りなのでクラスメィトは納得した。と言っても、夜中に夕鈴台に行く変わり者なんて殆どいやしない。授業の一環でやった「夜の集会」で、満月の夜、クラス全員で夕鈴台に来たときに見た満月をみんな思い出しているんだろう。僕も納得しかけたが、そのときのミスレィの表情を見て思いを改めた。そして翌日に答えを持って来た。

†「丘へ行く夜」03◆イルとミスレィシリーズ:2

2005年03月21日(月) 23時21分
「丘へ行く夜」03◆イルとミスレィシリーズ:2

森を抜けても、夜の闇は変わらずに続いていた。満月でしか照らすことのできないこの道を、こんな薄っぺらな三日月を明かりに歩こうというんだから。
そんなことお構いなしに先へ先へと進むミスレィの後ろで、僕は懐中電灯を点けた。
「イル?何だいきみ、そんなもの持ってたの?」
「ああ、小さいやつ。ポケットに入るくらいなのに、光は強いんだ!」
僕は得意げに懐中電灯を見せた。
「そんなもの持ってどうするんだい」
「どうする…って、明かりがないと不便だよ。この月明かりじゃ、何も見えやしない」
「…イル。きみは夜の闇の中に何を見ようとしてるんだい?足場なんて見えなくていいよ、僕はね。そんなに持って行きたきゃ、イルだけ明かりを持って行けばいいさ。僕は足場が見えない、イルは足場が見える。でも、僕に見えるものは、イルには見えないんだ。どっちが素敵なことか、きみは解ってると思ってたよ」
…僕は、懐中電灯をポケットにしまった。
「行こう、ミスレィ」
解ってた、ミスレィが言ったこと。理解してた。でも、ミスレィは懐中電灯なんて絶対持って行かないから、もし明かりが必要だったらと思って用意したんだ。
「ああ!行こう!!」
そしてミスレィは多分解ってる、僕の考えてたことを。
「ミスレィ、見て!!光石だよ…!!!こんなところに…今まで気付かなかったな」
「本当だ…!!!綺麗だなぁ…」
僕らが見つけたのは上等な光石で、暗い夜道の岩場にこっそりと光っていた。
「あーあ、売ったら高いだろうなぁ!」
ミスレィは心にもないことを言う。光石は最近希少なので、採ることを禁止されてるんだ。
「僕たちだけの秘密だよ」
ミスレィは、声を落としてそう言った。
「…ん〜、どうしよっかなぁ!!!」
「イルに誰かに言う勇気なんてないよ!」
「そんなことないさ!明日になったらもうこの石は誰かに採られてる」
「そんな悪い奴に言う気なんてないくせに!」
ミスレィは笑う。僕も笑う。暗い夜道で、僕らは満月よりも明るく笑った。


−−−−−−−−−−−

†「丘へ行く夜」02◆イルとミスレィシリーズ:2

2005年02月21日(月) 22時51分
「丘へ行く夜」02◆イルとミスレィシリーズ:2

また[5分前集合]してしまった。ミスレィは、7時と言ったら必ずきっかり7時にやって来る。少し前も、後もない。そう解っているのに、僕はいつも約束の時間の5分前に着くよう来てしまう。
そう、いつも楽しみなんだ、きっと。ミスレィとの約束が。ミスレィの突拍子もない行動に振り回されることが。
これから起こることへの期待に胸を膨らませていると、5分間なんてあっという間に過ぎ去ってしまう。気が付くとミスレィが隣にいて、「行こう!」って言うんだ。
「…遅いなぁ…」
いつもより遅い時間の流れに気が付いて、懐中時計を見ると、もう7時を10分も廻っていた。
…おかしい。
ミスレィは、本当に1分たりとも遅刻をしたことがない。それなのに…今日は、一体どうしたんだろう…。
悪い想像ばかりが頭を過ぎる。僕は膝を抱えるように座り込み、ミストの門にもたれかかった。背中から、門の冷たさが伝わってくる。
ミストの門。それは、街の家並から随分外れた所にある森道の丁度中腹にある古い門で、この辺りで知らない人は居ない。門の奥には屋敷があるわけでもなく、ただ仰々しいまでに大きな門だけがそこにあるのだ。
…森のどこかに、門と対になる家があるはずだ!
そうミスレィが言いだして、森中探し回ったこともあった。しかし家なんてどこにもなく、ただひたすら疲れただけだった。まるで神話か、分厚い冒険ものの物語に出てくるかのような、神々しい門。僕らはミストの門と呼んでいる。ミスレィが名付けたんだ、「らしいだろ」って。みんな好きな名で、この門を呼ぶ。
「ごめんよ、イル!」
突然声がして、誰かが僕の頭を抱えた。

続き。クリックして下さい☆)

†「丘へ行く夜」01◆イルとミスレィシリーズ:2

2005年02月20日(日) 23時34分
「丘へ行く夜」01◆イルとミスレィシリーズ:2

「今夜、夕鈴台へ行こう」
ミスレィはいつも突然だ。
突然おかしな事を言い出して、そしていつも、僕を魅了する。
そう解っていても、ミスレィのおかしな発言には、いつも驚かされる。
今回もそうだ。
名前があるだけで、誰も好んで行こうとしない、ただの高台に行こうだなんて。
「あそこに行くまでの道程を、君も知ってるだろう?植物は荒れ放題で、足元も凄く悪い。その上君は、夜中に行こうだって?今夜は満月だったか?あそこは街明かりなんてまるで届かない。満月の月明かりがないと、歩けやしないよ」
僕はミスレィの気を変えようとそう言ったけれど、今口にしたことは、全てミスレィも知っていることだ。
それにミスレィが、そう簡単に気を変えるなんて有り得ない。
僕はそれを承知で言ったんだ。
「焼き菓子のためさ」
ほら、ミスレィは先程の僕の言葉なんて聞いてなかったかのような顔で、あっさりと言う。
「僕は素晴らしいお菓子を作り上げたんだ。夜の露に浸して食べると、蛍の光のように朧気な輝きを放って、それが弾けて甘味を増すんだ。イルも食べたいだろう?」
僕はその言葉で、既に心を奪われつつあった。
「何だいそれ、君はまた珍しいものを作ったんだね」
「そう、珍しいもの。希少なものさ。ずっと、作るのに失敗してたんだ。でも、今朝やっと上手く仕上がったんだ。だから、夕鈴台へ行こう!」
「ちょっと待てよミスレィ。どうして夕鈴台じゃなきゃ駄目なんだい?夜の露なんて、どこにでもあるじゃないか」
そう言う僕に、ミスレィはさも当然のように言い放った。
「何言ってるんだいイル、夕鈴台の夜露は絶品じゃないか」
そんな話、聞いたことがない。ミスレィ一人の常識を、一般的な常識のように言うのをやめて欲しい。
「じゃあイル、7時にミストの門で!」
「お、おい、ミスレィ…!」
そう言うとミスレィは、家の方角へと駆けて行ってしまった。
困った顔をしたつもりが、僕の目と口元は笑っていた。
7時になるのが楽しみだ…!


−−−−−−−−−−−−

イルとミスレィシリーズ第二弾です☆今回は続きモノ
奔放なミスレィは書いてて楽しいです♪

†「cafe'[waterLains]の午前」◆イルとミスレィシリーズ:1

2005年02月15日(火) 23時24分
「cafe'[waterLains]の午前」◆イルとミスレィシリーズ:1


雨が好きだ。
そう言うと大人たちは顔をしかめた。
雨は酸性雨、いいものじゃない。じめじめとして気分が悪い。洗濯物がまるで渇かない。
そんな大人たちの横をすり抜け、ミスレィは笑っていた。
彼は、僕が雨を好きな理由を知っているから。
…僕らは、雨上がりの午後旅に出る。バッグは持たない。荷物は邪魔だ。
あと数時間で雨が止む。ミスレィが言っているんだ、間違いない。僕たちはどしゃ降りの中、熱い紅茶を飲んで待った。
ミスレィが見つけたこのオープンカフェ。
木々の緑に埋まり、ひっそりとした外観。ハーブや果実の紅茶は味も香りもよく、すぐに僕らのお気に入りになった。
−−いつも人が多いことを除けば、僕の好みに完璧なのに。
ミスレィはそう言って口を尖らせた。
人気の店なんだから仕方ないじゃないか。…でも、僕もミスレィと同意見だ。これで、もう少し静かな店だったらなあ…。
だから僕らは、人の出向かない雨の日にここへ来る。更に、雨の日には誰もいないオープンカフェに居座る。
雨音、木々に滴る水音。それに僕たちの声が混ざり合う。
ミスレィはここに、自分で作った焼き菓子を持ち込むんだ。この店のよりおいしいぜ、って。実際はどっちもすごくおいしくて、僕は両方大好きだ。
…ああ、次第に雨音が微かになってきた。
僕たちは紅茶を飲み干し、これから始まる旅の行方に胸を弾ませた。
−−イル。
ミスレィが静かに僕を呼ぶ。
−何だい。
−どんな旅になるだろう?
悪戯っぽく笑うミスレィ。解ってるくせに。それでも僕は、彼の手を取って惜し気もなく言った。
−ミスレィと一緒なら、おもしろい旅になるに決まってるさ!
−奇遇!僕もそう思っていたところさ!僕とイルが一緒にいて、つまらなかったことなんてないからね。
僕らは笑い合い、旅の第一歩を歩み始めた。



−−−−−−−−−−−−

今、窓の外から、雨音が聞こえています。
わたしは雨が好きです。窓越しの雨音が一番好き
というわけで、今日は昔書いた短編シリーズものを投下してみたり^^
イルとミスレイという二人の少年の他愛なくも少し不思議な日常のお話です!
今窓越しに聞く雨音と、この作品の雰囲気がぴったり合ったので

明日・明後日は連休でーす!やった!!
物語を書いて過ごそうかな!!楽しみです
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名前:巳陸(ミリク)
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