らくだい魔女と迫害される哀少女199

January 12 [Tue], 2016, 20:15


蓮君が何を言いたいのか、"アイツ"とは誰を指すのか理解できなかった。

冬の冷たい風があたしと蓮君の髪をゆらゆらとなびかせる。

さっきまであんなに熱をもっていたからだは今はすっかり冷え込んでいる。

そして。


キーンコーンカーンコーン


5時間目の予鈴が学校いっぱいに鳴り響いた。

あたしはハッと我に返る。

蓮君の方をちらりと見ると、思いっきり目が合ってしまった。

彼は真剣な眼差しであたしの返事を待っているようで。

(蓮君はあたしの初恋の人で、今でも好きだよっていう意味で「好き」って言ったのに・・・・・・。それを彼に言うべきじゃないなんて)

それじゃあ一体あたしは誰に「好き」と言えばいいの?

あたしは必死に思考を巡らせる。

だけど、わからない。

「私には、わからない」

ようやく発した言葉は自分でもわかるくらいひどく掠れた弱々しい声だった。

彼は目をそらさない。

「私は、蓮君のことが好きだよ。蓮君がコウノさんのことをまだ好きでいるように、私も蓮君が好き。その想いはもう実ることがないということも、十分わかってる。

だけど・・・・・・蓮君は私が他の誰かを好きになっているって言いたいんだよね。その人が蓮君の言う"アイツ"なんでしょう?」

何故か言い方がキツくなってしまった。落ち着け、あたし。なにも焦ることなんてないのに。

確かに今あたしはどこかで焦っていた。その感情を蓮君に悟られないために少しでも平静を装うとしている。

それなのにどうして、こんなに胸がざわつくのだろう。

あたしは蓮君が言葉を発する前に、少々笑いながら早口で言った。

「当の本人である私は、"アイツ"って言われてもピンとこないし思い当たる人もいない。だから、勝手に決めつけないで、ほしい」

「もう授業が始まるから、戻ろう」とあたしが言って背を向けようとしたとき。


「・・・・・・本当に、わからないのか?」


その声はスッとあたしの心に静かに落ちて、突き刺さった。

彼に背を向けたままあたしは歩みを止めた。

「わからないわけないよな。だって、この一年間ずっと菊葉は—」

「なにが言いたいの?アイツって誰なのよ!」

どうして。こんな言い方するつもりじゃあ。

自分でも、感情のコントロールができない・・・・・・っ。

「蓮君は結局私になにをしてほしいと思っているの?なにが目的なのか、はっきり言ってくれないと私バカだから、わかんないんだよっ」

蓮君が今どんな表情をしているかわからない。

けど、きっと傷ついた顔をしている。

また頭の中がぐちゃぐちゃになって、いたたまれなくなってその場から逃げようとしたとき。


「きっと"アイツ"は、菊葉ちゃんが一番よく知っているはずだよ」


聞き慣れた可愛らしい声が横から聞こえた。

反射的にそちらを見やると、そこには肩で無造作に結んだサラサラの金髪に金色の透き通る眼差しを携えたフウカちゃんがいた。

「フウカちゃん・・・・・・」

「なんで、アンタが」

フウカちゃんはニッコリ可愛らしく微笑む。

「予鈴が鳴ったのに二人が教室に戻ってこないから心配で。5時間目はホームルームだから、先生もはやく来るし・・・・・・。菊葉ちゃん、元気なさそうだったし、外の空気吸うって言ってたからここにいるかなって」

「あっ、余計なことまでしゃべっちゃった!」とひとりで照れているのを見て、少しばかり気が緩んだ。

「それで俺達の話を聞いていた、と」

「うん・・・・・・、ごめんなさい。悪気はなかったんだけど」

フウカちゃんが申し訳なさそうに縮こまる。

あたしはさっきの言葉が気になって言った。

「フウカちゃん。さっきのってどういう意味?」

するとフウカちゃんはあたしを見て、次に蓮君を見て話した。

「そのままの意味だよ。この一年間、菊葉ちゃんの近くにいた人。彼に、言いたいこと沢山あるんじゃない?」

「!」

その瞬間もやもやとうずまいていた霧が、一気にふりはらわれた気がした。

頭にスッとひとりの男の子が浮かぶ。

群青色の髪に、同じ色の瞳。いつもあたしに優しく微笑みかけてくれた彼。

だけどどこか遠くを見据えているような大人びた顔つき。

この一年間、確かに彼は一番あたしの近くにいてくれて、沢山たくさん助けてくれた。


決して忘れていたわけではない。忘れるわけがない。

だけど昨日の夜、彼はフッと姿を消してしまった。昨日も今日も学校を欠席して。もしかすると今度こそ嫌われてしまったのではないかと内心思って、焦っていたのだ。

だけどその焦りを、その考えを受け入れたくもなくて彼のことを考えないようにしていた。

あたしってば本当に最低だ。相手のことを考えないで、自分の都合で物事を捉えてイライラして、終いには蓮君にもあんな言い方して。

何にも変わっていない。これじゃあ何にも。

「好きか嫌いかっていう話は置いておいて、言いたいことがあるならちゃんと言わなきゃ損だよ!」

フウカちゃんはあたしを慰めるように言った。

「うん、ありがとう。フウカちゃん」

「じゃあ、行こうぜ」

「えっ?」

あたしはくるっと後ろを振り返りまじまじと蓮君を見た。

蓮君は、さっきより声のトーンがあがって表情も明るいものになっていた。

そこでフウカちゃんがそっとあたしに耳打ちした。

「蓮君は、菊葉ちゃんを応援しているんだよ」

その言葉に、たまらなく胸が締めつけられた。

蓮君がいなかったら、もしかすると一生あたしは彼に言いたいことを言えなかったかもしれない。

さっきはキツい言い方をしてごめんなさいと、あとできちんと謝ろう。

フウカちゃんにも後押しされて、あたしは再び強い決意を抱いた。

「やっと魔法を使う時がきたな」

蓮君は誇らしげにそう言って、「いでよ、ホウキ!」と右手を空高く挙げた。

彼の手から黄色い光があふれ、そこからなんとホウキが出てきたの!

あたしが茫然とその光景を眺めていると彼は躊躇なくそれにまたがりあたしを見て言った。

「後ろ乗って!送っていくよ」

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