グッバイ、友情! 

January 09 [Tue], 2007, 22:00
「総ちゃん!トシちゃん!!」
大きな声を張り上げて正面から山崎が走って来る。そりゃもうバタバタと、騒々しく。
あいつ絶対隠密とか忍ぶ仕事には向いてませんぜィと、隣で笑う沖田に土方は確かにと納得した。

「やっと…見つけた…」
「ンだよ、今行こうとしたところだろ」
肩で息をする山崎を見て相当探したんだろう事が伺えた。そんなに時間がかかっただろうかと土方は銀髪の男を恨んだ。だが当の山崎は目をぱちくりとさせて「え?」と首をかしげる。
「何処に?部活は今日道場使えないから休みだけど…」
「は?」
「総ちゃんが言いに行ったでしょ?」
そう言って沖田をちらりと見やると、当の沖田は何処か遠い世界を見ている。


こいつ!!


山崎と土方の心は瞬時に合致した。今更言葉にしてまで突っ込む気はないけれど。
「総悟ォ……」
「あれ土方さんどうしたんですかィ?恐ろしい顔がさらに恐ろしいことになってますぜィ」
「余計なお世話だ!!」
沖田は白々しく、本当に白々しく今にも笑い出しそうな声で言った。まぁあながち嘘でもないんだろうけど。そんな沖田とは反対に山崎はハラハラしていた。心臓なんか口から飛び出すんじゃないか思うほどドキドキいっている。

だって。

だってこのパターンは。


「(学校が半壊するって!)」
この二人が喧嘩をしたら必ずと言っていいほど何かしらを壊していく。この間なんか道場での喧嘩に巻き込まれた近藤さんが屋根に人型の穴をあけたところだ。今のところ冷房いらずで助かっているけど。

どうやって止めるべきか。山崎は悩んだ。悩みに悩んだ。幼い頃から二人の間を取り持っていたといっても成果はこの年になっても見られない。しかも一緒に居る時間が長かった分誰よりも山崎が一番の被害者となっている。が、そのことに当の本人が気付いてないのが唯一の幸せだろう。

「帰る」
「そうだ帰れ帰れ!!……って、え!?」
「なんだ、帰っちまうんですかィ」


これは沖田にとっても予想外の展開だったんだろう。握った拳は力を失い、行き場をなくした。

「気分じゃねぇんだよ。部活がねぇんなら近藤さんの道場でも行ってくる」

鞄を背負い直し、手をひらひら振り去って行く。本当にやりあう気はないようだ。
振り返ることもなく行ってしまった土方に山崎は声をかけることができなかった。


「なんか…トシちゃん機嫌悪かった?」
「さぁ?土方さんはいつもあんなんだろィ」
「総ちゃんがあんな嘘つくからだろ?全く…なんであんな嘘つくんだか……」
「……」


何気なく言った言葉だった。これは素直な感想であり決して心の底を探ろうとした言葉ではない。だが一瞬にして沖田を取り巻く空気が変わった。そう、一瞬、ほんの一瞬背筋が凍るほどの殺気が沖田から発せられた。すぐに消えてしまったけれど。
ふ、と自嘲気味た笑いを漏らすと沖田は山崎を正面に見つめた。



これは誰だ?
見たことのない表情、感じたことのない感情、これが、本当にあの 総悟なのだろうか。





「退にもいつかわかる日が来るでさァ」



思えばこの日から僕たちは狂い始めたのかもしれない。

恋愛格言を君に 

September 01 [Fri], 2006, 22:55
「お手付きねぇ……」
一人取り残された教室で坂田は呟いた。
「恋に障害はつきものなんだよコノヤロー」

そもそも、自分は何故あの少年にこんなにも執着しているのか。坂田自身にもその明確な答えはわかってはいない。
始めはただ土方の反応が楽しくて、出来心からついからかってしまっていただけだった。
それがどうだ、今ではその“出来心”が“恋心”へと、すっかり姿を変えてしまっている。

土方に想い人がいることには気付いている。けれど、自分にとってそれはあまり大きな問題ではなかった。
恋愛に障害はつきものだから。
相手の瞳に自分以外が映っている、この現状――
ここからはじめるほうが、お互いに気付いたときには両思いなんて、そんな少女漫画のような恋よりずっとずっと面白いものになるに決まっている。
苦労して手に入れたもののほうが何もせずに手にしたものより大きな価値を持つことは、考えずとも一目瞭然だ。

だから、これはゲームだ。
如何にして、少年の心を手に入れるか。何よりも単純で、何よりも複雑なゲーム。

「期限は三年もあることだしな」
ニッ、と口角をつりあげて、坂田は笑う。
「まぁ見てなさいって。沖田君」

最後に笑うのは自分だということを教えてあげよう。

学園ロマンス 

July 28 [Fri], 2006, 23:34
うだるような暑さが身を襲う。
「早く冬になりやせんねェ?」なんて言う奴ら(主に『お』から始まって『ご』で終わる奴)も要るけど、どうせそんな奴らは冬になれば「早く夏になりやせんかねェ?」なんて言い出すに違いない(主に『お』から始まって『ご』で終わる奴)。


先ほどから貧乏ゆすりが止まらないのは暑さの所為だけじゃない。目の前にいるこの男が最大の苛立ちの原因だ。

「先生、そんなに見られると集中できません」
「んー?あぁ、気にしないで」

気にしてんから言ってんだろオオォォォ!!そう叫んで机をちゃぶ台返しよろしくひっくり返してやりたいが、入学して間もない今問題を起こすわけもいかないので必死に堪える。放課後の教室には他には誰もいなく土方とだらしない担任の天パだけだった。といっても日誌を書いている土方のもとへ勝手にこの教師がやって来ただけなのだが。何か用があるのかと思ったが、ただ土方を見ているだけだった。

「大串君さー」
「土方です。なんですか」
入学当初からこの教師は何故か土方を『大串』と呼ぶ。理由は聞いても教えてくれないし、何度言っても直そうともしない。ほんと、頭にうじが湧いてんじゃないかと疑ってしまう。

「部活は?」
「これ書いたら行きます」
「大串君って剣道部だよねー?」
「土方です。そうですけど」
「ふーん」

さっきから一体何なんだ。土方の苛立ちは当に最高潮を超えている。シャーペンの芯がさっきから折れっぱなしだ、勿体無ねぇ。また黙り込んでこちらを見ている教師に今度は土方が話しかけた。

「先生、なんでさっきから俺のこと見てるんですか?」
「えー聞きたい?」
「・・・聞きたいから聞いているんです」

そう言えば、あーやらうーやら唸りながら悩みだした。
「んーとねぇ…ヒミツ」
「……!!」


いい加減我慢の糸が切れたと、思わず筆箱に手が伸びたとき、突然教室のドアが開いた。

明日はどっちだ 

July 27 [Thu], 2006, 0:57
「…?そんなんだからって何のことだよ?」
「……」

「総ちゃん?」
「…テメェで考えろィ」

付き合ってられない、と言わんばかりに大袈裟に溜め息をついて、沖田はコンビニ袋からペットボトルを取り出した。
どうやら俺の問い掛けに答える気はないらしい。



「…それにしても、最近トシちゃん付き合い悪いよなぁ」
「道場に、勉強に、色々と忙しいんだろィ。お前も逃げられた女のことなんて考えてる暇があったら勉強したらどうだぃ?」
「……。そういう総ちゃんはどうなんだよ」
言い返しても無駄なことはわかっているが、言われっぱなしも腹が立つ。
しかし、その後の沖田の言動に、やっぱり自分の発言が無駄だったことを実感させられた。

「あいにく俺は志望校A判定なんでねィ」
「エ、エイ判定……」

俺たち三人は同じ高校を志望している。先輩である近藤が通う高校だ。ちなみにこの間の模試の結果、俺の判定はD。『志望校を考え直すことが必要』とのこと。

「まぁ、一人だけ落ちるなんてことにならないようせいぜい頑張れよィ」
「!!!!」

思わず合格発表の光景を想像してしまって、俺は固まってしまう。
…そうだ、今の俺がすべきことは恋愛じゃない。勉強なのだ!





こうしてしんしんと雪が降り積もる一月、
人より少しばかり遅れて、俺と受験と言う名の強敵の、戦いの火蓋が切られたのである。

そんな俺の頭から、別れた彼女のことはいつのまにかきれいさっぱりと消えてしまっていた。

無意識の始まり 

July 26 [Wed], 2006, 22:22
「お前が気付いてねェのがいけねェんだろィ」


「え?」
何に?そう聞き返そうとしたとき部屋のドアがガラッと開いた。
「あれ、トシちゃん」
「鍵、開いてたから勝手に入ったぜ」
彼らの突然の訪問は今に始まったことじゃない。それはもう幼い頃からの日常茶飯事だ。
いくら言っても彼らが聞く耳など持つわけがないので、これについてはもう随分前に諦めている。だから今更驚いたりはしない。

「総悟、頼まれてたヤツ」
そう言って土方はペットボトルの数本はいったコンビニ袋を投げて渡した。
「ありがてぇ。ちょうど喉が渇いてたところなんでさァ」
此処はいつまでたっても茶の一つも出やしない、言いながら沖田はちらりとこちらを見た。
人のジャンプ(しかも今週号)まで読んどいてなんてあつかましい、そう言いかけて俺は口を次ぐんだ。どうせ言っても結局最後には自分が悪い事になってしまうのだ、言ってもしょうがない。

「土方さん。マヨは頼んでませんぜ、マヨは」
「それは俺んのだ」
ひったくるようにマヨを奪うと土方は部屋から出ていこうと背を向ける。
「あれ、トシちゃんもう帰るの!?」
「ん?あぁ。頼まれもの届けに来ただけだしな。それに用があんだよ」
「近藤さんの所ですかィ?」
「まぁな」
「……」
バタンと閉じられたドアをじっと見ていた。それはもう無意識に。
だから気付かなかった。沖田のついた深い溜め息に。



「そんなんだから、女に逃げられるんでィ」

ラブ・ストーリーは突然に 

July 25 [Tue], 2006, 22:46
恋だの愛だのくだらない。

結局のところ、人間が生きていくのに必要なのは“地位と名誉”に“金”、そして何より“顔”なのだ。

今までの経験からしてそうだ。

ひと月前、付き合っていた彼女に「他に好きな人が出来たの」と言われ振られたのも、俺が純粋に恋心というものを信じていたのが原因だ。
傷心の俺が街をうろついていたところ、偶然見掛けたあいつが腕を組んで歩いていたのは世間一般でいうイケメン。見るからに高そうな服を身に纏ったソイツの横で、彼女は幸せそうに笑みを浮かべてみせた。それはもう極上の笑みを。
まるで鈍器で頭を殴られたかのような、あの瞬間の衝撃は今でもはっきりと覚えている。

――とにかく、そういう訳で恋だの愛だのいうものは実にくだらないものなのである。ガラクタ以下の感情なのだ。
ついでに言うと、くだらないとわかっているのに、未だに彼女を忘れられない俺もガラクタ以下の人間ということになるんだろう。




「退ぅ。しつこい男はモテねぇってしってるか?」
「……」
「もうひと月だゼィ。いい加減諦めたらどうだい」

人の家に勝手に上がりこんで、勝手に俺のベッド独占して、買ったばかりのジャンプ(ちなみに今週号。まだ俺も読んでない)を片手に、幼馴染は興味なさ気にそう言ってのけた。


「総ちゃん……これでも俺は俺なりに頑張ったんだ」
「へぇ、そうかィ」

気の抜けた返事だ。幼馴染の彼は相変わらずジャンプから目を離そうとはしない。
それでも俺は気にせずに言葉を続ける。

「あいつが欲しいって言えば例えそれがブランド物の財布であろうとプレゼントした。今月ピンチなのって言われれば金も貸した!あいつのために毎日がバイトバイトのバイト三昧!!俺の毎日はあいつ中心に回ってたようなモンだ…!それなのに、っ」

「一体俺の何がいけなかったんだよぉ!!!!」
P R
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