A HAPPY NEW YEAR 2008! 

January 01 [Tue], 2008, 0:09


カチ カチ カチ..

静かな店内に時計の秒針の音が響く

マスターも馴染みの客である私と彼だけのせいかすっかり店を放置し奥へ入って寛いでいる

23時37分
一年があと23分で終わる




「で、こんなところでお茶してていいの?」

「いーんじゃない?どうせ帰って来ないだろうし」

「ふーん。まぁ俺も仕事まで微妙に時間があるからいいけど」


コトッ
私がふーふーとコーヒーを冷まそうと頑張ってる傍らイルミはすっと一口飲んだ


イルミとは仕事柄よく利用しあってるし、今ではこうしてお茶も飲めるほどの長年の付き合い

ま、お互い割り切って探らないからこの状態が保たれてるんだろうけど


「そういえば君が言ってたゲーム58億もするんだね。正直驚いた」

「まぁでも逆に金さえ積めば簡単に買えるから楽だよ。情報単価も格段高いし美味しい暇つぶしになりそう」

「そう。でもすぐ帰って来れないとまずいんじゃない?まさか情報家業休まないでしょ」

「あれ言ってなかったっけ?休むよ。少なくとも3ヶ月は」



「・・・正気でいってるの?」

イルミの表情がかなり険しい
・・って端からみたら無表情だろうけど


「まぁ今日が終わるまでに請けた依頼はちゃんとやるし問題ないじゃん」

「じゃあそれクロロに言った?」

「言ってないよ。まずクロロとここ2ヶ月くらいまともに会話してないし」

私は1ヶ月前まで潜伏系の仕事、クロロは1ヶ月前からアイジエンの極地のある遺跡に赴いている

ちょうど入れ違い
でもそんなことはしょっちゅうだし、野暮ったいことをお互い言うつもりはない


「ふーん」

興味を失ったのか、仕事のメールが入ったのか知らないけどめったにいじらないケータイを触りはじめた

やっといい具合に冷めたコーヒーに口を付け、はぁ・・と小さく息を吐いた

時計を見たら23時44分
お互いうとうとしてたからきっと覚えちゃいない
アホみたいに気にしてる私は馬鹿だ


「ねぇ、どうしてもグリードアイランドに行くの?」

「うん」

「じゃあどうしたら行かないの?」

「イルミどうしたの?こんな事聞くなんて変だよ」

「いいから答えて」


「うーん・・じゃあクロロが今日中に帰ってきたら考える」

「絶対、だね。あ、俺マスターに用あるから抜けるよ」


現時刻23時48分

イルミがそっと席を立ち奥のマスターのもとへ向かった

立ちあがった一瞬
ニヤリと笑ったように感じたのは気のせいだ、絶対気のせい



いつもの事だけど何考えてるかわからない
いや、わからなくはないんだけど突拍子がなさすぎる



話し相手がいなくなった今やることがない
はぁ・・気が進まないけど仕事用のメール捌こうかな



バックから真っ黒なケータイを取り出しパスワードを打ち込む

一段と増えた新着メールの多さに軽くめまいがするけど、どうせ最終条件をクリアーするのはいつもと同じに決まってる

イルミの気配が完全にマスターの部屋と合致したのを確認してメールを開きはじめた







タ タ タタ タ...
全メールを見終えて返信するもの以外は削除したし(といっても転送してるからPCには残ってるけど)
完全に冷めたコーヒーに手を伸ばそうとした

1/1 TUE
00:09

「・・なんだ、年明けたんだ」

「あぁ、そうだな」


カチャッ
コーヒーカップの持ち上げられた音がした
まさか!そう思い顔をばっと上げた



「あけましておめでとう」


いつもの、あのニッコリと胡散臭い笑顔のクロロがいた



恋文屋? 

December 29 [Sat], 2007, 0:34

「うわぁ・・・想像以上に悲惨」


死骸の腐敗具合からみて殲滅からおそらく一週間

アジトはなんとか原型を留めていたが、肝心の中身の人間は誰がどれだかわからない

腐敗臭と集ってるハエや蛆などの蟲類を堪え、ヴィンチェンツォを探す

生憎顔見知りではないが前の仕事の関係で人探しは得意、というか人並み以上に出来ないとマズイ



「あ、コイツかな?」

うつ伏せになっている躯を軽く蹴り上げ、幸いまだ面影程度に認識できるので参照


あぁ、たぶん絶対間違いない



「ヴィンチェンツォさん、貴方に手紙です。読めなさそうなので手に握らせて燃やしますよ」

「・・・・」


返答はない・・・というか正直あったらすごく嫌だけど

ポケットからマッチをだし、シュッと擦れば火は容易についた

ゆらゆらと燃える炎を手紙に移し火がつき手紙が灰になった事を確認したら消火、そして場を後にするのが全うすべき仕様


「じゃあ私の仕事は終わりです。もし返信なさるなら自分で探してくださいね。生憎一般人まで把握してないので」

天国なんて俗説信じちゃいないけど、きっとどんな形であれ想いが伝わればいいなと思う

なんとなく来た道を戻るのは憚られてふわり、窓から飛び降りた




恋文屋1 

December 14 [Fri], 2007, 19:36
コト、エスプレッソがついさっきまで入っていたカップの横に小振りのグラスが置かれた

見上げてみれば意味深で陰鬱そうな顔をした女がひとり

あぁ、また仕事か・・・



「どうぞかけて下さい。短い話ではないでしょう」

「・・・いえ、結構です。コレをグワイファミリーのヴィンチェンツォに・・・」


ほのかに香水のかおりが漂う真っ白な封筒とテーブルにも籐で織られたイスにも流れ続ける風景にも、とにかくココの全てに似合わない分厚い札束がどっさり
私が選んだんだ、だからこの不調和を否とはいえない


「お受けいたします。でも届いた報告は出来ませんよ」

「わかってますよ、そんなこと。でも・・・でも宜しくお願いします」


それでは、消え入りそうにそう言い残して女は去っていった



グワイファミリーといったらつい先日殲滅されたんじゃなかったっけ?

ボスは何代目かで腑抜け、幹部という名の野心家に喰われ代々同盟を組んでたファミリーを裏切って消された

万に一つ、生き残っていないだろうなぁ・・・




「苦い・・・いや甘いか」


グラッパをザラメのみ残ったカップに注ぎ一口


渡す相手の職業柄、こんなことはよくある


だけどその度なんとなくストレートで飲めばよかったなぁと後悔する




「マスター、お会計置いとくね」


皺のよった口角を軽く上げいってらっしゃい、といつも通り送り出してくれる


わたしの還る場所はここだと、ココしかないんだとひとり認識する


恋文屋 

December 14 [Fri], 2007, 19:28


「マスターいつもの」




はいよ、と嗄れた声が背中ごしに聞こえるのにどことなく安心感を覚えつついつもの席に座した


目の前には日によって表情をころっと変えるいつもの大海
今日は雲一つ浮かんでいないので一層深く蒼い


私はこの風景を言葉なんかで表せないほど愛していた



私がいま座っている籐で編まれたイスも飾り気のないテーブルもマスターが淹れてくれたいつもの陶器のエスプレッソも吹く風も潮の香りも全部







でも完璧にはならない
“あの人”が向かいに座っていない


2008年01月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
最新コメント