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【肥田美佐子のNYリポート】米国人投資家も断言――日本とギリシャはこんなに違う / 2010年07月17日(土)
 日本は第2のギリシャとなるのか――。今、米国人投資家が集まると、この話題に花が咲くという。「寄ると触ると、日本の財政危機の話でもちきりだ」と、西海岸に本拠を置く機関投資家は苦笑する。

 ギリシャの財政破綻の可能性が現実味を帯びてからというもの、日本のソブリンリスク(国債や政府機関債などのソブリン債がデフォルトに陥るリスク)が、世界の投資家の耳目を集めている。というのも、日本の政府債務は、対GDP(国内総生産)比で約190%に上り、今年中には219%に達する見込みだからだ。米国85%、英国69%を大きく上回っており、先進国中最悪の数字である。

 米信用格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、7月12日付プレスリリースのなかで、与党民主党の過半数割れという今回の選挙結果を受けた「ねじれ国会」が、思い切った政策の遂行を阻む可能性を指摘。日本がソブリン格付け「AA」を維持するには、「歳入増と歳出カットのための有効な政策の実現による財政再建がカギ」だと説く。だが、多くの党や政治家には危機感が欠けているという。

 日本銀行が四半期ごとに公表する資金循環統計によれば、今年3月末の国債残高は約684兆3000億円。その価格暴落に賭け、デフォルトに伴う国債の金利上昇など、大幅な市場の動きで利益が出る金融派生商品(デリバティブ)を購入し、「Xデー」を今か今かと待つ米国人投資家もいるというから、日本人としてはなんとも複雑な心境だ。

 悲観論者の筆頭に挙げられるのが、ニューヨークの国際経済エコノミスト、カール・ワインバーグ氏である。同氏は、かつて、ダウ・ジョーンズ傘下の金融専門誌『バロンズ』とのインタビューで、日本を「デット・トラップ」(借金でがんじがらめになっている)と表現。昨年9月の政権交代の際には、別のインタビューで、民主党のケインジアン流財政政策を踏まえ、こう述べている。

 「日本の公的セクターの壊滅的な財政破綻は、未曾有の出来事として世界経済を直撃し、金融危機をもしのぐ事態に陥るだろう」

 経済危機を予言し、一躍スターダムにのし上がった「ドクター・ドゥーム(破滅)」ことルービニ・ニューヨーク大学教授も、辛口論者の一人だ。同教授は、英『フィナンシャル・タイムズ紙』(7月12日付電子版)への共同寄稿で、世界経済が引き続き低成長にとどまり、来年も景気後退感を引きずると警告。日本の財政危機は、もはや日本だけの問題ではないと警鐘を鳴らす。

 「世界経済の成長を取り巻く最も現実的なシナリオは、たとえ二番底を回避できたとしても、痛ましいものになる。(中略)欧州だけでなく、日本も経済改革を加速せねばならない。(中略)政策遂行者が、これ以上問題の先送りをするのは禁物だ」

 日本のソブリン危機でひともうけをねらう投資家がいる一方で、デフレ脱却や財政再建を求める「ガイアツ」も相当なものである。6月24日付の『タイム誌』電子版には、「日本はPIIGS(ピッグス)に仲間入りすべきか」といった記事まで登場した。ピッグスとは、ユーロ圏で財政難に苦しむポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの5カ国を指す。「巨額の政府債務」「低成長」「経済改革の緊急性」「国家財政への懸念」の点で、日本はピッグスに並ぶという。

 とはいえ、日本のソブリンリスクは予想以上に低いと、破綻論者に冷ややかな視線を送る投資家も多い。国債の約4分の3をフランスやドイツなど海外投資家に依存するギリシャと違い、日本の国債の95%強(3月末現在)は、メガバンクや生保・損保などの国内機関投資家が豊富な流動性で買い支えているからだ。

「仮に今のままのデフレと財政状況が続いたとしても、破綻までには10~15年かかる。今にも日本の国債が暴落し、ソブリン危機が起こるというシナリオはありえない」と、ある市場関係者は断言する。

 国債の約半数を外資が買い支える米国や約3割を外国人投資家に頼る英国とは事情が違う、というわけだ。おまけに、リスク分散などの点から、海外資金保有比率を高めようとしている財務省の意図とは逆に、皮肉にも国内資金の保有率増に拍車がかかっている。前出市場関係者によれば、生保が、保険会社の財務の健全性を表す『ソルベンシーマージン(支払い余力)比率』の規制強化により、株式やデリバティブなどのリスク性資産を保有しにくくなっているため、日本株へのエクスポージャーをひそかに減らしつつあることなどが主な原因だという。

 とはいえ、日本は安泰だと胸をなで下ろしている暇はない。東京にもオフィスを構えるニューヨーク本拠のヘッジファンド、インダス・キャピタル・パートナーズに勤務し、1年の大半を日本で過ごすイーサン・デバイン氏(インダス・ジャパンファンド株式部門責任者兼インダス・アジアン・リカバリーファンドのポートフォリオマネージャー)は、今回の選挙結果を踏まえ、次のように苦言を呈する。

 「フリーター就労の支援や地域再生といった民主党の政策は、デフレの長期的解決策とは言いがたい。日本の財政状況が悪化の一途をたどれば、通貨政策上の柔軟性が失われ、デフレを回避できなくなってしまう。日銀は、(2001年3月から06年3月まで行っていた)量的緩和策が奏功しなかったというが、インフレ期待を高めるための努力はいっさいしていない」

 デバイン氏は、「正常な経済成長の回復を目指すという菅首相の目標は称賛に値する」と前置きしたうえで、政府高官や日銀が、デフレ脱却と日本経済の成長回復に向けて思い切った政策に訴える動きは依然として見られないと、指摘する。

 「今なら、まだ間に合う。だが、好機到来の時間は限られている」

 豊富な流動性、経常黒字国――。その気にさえなれば、日本経済は、明日にでも、菅首相の言う「元気」を取り戻すことができる。要は、やるかやらないか、だ。

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肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト 

東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社など にエディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・ ト リノ)に参加。労働問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘される。 2009年10月、ペンシルベニア大学ウォートン校(経営大学院)のビジネスジャーナリスト向け研修を修了。『AERA』『週刊エコノミスト』、『サンデー毎日』『ニューズウィーク日本版』『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』などに寄稿。日本語の著書(ルポ)や英文記事の執筆、経済関連書籍の翻訳も手がけるかたわら、日米での講演も行う。共訳書に『ワーキング・プア――アメリカの下層社会』『窒息するオフィス――仕事に強迫されるアメリカ人』など。マンハッタン在住。http://www.misakohida.com

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【7月16日10時28分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100716-00000009-wsj-int
 
   
Posted at 22:25/ この記事のURL
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