世界の果てで待っていて 〜天使の傷痕〜 【評】 

April 26 [Wed], 2006, 3:20
世界の果てで待っていて 〜天使の傷痕〜

【評】☆☆☆☆

雪舟薫さんの美麗表紙に一目惚れ。表紙だけでも買い。
彼女のお仕事の中でもかなり素晴らしい出来だと思います。

BLというよりもJuneっぽいかな?
元警察官の探偵ものというのも割とよく見掛けるパターンだなと思いますが、実際のところそういうのってよくあるのでしょうか。
まあそれはいいとして。
話の核になっている律と水田の関係も複雑なのですが、そのあたりは本編を読んでいただくとして感想としてはスルー。

甘ったるいお話も悪くないけれど、こういうビターな方が好みです。
お互いが名字呼びなのもモエ度高し。ベタベタ名前を呼び合うよりも一線を引いた感じがそそります。
ふたりとも己に対して非常にストイックなところも好い。
櫂谷は黒澤に惹かれているというのは間違いないのですが、理性が邪魔をしてそれが恋愛感情になりきれていない。
薄皮一枚のすれすれの感情なんだけど殻が破れない、なかったことにも出来ないという葛藤が好いです。
黒澤は櫂谷のそういう葛藤の部分を理解していて、敢えて自分の想いを伝えようとはしないのですが、ある晩櫂谷が酔って意識を飛ばしかけていたところ、黒澤がそっと首筋に触れる。
ただそれだけでふたりの感情の在りどころが解る情感溢れるとてもいい場面だと思います。
黒澤がたったひとりの大切な妹を事件で亡くし、傷も癒えきらぬまま自宅に戻った夜、事件の現場でもある台所の床で片を振るわせて泣いているのを見て思わず一線を踏み外してしまう櫂谷。
それでもお互いに頭の隅でどこか冷静な部分があって、でも縋らずにはいられなくて傷を舐め合う様に躰を繋げてしまった一晩限りの関係。
暗黙の了解の様にその後は一切触れないのに、深く刺さった棘の様にいつまでも感情を刺激するのです。

一応続きが出るような雰囲気ですが、このままふたりが恋人という関係に収まるとは思えないので、どういった終止符が打たれるのか気になります。
妹の件に決着がつかない限り、ふたりの関係にも進展は無い感じ。
黒澤に比べて櫂谷のキャラクターが薄いので、続きがあるならばもう少し具体的なものが欲しい。

世界の果てで待っていて 〜天使の傷痕〜 【あらすじ】 

April 26 [Wed], 2006, 0:15
世界の果てで待っていて 〜天使の傷痕〜

【データ】 高遠琉加/大洋図書/SHYノベルス

【ジャンル】 犯罪/探偵(元刑事)×刑事

【あらすじ】
事件で受けた傷が間接的理由となって刑事をやめた黒澤統一郎は渋谷で探偵事務所を構えている。
双子の兄、律を探して欲しいとやってきた中学生、葉室奏の依頼を一度は断った黒澤だったが、その後以前の同僚である櫂谷雪人が別件で律の行方を捜しているのを聞き、律を探すことになる。

真昼の月 【評】 

April 18 [Tue], 2006, 1:47
真昼の月

【評】☆☆☆★(3.5ってことで)続き

前回読んだ「絶対」シリーズよりこちらの方が面白く感じました。
レギュラーキャラクターの人数が多いのと具体的に事件が起こって主人公が積極的に動いているのとが理由だと思います。
そして何か足りないのよねーと思っていたのが何となく解った気がします。
「ボーイズラブ」というくらいでやはり「愛」がなくちゃね、という訳でBLは恋愛小説であるべきなのです。
BLの場合ストーリーよりも先ずシチュエーションありきという感じはしますが、設定だけでは乗り切れない。
個人的には感情移入して読まないタイプですが、本来、恋愛小説のカタルシスは疑似体験だと思います。
主人公、あるいはその相手の感情に同調できるかどうかというのが大事。
二作読んで感じたのは心情描写が殆ど無いということです。だから淡泊に感じるのだと思います。
出会って直ぐに関係が出来上がってしまって、片恋期間があまりないのもマイナス。
いきなりラブラブな話(この話自体はラブラブとは云い難い…読めば解ります)よりもちょっとずつ惹かれていく様子とか、思い通りにいかなくて悩むとかそういう部分が書かれている方が読者もキャラクターに対して愛着が湧くと思います。
警官を辞めた経緯もただ「同僚に撃たれた」というのだけではよく理解出来ません。
それが切っ掛けとなったのならそれまでにも何か辞めたいと思うだけのことが無ければおかしいし、尊敬し、信頼していた先輩に撃たれたショックでというのだけというのも理由としては弱すぎです。
基本的な水準は高いひとだと思うので、そのあたりの書き込みがもっとあれば良いのになと思います。
以上、作品というよりは作家さんの評になってしまいました。

真昼の月 【あらすじ】 

April 18 [Tue], 2006, 1:30
真昼の月

【データ】 いおかいつき/雄飛/アイノベルズ

【ジャンル】 犯罪/ヤクザ(実力派若頭)×元警察官→調査事務所経営


【あらすじ】
東京で刑事だった神崎秀一は同僚に撃たれたあと退職し、祖父の遺産である雑居ビルのオーナーとして大阪にやって来た。
ビルの一室を貸していたクラブオーナーが横取りした拳銃を探しに来ていた桐山組の若頭、辰巳剛士と出会う。
辰巳の申し出で秀一は三日の約束で部屋を自由にさせる。
電話で呼び出されて戻ってみると、クラブだった筈の部屋は居住空間に変わっていた。
ヤクザ相手に物怖じしない秀一を気に入った辰巳が手を入れさせたのだった。
そして油断していた隙に後ろ手に手錠を掛けられ押し倒されてしまう。
その翌日届いた宅配便の中身は辰巳が探していたらしい拳銃だった。
秀一は独自にその出所を探し始める。

【評】☆☆☆★(3.5ってことで)
一作だけでは評価がしづらかったので、サイトの方を覗いてみたら第三話から始まっていたこの話…。
商業誌化されて1,2話がサイトから下ろされていたのですね。よくあることですが。(特にこの出版社さんに多い気がします。サイトでやっているひとを積極的にスカウトしているらしい。)
やはり馴れ初め部分は大事だろうと購入してみました。
(因みに1巻目はネットの書店でも品薄みたいで甘損ではプレミア価格になっていました。
在庫僅少の様ですが、中央書店さんで購入できました。3巻目が出る予定がある様なのでそのうち増刷もされるのではないかと思います。)

ヤクザと警官とか元警官で探偵業というのもありがちな設定。
最初は無理矢理、というのもよく見るパターンですね…。
しかしそれが必ずしも悪いとは思いません。
前にも書いた通り、私自身は警察もヤクザも全然ピンと来ないのですが、ジャンルとして確立しているということは需要も多いのだと思うので。

好きこそ恋の絶対 

April 11 [Tue], 2006, 23:32
好きこそ恋の絶対

君こそ僕の絶対

【データ】 いおかいつき/幻冬舎/ルチル文庫

【ジャンル】 警察/年下わんこ巡査×切れ者美人検事

【あらすじ+評】☆☆☆
これも奈良千春さんが表紙だったのでジャケ買いで。
初めて出会ってお互いが段々と惹かれてゆく一冊目「好きこそ恋の絶対」とラブラブな日常に波乱の予感?な二冊目「君こそ僕の絶対」。
個人的にモエ要素の無い警察ものです。
白バイ隊員から異動され移った捜査課で初日に出会った検事に一目惚れ(というのをあとで自覚)。
年下の天然わんこ攻め、強気美人受け。最近よく見掛けるのでこの組み合わせは流行なのかも。
文章に変な癖もなく読みやすかったです。
しかし本当にキャラクターもストーリーも標準的というかもう少し何か+αが欲しい。
こういう話って他の方のでも似たようなのを読んだことがあるので、またか、という感じがします。
ほのぼのとしたキャラクターの雰囲気は悪くないので、これからの展開に期待。

駆け引きはベッドの上で 【評】 

March 11 [Sat], 2006, 1:54
駆け引きはベッドの上で

【データ】 ふゆの仁子/竹書房/ラヴァーズ文庫

【ジャンル】 経済/アメリカの大手スーパーCOO×失業青年(元日本の大手スーパーの海外事業部所属)

【評】☆☆☆☆
奈良千春さんの表紙に惹かれてジャケ買い。
キャラクター、舞台立て、展開とすべてがゴージャス。
なかなか面白かったのでほか数点同じ作者の方の作品を読ませていただいたのですが、良い意味で展開が定番だと思いました。
所謂時代劇の快楽。型どおりの展開による安心感と満足感。
仕事が出来て人望も厚くてお金も地位もすべて持っている男性が、自分の見い出した相手にたっぷりと愛情を掛けて育ててゆきます。
選ばれた方もそれに応える様に才能を花開かせ成長してゆく。勿論タダのひとでなく、ダイヤの原石ともいうべき人材なのですが。
出てくる男性は気障さえも板についている男前。クラスが違います。
肩書きがというのではなく、キャラクターの醸し出す雰囲気がアッパーなのです。上質の空気に酔う。
正に男と男のハーレクイン。夢の様な世界に溜息が出ます。
職業のリアリティがあるのも良いと思います。
自称リーマンな話も多々ある中、きちんと実のあるお仕事をしている雰囲気が伝わってくるのが素晴らしい。

BLに手を出しているのが割とここ最近のことなので、さほど沢山の作家さんを読んだ訳ではありませんが、読んだ中では一番文章が端正で且つ艶があって良かったと思います。
書いているご本人自体が非常にクレバーで大人の女性だという印象を受けました。

駆け引きはベッドの上で 【あらすじ】 

March 11 [Sat], 2006, 1:53
駆け引きはベッドの上で

【データ】 ふゆの仁子/竹書房/ラヴァーズ文庫

【ジャンル】 経済/アメリカの大手スーパーCOO×失業青年(元日本の大手スーパーの海外事業部所属)

【あらすじ】
大学卒業後、日本でも指折りの大手スーパーに就職した遊佐奈央はやりがいのある仕事に満足し、順風満帆な生活を送っていると思っていた。
しかし突然の仕事での挫折、云われのない背任容疑でリストラ対象に挙げられ、ついでに彼女にも振られてしまう。
会社に残ることを善しとせず、退職の道を選んだ遊佐は退職金を手にラスベガスへと向かう。
全部使い切って帰るつもりだったのに、何故かツキが廻ってしまい勝ち続けてしまう遊佐。
そこに謎の男ヨシュアが勝負を挑んでくる。「この勝負で君が勝利したら、欲しい物をなんでも与えよう」というヨシュア。
対する賭けの対象は遊佐自身。遊佐はその賭けに乗った。
勝負はルーレットで。
そして勝負に負けた遊佐はドル札をちりばめたベッドでヨシュアに抱かれることに…。
その際に更にヨシュアから賭けを持ちかけられます。
彼を楽しませることが出来れば遊佐の勝ち、負ければ一生ヨシュアに囚われの身となる約束をして一夜を共にしたのでした。
翌朝賭に負けたつもりですっかり打ちひしがれた遊佐に、追い打ちを掛ける様にヨシュアから衝撃の事実を告げられます。
ヨシュアの正体は遊佐が日本で提携を結ぶべく働きかけていた米国の大手スーパーの幹部で、仕事を通して彼のことをよく知る人物でした。
昨夜の出会いは偶然を装って仕組まれたものだったのです。
そんなヨシュアから更に賭けを提案をされます。
遊佐の勤務先であったスーパーと提携し損ない、一度は失敗した日本進出を今度は単独での出店という形で新たに考えているヨシュアの会社の手助けをしろというのです。
出店に成功した時点で遊佐の勝ちとして開放してもいいという条件。
日本に戻った遊佐は少しでも良い条件で出店が出来る様動き始めるのでした。
…とまあそんな感じで、その後は本編でお楽しみください。

FLESH&BLOOD 【評】 

March 09 [Thu], 2006, 0:44
FLESH & BLOOD〈1〉

【データ】 松岡なつき/徳間書店/キャラ文庫

【ジャンル】 海賊/海賊×高校生

【評】☆☆☆☆
なんといってもお話が壮大。
史実、実在人物とフィクションとの絡め方が上手で見事というほかありません。
長々と説明するより読んでもらった方が解りやすいと思います。
ジェフリーの親友で右腕の航海長ナイジェルが好きです。黒髪で隻眼!!素敵ー!!
人見知りが激しく、最初は海斗のことをあまりよく思っていなかったのですが、一緒に航海をするうちに段々と気を許す様になり、それがやがて恋情へと変化してゆくのですが、その頃にはジェフリーと海斗は相思相愛の仲。
親友と恋心の間で葛藤するナイジェルがまた良いのですv
親友を裏切れないので自分の気持ちを封印しようとするナイジェルですが、無防備に眠る海斗についくらりときて口づけをしてしまい激しい後悔に襲われます。
動揺しているところにビセンテ一味のスペイン人たちがやってきて目の前で海斗を攫われてしまうのでした…!
ビセンテは今のところ海斗に大して不埒な想いを抱いている様子はないのですが、庇護欲がはたらくのかやけに大事に扱っています。
ジェフリー、ナイジェルを始め海賊の仲間たち、途中絡みのあったマーロウやエリザベス女王(この辺りは実在のひと)やその他いろいろとやけにモテモテです。

雪舟薫さんの挿絵も美麗でうっとりですv
現在1〜9巻まで刊行、以下続刊。
また文字数オーバーしてしまった…。

FLESH & BLOOD 【あらすじ】 

March 09 [Thu], 2006, 0:37
FLESH & BLOOD〈1〉

【データ】 松岡なつき/徳間書店/キャラ文庫

【ジャンル】 海賊/海賊×高校生

【あらすじ】
親の仕事の関係でイギリスで高校生活を送っている日本人の少年、東郷海斗がふとした切っ掛けから大航海時代へタイムスリップ。
放り出された先で金髪碧眼の美貌の海賊、ジェフリーに拾われ、海賊船の乗組員になることに。
最初に出会ったのはスペイン軍の航海長ビセンテ(黒髪、緑眼の美形)だったのですが、敵国イギリスにて偵察中だったのでイギリス人らしい人影を見て一度姿を隠したところ、やってきたジェフリーの仲間たちに連れてゆかれたのでした。
ビセンテとの出会いで海斗は、タイムスリップなどというのは信じて貰えそうにないと判断、記憶喪失ということにしたのですが、自分が習った歴史を確認しながら会話をしているうちに予言者だという誤解を受けてしまいます。
その所為でその後スペイン軍から身柄を手に入れようと狙われることになります。
ゆっくり愛と信頼を育んで行くジェフリーと海斗でしたが、イギリスとスペイン自体の仲がよくなく開戦間近な雰囲気なのでただラブラブしている閑はありません。
そして話をきいたフェリぺ二世から海斗を連れてくるように命令されたビセンテにつけ狙われて、8巻ではついに攫われてしまうのでした。

エス 其の三 

March 08 [Wed], 2006, 0:50
エス 裂罅

【データ】 英田サキ/大洋図書/SHYノベルス

【ジャンル】 犯罪/ヤクザ×警察官

【評】 続き
二冊目でヤクザと警官というお互いのポジションを再確認し、決して馴れ合いはしないと誓ったふたりですが、実際はどんどんと心が傾いて深く求めあってしまうのを避けられないのでした。
言葉にしてしまったら危ういバランスが崩れてしまうので、どんなに激しく想っていても気持ちは絶対に口にしてはいけない。
押さえ込めば押さえ込むほど求める気持ちは激しく膨らんでどうにもならなくなってゆきます。
誰よりもお互いを必要としながら、気持ちが向けば向くほど傷つけあうことになってしまう存在。
普通の幸せからは遙かに遠いけれども、ある意味究極の関係ともいえます。
そんなふたりの行く末はやはり破滅に向かってゆくしかないのか…。
唯一それを阻止できるひとがいるとしたらそれは椎葉の義理の兄である篠塚(警視庁の裏トップらしい…)なのかなと思います。

椎葉はもの凄く危うくて痛々しい生き方しか出来ないひとで、宗近の方が余程健全です。
宗近はどうしても選ばなければならなくなったら自分が折れることもアリかと思いますが、椎葉にはそれは絶対無理だろうと思います。
篠塚も穏やかそうに見せ掛けて、海千山千の警視庁で登り詰めているあたり、かなり曲者と見ました。

激しく痛くて切ない私好みのお話でしたv
濃密なお話なので書ききれなかったのですが、脇役好きの私のお気に入りは宗近の側近の鹿目さんですv