歴史に残るライナーノーツ

July 18 [Mon], 2011, 22:12

TAI PHONG"S/T" FRANCE WARNER 56 124

フレンチシンフォニックの代表格タイ・フォンのファーストアルバム。
邦題「恐るべき静寂」。バンド名はタイ・フーンとされている。ちなみに「TAI PHONG」とはベトナム語の「台風」のことらしいが本当やらどうやら。。。

前回、LA CONFRÉRIE DES FOUSのレビューでも述べたとおり、フレンチものの価格の下落と、目下のところの自らのフレンチ指向によってこのところ購入するレコードにおけるフレンチ比率が上昇している。

国内盤はシングルジャケットだが、フランスオリジナルは見開きでエンボス加工されている。
レーベルはワーナーのバーバンクラベルがオリジナル。白ラベルもあるがそちらはセカンドプレス。
ドイツ盤もかなりみかけるが出来ればオリジナルのフランス盤で持っていたいレコード。
ごらんの通りの「SISITER JANE」のステッカーが貼ってあるものが初回盤と言われている。

タイ・フォンはユダヤ系フランス人Jean-Jacques Goldmanを中心にベトナム系フランス人を二人メンバーに迎えた編成となっているが、メンバーのほとんどがコーラスをとるメロディライン重視・甘めの美麗シンフォニック・プログレだ。テクニックもそこその水準をキープしており、英語でヴォーカルをとっているせいかフランス語独特のアクも少ない。私の偏見が入っているかもしれないが、この手の音楽としてはまさに理想型なのではないかと思う。保守的なプログレファンにウケそうな内容だ。

この書き方でわかる通り、正直私の好みではない。
その昔国内盤を買ったときにも、物足りなさを感じてさっさと手放してしまった。
格安だったのと、名盤と言われれているのでもう一度押さえておきたい、もしかしたら今聴いたら好きかもしれないという正当な根拠とは呼びづらい動機で購入してみたが、やっぱり好みは変わっていなかったようだ。
そんなんなら買わなきゃいいのにとも思うのだが、本品を購入するのにもうひとつ大きなポイントがあったのだ。

それは前の持ち主が当時の国内盤のライナーノーツを付けてくれていたからだ。
この伊藤政則氏によるタイ・フォンのライナーノーツというのが私の気分を萎えさせるに十分な強烈な内容なのだ。
以下はそのライナーノーツからの抜粋

〜僕は今タイ・フーンのアルバムを目の前に、あらためて”言葉の無力さ”を切実に感じとっている...どんな言葉を、どんな形容詞を劇的に並べたとしても、その文章はタイ・フーンのあまりにも繊細に鳴り響く音の前に化石と化してしまうのだから。
(中略)
<聖使タイ・フーンのに秘めた、神々の誘惑!>
(中略)
さあ、レコードを手にターンテーブルに運んでいくんだ。ただ他のアルバムの時と同じように載せてはいけない。神を敬うように、愛する人をやさしく愛撫するように....。
(中略)
2本のギターによる首すじをさかなでするような音の愛撫は、その余韻とともに、史上最高の名曲と言ってもいいだろう「シスター・ジェーン」に続く。
(中略)
「シスタージェーン」とは、彼らの自身が追い求める哀愁に満ちた魅力的な女性なのだろうか。タイの声は泣いている。彼女を想い、そっとひざまづき、そしてとめどなくあふれ出る純粋な涙をぬぐおうともせずHiな叫びで彼の想いは絶頂感に達する。男と女の具体化された抒情感が、サウンドのカタストロフィと見事なまでに波長を同じくし、聴き手を彼らの独特の世界に引き込んでいくこの手法こそ、タイ・フーンの魅力をひもとく大きな鍵となっている。
(中略)
神々から授かった魔性の魅力を武器に、剣なき戦いを挑む聖使タイ・フーン!僕は彼らに忠誠を誓う下僕となる契りを結んでしまった。
'76.9.27 伊藤”タイ・フーン”政則/Rockadom〜

すごい。すごすぎる。

このライナーを読んでから数年後に、私自身が某誌でレコードやビデオディスク(死語だ)のレビューを書くバイトを経験したのだが、その時、資料として渡されるのがレコードの時はジャケットのコピーとカセットテープだけ、ビデオディスクの時なんか映像もなしでとにかく書いてくれと言われてクレジットを見ながら見たことない作品を紹介しなければならないという実に貴重な経験だった。

そんなことを経験した後からだと、いかに伊藤氏が何の資料もなくこのライナーノーツを書かざるを得なかったのかがわかる。大変な仕事だ。結局のところ、資料的な情報は全くといっていいほど皆無で、伊藤氏の感想に終始している。渋谷陽一氏のNHKFMで放送されていたラジオ番組「サウンドストリート」で渋谷氏が「ライナーノーツは1本書いて大体五千円くらい」と言っていたようなおぼろげな記憶があるのだが、たいした報酬でもないのに、とにかく字数を埋めていたのだろう。ご苦労は察するに余りある。

伊藤氏は未だ音楽評論家としてご健在で、たまにテレビでも見ることができるが、いちどこのタイ・フーンのライナーのことを少しでも記憶しているか訊いてみたいものだ。

で、ジャケットのシールにも記されている”史上最高の名曲”「シスタージェーン」だが、よくしたもので何とYoutubeでその映像を拝むことができる。



あれ?歌っているのはJean-Jacques Goldmanではないか!?
ベーシストのTaiじゃないじゃん!
何が「タイの声は泣いている。」だ(笑)

で、今になってこの曲のイントロを聴いて思うのは、オフ・コースの「さよなら」と五輪真弓の「恋人よ」に似ているなぁということ。そういえば、昔大学時代のサークルで「タイ・フーンは世界一のグループだ」と言っていた友達がいたのだが、その彼のお気に入りのグループのひとつがオフ・コースだったことを思い出した。。。




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40代は第2の思春期なのだそうです。思春期に惹かれたものをもう一度ひっぱりだしてきて後生大事に整理を始める今日この頃。プログレを中心としたアナログレコード集めに人生の貴重な時間を費やすささやかな記録です。
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